マジック・ザ・ギャザリング ライトノベルVER   作:やまもとやま

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2、エルドラージ覚醒

 キャンプを経て、ニッサ率いる一行はさらにジャングルの中を進んだ。

 

「このあたりは分け入ってはいけないとされている地だ。何かおっかないものが出るんじゃないか不安だぜ」

 

 ハナキチが不安そうにあたりを見渡した。

 

「大丈夫よ。蛇以外だったら私が何とかするわ」

 

 ニッサは怖気づくこともなく、どんどん前に進んだ。

 ニッサは優れた自然魔道士だが、唯一蛇だけは苦手だった。

 

「巨大な大蛇が出たらどうするんだ?」

「そのときは食われる前に自殺すればいいわ。蛇に食べられる最後だけはまっぴらよ」

「あっさりしてんなぁ」

 

 一行は嫌でもニッサのペースに合わさざるを得なかった。

 

 ニッサ一行は思いのほかあっさりと目的地にたどり着いた。

 ここまでの道中に出くわしたものと言ったら、獰猛なビースト一匹だけだった。

 そのビーストもニッサの生み出した茨の鞭で締め上げてあっさりと撃退され、危なげなく目的地の面晶体にたどり着いた。

 

 ジャングルの開けた場所に巨大な人工物がそびえていた。

 全部で4つ、中央のくぼみを囲うように並んでいた。

 

「あれが、面晶体か?」

 

 一行は目の前に現れた巨大なひし形の石造物を見上げた。

 

「でかいぞ。10mはあるんじゃないか?」

「すごいわ」

 

 ニッサは興味に惹かれて、面晶体のほうに駆け出して行った。

 

「ニッサ、あんまし不用意に近づかない方がいいんじゃないか。一応、伝説ではエルドラージが封印されてるって話なんだぞ」

「蛇以外なら何が出てきても問題ないって言ったでしょ」

 

 ニッサはおびえることなく、面晶体に近づいてその表面に手を当てた。

 

「温かい。それに何か鼓動のようなものを感じるわ」

 

 ニッサは面晶体がただの石ではないことを確信した。

 

「触ってみて、さまざまなマナの流れを感じるわよ」

「どれどれ」

 

 ニッサに続いて、後続の者も面晶体に触れた。

 

「なるほど。マナが絶えず循環しているんだな。マナバーンの起きた形跡もない。信じられない。どうやってマナを安定させているんだろう」

 

 マナという万物のエネルギーは非常に不安定で、物質の内部を駆け巡っている間に、爆発することが知られている。

 そのため、これまでに多くの者がマナを安定して貯蔵しようとさまざまな工夫を行ってきたが、うまくいかなかった。

 

 マナを安定して貯蔵することができれば、生活は一気に楽になる。

 雨の日も風の日もマナを求めて森に分け入る必要がなくなる。

 場合によっては無限マナのように循環させて、真冬でも簡単に暖を取れるようになるかもしれない。

 

 そのマナを安定して貯蔵する方法が目の前にあった。

 この面晶体は明らかに莫大なマナを安定して蓄えていた。

 

「この面晶体の技術を持ち帰ることができれば、生活はずっと豊かになるわ」

「しかし、どうやって持って帰るんだ? こんなでかいものを持ち帰るのは難しいぜ」

「技術さえわかれば、いくらでも造ることができるようになるわ」

「見た目にはどういう構造をしてるか全然わからねえけどな」

 

 見た目には大きな石を削っただけにしか見えない。コーの石鍛冶たちが良く作る石造物に良く似ていた。

 しかし、マナを安定して貯蔵しているというなら、何か特別な仕掛けがあるのは間違いない。

 

「1つ割ってみましょう。内部を見れば構造もわかるわ」

 

 ニッサがそう提案した。

 

「さすがにそれはまずいだろ。エルドラージが封印されてるって話なんだぞ」

「そんなのいないって。普通に考えてみなさいよ。こんな石の中に生き物が閉じ込められたままでいられるわけないでしょ。仮に何か入っててもとっくに餓死してるって」

「まあ、それはそうかもしれんが」

 

 ニッサ以外の3人は面晶体を割ることに否定的だった。

 非常に長い間、バーラゲドでは、面晶体に近づいてはいけないというしきたりに守られてきた。

 エルフたちはその禁を破ることに後ろめたさを感じていた。

 

 しかし、ニッサだけは例外だった。

 ニッサはしきたりやルールを破ることに抵抗がなかった。

 何よりもニッサの持ち前の好奇心が行動力をかき立てていた。

 

「いいわよ。じゃあ、私の判断で割るわ」

「どうなっても知らんぞ」

「何か出てきてもねじ伏せればいいのよ。問題ない」

 

 ニッサはそう言うと、懐から小さな木の実を取り出して握り締めた。

 ニッサは自分の力に自信を持っていた。何が出てきても叩き伏せることができると確信していた。

 

 ニッサは握り締めた木の実にマナを反応させた。

 自然魔道士は「緑マナ」と呼ばれるマナを使い、自然物に干渉することができる。

 

 緑マナとは新緑の大地や森などに広く流れるマナであり、それは凝縮すると緑色の光を放つことからそう呼ばれている。

 緑マナと反応した木の実からは、鋭利な緑色の刃が伸びた。

 

 ニッサは両手を上げて、その刃を自分の背丈の2倍以上にまで成長させた。

 木の実1つから全長3メートル以上の新緑の刃を作り出した。自然魔道士の中でも、ここまでの技を発揮できる者は少ない。

 

 ニッサは生み出した剣を振るった。

 その剣は岩よりもはるかに硬く、そしていかずちのように鋭利だった。

 

 ニッサの振るった剣は岩にめり込み、サクサクと切り刻んだ。

 切り口からは大量のマナが漏れ出た。青マナ、白マナ、黒マナ、赤マナ、緑マナ。さまざまな色のマナがあふれ出てきて空気中に消えていった。

 

 ニッサは二度三度と剣を振り回し、やがて面晶体が両断され、上方が崩れ落ちた。

 

「うおっ」

 

 岩は激しい音を立てて地面に激突して、いくつかに砕けた。

 

「案外脆いんだな」

「マナを介して結合されてたのよ、きっと。さて中はどんな感じかしら」

 

 ニッサはもくもくとマナが溢れ出てくる面晶体の一部に近づいた。中はところどころ空洞になっていて、流れを失ったマナがポツポツと空気中に拡散していた。

 構造を一目見ただけでは仕組みはわからない。やはり持ち帰って詳しく調べてみる必要があった。

 ニッサは面晶体のかけらをいくつかサンプルとして持ち帰ることにした。

 

「にしても、なんかやけに熱くなってきたな。さっきよりもずっとだ」

「たしかになんか異常な熱さだぜ」

 

 エルフたちは面晶体を壊してまもなく異常に気付き始めた。

 

「おい、ニッサ。なんかすげえ熱さだ。どうなってんだ?」

「言われてみればそうね。赤マナが熱を出しているのかも」

 

 ニッサはそのように考えたが、そんな程度のことではなかった。

 面晶体が1つ打ち砕かれたことで、ここに封印されていた強大な力の一部が暴走を始めていた。

 

 それは空間をゆがませ、膨大な熱を放っていた。

 

「な、なんだ、あそこ、まるでぐにゃぐにゃと曲がって」

「う……」

 

 エルフたちは上空を見上げて、空間がねじ曲がった場所に目を留めた。

 何か腕のようなものが空間をこじ開けようとしているように見えた。

 何度も空間を打ち、その歪みが徐々に大きくなっていった。

 

 やがて、空間が打ち砕かれる。

 

「うわっ」

「ひっ!」

 

 空間が打ち砕かれると、その後は一瞬だった。

 束縛から解放された大いなる力がバーラゲドの台地に君臨した。

 

「……」

「……」

 

 エルフたちは言葉を失った。

 ニッサもまた現れた強大な力を前に、声を失った。

 その力は恐ろしいほどの威迫の念を解放した。

 

 体が恐怖で震えた。ニッサの足は体を支えることができなくなって転倒した。

 

「う、うわああああああ!」

 

 エルフの悲鳴の後、面晶体の一帯に大きな火柱が上がった。

 

 大いなる力、コジレックはついにその封印を解き放ち、ゼンディカーの破壊という使命を果たすために、ゆうゆうと進軍を始めた。

 

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