マジック・ザ・ギャザリング ライトノベルVER   作:やまもとやま

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23、決戦

 コジレックはバーラゲドの近くの水面からその姿を現した。

 キオーラのコジレックをバーラゲドに誘導する任務が功を奏したようであった。

 

 バーラゲド周辺にはたくさんのエメリアの天使が舞っており、今回のコジレック封印の任務のために、エメリアは総力をつぎ込んでいた。

 

 エメリアの天使は統率されていて、コジレックの姿を捉えると、すぐにエメリアの頂点であるイオナに報告された。

 

 コジレック出現の情報を受けたイオナはうなずいて答えた。

 

「キオーラがうまくやってくれたようだな。あとは我々の仕事だ」

「我々にコジレックを止めることはできるでしょうか?」

 

 リンヴァーラが尋ねた。

 

「止めなければならない。それが我々の存在意義だ」

 

 イオナはそう答えた。その答えはエメリアの唯一の意思そのものだった。

 しかし、リンヴァーラが率いている天使軍団は、エメリアの意思に反するところがあった。

 

「憂鬱です。エメリアに帰ってゆったりと日向ぼっこがしたいですよ」

 

 リンヴァーラが率いている天使の中には、エメリアの天使らしからぬことを言う者が少なくなかった。

 それには理由がある。

 もともと、エメリアの意思は1つしかなく、その意思に反する存在やエメリアの天使としてふさわしい能力を持たない者はそのまま消滅されることになっていた。

 しかし、リンヴァーラはそうしたアウトサイダーな天使もすべて救済したいと申し出た。そのため、リンヴァーラの部下はエメリアの天使にふさわしくない者ばかりになった。

 

 リンヴァーラのような慈悲深い意思そのものがイレギュラーであり、その結果、エメリアの意思は複雑化した。

 厳格なルールに基づいたエメリアの支配は変化の方向に向かっていた。

 

 それはある意味で、エメリアの天使としての劣化とも言えるし、革新とも言えた。

 

 ◇◇◇

 

 コジレックを面晶体に封じ込めるためには、面晶体のもとにコジレックを連れて行くしかない。

 だが、叡智を持つコジレックを単純に面晶体へ誘導することはできない。

 誘導するには、その肉体を叩きつけて、力によって運ぶしかない。

 

 海底にて、ロートスを叩き潰す力を持つコジレックを果たしてねじ伏せることのできる存在があるのか?

 

 今回、エメリアと共闘したドラーナは言った。

 

「イオナならやってくれるだろう。わらわたちは見守っているだけで良かろう」

 

 ドラーナはカラストリアの一族をまとめて一応バーラゲドに赴むいていたが、基本的に見ているだけだった。

 エメリアの天使の力だけではどうにもならなかった時だけ、加勢するという方針だった。

 ドラーナはイオナの力を知っていたから、自分たちの役目はないと考えていた。

 

「ドラーナ様、もしイオナたちが敗北した場合、我々の力でエルドラージを対処できるでしょうか?」

「できるなら、面晶体など必要あるまい。そのときは最悪イニストラードに脱出も検討せねばならん」

「その場合、マルコフ一家は足元を見てくるでしょうね」

「そのときはお前たちの家にエルドラージを送り込んでやると脅せばいい」

 

 ドラーナはそう言ったが、これまで苦労して作り上げたドラズの都を手放したくはなかった。

 すべてはエメリアの力にかかっている。

 

 ◇◇◇

 

 バーラゲドまでコジレックを誘導したことで、キオーラの仕事も終わった。

 キオーラは必要以上の加勢はしなかった。

 仕事が終われば、コジレックの周辺からさっさと退場した。

 

 後の仕事はエメリアの天使に任せて、安全な海域へと逃れた。

 

「ふう、ここまで来れば安心でしょ」

 

 キオーラは安全な場所にたどり着くと、かなり疲れた様子を見せた。

 キオーラの助けによって何とか難を逃れたジェリーは負傷していたようで、そのまま沈むように岩場に落ちて行った。

 

 キオーラはジェリーの隣に着地した。

 

「バカね、あんた。泳げないマーフォークなんてただの魚よ、わかってんの」

 

 キオーラはそう言って揶揄したが、ジェリーは反論することなく息を整えた。

 

「さて、あとはイオナから報酬を受け取るだけね」

「キオーラさん……」

「なに?」

「1つ聞かせてください」

「端的な質問なら答えてあげてもいいわ」

 

 キオーラはタッサの三俣槍を前に向けた。

 

「私の聞いた話では、キオーラさんは自分の会社の利益のために故郷を犠牲にしたと聞きました。ロートスを自分の故郷に解き放ったと。ですが、キオーラさんは私のことを命がけで助けてくれました。巷で語られている噂は本当なのですか?」

「長すぎ。全然端的な質問じゃないわね」

「私には噂は間違っているような気がするのです。真実を知りたいのです」

「そんなの、どうでもいいじゃないの。昔の話だし。自分の信じたいほうを信じれば? 私は別にどっちでもいいし」

 

 キオーラはそう言うと、目の前を泳いでいた海蛇に三俣槍を撃ち込んだ。

 狩りは一撃で終わった。

 

「そんなことより夕飯の支度ね。特別にあんたにもごちそうしてあげるわ。私の海蛇料理」

 

 キオーラはそう言うと、泳ぎ始めた。

 ジェリーもキオーラを追いかけるように前に進んだ。おそらくは追いかけるその背中は故郷をロートスから守った英雄そのものだった。

 

 ◇◇◇

 

 面晶体の復元は順調に進んでいた。

 

「さすがはナヒリだ。テーロスのニンフたちにも復元できない面晶体の復元を完ぺきにやってのけるとは」

 

 復元を見ていたエメリアの天使はそう言ってナヒリを褒めた。

 ナヒリはゼンディカーナンバーワンの石鍛冶として知られている。

 広く仕事を請け負っていて、カラデシュでも、ドミナリアでも、テーロスでもその名は通っていた。

 

 多くの者が疑問に思うことがあった。

 ナヒリは世界中で評価される石鍛冶である。ならば、治安が悪く、住みにくいゼンディカーにとどまる意味はあるのか。資金力的にも才能的にももっと住みよい場所があるだろうという意味が込められた疑問だった。

 

 ナヒリは以下のように答えている。

 

「もし、望むように世界を創造することのできる力があれば、誰だって真っ先に自分の家族から創造するだろう」

 

 ナヒリにとって、ゼンディカーの大地は望む世界のありようそのものだった。

 高額な仕事として面晶体の復元を受け入れたが、この仕事にかける思いは、エメリアの天使にも負けないゼンディカー愛によるものだった。

 ナヒリの仕事を手伝った神秘家たちも口をそろえていた。

 

「ナヒリさんは誰よりもゼンディカーを愛しているんですよ。もし、ナヒリさんの友人、例えば私が殺されたとしましょう。そうすれば、ナヒリさんはきっと地獄の果てまで犯人を追いかけてくれますよ」

 

 ナヒリのゼンディカーとの絆は甚大で、その地を滅ぼそうとする者は地獄の果てまで追いかけて血祭に上げると語っていた。

 

「質問があります」

 

 面晶体の復元を見学していたチャンドラがナヒリとその仲間たちに質問した。

 

「面晶体って何ですか?」

 

 チャンドラは素朴な質問をぶつけた。

 

「ただの光る石だろ」

 

 ナヒリは真面目に答えるつもりもなく、仕事終わりのまま地面に腰かけた。

 

「光るだけ?」

「ああ、後のことはお前、答えてやれ」

「はい、お答えさせていただきます」

 

 ナヒリの指名を受けた神秘家がていねいに説明した。

 

「面晶体は精霊龍ウギンの魔力によって生み出された複雑な空間パラドックス体です。例えば、ある力積が生まれたとき、それが空間内で複雑に鏡面反射して、分散・拡散されてしまうわけです。どのような大きな力を加えても、空間内で無限に分散が繰り返されてしまうため、どんな大きな力でも半永久的に封印することができるわけですが、空間の外は見てのとおり、ただの石です。外部からの影響には弱いわけです。内側は無限大の宇宙のようですが、外側はただの石。ちょうど、この多元宇宙の縮図のようなものですね」

「うーん……光る石で納得することにするよ」

 

 難しい話になったので、チャンドラはあきらめた。ちょうど、カラデシュにいたころに飛行機械の講義を受けていたときの話を思い出した。そのときもチャンドラは途中から居眠りをしていた。

 

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