異聞帯モルガンと人理救済の旅   作:sorashido

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邪竜百年戦争オルレアン(終)

 

フランスを滅ぼす為に召喚された巨大な海魔との戦闘を私はマスターのすぐ隣で傍観していた。

竜の魔女との戦闘で負った傷を理由に戦うなとマスターに言われてしまったからだ。

これ以上無理をしないでほしいのだとか。この程度なら大した事はないのだが……

まあ手を出さずに見ていろと言うのなら高みの見物を決めるとしよう。

竜の魔女側のサーヴァント達は私達が竜の魔女と戦っている間に、全員倒れたようだ。

エリザベート達はあの巨大な生物を見てすぐにこちらに合流し、戦闘に参加した。

 

その戦闘はサーヴァント達が次々に宝具を解放し、

最後にアルトリアの宝具によって海魔を倒すという激しくも単純なものだった。

聖剣の出力がもう少し上ならばキャスター諸共、消滅させていたのだろうが

そこまでの出力はまだないのか、残骸の中にはキャスターの姿がある。

もっとも致命傷は受けていたらしく、ジャンヌと少し会話したかと思えばそのまま消滅した。

 

『聖杯の回収を完了した!これより、時代の修正が始まるぞ!

 レイシフト準備は整っている。すぐにでも帰還してくれ!』

 

その声を聞いてジャンヌ達がこちらに駆け寄ってくる。

 

「もう、行かれるのですか?」

 

「はい、私達にはまだまだやらなければならない事がありますから。」

 

「へぇ……そうなのね。まあ、アタシはカーミラに勝ったからよしとするわ!

 じゃあね、子ジカ!なかなか悪くない感じだったわよ?」

 

そう言ってエリザベートは真っ先に消えていった。

 

「……まあ、もうお別れだなんて。

 せっかく、貴女様の事を……だと思ったところですのに。

 でも安心して下さい。わたくし、些か執念深い性質なので。

 必ずまた会えるものと信じておりますわ。」

 

どこか不穏な気配を漂わせながら清姫も消えた。

 

「聖杯戦争としてはあまりに歪んだ形でしたが、竜殺しと共に戦えて光栄でした。

 この様子だと私達が再び召喚される日も遠くはないでしょう。」

 

「俺の方こそ、名高き聖ゲオルギウスと同じ陣営で戦えるとは。

 良いマスターにも巡り合えた、俺達はいつでも助力しよう。」

 

「やれやれ、ようやくお役御免か。なかなかいい指揮だったよ立香。

 実にやりがいのある仕事だった。これならマリーにも怒られずに済むってものさ。

 機会があれば、また僕の音楽を聞かせてあげるよ。」

 

ゲオルギウス、ジークフリート、アマデウスの3人もそう言って消えていった。

残ったのはジャンヌだけだ。そのジャンヌはフランス軍の騎士らしき男と

何か話しているようだが、大方裏切った聖女に掌を返しているところだろう。

都合のいい時だけ救世主扱いする言葉など聞くに堪えない。

さっさとカルデアへと帰還させてほしいと考えていると、マスター達の輪郭がぼやけ始めた。

 

「マスター……そろそろのようです。」

 

「マスター、それにマシュさん、アルトリアさん、モルガンさん。

 本当に、ありがとうございました。

 フランスを救う事ができたのは皆さんのおかげです。」

 

「いいえ、私達だけでは成し遂げられなかった。

 ここに居た全ての者達の力があったからこそ、この国を救う事が出来たのです。

 同じく国を背負った者として、望ましい結末でよかった。」

 

礼を言うジャンヌにアルトリアが言葉を返す。

マスターやマシュもそれぞれジャンヌへの感謝の意を伝えている。

最後にジャンヌは私の方にも顔を向けてきたが、私からこの女に言う事など何もない。

私が黙っていると少し残念そうな顔をした後、あちらから話し始めた。

 

「……あの時、あなたの宝具から感じた憎悪や絶望は私には計り知れないものでした。

 だけどそんなものを抱えていながらも、貴女は私達の為に戦ってくれた。

 やっぱり、貴女は……優しい人ですね?」

 

……私に対して心の底からそう信じているようだ。

私はこの感性が壊れた聖女にはもう何を言っても通じないだろうと諦めた。

 

「こうして皆さんに出会った事も共に戦った事も

 全てなかった事になってしまうのは、少し悲しいですが……

 皆さんとはまた何処かで出会えそうな予感がします。私の勘は結構当たるんですよ?」

 

既に私に対しての印象が間違っているのだが。どうせ言っても無駄だろう。

 

「――さようなら。そして、ありがとう。

 全てが虚空の彼方に消え去るとしても残るものが、きっと――」

 

聞こえたのはそこまでだ。ジャンヌの姿が見えなくなる。

レイシフトが実行されたのだろう。私達は浮遊感と共にカルデアへと帰還した――

 

 

「お帰り、みんな!お疲れ様!

 初のグランドオーダーは君たちのおかげで無事遂行された。

 ……うん、本当によくやってくれた。これ以上ない成果だよ。

 立香ちゃん、君はもう一人前の、僕らカルデアが誇る新しい魔術師だ!」

 

カルデアに戻った私達をアーキマンが出迎えた。

そこにダヴィンチもやってくる。

 

「お疲れ様。はい、これ最新の観測記録だ。見てごらんロマニ。」

 

「お……おおおおお!やった、十五世紀フランスの修正は完璧だ!

 まだ七つの内、たった一つだけだけど……ちゃんと人類史をあるべき姿に戻せたんだ!

 やったね、立香ちゃん!」

 

「うん……まだ全然、そんな大それた事をした感じはしないけど!」

 

「その内、きっとレフも姿を現すだろう。

 それまでに、こちらの陣営も強化しておかないと。」

 

「まあそんな細かい事はどうでもいいさ!今日のところはこれでミッション終了だ!

 暖かいベッドとシャワーが恋しいだろう?遠慮せず部屋に帰って休むといい。」

 

「本当?」

 

「はい、その提案は抗いがたい魅力に満ちています。失礼しますドクター。」

 

その言葉を聞いてマスターとマシュは休息の為に部屋へ戻っていった。

 

「モルガンとアルトリアもお疲れ様。

 初めての任務でいきなり一緒だったけど、これで姉妹の溝も埋まったりは――」

 

「その口を閉じなければ呪いますよ?」

 

「……してるわけないよね、うん!」

 

軽口で適当な事を言うアーキマンを睨みつけて黙らせる。

アルトリアは特に何も言わなかったが、奴も快く思っていないが故だろう。

 

「……では、私もこれで失礼します。」

 

アルトリアはそれだけ言うと私を一瞥してそのまま去っていった。

私もそのまま自分に割り当てられた部屋へと戻ろうとしたのだが……

 

「待った、君は竜の魔女との戦闘で結構な傷を負っていただろう?

 ちゃんとメディカルチェックを受けてもらわないと!」

 

「……必要ありません。この程度なら自分で治療できますから。」

 

「そういう訳にはいかないよ。君ももうカルデアの一員なんだ。

 何らかの呪いの影響があるかもしれないし、念の為に検査は受けてもらわないと。」

 

「……」

 

マスターもそうだったが、何故ここまで私の身の心配をしているのだ。

未だかつて自分の身をここまで心配された事があっただろうか。

……まあ今の状況では貴重な戦力を大事にすると言うのも分からなくはない。

しつこく言われ続けるのも面倒だ、ここは大人しく従っておくとしよう。

 

「……分かりました。」

 

検査を受けながら今回の特異点の事を考える。

たった一人の聖女の死によって心が壊れた男が望んだ血腥いフランス。

あの男の真の望みはジャンヌ・ダルクを生かす事だけだった。

……私も何かが違えばあのようになっていたのかもしれない。

憎悪によって国を滅ぼしてしまった汎人類史の私のように。

 

「よし、現時点で確認できる異常はないみたいだ。

 お疲れ様、とりあえず検査はこれでお終いだよ。」

 

アーキマンから検査結果を伝えられたが、問題はなかったようだ。

私が部屋を出ようとするとその前にスタッフの一人が報告に訪れた。

どうやら新たな英霊の召喚を行うらしい。フランスで縁を結んだ者でも召喚するのだろうか。

いずれにせよ、わざわざ召喚に応じる物好きな輩を一目見ておこうと、

興味本位で召喚サークルのある部屋へと赴いた。

そこではマスターとそのサーヴァントが契約を交わしていた……の、だが――

 

「問おう、貴様が私のマスターと言うやつか?」

 

………………私はそっとその場を離れる事にした。

 

 

 




ようやくオルレアン編終了です。ついでに黒い騎士王が召喚されました。
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