天の神「ぐへへ、堕ちちまえよ!オラ、オラ!!ここが弱いんだろ!!」
ピコハン「ひぎぃっ!?だ、ダメ!!私には唯斗くんがいるのに……ら、らめぇ!侵食しちゃらめぇぇぇ!!」
天の神「柄は正直だぜ〜?ひゃはっ、打突部が真っ赤じゃないかぁ♪お前が
戦斧「イエーイ、唯斗くん見てるぅ?わたしぃ、天の神くんに堕とされちゃったぁ〜♡」
という高度なNTRが行われていました。はい、勿論嘘ですけど。ピコハンと巨大鏡様の叡智だなんて、需要無さすぎて深夜テンションMAX定期。
ピコハンまでヒロイン(堕ち)になったら、そろそろ精神科を勧められちまうよ……
――時は少しだけ遡る。
五人の『勇者』が決意を言葉にして、昂る意思に導かれ東郷美森と郡唯斗を取り戻しに行った直後だ。
性に合わないなと自分に呆れて笑いながら、銀は無力に窓の外を眺める。嘗ては自分も、猛々しく声を上げて駆け出す
懐かしくて、誇りだった日々。辛くても、大切な仲間のために何度でも立ち上がれた。それが嬉しくて、やはり三ノ輪銀の誇りだったのだ。
でも、今は違う。
銀の端末は三好夏凜に受け継がれ、不滅の炎は新たな宿主の元で轟々と燃え盛る。
それを奪い、自分の力だと主張するのは『勇者』ではない。先輩として、先代として銀が出来るのは意志を託して背中を押すことだけだ。他でもない『勇者』の誇りがそうさせて、自身をも納得させた。
誰よりも『勇者』として仲間を護りたいと願い続ける少女も、今は過去の話だった。
「はぁ…」
自然と漏れる溜息。
自分だけは蚊帳の外、それが疎外感にも思えてしまう。昔はもっと純粋に物事を受け入れることが出来たのに、成長を重ねたら弄れた思考も身に付いてしまった。
中心に居たいとは思わない。ただ大切な人達の足を引っ張りたくないし、背中を支えて道を先導したい。物語の
「あ、あの…お時間よろしいですか?」
「ん?」
薄暗い勇者部の部室。半開きのドアから顔を覗かせる
続いて、胡散臭い笑みで銀の動向を窺うのは、瑞々しい薄緑の長髪の少女だ。外見年齢こそ同年代に見えるが、纏う雰囲気は母や祖母よりも大きく偉大に感じられる。
大赦の巫女の衣装と讃州中学の制服。
奇妙な二人の組み合わせは、自分が察しの良くないと自覚している銀には、やはり理解し難い。
(……あれ?…薄緑の髪の子、見たことある気が…?)
既視感に似た、銀には形容し難い感情を受けた。例えるならば、学校で何回かすれ違った少女の顔を思い出せないような、一週間前の昼ご飯が頭に浮かばないような――存在は確証しているのに、詳細は何も分からないのだ。
「…えっと、君達は…?」
「宗教勧誘さ〜♪」
「シューキョーカンユー?」
要領を得ない返事は銀を更に混乱させた。園子ならば即座に察したのだろうか。東郷ならば現状を推測できたのだろうか。唯斗ならば雰囲気で状況を把握出来たのだろうか。
改めて、自分の無力さに悲しくなるばかりだ。
「あ、あのっ…僭越ながら、簡単に説明してもよろしいでしょうか?」
「あ、あはは…むしろコッチからお願いします。難しいことは苦手なものでしてねぇ…」
「はい。…山田様の仰った『宗教勧誘』とは、神樹信仰から山田教に改宗……つまり、簡単に言いますと…えっと…」
「亜弥ちゃんはオカタイなー。勇者ちゃん、簡単なお話さ。頼りにならない神樹なんかよりも、山田くん率いる山田教徒になりなよ。誘い文句は…そうだね、『少女よ、力が欲しいか〜!』的な感じ?」
「っ!?ゆ、勇者について知ってる…っ!?君達、大赦からの……いや、でも改宗を勧めるってことは…ん?んん?……うんっ、解らない!」
溢れる疑問符。多大な情報は銀の頭を鈍く働かせ、それでも答えが出てこない現実は何処か虚しく響く。
少女から『山田様』と呼称される薄緑髪の少女は、銀を『勇者ちゃん』と呼んだ。それが勇者部員故に向けられた言葉なら問題ないが、違うだろう。
彼女達は銀の事情を知り、その上で声を掛けてきた。目的は口にした通り改宗なのだろうが、その意味も込められた感情も銀には知る由もない。
少なくとも大赦と無関係では無いが、大赦所属というわけではないのだろう。
「清々しいのは好印象だね。あっ、イカの姿フライ食べる?亜弥ちゃんにもどーぞ」
「あ、ありがとうございます」
少女は懐からイカの姿フライを一パック取り出し、慣れた手つきで開封して配り始める。その姿は某イカの姿フライ狂いを幻視するレベルだ。
「えっ、なんでイカの姿フライ?頭唯斗ってるの……って、初対面の人に失礼か」
「はいっ、頭ユイトくんってます!」
「喜ばれた!?おっかしいなー、阿呆とか馬鹿とか気狂い的な意味がこもった罵倒なのに」
「勇者ちゃんってば唯斗に遠慮ないなー。あっ、因みに山田くんは頭唯斗ってないよ?イカの姿フライを食べてるのも惰性だし」
退黄色の髪の少女――国土亜耶は『唯斗ってる』を好印象的に捉え、満面の笑みで返す。これには皮肉を込めての言葉を吐いてしまった銀も猛省していたが、そもそも銀とて『唯斗ってる』の意味を大して理解はしていない。
対して『山田くん』は割りと不名誉な意味が込められていたと察していた。
「さてさて、さーてのさーて。勇者ちゃん、話題を戻そう。時間が無い。猶予が無い。そして君には力も無い。何にもない君に、天啓さ」
「……さっき言ってた、『力が欲しいか』ってのは?えっと、山田さん?…が『勇者』とかについての知識があるのは、アタシだって理解したよ?だからハッキリと、再三頼んでる事だけど…端的に換言してくれるかな?」
「そのつもりだよ――三ノ輪銀、唯斗を助けたいよね?でも煮干ちゃんに端末を譲渡したから、君に打てる手は皆無な現状。嘆かわしい、虚しい、淋しい。そんな欲深い君に山田くんは
山田くんは大袈裟に両手を広げ、高らかに声を張る。まるで演劇の一幕だ。然し真に迫る挙動は明らかに演技の幅を超えている。
――『力を与える』
その言葉に銀は
刹那、山田くんの見開かれた瞳は銀の瞳の奥をギョロりと覗き見た。
背がゾッとする感覚に肌を泡立てながら、然し銀も彼女の眼を強く見詰める。目の前の彼女が単なる一般人に収まる者ではなく、魑魅魍魎の類にも思えて、其の発言が現実味を帯びているのを感じる。
「亜弥ちゃん、自己紹介して?」
「…はい。初めまして、先日より山田教の『
「山田くんは山田くんね。山田教で奉られる……奉らせている山田くんだよ?
「『
山田くんと亜弥は自身の正体を明かした。それはきっと、銀の『答え』を察しているのだろう。決して銀には無くて、親友達が持ち合わせている聡い感性。それが山田くんには備わっている。
「――三ノ輪銀。『
「……アタシはこれでも、信仰深い方なんですよ?良い事があれば神樹様に感謝するし、勝負事の前には祈りだって捧げる」
「それは素晴らしいことです。四国は神樹様の御恵みで成り立っています。だからこそ、わたし達は感謝を捧げる心が必要なんです」
「…亜弥ちゃん、それは勇者ちゃんの発言を遮って心を抉る鬼畜発言だよ?所謂背中撃ちってやつ。あーあ、山田くんの巫女は無意識鬼畜かぁ……あー、うん。勇者ちゃん、あんまり気にしないでね?」
「えっ、えぇっ!?すみません!わたし…何か余計なことを口走ったみたいで…」
「ううん、大丈夫。この気持ちは欺瞞じゃないし、アタシの信仰心は身内の無事とか安全があってこそ!だから決めた!!護る力が貰えるなら…アタシは山田教に入信するッス!!」
「うむ、ようこそ。………繋がったね」
――讃州中学二年生、三ノ輪銀は本日付けで山田教に改宗した。
頬を釣り上げた山田くんは手を差し出し、銀と握手を交わす。歓迎の挨拶だ。たった数人だけだった山田教徒に新たな仲間が加わった瞬間だった。
一つの節目だ。三ノ輪銀の生涯において、大きな意味を孕む選択肢でもあった。
ニコリと微笑む山田くんは、暗に何かを物語っていた。まるでその選択を喜んでいる様な、あるいは
「それで銀ちゃん。勿論力は与えるけどさ、何か
「願い…?」
「わたしも叶えて頂いてる最中なんですよ?山田様は本当に、寛大です…」
その願いに関して、亜弥の場合は郡唯斗を救うことだった。故に銀を山田教に迎えて唯一とも言える戦力を蓄えたのだ。
力を与えるのは銀を勧誘する『特典』であり、誘い文句の一種だ。戦闘員を求めていから、という事もある。
それとは別に、山田くんは銀の願いを叶えると言っているのだ。全員平等な神樹教では考えられない、本当の依怙贔屓。それもまた、上位存在に見初められ、認められ、見込められた故に。
まるで某龍球を集めるようで、雲を掴むような話だ。銀は数秒、目を瞑り『願い』を探す。世界平和、家族の平穏、欲しい服もあるし、憧れていた満漢全席も確かに浮かんだ。
それでも『一番』は決まっていた。彼女の誇りが大声で主張する。成れ、至れと。
「じゃあ、一つだけいいですか?」
「おん?なんだい、なんなんだい?」
「――アタシは『勇者』に成りたいです。これは憧憬とか、誇りとか。うんっ、やっぱりアタシは…先頭で頭を張れる『勇者』で在りたい!!」
勇者は三ノ輪銀の人生において、何よりも大きく影響を及ぼした。彼女はシステムが無くとも『勇者』だ。然し無い力を振るえなければ、至れない領域も存在する。
護りたいから戦う。失いたくないから吠える。いつだって三ノ輪銀はそうだった。
そして、これからもそう在りたいと願うのは彼女の我儘だ。
「………へぇ、ナルホドね。うん、うん。そうだね!パーティは四人編成で、先頭はいついかなる時も『勇者』って決まってる♪いいよ、いいよ!『賢者』の唯斗に、『
取られたものは取り返す。そんな
「うしっ!ありがとうございます!!」
「はい、これ端末ね。使い方は君の方が詳しいでしょ」
銀は新たな端末を受け取ると、脇目も振らず起動した。溢れる
何時ぶりか。前の勇者衣よりも白生地が少なく、逆に燃え滾る紅は範囲を増している。
以前よりも
「ちょっと待ってちょ」
「ぐえっ!?な、何するんですか!?」
「あ、ごめん」
弾かれる刹那、山田くんは銀の襟首を摘む様に引っ張った。力の出力方向を間違えた脚は窓外に向けられ、銀は一瞬だけ首吊り状態になりながら床に腰を打ち付けた。
「悪気があったわけではないよ。単なる親切心とか、ちょっとした好奇心とか。………まぁ、兎に角!銀ちゃんにとっては悪い話じゃないからさ!!」
「………つまり?」
「時短しようってこと。さ、亜弥ちゃん。お仕事だよ――
「はい!………っ!!」
亜弥は目を瞑り、両手を締めて願う。人智を超えた『奇跡』は、人智を超えた存在によって許された。故に
「お、おぉっ!」
淡い緑光は円状に集約する。築かれるのは光の
そこは広がる海に、白い樹木が硬質化した壁。四国を覆う神樹の結界、その数歩程度前だ。
「行ってらっしゃい、山田くんの愛しい
「頑張ってください!えっと、三ノ輪先輩…?」
「銀でいいよ、亜弥。いや、亜弥先輩って呼ぶべきかな?」
「あ、亜弥で大丈夫です!」
「……じゃあ亜弥、山田さん。いってきます!!」
銀が
「さーて、亜弥ちゃん。山田教の『勇者パーティ』にはもう一人必要だ。そうだねー、バランスを考えるなら…タンクかな?カッチカチの防御役だね」
「たんく…?」
首を傾げる亜弥を見て、山田くんは愛しげに微笑む。次は何をしようか、そうだあの子にしよう。そんなことを口遊み、やはり頬を釣り上げた。
――――――――――――――――――
「どっっっせいやぁぁあ!!」
紅いアネモネの花弁を纏い、陽炎に揺れる斬撃は三好夏凜を襲うバトルアックスにぶつかる。
きっと、繋がらなければ間に合わなかった。
銀は彼女達に感謝を想いながら、手に馴染む双斧を握り締める。決して戦場に焦がれていた訳ではない。然し友が駆けるのであれば、戦場にも地獄にも喜んで駆け出せる。
「『
謳え、勇姿を。飾れ、勇気を。笑え、雄弁を。
気高い『勇者』は舞い降りた。傍観者で在れない、我儘で欲深い少女は戦場に帰ってきた。故に護ろう。それが願いだから。それのだけために武器を握るのだから。
「迎えに来たぜ、相棒」
◆◆◆オマケ◆◆◆
『山田教』
・山田くん命名、神樹教に因んで付けられた所謂グループ名。改宗、宗教勧誘、等の宗教に関する言葉を多用するが宗教じみた真似はしていない模様。
敢えて言うのであれば、某元枝の
一応本編にも登場している、
其の目的は■回■の■■を、■良の■■に導■ことだ。■■目は唯斗が■在■■い■■、■■■は■年■に■亡した■■。其■次は――
敢えて書いておこう。
最初のNTR的な前書きについてです。アレは、当初から書いてたものではないのです…ッ。最初は日本の平和と、然し平穏とは言い難い我々人類の傲慢且つ不条理な心情について深く深く語っていたのですが(嘘)、いきなり文章全てが消失したんです。
いや、本当にマジで本文ごとまとめてネットの海に溶けて消えたんです。
だからNTRを書きました。
うーん、必然的☆
東郷のヤバさを知ったキミ!改めて問おうじゃないか。誰がヒロインだい?
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結城友奈(順調に好感度稼ぎ中)
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東郷美森(病み病みの実の能力者)
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犬吠埼風(順調に好感度落とし中)
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犬吠埼樹(まだ芽生えない恋心)
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にぼっしー(時間経過で結婚確定女)
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乃木園子(雌豚お嬢様)
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三ノ輪銀(一番まともな相棒ちゃん)
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あにっしー(めがーね)
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山田くん(選ぶな。決して選ぶな)
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やっぱりハーレムダルぅぅオゥ!!
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イカの姿フライ(メインヒロイン)
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その他(感想にくだちぃ)