□巨人の隠れ里
「【山竜王】!? なんでここに――!」
最初に
次いでその言葉に心当たりのあった他の巨人たちが彼の視線の先を追い、全くの未知だったエクスが遅れてそれに続く。
その直後に大激震が里を襲った。
まるで天地がひっくり返ったのではないかと錯覚するほどの大揺れ。
縦横に波打つ衝撃で大地が軋みを上げ、そこかしこで崩落の音が鳴り響いた。
そしてその原因となった襲撃者――【山竜王】とローグルが呼んだ者の姿を改めて認識する。
――それはさながら、一個の動く
巨躯を誇る巨人をして尚も巨大。
エクスにとっても過去最大級となる巨大生物。
その頭上に表示された【山竜王 ドラグマウンテン】の銘。
遠目には山を背負った巨大な陸亀のようにも見えるそれは――疑いようもなく<
「
「こんな東の果てまで歩いてくるはずが……、ッ! そうか、<
「お爺ちゃん説明!!」
騒然とする巨人たちを遮ってエクスが問う。
それに武器を手に取りながらベルーゲルが答えた。
「有名な<UBM>だ。長い休眠期と僅かな活動期を繰り返しながら、大昔から生きてきた
「なにその嬉しくない奇跡!?」
「知るか! ……しかもどうやらありゃあ、無理矢理起こされたせいで相当お冠らしい。真っ直ぐこっちまで来てるぞ!」
かの竜王こそはレジェンダリアの長い歴史の中でも度々目撃されてきた怪物であり――レジェンダリアの歴史とも根深い古豪である。
【山竜王】の銘の通り、休眠期には
それが<アクシデントサークル>の偶発的転移現象によって<番兵山脈>まで飛ばされてきたというのは、
そう……思わぬ怪物の襲来に慄く巨人たちだけでなく、【山竜王】にとってもこの状況は不本意極まることだった。
◇◇◇
■【山竜王 ドラグマウンテン】について
かの竜王は、元を辿れば純竜ですらない亜竜生まれの存在だった。
名を【
しかしそれによって生来の気質が失われたわけではない。
元来【亀甲亜竜】は穏やかな性質のモンスターである。
食性は果物を主とした雑食で、外敵に対しては頑健な甲羅を残し土中に埋もれてやり過ごすような、生態系の下位に位置する種族だった。
生涯の大半を眠って過ごし、僅かな活動期で得た栄養と、大地の自然魔力をゆっくりと蓄えて成長して脱皮を繰り返す。
その生態は<UBM>になっても変わらず、進化を重ねていつしか【竜王】の銘を冠するようになっても同じだった。
【山竜王】の場合、そのスケールがひたすらに
その身が大きくなるにつれ休眠期は長引き、自己の保全を獲物ではなく自然魔力に依存するようになっていった。
それはレジェンダリアの環境に適応した進化の形であったかも知れないし、わざわざ「他の生物を食う」というリスクを負って危険に身を晒すのを厭うただけかも知れない。
だが一つの誤算として、そのように自然の一部として溶け込むには、【山竜王】が生まれ持った資質はあまりに恵まれていた。
成長を重ねるにつれ、その身体は規格外に大きくなっていった。
自然魔力だけでは命を繋げないほどに大きく、どうしても他の命から
あるいは神話の領域にまで至ればその柵からも脱却し、永劫一つの
つまるところ活動期とはそのようなものである。
【山竜王】としてもやむなく目覚めざるを得ない飢えの発露であり、より長く眠り続けるために最低限必要な準備だった。
少し前から地表が騒がしいのは【山竜王】も認識していた。
それは<Infinite Dendrogram>サービス開始に伴う<マスター>の増加と、スタート地点にレジェンダリアを選ぶ者が多かったことによる喧騒だったが、しかし己には関係のないことと距離を置いていた。
むしろ禁足地と呼んで勝手に外敵を排除してくれるのだから、【山竜王】としてもありがたい限りだった。
見返りとして背にあるものを持っていかれたとしても、それは【山竜王】からすれば単なる排泄物と変わらず、何ら惜しくはない。
このように【山竜王】とレジェンダリアの民の関係は概ね良好であったと言える。
活動期に
数十年に一度の活動期にさえ目を瞑れば、討伐よりも
故に【山竜王】はこの数百年間、何の憂いもなく生きてこられた。
――だからこそ、この現状には激しい怒りが彼の胸中に渦巻いていた。
まさか<アクシデントサークル>によって自然魔力の乏しい<番兵山脈>にまで飛ばされるなどということは、長命の【山竜王】をして予想だにしないことだった。
例えるなら栄養豊富な土を必要とする植物が急に砂漠へ植え替えられたようなものだ。
自己の存続のために必要な自然魔力がまるで足りず、眠っていた大地から放逐され、遥か彼方の高地へ放り出される。
予期せぬ転移は【山竜王】にかつてない焦燥を覚えさせ、急の覚醒を促して普段の穏やかさを奪い去った。
予定に無い目覚めは未曾有の飢えを彼へ齎し、一刻でも早い妖精郷への帰還を訴える。
故に【山竜王】は久しく動かしていなかった重い身体を引き摺って、<番兵山脈>を
流れてくる自然魔力の名残を追うようにして、その途上にあるものには目もくれず――否。
たまさか見掛けた
なにやら小さな生き物がそれの周囲に幾つかいたが……【山竜王】からすればそれ以上意識に留める理由もない矮小な存在である。
果実は好きだが、肉も嫌いではない。特にあれらは小さな生き物にしてはなかなか
――こうして巨人種族にとっての破滅は、前触れもなく訪れたのだった。
◇◇◇
□巨人の隠れ里
「長……」
「ああ、あれは儂らを逃すつもりはねぇらしい。……はっ、まさか最後の最期にこんなことになるたぁな」
夜闇に紛れて全容ははっきりとしないが、【山竜王】の意識がはっきりとこちらへ向けられているのを巨人たちは把握していた。
長らく遭遇していなかった<UBM>という大敵、その中でも指折りの怪物が腹を空かせて自分たちを見ている。
ベルーゲルも恐ろしさのあまりに身が竦みそうになったが、しかし背後にエクスがいることを思い出して……努めて笑みを浮かべた。
「おめぇら、ビビってんじゃねぇ。死ぬなんざ、今に始まったことじゃあねぇ……」
ドン、と一喝。《瞬間装備》した大槌を地面に叩きつけて活を入れた。
全身を戦闘用装備に包みながら、一歩進み出て西進する【山竜王】の前に立つ。
「巨獣との戦いなんざ、中央にいた頃は日常茶飯事だったじゃねぇか! 儂らは……
――かつて巨人は、
それは世界の理が一新されるよりも以前、全ての命が等しく亡骸を遺していた時代。
彼らは武器を手に果敢に魔物と戦い、糧を得て。誰よりも食べ、どんな種族よりも巨大な戦士の一族であった。
当時巨人は、皆が皆
無論、今や誰も信じない与太話ではある。
当の巨人ですら本気で信じているものはおらず、弱小種族としての巨人しか知らぬ者しかいない。
しかしかつて寝物語に伝えられてきた神話は、彼らにとって数少ない誇りだった。魂だった。
父祖から連綿と受け継がれてきた誇りと魂は、たとえ過酷な現実に打ちのめされようと決して失われてはいない。
「しみったれた最期を迎える前に、父祖が強敵を遣わせてくれた! 大敵だ! 天敵だ! 戦士の冥利に尽きるってもんじゃねぇか!! さぁ武器を取れ戦士たち! かの竜王に、精々痛い目を見せてやれッッッ!!!」
今、巨人たちの背後にはエクスがいた。
若く、強く、
護ってやらねばならない――などというつもりはない。彼女は彼らより遥かに強い。
もしエクスという若者との出会いが無ければ、この事態も天命として
しかしこれから先、たった独りの【巨人】として生きていかねばならないだろう彼女に遺された最後の記憶が、先達の情けない姿になってしまうのは到底我慢ならなかった。
これが最期の別れになるからこそ、強い巨人の姿を見せてやらねばならない。
たとえその結果が逃れられぬ死だとしても、なけなしの意地を張るなら今、此処でしかありえない。
その使命感がベルーゲルを突き動かしたのだ。
「――進め! 戦え!! 戦場で倒れるなら、それが我ら巨人の本望よ!!!」
そう号令を発して、ベルーゲルは突撃した。
次いで里の男たちが雄叫びを上げて続き、まっしぐらに【山竜王】の下まで駆けていく。
あとに残されたのは、唯一の女手であるフェーニャと、事態の推移に追いつけず出足が遅れたエクスだけ。
「……父祖よ、どうか御照覧あれ。今や貴方の赤子ほどに小さくなった我らですが、その魂は地の如く雄大でありますよう」
――願わくば喜びの野に坐す御許にて戦士たちの魂を迎え入れ、更なる武錬にて彼らを鍛えたもう。
戦士たちの出陣を見送って、そう祈りを捧げたフェーニャは、エクスに振り返って困ったように微笑んだ。
「馬鹿よね、男共って。あんだけうじうじしてたくせに、意地を張って調子付いちゃって」
「お婆ちゃん……」
「私は行けない。女が水を差したら戦士の名折れだもの。女の役目は男たちの帰りを待つこと」
フェーニャは【宝樹】の前に腰を下ろし、戦士たちの駆けていった一点を見つめた。
彼女はここで彼らと去就を同じくする覚悟だった。
きっと、万に一つも彼らの勝ち目は無いにしても、それを信じて待つのが巨人種族の女の流儀。
「けれど」、とフェーニャは続ける。
「エクス。あなたは好きになさい。あなただけは特別。私たちと違って
エクスは手中の実を見つめた。
ベル―ゲルに手渡された巨人の魂と、フェーニャと、征ってしまった戦士たちとを見比べ……やがて決心して頷いた。
「いってきます」
フェーニャは黙したまま、笑みを深めて頷いた。
エクスは実を一息に頬張り、噛み砕いて嚥下する。
巨人の魂を我が身に取り込んで、エクスは巨人たちとの邂逅以来はじめての
「――《オーヴァー・グロウ》」
◇◇◇
□<番兵山脈>
【山竜王】は遠くから小さな生き物がわらわらと群れをなして向かってくる様をのんびりと眺めていた。
彼我の距離は数キロメテルはあるが、【山竜王】のスケールからすれば数歩も歩けば届く距離である。
彼にとっては決して遠いとは言えない距離を、
なんとも矮小で苦労の絶えないことだと、足元を這う蟻を眺める気持ちで【山竜王】はしばし歩みを止めた。
わざわざ向こうから近づいてきてくれるのなら己が労を取るまでもない。【山竜王】にとってもまた<番兵山脈>の起伏は己の身体を動かすには少々窮屈で、踏み歩くには面倒が勝った。
なのでここで一時身体を休め、近付いてきた前菜を平らげてから本命の果実を貪り、その後に何処か安心できる住処を探そう――そう考えた。
「野郎オレたちをただの餌としか見てねぇな……! いい度胸だ、目に物見せてやれェ!!」
「応ッ!!」
巨人たちは【山竜王】が向けた視線の意を察して、そう吼えながら接敵した。
そうして近付いてみてわかるその偉容。巨躯を誇る我ら巨人がまるで小虫の如く、眼前に聳える命は大きい。
彼らの中で最も大きなベルーゲルでさえ四つ脚の先ほどもなく、秘められた重量は比較にならないほど隔絶しているのがわかる。
何よりもそのステータスの格差は、最早比べることすら烏滸がましいほどの大差。
それを《看破》で見抜いたローグルの報告に、「だろうな」とベルーゲルは当然のように受け止めながら、己の背を追う配下たちに告げる。
「眼だ、眼を狙えぃッ!! 奴の身体に飛びつくんだ!!」
「無茶ぁ言うぜ長ァ!!」
ベルーゲルは両脚に力を溜めて、勢い良く【山竜王】に向けて跳んだ。
断崖のような脚にしがみつき、持てる力の全てを振り絞ってよじ登らんとする。
続いてしがみつこうとした巨人たちだが、身じろぎした【山竜王】の脚に払われそれだけで大ダメージを負った。
あまりに隔絶した質量とステータスの差が、体当たりですらない小突きで巨人を瀕死に追い込んだのだ。
「闇雲に跳ぶんじゃねぇ! タイミングを合わせろォ!!」
「デカすぎてまるで様子が掴めねぇ! まさかオレたちがこんな泣き言を言うハメになるなんてなぁ!!」
一撃を食らった巨人は【全身骨折】の重傷を負い、踏み潰された小虫のように痙攣していた。
かろうじてHPは残っているものの、回復手段を持たない彼らでは復帰は不可能。
なにより弱った餌を目敏く見つけた【山竜王】の首が亀のようにゆるりと伸びて、無数の棘が生え並ぶ剣呑な喉奥を覗かせながら彼を一呑みに呑み込んだ。
「構うなァ!! どうせ一撃食らったら助からん!! 脱落者に気が向いているうちに少しでもよじ登れェッ!!」
「ああ畜生! なんだってコイツはこんなにデケェんだ!? そりゃあ妖精共もオレたちが邪魔になるはずだぜ!!」
断末魔すら喉袋に遮られて届かず、次なる餌を求めて身じろぐ脚を避けながら、僅かに飛び付いた巨人たちが弱所であろう眼を目指して登攀していく。
あまりの実力差にステータスの全容など視えてはいないが、身震いする全身が本能としてその高さを教えてくる。
STRもENDも数万では収まらないだろう。ひょっとすると桁が一つ違っていてもおかしくはない。
彼らが知り得る限り【山竜王】の強みは<UBM>の中でも一際突出した物理ステータスのはず。
だからこそ生物の構造上脆弱にならざるを得ない眼球に渾身を叩き込まんと、竜王の山にしがみついた巨人たちは必死によじ登っていった。
【山竜王】の足元では、取り残された巨人たちが【山竜王】が一歩踏み出す毎に巻き起こる地震に足を取られ、そのたびに伸びてきた口に囚われ断末魔を上げる間も無く呑み込まれていた。
彼らは皆
少しでも長く【山竜王】の気を引いて、その隙に仲間たちが一人でも多く敵の目元まで辿り着けるように。
大声を発して逃げながら、戦意と恐怖に麻痺した思考で、精一杯の牙を剥いて山間を駆けていた。
しかしそれも大した時間稼ぎにはならない。
元より【山竜王】が一歩を踏み出すだけで姿勢を崩す脆弱さだ。
十分足らずで足元の巨人たちは軒並み踏み潰され、喰われ、残るは背負った山にしがみつく餌ばかり。
しかし絶妙に首の届かぬ位置を這い回るものだから【山竜王】は焦れて、ほんの少しだけ身体を浮かせて――そのまま大地を踏んだ。
「うおおおォォォ――!?」
「長ァ! イージがッ!!」
「構うなと言ったァ!! イィイイイジ、精々誘き寄せてやれェッ!!」
「応よォ!! 喜びの野で会おう!!」
山脈の一部が踏み均され、その衝撃で一人の巨人が竜王の山から振り落とされた。
最早再び山に取り付くことは叶わぬ。ならば最後まで奴の足元を這い回り、意識の一片でも縫い止めてやろうと痛む全身を押して駆け出し……間もなく伸びてきた口に呑み込まれる。
足元の餌がいなくなれば二度、三度と【山竜王】は
やがてベルーゲルが【山竜王】の頭上まで辿り着いた時――生き残った巨人は彼ただ一人だった。
「あァ先に行って待ってろ、野郎共。オレもすぐ逝くさ……、だがそれはッ」
残った一匹を平らげんとして【山竜王】が首を振る。
それをベルーゲルは鱗の隙間に噛ませた斧槍にしがみついて耐え、その動きが鈍ったところを見計らって渾身の一撃を用意した。
「――このクソ亀に一矢報いてからだァッ!! ありったけ持っていきやがれぇ!!」
【
五〇〇万を超えるHPのほとんどを装備スキルによって攻撃力に変換し、【山竜王】の巨大な眼球へ向けて振り下ろした。
変換効率は捧げたHPの一〇%。それがベルーゲルが持つ斧槍に付与されたスキルの限界だった。
しかし捧げたHP量が膨大なために実に五〇万超もの超火力を発揮した一撃が、【山竜王】の全体積の一%にも満たない眼球一つに叩き込まれんとして――
「…………カッ、は、はははは……はっ……!」
――たった一枚の目蓋に、それを防がれた。
「化け、物……め……」
ベルーゲルが命を賭けて放った、人生最大の一撃。
それが、ゴミを避けるようにして閉じられた目蓋一枚に防がれる。
あまりに隔絶したスケールによる――覆しようのない敗北だった。
『GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAEEEEEEEERRRRRRR――!!?』
しかしそれは、【山竜王】にとっても決して無傷の結果ではない。
むしろ逆。彼にとってはこれまでの半生で負った傷の中で、最大級の
如何に超越したステータスを誇り、頑健極まる【山竜王】と言えど……生き物として脆弱にならざるを得ない眼球を狙われては決して無傷ではいられない。
咄嗟に目蓋を閉じ、【竜王】として備えた《竜王気》による防護を取らねばこの片眼を失ってしまっていただろう。持てる《竜王気》の大半を目蓋に集中させてようやく免れたダメージだった。
そして犠牲となった目蓋の残骸から血を涙のように流しながら、怒りに目の色を変えて頭上に残ったベルーゲルを睨め上げる。
【山竜王】からすれば予想外の、餌からの反撃だった。
単なる餌としか見ていなかっただけに、この痛みが一層怒りを煽る。
認識を小虫から
「おォオオオオオオまァアアアアアアえぇえええええええエエエエエエエエッッッッ!!!!!!」
――怒りの咆哮を上げながら駆け下りてきた
『GWWWWOOOOOOOOOOOOOOO――!?』
思わぬ乱入に【山竜王】が目を丸くし、瞬時思考を凍結させる。
ダメージは無かったが、予期せぬ衝撃に思考が大いに乱された。
そして数秒の後にそれが何者の仕業であるかを求めて首を動かすと、己の背後にそれが蹲っているのを見つけた。
「お爺ちゃん! お爺ちゃんッッッ!!」
「ふんっ……、情けねェザマァ、見せたなァ……」
乱入者――エクスは、振り抜き様に掠め取ったベルーゲルに声をかけた。
己の
そしてベルーゲルは、己を
「あぁ、デケェ……オレたちはかつて、こんなにも大きかったのか……」
それは今際の際に己を拾い上げたエクスに重ねた、神話に生きた父祖の姿への憧憬だった。
【巨人王】として衰退の一途を辿る同胞を導いてきた自分が、これの前ではちっぽけな命であることへの、畏怖と崇敬。
それを最期に拝めたことへの誉れに打ち震えながら、独り残される最後の同胞への遺言を紡ぐ。
「聞け、エクス……儂からおまえに遺してやれる、最後の贈り物だ……」
間もなく尽き果てる己のHPを認めながら、残された命の限りを燃やして声を発する。
「
「なる、なるよ! だからっ」
「――生きろ、えくす……そして強くあれ……それだけが、我らの、ねが……い……、ッ――」
「お爺ちゃ……」
その言葉を最後に、【巨人王】ベルーゲルは息を引き取った。
エクスが重ねた掌の上で、小さな小さな生き物のように。
【条件解放により、【巨人王】への転職クエストが解放され――】
「うるさいッッッッ!!!!!!!!」
余韻を引き裂くように響いたアナウンスを遮ってエクスが慟哭する。
手中のベルーゲルを握り潰してしまわぬよう、そっと地面に亡骸を横たえてから……涙に腫らした目で背後の【山竜王】へ向き直る。
「よくも……」
怒りに燃えていたはずの【山竜王】は、そこで始めて
「よくも……!!」
己に迫る大きな生き物が、
「よくもみんなを……殺したなぁああああああアアアアアアアアアアア――――!!!」
もう数百年も味わっていない、己に伍し得る
『G……GRRRRRRRRRRRRUUUUUUUUWWWWWWWWWWWOOOOOOOOOOO!!!!!』
「嗚呼ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――!!!!!」
「必ずやここで仕留めなければならない」――そう訴える生存本能のままに【山竜王】は吼えた。
対するエクスも凶相のままに吼え、全力を以て駆け出す。
駆り立てる狂奔のままに両者は激突し、そして――。
◇◇◇
数刻後、夜が明けて。
誰もが姿を消した<番兵山脈>の、その一部が。
To be continued