亡国のガリバー   作:ふーじん

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 □エクスガリバーについて

 

 エクスガリバー――本名「大山リリ」と<Infinite Dendrogram>の出会いはありふれたものだった。

 先に購入した友人がやたらと入れ込み、神ゲーと称してリリへ熱心に推したのがきっかけだ。

 取り立てて珍しい話ではない。この友人は過去に何度も同じような経緯でゲームを勧めてきたし、それに乗じて飽きるまで一緒に遊ぶのがいつもの流れだったから。

 

 リリにとって予想外だったのは、<Infinite Dendrogram>が既存のゲームとは何もかも隔絶していたことだろう。

 完全五感再現は言うに及ばず、無限とも言えるキャラメイク要素。そして<エンブリオ>というプレイヤー一人ひとりに与えられる唯一無二(オンリーワン)

 しかしこの中で一際リリの興味を引いたのが、キャラメイク要素だった。

 

 リアルのリリにはひとつ大きな不満があった。

 それは自分の背丈の小ささだ。

 同年代と比べても遥かに劣る小柄が、リリにとって大きなコンプレックスだった。

 周囲は小さなリリを可愛い可愛いと持て囃すけれど、それが嬉しいかと言えばリリは(No)だった。

 だからだろうか、小さい自分へのコンプレックスの裏返しとして、友人とゲームを遊ぶときはいつも大柄なキャラクターを使ってきた。

 キャラメイクが出来るゲームなら尚更、性別も無視して目一杯大きなアバターを設定して遊んできた。

 おかげでリリが遊んできたゲームのアバターの大半は、むくつけき大男の類が多い。

 

 一方で足を踏み入れた<Infinite Dendrogram>では、正真正銘自分の体を自由に設定できるという。

 それによってステータス的な優劣は発生しないが、納得が行くまで思う存分デザインするといい――チェシャと名乗った猫はそう説明した。

 そこでリリは設定が許す限り身体を大きく作ろうとして……チェシャに宥められた。

 <Infinite Dendrogram>のキャラメイクはそれこそ人型以外の形さえメイク可能な自由度があるが、だからといってそれが実用的であるかは別だ。

 一〇メートルを超える巨躯に設定しようとしたリリをチェシャは考えなしの愚行と捉えたのか、よく考えて設定するよう辛抱強く諭した。

 なぜならこのゲームのキャラメイクはやり直しが利かない。

 一度確定させたが最後、別アカウントを設定させることすらできない仕様上、否応無しにずっと付き合うことになる。

 ここまで極端に大きいと、装備を始めとした多方面で苦労をするハメになる――そう説得されて、勢い任せで作った巨大なアバターを見上げたリリは、なるほど確かに一理あると考えて作り直した。

 

 結果出来上がったのが身長約三メートルの女性アバター。

 現実のギネス記録を大きく超え、かつ実用できなくもないギリギリの範囲。

 最初のアバターと比べれば大きく見劣りはするが、それでも現実のリリの倍以上もある大柄だ。

 そこへ現実には全く無い女性らしさ――胸とか頭身とか――を付け加え、美しい女巨人の戦士に仕上げてリリは納得した。

 

 そして名前だが……完全五感再現にとてもゲームとは思えないリアルそのものの描画。

 まるで異世界そのもののようなゲームに、この大きなアバターで降り立つことから着想を得て、「ガリバー」の名がまず浮かんだ。

 世界的な名著『ガリバー旅行記』に登場する主人公の名だ。現代では作中での活躍から()()()()()の例えにも用いられる。

 しかしそれだけでは捻りがない。もう少しアクセントは加えられないかと考えて、()()()()という意味のラテン語の接頭辞「extra」を思いつき、組み合わせてエクスガリバー――「ガリバーを超える者」というネーミングに至った。

 おまけで世界的にも有名な聖剣「エクスカリバー」にもかけていて、会心の出来だとリリはドヤ顔を晒した。

 

 そんなリリ――エクスガリバーことエクスのネーミングセンスはさておき。

 最後に<エンブリオ>の移植を受けたエクスは、当時最もプレイヤー人口が多かった妖精郷レジェンダリアをスタート地点に選び、遂に<Infinite Dendrogram>の世界に降り立ったのだった。

 

 ◇

 

 さて、そうしてゲームを始めたエクスだったが、彼女は早々に出鼻を挫かれることになる。

 他の誰よりも大きなアバターで優越感に浸りながら遊ぶつもりだったエクスだが、彼女が降り立った霊都アムニールには、彼女よりも大きな亜人種族がごろごろといたのだ。

 「聞いてた話と違う!!!」と早々に嫉妬の雄叫びを上げたエクスに周囲は困惑を浮かべ、やがて「ああ、()()変人が増えたのか」と慣れた様子ですぐに日常へ戻った。

 嫉妬と悔しさに地団駄を踏むエクスの奇行も、既に先駆者によって「HENTAIの国」と堂々たる評判を得ていたレジェンダリアでは珍しいものではない。

 ともあれエクスの目論見は早々に頓挫し、若干モチベーションが下がってしまったものの友人に勧められた手前すぐにやめるのもバツが悪く、しばらくはこのゲームを遊ぶことにしたのだった。

 

 そんなエクスだったが、そういう経緯があったからなのか、小一時間ほどして生まれた<エンブリオ>の能力は彼女にとって大変満足がいくもので、さっきまでの不満はどこへやら、すっかり浮かれ気分でゲームを楽しんでいた。

 初期資金の五〇〇〇リルで霊都を観光し、そろそろMMOらしいことでもしようとジョブを求めてクリスタルに寄ったとき……第一の転機と巡り合う。

 

 無数の下級職が並ぶウィンドウの中でエクスの目を釘付けにした【巨人(ジャイアント)】なるジョブ。

 説明を求めて職員に尋ねれば、彼は多分に嘲笑を含ませて「ああ、そう言えばありましたね、そんなジョブ」と宣った。

 曰く、かつてレジェンダリアに存在した巨人種族が就いていたジョブだという。

 しかしその巨人種族はとっくの昔に姿を消し、今や忘れ去られた種族であるらしい。

 その理由も、弱すぎるから生存圏を追われたという、なんとも救いの無い話であった。

 

 エクスはショックだった。

 彼女にとって大きいことは正義だ。ゆえに、神話に語り継がれる巨人の類は最大限のリスペクト対象だった。

 その巨人が、かつてこのゲームには存在し、弱小種族として侮られ、今尚嘲笑の対象となっている事実が、エクスにとっては受け入れ難いショックだったのだ。

 

 職員に悪気は無かったのだろうが、エクスは一転して意固地になった。

 「えっ、ほんとにそのジョブに就くんですか!?」と信じられないものを見た顔をする職員を無視して、殆ど意地で【巨人】に就いた。

 ティアンからすれば巨人種族以外には殆ど適正が無いために就職困難なジョブであっても、万能の適正を持つ<マスター>ならば可能である。

 そして適正の有無のみを就職条件とする巨人系統は、エクスを問題なく受け入れた。

 

 そうして生まれた【巨人】エクスガリバーだったが、第二の転機がここで訪れた。

 彼女の<エンブリオ>と【巨人】というジョブが、これ以上無くシナジーしていたのだ。

 偶然の産物ではあるが、そうなると調子付いたのがエクスである。これを運命だと大はしゃぎして、意気揚々とゲームプレイに乗り出した。

 

 ◇

 

 が、ここでもまたもや頓挫する。

 エクスの就いた【巨人】のジョブ、そして<エンブリオ>の効果がパーティープレイには不向きだったのだ。

 やってやれないことはないが明らかに貢献度が低く、エクスを入れるよりは他の<マスター>を加入させたほうが断然効率が良いことが早々に露見した。

 自由(野良)パーティーというものは何より効率が重視される。顔見知りでもない者同士が手を組み合う判断基準は性能である。

 その判断基準においてエクスは失格であり、ソロプレイを余儀なくされた。

 

 エクス自身カジュアル勢とはいえゲーマーであるからその理屈はわかる。

 しかし感情は別である。そしてエクスは、身体の小ささに反して負けん気だけは一丁前だった。

 ソロを強いられるのなら、それで強くなってやる――一方的なリスペクトを【巨人】に向けながらエクスは奮起した。

 エクスのゲーマー感覚が【巨人】と<エンブリオ>のシナジーは最高であると太鼓判を押している。

 ならばそれを活かした上で、よりシナジーを発揮する組み合わせを模索すればいい。

 ゲームの内外を問わずに情報を集めた結果、その答えはあった。

 奇しくもそれは先駆者によって検証済みであり――少々の欠点はあるものの、エクスにとっては最強のビルドだった。

 

 ◇

 

 そうしてゲーム内で一年が経過した頃、エクスはレベル五〇〇(カンスト)プレイヤーの仲間入りをしていた。

 メインジョブは巨人系統上級職の【大巨人(グレイト・ジャイアント)】となり、サブジョブも最大限のシナジーを活かして組み込んである。

 <エンブリオ>も第六形態に到達し、誰もが認める実力者の一人となっていた。

 

 しかしエンドコンテンツとされる超級職への道は開かれていなかった。

 巨人系統に就いた<マスター>は、エクスの知る限り自分以外には見たことがない。

 もしや就職条件を満たせていないのかとも考えたが、【大巨人】として単独で多くのボスモンスターを()()()()()きたエクスだ、余程捻くれた条件でもない限りはその可能性も薄い。

 

 そこで訪れた第三の転機。エクスはふとした気付きを得た。

 条件未達成の可能性が薄いのならば、ひょっとすると既に超級職へ就いている何者かが存在しているのではないか、と。

 そして適正の有無のみを必要とする巨人系統の頂きに座するのは――巨人種族に他ならない。

 

 それに気付いたとき、エクスは天啓を得た。

 既に滅んだと言われている巨人種族、その実在の可能性――いいや確信に、エクスは胸躍った。

 己の知る限り現状唯一の【大巨人】たるエクスにしか得られない気付きに、彼女は一大決心した。

 

 ――滅んだはずの巨人に逢いにいこう。

 それはエクスにとって最大の憧憬であり、リスペクトだった。

 何処に逃れたとも知れない巨人種族だが、必ずや生存しているという確信がエクスにはあった。

 だから、自分のような()()()()()()ではなく()()()()()に逢いに行こうと、エクスは硬く決意したのだ。

 

 そうして思い立ってからゲーム内時間で一年。

 エクスはレジェンダリアの国土を隈無く冒険し、巨人種族の住処を探し求めた。

 道中には様々な困難が存在した。知らず踏み込んだ禁足地で部族の襲撃を受けたり、何かと目立つことからPKの面白半分の襲撃にあったり。

 巨人を探してるといえば漏れなく嘲笑され、心無い中傷を受けることも無数にあった。

 しかしエクスには絶対の確信があったから決して折れず、遮二無二妖精郷を駆け巡った。

 

 ――そして迎えた第四の転機。遂に大願を達成する。

 妖精郷巡礼の果てに辿り着いたのは、ほとんど妖精郷とも呼べないような僻地の中の僻地だった。

 営みの大半を豊富な自然魔力に依存する妖精郷の部族では寄り付く由縁も無い、東の果て<番兵山脈>の極一部。

 怪鳥種か天竜種でもなければ越えることも難しい断崖の門番の先に、数えるほどに数を減らした巨人の集落はあった。

 

 そのときの感動を言い表す言葉をエクスは持たない。

 それほどの悲願だったのだ、エクスにとっては。

 そして彼女の推察した通り、"王"がそこにはいた。

 かつての逃避行の折、僅かな民を率いて東に逃れた()()()()が、彼らの長だった。

 

 そこから始まった一年は、エクスにとって幸せの絶頂だった。

 必要最低限の時間を除いてゲームに入り浸り、彼らの生活に紛れ込んだ。

 最初は訝しげな態度の巨人たちも、昼も夜も入り浸って雛鳥のように後を追いかけ回すエクスへ次第に絆され、やがて受け入れた。

 エクスしか知らない巨人たちの生の表情。それに囲まれて彼女はこれ以上無く幸福だったのだ。

 

 ◇◇◇

 

 □巨人の隠れ里・跡地

 

 ――そして第五の転機は、破滅として訪れた。

 

 ログイン制限が明けて<Infinite Dendrogram>に帰還したエクスは、真っ先に隠れ里を目指した。

 そして目にしたのは、【山竜王】によって踏み均された無惨な里の姿。

 かつての営みなど何処にも無い……凄惨なまでのクレーターだった。

 

「…………」

 

 痛切なまでの虚無がエクスの双眸に宿る。

 視線の先には、かつて【宝樹】だったものらしき枝切れが力無く倒れていた。

 男たちの帰りを信じてその前に座っていたはずのフェーニャの姿も何処にもない。

 亡骸の一つすら遺る間もなく、【山竜王】の大口に呑み込まれたのだろう。

 巨人の魂たる果実も、巨大な【宝樹】ごと……。

 

「…………」

 

 幸いにしてジョブクリスタルだけは無事だった。

 土中に半ば埋もれたまま、その輝きを曇らせることなく。

 それだけが、彼らがここに存在した証明――そして、墓標であるかのように。

 

「…………」

 

 無言のままエクスはウィンドウを開き、そこに【巨人王】の銘があるのを認めた。

 そして暫し目を伏せる。胸中には無数の想いが駆け巡っていた。それは黙祷だった。

 やがてゆっくりと目を開き、決意に燃える眼差しを取り戻すと、表示された【巨人王】の銘に触れる。

 

【転職の試練に挑みますか?】

 

 そのアナウンスに、昏い決意を秘めたエクスは是を示し――

 

 ◇

 

 ――生まれたのは復讐に燃える【巨人王(キング・オブ・ジャイアント)】だった。

 

 ◇◇◇

 

 □レジェンダリア・東部領域

 

(まさかこんなことがあるなんてなぁ)

 

 レジェンダリアの東部、とある部族の領域にて。

 浮ついたように心中で感嘆を零す亜人種族の青年は、窓から覗く()()()()を仰いだ。

 

(話に聞いたことはあるけど、まさかウチに【山竜王】が根を下ろすなんてなぁ)

 

 それは数日前に突如現れ、彼らの縄張りで眠りだした【山竜王 ドラグマウンテン】だった。

 <番兵山脈>での戦いに勝利した後、自然魔力の豊富な土地を求めて徘徊し、ようやく見つけた安住の地で眠りに入った【山竜王】が背負う山だ。

 

 レジェンダリアの伝承に語られる超巨大な竜王の姿。

 それを目撃した部族の若者は腰を抜かして族長に報告し、それが自領に根付いたのを見た彼は、狂喜乱舞して【山竜王】の眠る一帯を禁足地に定め、思わぬ天与に祈りまで捧げていた。

 

(族長の話ではこの竜王の背からは貴重な資源が採れるらしい。ウチの部族もきっと儲かるって熱狂してたけど……やっぱり恐ろしいよなぁ)

 

 青年は禁足地の番を担う部族の戦士だった。

 部族でも数少ない上級職に就けた腕利きとして抜擢され、【山竜王】の寝所に程近い場所で警護を任ぜられている。

 青年にはそれがなんとも空恐ろしく、生きた心地がしないでいた。

 

(もし何かの気紛れでも起こして暴れだしたら、オレなんかじゃあとてもじゃないけど対処できないよなぁ。……仮に【山竜王】がおとなしいままだとして、そんだけ貴重なものなら、他の部族だって黙っちゃいないんじゃないかなぁ?)

 

 レジェンダリアに属する部族は、頂点に【妖精女王】を頂く立憲君主制の下、中央議会によって統治されているが、それは必ずしも統制されていることを意味しない。

 実態はむしろ逆。一応の名目のもとに連合してはいるが、各部族ごとに対立し、日夜暗闘が繰り広げられているのが現実だ。

 無論のこと青年が属する部族にも敵対する部族はいる。その理由は様々あるにしろ、今更友好を図るような間柄ではないことは確かだ。

 

 日頃からあれこれと理由を付けて対立しているのに、【山竜王】という超弩級の恵みをこちらが得たのを見て指を咥えたままということは考えられない。

 遠からず必ずや大規模な抗争が起こるだろうと予感しながら、その原因となる【山竜王】を青年は複雑な心境で見ていた。

 

(……オレはのんびりしたいんだけどなぁ。そりゃあ一族が富むのは嬉しいけど、そのために血を流すなんて割に合わないと思うし……きっと向こうも本気で来るだろうし、そうなると死人もいっぱい出るよなぁ。……そんなことを言ったら族長に大目玉を食らうし、最悪追放されかねないから、言えないけど)

 

 もし事が起こった場合、矢面に立つことになるのは自分だと考えると、青年は憂鬱な気持ちを抑えられなかった。

 本当に、その労力に見合うだけの成果が得られるのならばいいが……そう思って山を見上げるも、【山竜王】は何も答えてくれない。

 

 里では今、族長主導の下【山竜王】採掘の段取りが進められていた。

 村の男手を総動員させて山に縄をかけ、足場を組み、余すことなく恩恵に与ろうと算用を立てている。

 族長曰く【山竜王】から採れる素材は魔力の含有量に富み、貴重で強力なアイテムの数々を仕立てることができるのだという。

 もし採掘が開始されたなら優先して武具を拵えてやると族長は言っていたが、青年は然程嬉しくはなかった。

 

(まぁ、考えても仕方ないかぁ。せめて少しでも楽に……、ん?)

 

 ともあれ話が進んでしまっているものは仕方ない。

 部族の一員たるもの、族長の言葉は絶対である。

 そう後ろ向きな覚悟を決めて、表面上は真面目な顔で警護に当たっていた青年だが……ふと地面が揺れたのを察知した。

 

(おいおい、早速面倒事かぁ? 近くで暴れてるやつがいるのかなぁ、最近増えた<マスター>とやらは、縄張りとか無視することも多いって話だけど……)

 

 地響きは徐々に大きくなり、彼の詰めた関所でも砂埃が舞い上がっていた。

 よもや本当に見境なく暴れているのかと危惧して、やおら武器を構えて立ち上がり――

 

「…………は?」

 

 ――山に向かって進撃する、森の木々よりも大きな()()を見た。

 

「【山竜王】からどけ!!! 【山竜王】から退けェエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」

 

 目算にして()()()()()()以上もの巨人が、頻りに【山竜王】からの避難を訴えながら近付いてきている。

 距離はまだ数キロメテルも離れているが、巨体に見合った声量は容易く青年まで声を届かせ、その歩幅からすれば間もなく辿り着けるだけの距離でしかない。

 むしろ巨人は、【山竜王】からの避難を訴えることを意識してか頻りに叫び――それが巨人の()()()であることを青年は察した。

 

『GRRRRRRRRRRRROOOOWWWWWWW…………!!!』

 

 そして山にも変化が訪れる。

 眠りについたはずの【山竜王】が、巨人の呼び声に呼応して地鳴りのような咆哮を漏らす。

 地響きと土煙を巻き上げながら、埋もれていた大地から身を起こして――その鎌首を、間違いなく巨人に向けていた。

 

「あわ、あわわわわわ……!?」

 

 身長三〇〇メテル以上の巨人と、標高七〇〇メテル以上の竜王の視線が交差する。

 そこには紛れもない敵意と憎悪が込められていて――間もなくそれが()()するのだと否応無しに思い知らされた。

 

「た、退避! 退避ィ――――!!!」

 

 青年は血相を変えて持ち場から逃げ出し、《拡声》のマジックアイテムで避難を訴えながら集落までの道を走る。

 一刻も早く、一メテルでも遠く離れなければタダでは済まない。

 青年は最早一族の領地の無事を諦めながら、一人でも多くの同胞を救うために奔走した。

 そんな部族の青年の背後で巨人と竜王は、敵意を剥き出しにして対峙する。

 

 ――これが第六の転機、怒れる巨人の弔い合戦。

 轟く咆哮は嵐の如く響き渡って、避け得ぬ大戦争の号令を発していた……。

 

 

 To be continued




次回、最終決戦
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