《ペネンスドライブ:フィジカル》の使用後クールタイムの発覚につきまして、特典武具をもたせました。それに合わせ追記修正しています。
詳細な武具名・効果等は未設定ですが、これにより「限定的にクールタイムを無視してスキルを再発動可能」となっております。
強引な対処方法となってしまい申し訳ありません。何卒ご容赦願います。
□レジェンダリア・東部領域
『GRRRRRRRROOOOOOOWWWWWW……』
それは幾日か前、あの枯れた山岳で遭遇した大きな生き物だ。
しかしあの時確かに己はアレへとトドメを刺し、確実に葬ったはずなのだが……アレはそんな事実など無かったかのように健在でいる。
肉の類を遺さなかったのは、まぁそういうモノもいるだろうとさておいて。
奴の発する鬼気から察するに、間違いなくアレがあの夜遭遇した生き物であることは理解できた。
おそらくは仇討ち……といったところだろうか。
長らく無かった報復だ。少なくとも
大抵の獲物は根刮ぎ喰ろうてきたし、僅かな取り零しも彼我の力量差を理解して立ち向かって来ることなどありえなかった。
それこそ弱肉強食の正しい姿だ。かつてはこの身も強者に喰われる立場にあったからこそ、その摂理はよく心得ている。
だからこそ不可解だった。
あの夜アレは、血気こそ盛んなれどまるでこの身に太刀打ちできず、これまでの有象無象と同じ様に
不意打ちの一撃こそ食らったが、あんなもの【山竜王】には何のダメージにもなっていない。
結果だけ見れば間違いなく鎧袖一触。一方的な蹂躙で終わったはずの命が、手段は分からぬがせっかく拾った命をこうして投げ捨てようとしている。
『GRRRRROOOOWWWW……』
「しかし、待てよ」と【山竜王】はここで考えを改めた。
そうした不可解な手合いは、彼にとっても見知らぬものではない。
他ならぬ己自身こそが、斯様な不可思議を抱えた怪物であることを【山竜王】は思い出す。
なにより己を呼ぶ声があったとはいえ、それに応じて眠りから目覚めたのも、内なる本能が発した警鐘ではないか。
そう彼は思い直したのだ。
【山竜王】にとって眠りから目覚める理由は三つ。
一つは根付いた土地の自然魔力の減少。
生命活動の大半を大地の自然魔力に依存する【山竜王】だが、その巨体を維持するために要する魔力量は膨大である。
故に自然魔力が枯渇する前に、次なる安住の地を求めて移動する必要があった。
この地のティアンたちが「活動期」と呼ぶ現象のことだ。【山竜王】にとって当然の生理現象。
二つは煩わしさ。
今や滅多にあることではないが、かつては眠りを妨げるほどに【山竜王】の背を荒らす輩が少なくなかった。
【山竜王】にとっては価値のない排泄物ではあるが、だからといってそれのために眠りを妨げられるのでは堪ったものではない。
人間に例えれば寝ているところに無理矢理髪を引き抜かれるようなものだ。大したことではないが、ひたすらに邪魔。
そういうときに一頻り当たりを踏み均して思い知らせてきた。以来、安息を乱す慮外者はいない。
最後に――
すなわち<UBM>。過去に幾度となく遭遇し、交戦し、勝利して糧としてきた唯一無二の強者たち。
【山竜王】にとっても決して無視できない存在であり、他の何よりも己の糧と成り得るソレら。
屍を遺さなかったのも、刺したはずのトドメから舞い戻ってきたのも、こうして己が目覚めを選ぶほどに脅威を覚えたのも。
さてはかの生き物がそうした
言うまでもなく思い違いである。
しかしつい先日までずっと眠り続けていた【山竜王】は、<マスター>なる者たちの出現を全く把握していなかった。
昨今の騒々しさも、どうせまた地上の小さな生き物たちが争っているのだろうと気にも留めていなかったのだ。
幸か不幸か<マスター>の出現以前から長きに渡って眠り続けていたために、また彼に近付く部外者を当時の禁足地を定めていた部族が許さなかったために、今日まで接触する機会がなかったのである。
そんな事実など露知らず、一方的な思い込みから
そうして見てみればなるほど、随分と大きな生き物だと感心する。
この身に至って幾星霜、これほどの巨大生物は【山竜王】をして初めて見る手合いだった。
――それは己の身体の半分近くもある、二足歩行の生き物だった。
全身を
両の掌こそ不自然に大きく、そこから生えた五本の長い指が地表を削りそうな程に伸びてまるで振り子のようだったが、全体的な造形は彼が知るエルフなる生き物たちに近い。
純白が覆う全身に体毛は無く、頭頂から伸びる肌と同色の毛髪が、まるでオーロラのように不可思議に輝いて棚引いていた。
なにより己を見下ろす、敵意と憎悪に燃え盛る銀河の如き瞳。
背ほど高い位置にないとはいえ、それでも己を見下ろし得る稀有な存在が放つ苛烈なまでの殺意に、【山竜王】はこれが恐るべき
『GRRRRRRRRRRRRRROOOOOOOOOOOOOOWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWW――!!!!』
そうであるならば容赦は無い。
命を脅かし得る外敵と戦うは生命としてあるべき姿。
久しく味わっていなかった
「うるさいッッッッッ!!!!!!!」
『GYRRRRRRRRRRRRRUUUUUUUUUAAAAAAAAAAA――!?』
――己の
山のように分厚く、巌のように硬い外殻を越えて脳天まで揺れ動くような大打撃。
文字通り
あるいは両者の激突を見守っていた部族の者たちには見えただろう。
集落を捨てて十数キロメテルも離れた遠方から、《望遠》アイテムを用いて監視していた彼らには、かの山が絶叫を上げる一部始終を目撃していた。
数キロメテルの距離を空けて対峙していた巨人が、
何の衒いも無いただの打撃。しかしそれに至るまでの力強さが……途方も無く
全長三〇〇メテルの巨体でなくば影すら捉えられなかっただろう恐るべき身のこなしで、かの巨人は山を砕いたのだ。
「うるさいッ、うるさいッッ、うるさいッッッ!!」
『GYUUURRRRRRRRRRRRRRRRLLLLLLLLLLLLAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!』
堪らず上げた絶叫が更に巨人の怒りに触れたのか、巨人は癇癪を起こしたように喚きながら幾度となく拳を振り下ろす。
そのたびに【山竜王】の
あの【山竜王】が。
レジェンダリアの生ける伝説が。
妖精郷の民に数々の恵みを齎してきた大地の化身が、痛苦に喚いている。
数少ない過去の戦闘記録では、
殴打に次ぐ殴打は、繰り出す巨人のスケールがあまりにも大きいがゆえに錯覚を起こしそうになるが……明らかに
音の数倍――否、
攻撃速度に反して発生しないソニックブームは、一連の行動が巨人の純粋な
すなわちあの白銀の巨人は、
そんな神話の如き巨人が、あろうことか多大なる殺意を抱いて大地の化身を屠ろうとしていた。
戦いを見守っていたティアンたちは、そこであることに気付く。
少しでも多く情報を探ろうと《看破》に長けた部族の斥候役が、巨人のステータスを覗けることを察知した。
【山竜王】の方は力量差から名前以外碌に閲覧できないものの、巨人の方は詳細まではっきりと視えてしまっている。
――そしてそれこそが彼らにとって最大の驚愕だった。
かの竜王と相対せしは【巨人】。
厳密にはその頂点、【
それが意味するところは、かの巨人が【山竜王】と伍する<UBM>などではなく――人間範疇生物であるという事実だった。
◇
【巨人】というジョブがある。
【鎧巨人】や【盾巨人】といったスキル特化の上級職とは異なる全くの別種。
レジェンダリア固有のジョブであり……史上稀に見る
理由は幾つかある。
まずティアンにとっては、このジョブが今は亡き巨人種族にしか適正が存在しないとされ、彼らが慣習的に就くジョブ系統だったからだ。
意味合いとしては吸血氏族が就く吸血鬼系統に近いが、しかしそれとは比べるべくもなく
下級職の【巨人】の場合、傾向としてはSTRとENDの物理ステータスの伸びが良く、下級職の中では高い部類だ。
しかし武器スキルや汎用スキルを一切覚えず、覚えるのはたった一つの固有スキルだけ。
そしてそのスキルこそが最大の要因だった。
そのスキルの名を、《巨人》。
スキルレベル一につき
……ただし
ジョブ名と同じ名を冠するこのスキルの効果は……あまりに微妙極まりないものだった。
仮に他種族にも適正があったとして、巨人ならざる種族では大柄だったとしても精々五メテル前後。
大半の種族は二メテル前後が殆どの中で、例え下級職時点での上限であるスキルレベル五に達したとしても、得られる見返りが約一〇〇〇〇から二五〇〇〇のHP
上級職である【大巨人】になればスキルレベル一〇まで解放されるが、それでも二つしかない枠の一つを埋めて得られるのが一メテルの身長につき一〇〇〇〇のHPとステータス補正だけでは遥かに見劣りする。
そして万能の適正を持つ<マスター>にとっては、固有スキル発動の条件があまりに不適合だった。
なぜなら<マスター>は
彼らは死して尚蘇り、<エンブリオ>という超常の力を持ち、才能の限界を持たないが……
ステータスやレベルのことではなく、
《巨人》スキルの副次効果として資質や摂取した栄養に応じて体格の成長に補正が掛かるというものがあるが、<マスター>には何ら無意味だった。
巨人種族以外のティアンにとっては適正の無さのために。
<マスター>にとっては生態とジョブ特性の不適合のために。
二つの理由で
救えないのが当の巨人からすれば、このジョブ系統以外の適正に恵まれることが少なく、豊富なHPを活かす手段に乏しかったことだろう。
せめて人並みのジョブ適正でもあれば話は違ったのだろうが、巨人種族は数多ある亜人種族の中でも特に適正に恵まれない種族である。
ジョブシステムに囚われる人間範疇生物である以上、その不利は彼らの衰退を後押しし、やがて妖精種族による排斥へと至った。
結論を言えば
相性が悪い、という言葉だけでは片付けられないほどの絶望的な相性の無さ。
ただ体格に合わせてHPが増えるだけでは、それは的が大きいだけの単なる木偶の坊だ。
もしかしたら
しかし、だ。
一見して無価値に思えるジョブの数々を<エンブリオ>によって覆すのが<マスター>という人種でもある。
かつて同じく弱小とされた獣戦士系統がガードナー獣戦士理論の登場によって一躍脚光を浴び、【獣王】の誕生によって終焉を迎えたのと同様に。
――たった一つの<
◇
『GWOOOOOOOOOOOOO――!!!』
実時間にすればほんの十秒足らず。
しかしその間に数十手もの打撃を食らい、【山竜王】は過去最大の痛みを無数に浴びていた。
だがそれで臆すようであれば古代伝説級ではない。
ダメージに動きが鈍り、痛みに怒りを燃やしながらも打開策を講じて【山竜王】は奮起する。
そしてそれは
【山竜王】が甲羅の上に背負った山。
大質量の塊であり、喰らったリソースの貯蔵庫であり、最大の武器でもあるそれが咆哮と同時に爆発し、取り付いていたエクスの至近で炸裂した。
土石が音速を超えて爆発四散し、質量と運動エネルギーの相乗効果によって凄まじい大破壊を巻き起こす。
ステータスに依らぬ魔法現象としての大規模物理攻撃にエクスは攻撃の手を止め、超抜したAGIが齎す停滞した主観時間の中で思考を巡らせ、距離を取る。
全長三〇〇メテルの身体が齎す歩幅と超々音速機動によって秒を数える間に一〇キロメテルも離れ、いよいよ攻勢に出た【山竜王】を油断なく……しかし変わらず怒りに燃えた眼で見据えた。
(……そろそろ一回目の時間切れ。ここまで急ぐのに殆ど使っちゃったから仕方ない。でも、先手は取った。ここからが本番)
やや過剰気味に距離を取ったのは、里での遭遇戦で敵の手札の一端を把握していたから。
かの竜王はその巨体とそれを支える物理ステータスも然ることながら、古代伝説級<UBM>らしく厄介な能力を持っている。
それは【山竜王】を中心とした半径二キロメテル以内の空間への重量圧迫。
一度目の戦いでエクスを
【山竜王】が擁する巨大重量そのものを領域内の対象に加重する殲滅能力。
(一瞬だけとはいえ
そしてエクスが危惧した第二の手札。
背負った山という大質量を用いた地属性魔法攻撃、《ロックアヴァランチ》
先程のは至近距離での炸裂だったが、恐らくは遠距離への狙撃砲火も可能なはず。
炸裂の規模からするとこの距離でも容易に届き、無防備に直撃すれば今の自分にも大ダメージを与え得る。
(だけど地属性魔法の性質上、物質として背中の山を切り崩す必要がある。……でも失った分の質量は補充してるね。物凄いMP消費量のはずだけど、たぶん周囲の自然魔力から調達してる。レジェンダリアならそれが可能。でも補充してるってことは、規模にもよるけど連発はできないってこと)
背負った山の大部分を炸裂によって失ったはずだが、それが修復されていくのをエクスは見た。
レジェンダリアの領内に漂う可視化された自然魔力が【山竜王】に吸収され、それに伴い周囲の地表が捲れ上がって再び山を形成する《オロジェニー・リジェネレーション》
すなわち広域への加重圧殺、堆積質量を用いた超遠距離への大質量砲撃、そして収奪した自然魔力による質量修復。
そこに図抜けた巨体と物理ステータス、《竜王気》を複合させた重戦車の如き戦闘スタイル。
それが【山竜王 ドラグマウンテン】――文字通りの
(つまりは手段はどうあれ物理特化。
ほとんど停滞に近い高速思考の中で推測を終えたエクスは、驕りでもなんでもなく勝利を確信すると仕切り直しを開始する。
念の為にもう数キロほど距離を置いて森林の只中に立ち、ゆったりとした主観時間の中でエクスは告げた。
「《オーヴァー・グロウ》、解除」
そして三〇〇メテルの巨人の姿は一瞬にして
「――《オーヴァー・グロウ》、再発動」
「《ぺネンスドライブ:フィジカル》――
「――《窮鼠、猫を噛む》」
――先の攻勢では使わなかった【獣拳士】の
「――
そして再び巨人は進撃する。
その大いなる巨躯に、燃え盛るような怒りと殺意を滾らせ。
◇
巨人系統は無用の長物である。
それは確かだ。否定のしようがない。当の巨人ですら活かしきれなかったのだから。
だが、その王位までもが弱いかと言えば……決してそうではない。
巨人系統超級職【巨人王】のステータス傾向は、STRとEND、そしてSPに優れる。
そして有する固有スキルは下位までと変わらずたった一つだけ。スキルレベルEXの《巨人》のみ。
しかしてその効果は――
スキルレベル一〇の効力の、一〇倍。
並の種族なら二〇万前後の追加HP。
超級職としてはあまりに利点に乏しく……先代【巨人王】のベルーゲルですら五〇〇万の追加に留まる。
如何に王系超級職としてステータスの伸びが良いとはいえ、固有で得られるメリットがHPだけというのは、あまりにさもしい。
【巨人王】エクスガリバーの宿す<エンブリオ>――【増殖装甲 ガリバー】なら。
◇
【増殖装甲 ガリバー】。到達形態は六。
両手の武器枠とアクセサリーの五枠、そして特殊装備枠以外を占有するボディスーツ型のアームズであり……
頭髪を含む
そしてその能力特性は
何の衒いもなく、特殊効果もなく、装備者をひたすらに
保有スキルは二つ。
一つは初期スキルである《グロウアップ》。
<下級エンブリオ>と呼ばれる第三形態までの間に成長を重ねたスキルで、最大
もう一つが<上級エンブリオ>への進化時に覚えた《オーヴァー・グロウ》。
こちらも到達形態を経るごとに巨大化倍率を増していき、第六形態現在での最大倍率は
両者とも発動中継続的にSPを消費していくが、第六形態に達した今《グロウアップ》の消費はほぼゼロ。
一方で《オーヴァー・グロウ》には少なくない消費が発生し、現時点での最大倍率時の連続使用可能時間はおよそ三〇分ほどである。
そう……最長で
エクスのアバター本来の身長は約三メテル。一〇〇倍化すれば、全長は三〇〇メテルに達する。
そしてこのスキル効果を【巨人王】のスキルレベルEXに達した《巨人》スキルと組み合わせた場合……
モンスターとは異なり、本来体格とHP量が比例しない、ジョブシステムに依存した人間範疇生物たち。
しかしその制限を取り払うかのように、【ガリバー】と【巨人王】のシナジーは体格に見合う
そしてモンスターとは異なり、ジョブシステムを利用することのできる
それが
かつて最強を模索して検討されたビルド群の一つであり、必要条件の困難さから下火となったビルドの一つ。
それをエクスは……
《オーヴァー・グロウ》のアクティブ効果と《巨人》のパッシブ効果によって規格外のHPを確保し。
【
三分の一以下にまでHPを減少させることで【獣拳士】齧歯類派生奥義の【窮鼠、猫を噛む】を発動させ。
素手であるために発動可能な【
素手ビルド理論の
要となる《ペネンスドライブ:フィジカル》は本来使用後三〇分間のクールタイムが存在するが、それは特典武具で限定的に踏み倒している。
またジョブ枠の都合で【硬拳士】にこそ就けていないものの……結果として三〇〇メテルの巨躯から繰り出す
短期的に見れば、かの"物理最強"すら凌ぐ、準<超級>としては破格のシナジーだが……当然弱点はある。
それは耐性と対応力の欠如。
<エンブリオ>の都合上、十分な各種耐性を確保するための
いや、最大発揮時のSTRでは殆どの武器は壊れて使い物にならず、そもそも規格外の巨躯のために、見合った大きさの武装など存在しない。
そして規格外の巨躯を誇るために、攻撃の回避が困難でもある。無論最大発揮時にはAGIも飛び抜けているから避けることは可能だが、他の<マスター>のように小回りを利かせた効率的な回避は不可能だ。
仮に大規模な魔法攻撃でも使われたなら、ENDだけでは対応しきれない付随効果によって単純なダメージ以上の被害を受けるだろう。
だが、
それこそ相性次第では準<超級>ながら<超級>に渡り合える可能性を残すほどに、【ガリバー】と【巨人王】のシナジーは
あたかも本当に
山のような巨躯、無双の怪力、数歩で国を渡る神速、無類の耐久力を誇る
それが妖精郷において弱小とされた巨人種族、その最後の王から王位を託された
◇
果たしてそこからの戦いは、本当に
神話と伝説の激突を目撃したティアンたちにはそれを推し量る術が無い。
音速に四二倍する速度で巨人が迫り、竜王が《マウンテンプレッシャー》を以て迎撃する。
周囲二キロメテルを圧殺する雄峰の畏怖を、しかし巨人は意にも介さず、僅かに動きを鈍らせただけで構わず進撃する。
神話を凌駕する怪力を秘めた拳を巨人が振り翳し、竜王が《ロックアヴァランチ》の最大砲火を放つ。
しかしそれを巨人は渾身の殴打で真っ向から打ち砕き、散らばる礫を残る掌で塵芥のように払い除け、やはり構わず進撃する。
竜王が進退窮まり命すら削って応戦する。
最早大地は波濤の如く荒ぶり崩れ、我が身を削って放たれる無差別の大噴火は、しかし巨人の防護を貫けず進撃を防げない。
荒れ狂う大地は逆に踏み躙られ、飛び交う土石流は拳で払われ巨躯で防がれ、一歩、また一歩と巨人が近付く。
やがて巨人が肉迫し、竜王は亀のように縮こまった。
頭を無惨な瓦礫と化した山に隠し、四肢を精一杯折り畳みながら、どうか嵐よ去ってくれと祈るように閉じ籠もる。
雛形から孵り、
かつて結んだ友誼を踏み躙った因果にただ怒り、目の前の怨敵に迫撃する。
むしろその有様に一層怒りを燃え上がらせたかのように、銀河の双眸に太陽の如き焔を宿したかと思うと……雷鳴の如き裂帛を叫びながら両の拳を叩きつけた。
叩きつけて。
叩きつけて。叩きつけて。
叩きつけて。叩きつけて。叩きつけて。叩きつけて。
音速を遥かに超える速度で荒ぶる衝動のままに執拗に殴打して。
やがてかつて山だったものが地表より深く埋もれると、今度は足で踏み躙って。
踏み躙って。
踏み躙って。踏み躙って。
踏み躙って。踏み躙って。踏み躙って。踏み躙って。
巨人の姿が大地の底に隠れるほど深くまで踏み躙り続けて。
やがてかつて竜王だったものの断末魔の叫びが絶えると、地の底から巨人が這い上がった。
その間、およそ十分弱。
数えてみれば僅かな時間だが、その間に繰り返された破壊の数々は最早数えることすら馬鹿らしい。
部族の領地だったものは跡形もなく蹂躙され、かつての姿を取り戻す手立てすら浮かんでこない。
巨人の双眸が、部族を捉えた。
彼らは一斉に身震いして、言葉もなく平伏した。
それに巨人はようやく己を取り戻したように目の色を変えると……そのまま東へ歩み去り、姿を消した。
最早あれが何者であるかなど部族の彼らにはどうでもよかった。
あれが自分たちと同じ人間範疇生物であるなどとは到底思えなかったし、歯向かおうとさえ思えなかった。
圧倒的な暴威に心はすっかり服従させられ……やがてそれが姿を消したことに、心の底から安堵した。
得られるはずだった恵みも、その算用も。禁足地を侵され、集落を蹂躙されたことも。
それらを考えることすら放り出して、ただ生き延びた喜びだけを分かち合った。
――さながら、過ぎ去りし災害を忘れるように。
To be continued
次回、短いながらエピローグです。
【増殖装甲 ガリバー】
TYPE:フュージョンアームズ 到達形態:Ⅵ
能力特性:巨大化
スキル:《グロウアップ》《オーヴァー・グロウ》
必殺スキル:未習得
モチーフ:「ガリヴァー旅行記」の主人公にして巨人の代名詞、”ガリバー”
備考:
自己の巨大化一点特化の<エンブリオ>。
形状としては白銀のボディスーツで、スキル発動時には頭髪を含む全身の皮膚と融合する。
一点特化の割に巨大化以外の特殊能力が無いのは、巨大化に伴う体積・質量の増大や、それに起因する物理的・生理的構造の欠陥の補助、何より可逆性の巨大化が原因と思われる。
仮に不可逆の巨大化、もしくはより低倍率での巨大化上限に落ち着いていれば、何らかの特殊能力は付与されていた可能性が高い。
(・3・)<まぁその場合、前者ならカテゴリーがTYPE:ボディになってただろうし
(・3・)<後者の場合でも今より中途半端な<エンブリオ>になっていたかも。
(・3・)<巨人系統との出会いが全てを変えました。
(・3・)<あと素手ビルド。
(・3・)<あと巨大化に伴う裏技として
(・3・)<【ガリバー】の効果による巨大化で増設される最大HPと現在HPは外付けなので
(・3・)<巨大化中の被ダメが非巨大化時の本来HPまで割り込んでいなかった場合
(・3・)<解除時にまるっとキャンセルされて本来のアバターのHPとかは無傷です。
(・3・)<でも状態異常とかはそのまま引き継ぐ。
(・3・)<今回は相手が地属性込みで物理特化の地竜系【竜王】だったので相性が良かった。
(・3・)<傷痍系状態異常は爆上げしたENDで大抵無効化できますしね。
(・3・)<準<超級>の中でも最強格だけど、耐性面がガバガバなので割と穴は多いです。
(・3・)<【光王】【嵐王】【魔砲王】あたりにはまず勝てない(と思う)。
(・3・)<【獣王】相手なら全力発揮中は殴り合えるけど、仕切り直し時に死ぬ。
(・3・)<ぶっちゃけるとウルトラマンみたいなビルドで<エンブリオ>です。
(・3・)<外見はセファールだけど。
(・3・)<更に余談ですが、作中人型というには微妙な形だったのは
(・3・)<巨大化する際、ある程度は体型を変化できるからです。
(・3・)<内なる変革を齎すSPを用いての
(・3・)<あとがきが長くなりすぎたので【山竜王】については次話にて。