TSテレポーターのヒーローアカデミア   作:tsuna屋

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初投稿です。
ヒロアカとTSへの愛が抑えきれず文章にしました。


雄英高校入学
入学試験


 〝前田 世助(まえだ よすけ)〟という男が生まれた年は、世界中でとある現象が話題になっていた。

 

 ことの始まりは中国・軽慶市で〝発光する赤児〟が生まれたというニュース。

 それ以降、超能力や魔法、妖怪に怪物といったフィクションの中で語られていた特徴を持つ存在が発見されるようになり、それらは〝超常〟あるいは〝異能〟と呼称された。

 

 〝超常〟の登場により、世界は混乱に包まれる。それまでの常識や法が適用されない存在は、人々に恐怖を与え、やがて差別や偏見、軋轢を生んでいった。最終的に訪れたのは──法規社会の崩壊である。

 当然、その影響は一般人であった〝前田 世助〟にも及ぶ。〝異能持ち〟と〝反異能〟の抗争に巻き込まれた彼は、二十代という若さで命を落とすことになる。抗う力を持たなかった〝前田 世助〟は、なにも為せぬまま短い生に終わりを迎えたのだった。

 

 ──その筈だった。

 

 〝前田 世助〟は死んだ。僕は、死んだ。しかし、気がつくと〝私〟になっていた。

 〝超常〟が発見された〝超常黎明期〟と呼ばれる時代に死んだ僕は、その百有余年後に〝私〟として転生したのだった。

 〝異能〟は〝個性〟と呼ばれ、〝超常〟が〝日常〟となった現在。

 かつてはフィクションでしかなかった前世で憧れた夢が叶う今。

 

 これは、【前世の記憶】があるという、超人社会でも特に奇怪な特徴を持つ私が〝ヒーロー〟になる為に足掻く物語だ。

 

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 

 ──某年2月26日

 

 私の前には巨大な扉とビル群が広がっていた。都会の一画にしか見えないその場所は、これから行われる〝とある入学試験〟の会場である。

 

 静かに深呼吸をして心を落ち着かせる。気持ちが良い。都会を模してはいるが、この場所が山奥だと言うことを木々の香りと澄んだ空気が私に伝えてくれた。

 ブーツの紐を締め直し、フライトスーツのポケットや装備したポーチの中身を改めて確認する。

 試験内容がわからなかったため、いかなる内容でも対応できるように用意していた私の装備は、周りの受験生と見比べると些か重装な気がした。周囲の受験生は、ジャージにランニングシューズなどのオーソドックスなスポーツウェアが多いように見受けられる。

 勿論、中には〝個性〟の都合なのかオフショルダーや素足など、季節感を無視した受験生もいた。見ているこっちが寒くなりそうだ。

 

 

(おっと、だめだめ。気が逸れましたね)

 

 

 集中している気でいたが、どうやら私も緊張しているようだ。試験開始時刻が伝えられていないのだから、いつ火蓋が切られるか分かったものじゃあない。いつでも〝個性〟を使えるように、私は再び会場へと意識を向けた。

 すると──。

 

 

『ハイ、スタートー』

 

 

 拡声器を通したように大きく、それでいて間の抜けた声が響き渡る。直後に目の前の扉がバーンと勢い良く開かれた。

 

 ──始まった。

 

 準備は入念にしてある。いつもと同じように自然体で、しかし頭から指先まで意識を巡らせて〝個性〟を発動する。

 

 

(まずは会場の中心、その上空へ──!!)

 

 

 次の瞬間。雑に編集された映像のように、急に景色が変わる。私の足元には先程まで見上げていたビル群が広がっていた。同時に、ブワァッと吹き付ける冷風と自由落下に伴う浮遊感が身体を襲う。髪が舞い上がり、ジャケットの裾がはためく。

 混乱はしない。当たり前だ。なんてたって、これが私の〝個性〟なのだから。

 

 

『どうした? 実戦にカウントなんざねえんだよ! 走れ走れ! 賽は投げられてんぞ!』

 

 

 チラリと後ろを見ると、試験官でありプロのヒーローでもある〝プレゼントマイク〟の煽りによって、慌てた様子で走り出す他の受験生たちの姿があった。どうやら、私は中々の好スタートを切れたようだ。

 しかし油断はしない。開始と同時に爆発音が響き渡っていた。察するに、かなりの〝強個性〟の受験生がいるのだろう。発動したままの〝個性〟で捕捉した目標の下へ移動するため、再び自身を〝移送〟する。

 

 

(【空間移動(テレポート)】──!!)

 

 

 トッ、と音を立てて着地する。建ち並ぶビルよりも高い位置にいた私は、狙い通りの場所へ移動した。

 会場のメインストリートに当たるであろう大きな道路には、こちらに気付いた様子のない〝仮想(ヴィラン)〟がひしめき合っていた。

 

 

(1ポイントが3体に2ポイントが2体。さっそく頂きますよぅっと)

 

 

 ポーチにしまってある()()に手を当てて、それらを〝仮想(ヴィラン)〟の頭部に〝移送〟する。数秒経過し、ビリビリっと機械がショートする音がした後に7ポイント分の〝仮想(ヴィラン)〟が地面に倒れ込んだ。

 事前の予想通り、奴らは頭部(を模した部位)を破壊されると行動不能になるようだ。…間違いであったら格好悪かったが、問題はなかったので良しとしよう。

 

 私が最初のポイントをゲットしたところで、スタート地点の方向から断続的な爆発音が近付いてくる。試験開始時に目立っていた爆発する強個性の人だろう。長距離を【空間移動(テレポート)】したわけではないが、それでもこの短時間で私の〝個性〟に追いつくとは…油断ならない存在だ。

 

 

(この付近は乱戦になりますね…。もっと奥の方に移動しましょうか)

 

 

 周囲に他の〝仮想(ヴィラン)〟が居ることは〝探知〟済みだが、他の受験生と点の取り合いになるのは不毛だ。ならばと、更に会場の奥へと【空間移動(テレポート)】した。

 

 近付いていた爆発音は一瞬の内に小さくなる。300m程度は移動したんだ。これだけ離れておけば、乱戦に巻き込まれることもないだろう。

 意識を後方の受験生たちから、視線の先に居るロボットたちに向ける。突然現れた私に対して呆気に取られたのか、しばらく無反応が続く。ややあって、『標的捕捉』だとか、『ブッ殺ス!』だとか言いながらこちらに向かってきた。なるほど、〝仮想(ヴィラン)〟だけあってセリフも物騒だ。分かりやすい。

 

 私の体より大きな奴らの腕パーツが振り下ろされたら、大怪我は必至だろうし周囲の被害も広がってしまう。ならば、やることは一つ。先程と同じ要領でポーチの武器──紙の束に手を当て、〝仮想(ヴィラン)〟たちの内部へ送り込む。

 

 

「機械相手は都合が良いです。なにせ、加減しなくても良いってことですもんね」

 

 

 ズドドン! と大きな音と共に細切れになった〝仮想(ヴィラン)〟の残骸が広がる。

 うーん、前言撤回。いくら加減は要らないと言っても、倒し方を考慮しないと結局被害が広がってしまう。

 〝仮想(ヴィラン)〟と呼ばれるこのロボットたち。私たち受験生への障害として用意された彼らは、1ポイントの標的ですら数mの巨体。動き回られるだけで道路が削られ、振り回される手足で建物に被害が及ぶ。やはり、相手が動く前に頭部を破壊して倒すのが一番だ。

 

 

(『動く前に討つ』、ですよねお婆ちゃん)

 

 

 耳にタコができるほど聞いた祖母の訓えを思い出しながら、私は既に探知しておいた次の標的の下へと跳んだ。

 

 

 

▽ ▽ ▽

 

 

 

 ──約7分が経過した。

 

 試験の制限時間は10分間。いくら大きな会場と言えど、数百人の受験生が居るのだから、この数分の間にも十数名とすれ違った。

 その中で所謂、記念受験というやつだろうか。明らかに動きにキレがないどころか、運動音痴と呼べる人もチラホラ見かけた。

 彼らは〝仮想(ヴィラン)〟から必死に逃げていたり、怯えて隅っこで震えていたため、本人の同意を得て安全そうなスタート地点付近まで〝移送〟させてもらった。あくまで試験なのだから、命の危険はないだろうけど、それでもああまで逃げ惑う人を放ってはおけなかった。あれでは、ヒーロー志望(受験生)と言うより要救助者だ。救助に時間を取られたが仕方がない。

 

 標的の数も減ってきたことも合わさり、序盤ほどのポイントの伸びはなく現在52ポイント。しかし、所感だが他の受験生と比べて結構稼いだ方だろう。

 

 

(さてさて、試験も終盤。これまで1から3ポイントばかりでしたが…)

 

 

 改めて試験内容を振り返る。この試験の目的は、時間内に〝仮想(ヴィラン)〟を多く倒して得点を稼ぐこと。試験前の説明では、〝仮想(ヴィラン)〟には0から3ポイントの『4種類』があると伝えられていた。0ポイント〝(ヴィラン)〟は、〝所狭しと暴れるお邪魔虫〟と言われていたが未だに出てきていない。

 

 ──〝屋外〟には。

 

 

(私の【空間探知(ディテクト)】に最初から引っかかっていた〝デカブツ〟。空洞になってるビルの中で全く動きを見せませんが、そろそろでしょうね)

 

 

 ラストスパートをかける者、ポイントが稼げずに焦る者、疲労困憊でパフォーマンスが下がってきた者。

 ──邪魔をするには、うってつけのタイミングだ。

 

 

 ドオォォォォン!!!!

 

 

 今までの比でない轟音が響き渡る。ビルの中から飛び出してきたそいつは、瓦礫を撒き散らしながらド派手に登場した。

 建ち並ぶビル群と同等の高さのある0ポイント〝仮想(ヴィラン)〟は、他の3種と比較にならない威圧感を放っていた。

 

 

(一応、瓦礫が直撃しないように計算されているんでしょうけど…。【前世】ではあり得ない規模ですねぇ)

 

 

 技術的にも倫理的にも、昔では実現不可能な試験内容だ。〝個性〟の登場による影響の一つだろう。つくづく思う、フィクションじみていると。

 

 数世代分のジェネレーションギャップに感慨を覚えつつ、私は近場のビルの屋上へ【空間移動(テレポート)】して周囲の状況を窺った。

 デカブツの登場による受験生たちの選択は概ね皆同じだ。圧倒的脅威を前にして一目散に逃げたり、混乱に乗じて他の〝仮想(ヴィラン)〟を狩ったり、怪我を負った者の手助けをしたり。行動に違いはあれど、デカブツを相手にしない、という判断に違いはない。

 思考を重ねる。

 

 

(得点を稼ぐことを考えれば、あちらで暴れ回っている〝爆発の少年〟に追随することが一番ですね。あれはドッスン的な役割。クリアするために挑む意味はないですし)

 

 

 倒したところで、デカブツのポイントは0。旨味がなければ回避するのが普通だ。

 ──だけど、

 

 

「練習でできないことが、本番でできるわけありませんよね」

 

 

 私が目指すのは、ヒーローだ。そして試験(これ)は単なる通過点。あんなデカブツを一人で相手して街への被害も最小限にする。そんな経験はなかなかあるものじゃあない。

 それに、評価だけを気にして(ヴィラン)の行動を見逃すなんてこと──私の憧れたヒーローたちは絶対にしない。

 

 考えなしに頭部を破壊するだけではいけない。それでは倒れた奴の体に周囲が巻き込まれて被害箇所が増加する。

 時間をかけてもいけない。奴が暴れれば暴れるほど怪我人が増えてしまう。

 お婆ちゃんとの訓練でこんなのを相手したことはないけれど。やってやる。やってみせる。

 …ああ、そうだ。試験前に〝プレゼントマイク〟が良いことを言っていたじゃあないか。

 

 

更に向こうへ(Plus Ultra)、でしたっけ?」

 

 

 困難に立ち向かう時こそ笑顔で挑もう。(ヴィラン)には威圧を、民衆には安心を届けるために。

 上品に、可愛らしく見えるよう微笑みを携えて。〝0ポイント〟を取得するため、私は屋上の縁から飛び降りた。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 いくつものモニターが並んだ部屋の中、昼間に実施された〝実技試験〟の採点をする教師達の姿があった。

 ここは〝国立雄英高等学校〟、そのとある会議室である。

 

 

「実技総合成績、出ました」

 

 

 モニターに36人の受験生の名前と順位、それぞれの得点数が表示される。それは、雄英高校ヒーロー科の一般入試合格者のリザルトだ。

 

 ──ヒーロー科。

 現代社会には、〝個性〟を悪用する犯罪者〝(ヴィラン)〟を取り締まる〝ヒーロー〟という職業がある。ヒーロー科は、そのヒーローになるための教育を受ける学科だ。

 そして、この雄英高校ヒーロー科は日本の数あるヒーロー科において、最高峰とされる名門中の名門である。

 一般入試における倍率は、脅威の300倍超。つまり、ここに連ねる合格者たちは、1万人以上の受験生の中から選りすぐられた猛者たちということだ。

 

 

「しかし、今年は随分と極端な結果となりましたね」

 

 

 教師の一人がそう呟くと、追随する形で他の者たちも思い思い意見を述べる。

 まず注目された受験生は、リザルト2()()の〝爆豪 勝己〟と8()()の〝緑谷 出久〟だ。

 今回の入学試験は、事前説明会にて〝仮想(ヴィラン)〟を倒してポイントを稼ぐことが試験内容と説明されていた。しかし実際には、他の受験生を救助することで得る〝救助(レスキュー)ポイント〟も設定されており、2種類のポイントの合算で成績が付けられていた。

 

 爆豪は、〝救助(レスキュー)ポイント〟を一切稼ぐことなく(つまり他の受験生が危機に陥っていても無視して)2位の好成績を収めており、反対に緑谷は〝救助(レスキュー)ポイント〟のみで8位まで登り詰めた。

 両極端な成績の二人は、一万人以上の受験生を評価し終えて疲弊した教師たちの気分転換のネタとなっていた。

 

 

「だけどよー! 一番の注目株はやっぱりコイツだろー!! YEAH!」

「〝(ヴィラン)ポイント〟52、〝救助(レスキュー)ポイント〟51。合計ポイント100以上の彼女ですね」

「〝空戸 移(くうど うつり)〟さん、まったく凄まじい結果ね」

 

 

 教師たちの話題の中心は、リザルト一位の受験生へと移る。

 彼らの話題に合わせて切り替わったモニターには、フライトスーツを身に纏った短髪の少女が表示された。

 

 

「〝個性〟届によると、【ワープ】系と【探知】系の複合型〝個性〟とあるな。珍しい上にかなりの強個性だ、この結果にも納得がいく」

「ソレダケデハナイ、本人ノ運動能力モ、カナリノモノダ。何ラカノ、武術ヲ修練シテイルノダロウ」

「戦闘能力もですが、僕は彼女のレスキューへの造詣の深さを評価しますよ。リタイヤした受験生を救助する際の動き。あれはすでに仮免を余裕を持って合格できるレベルです」

 

 

 それぞれが注目した彼女の特徴を述べるが、いずれも掛け値なしの高評価をしている。ヒーロー志望の中学生でトップクラスの実力者の中でも群を抜いた成績の彼女には、教師たちも興奮冷めやらぬといった様子だ。

 その中でも人一倍テンションの高い、サングラスをかけた教師が声を張り上げて喋る。

 

 

「そいつもそーだけど、俺ァ0ポイント(お邪魔虫)への対処を評価するぜ!! あれはチョーシビィィぜ!!」

 

 

 再びモニターが切り替わり、今度は彼女が0ポイントの〝仮想(ヴィラン)〟と相対した際の映像が流れた。

 そこには、ビルや受験生たちへ被害が及ばないように誘導されながら細切れになる〝仮想(ヴィラン)〟の姿が映っていた。

 崩れ行く〝お邪魔虫〟の残骸によるビルの損壊は決してゼロではなかった。しかし、同じことをプロのヒーローにさせたとして、彼女より被害を少なくできる者はほとんどいないだろう。

 

 ワイワイと盛り上がる教師たちの雑談は、他の合格者たちへと話題が移りながら数分続いた。収拾が付かなくなってきたところで、一人の教師が立ち上がる。他の者は即座に雑談を中断し、立ち上がった彼に注目した。

 

 

「ハハ! みんな盛り上がっているね! でも、この後もやることがたくさん待っているからね。話はこの辺にして、次の作業に取り掛かろうか!」

 

 

 男性の明るい声が響き渡り、雑談に興じていた者たちは緩んだ気を引き締めて返答する。

 再生が終了し停止した画面には、〝仮想(ヴィラン)〟の瓦礫に囲まれた、可愛らしい顔をして微笑む少女の姿が映し出されていた。

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。

タグにある通り、主人公は〝強め〟です。ただ、最強ではありません。
超常黎明期から現代に転生したTS少女が、苦悩しながら〝ヒーロー〟を目指す物語です。
処女作ゆえ至らない点ばかりかと思いますが、お楽しみいただけると幸いです。

そして皆さん、TSをすこれ。
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