TSテレポーターのヒーローアカデミア   作:tsuna屋

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今回はほぼ原作通りであまり話が進みません。


雄英体育祭
迫る雄英体育祭


 (ヴィラン)による雄英襲撃事件から2日後。

 昨日は臨時休校となっていたため、しっかりと休息を取り、家族との時間を大切にした。

 怪我はなかったものの、体調を崩したことを知ったお婆ちゃんたちには大変心配されてしまった。私の〝個性〟の練度がお粗末だった結果の不調だったので、あんまり心配されるのは恥ずかしさがあったが、大人しく受け止めた。

 

 時間ができたついでに、【空間探知(ディテクト)】の練度を上げるコツについても訊いておいた。元プロヒーローであり、【探知】系〝個性〟を活用した格闘術を得意としたお婆ちゃんは、現役を退いた今でも高い戦闘能力を維持しているからだ。

 なんでも、広範囲を一気に調べる時は、調べたい対象が『人』なのか『建物』なのか意識しておく方が良いらしい。確かにあの時私は、人の顔からトイレの配管まで、全て知ろうとしていた気がする。

 対象を選別する作業は、却って負担になると思っていたが、慣れてしまえば効率的で疲労も少なく済むとのことだった。

 

 ただ、『慣れる』までには、それ相応の努力が必要になるらしく、結局反復練習を重ねるほかない。課題は沢山あるため、どれを優先するか考えなくてはいけない。

 『広範囲の探知および移動』『近距離戦闘のための敵の挙動の探知』『【空間移動(テレポート)】を組み込んだ戦闘術』『広域制圧力の向上』エトセトラ…。出来ることが多い分、訓練の内容を絞らないとどれも中途半端な結果になってしまうだろう。

 

 

(だけど、目指すところが(オールマイト)ならば、全部出来るようにしていかないと)

 

 

 道は果てしないけれど、私のモチベーションは前より高くなっているのを実感していた。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

「ねえねえ、昨日のニュース見た?」

 

 

 朝。ホームルーム前の教室にて、臨時休校が明けて平静を取り戻したクラスメイトたちの話題は、一昨日の出来事に集中していた。

 座席は離れていたが、20名という少ない人数の教室内では、葉隠の大きめな声がよく聞こえてきた。

 

 

「クラスのみんなが一瞬映ったでしょ? 何か私、全然目立ってなかったね…」

 

 

 そう言えば、ニュースのVTRで映ってたっけ。気落ちした葉隠に隣の席の障子が「確かにな」とストレートに同意をしていた。

 憐れに思ったのか、人の良い尾白が「あの格好じゃ目立ちようがないもんね」と、手袋しか映っていなかった葉隠のフォローを入れていた。

 〝個性〟【透明化】の葉隠では、目立とうとしても苦労するだろう。

 それにしても、葉隠は目立ちたい願望があるのか。

 

 

「もし葉隠が透明じゃあなかったら、すっごい目立つんでしょーけどね…」

「んん? そりゃーどう言う理由でだ?」

 

 

 ポツリと漏らした感想に、私の左前に座っている瀬呂が首を傾げて反応した。

 

 

「だって、葉隠ってチョー美人ですもん。メディアに取り上げられた日には、瞬く間に万を超えるファンが付きますよ、きっと」

 

 

 【空間探知(ディテクト)】で知った彼女の顔を思い出すが、私はあれ以上に整った顔をした人に出会ったことがない。それこれ、そんじょそこいらのアイドルでは彼女の足元にも及ばないだろう。

 

 

「え!? 移ちゃんには私のこと見えてるの…?」

「み、見えてると言うか、一昨日〝個性〟を使った時に知ったんですよ。性質上、目で見るほど鮮明には分かりませんけど…」

 

 

 バッと勢いよく振り向いてきた葉隠の気迫にやや押される。葉隠は「いや〜! 恥ずかしい!!」と見えない両手で見えない顔を隠していた。

 もしかして、外見のことを触れられるのは嫌だったのかな…。

 すると、さっきまで元気がなさそうだった峰田がにやけ顔で話に乱入してきた。

 

 

「な、なぁ空戸。お前の〝個性〟だとなんでもわかんのか…? 見えてないとこまで見えたりすんのか…!?」

 

 

 鼻息荒く涎を垂らしながらこちらを見てくる峰田は、正直に言ってかなり気持ち悪かった。短い付き合いだけど、段々と彼の性格が分かってきた気がする。こいつはもう少し自制心を持った方が良い。

 

 

「みんな! 朝のホームルームが始まる! 私語を慎んで席に着け!」

 

 

 8時24分になった瞬間に飯田がシュバッと教壇の前に立ち言い放つ。

 いや、言ってることは正しいしそうするべきなんだろうけど。

 

 

「着いてるだろ」

「着いてないのおめえだけだ」

 

 

 切島と瀬呂が冷静にツッコミを入れる。

 彼は真面目だが、空回りするのが玉に瑕だ。

 悔しがりながらすごすごと飯田が席に着くと同時に、教室の扉が開く音がして、全員の視線がそこに集まった。

 

 

「おはよう」

 

 

 ミイラが、いや、全身包帯に巻かれた入院している筈の相澤先生がそこにいた。

 

 

「「「相澤先生、復帰早え〜!!」」」

(…いや、復帰しちゃあダメでしょ、何やってんですかあの人)

 

 

 ヨタヨタと歩く先生に私はドン引きした。2日前に両腕開放骨折していて、眼窩底骨折するほど顔面を打撲した人が学校に来たらまずいだろ、常識的に考えて。腕なんて、時期的にまだ創外固定された状態ではないだろうか。顔面の外傷もあるし、脳出血がないか経過を診る段階な筈だ。

 え、それとも何か? 私の医学知識が古いのか? そりゃあ、大半が100年前に勉強した知識に依存しているから時代遅れなのは重々承知している。だけど、たとえリカバリーガールの【治癒】があったとしても、流石におかしいだろう。

 

 

(みんな驚いてるし、あれがスタンダードじゃあないですよね? 現代医学はそんな万国ビックリショーを許容してないですよね??)

 

 

「おれの安否はどうでもいい。何より──まだ戦いは終わってねえ」

 

 

 生徒の見本になる先生が、そんな無茶を見せていいのだろうかと疑問を抱いたが、続く言葉に心臓がドキッとした。

 まさか、まだ2日しか経っていないのに奴らに動きがあったとでも言うのだろうか。(ヴィラン)は待ってくれない、と言うことか。

 ゴクリと唾を呑み、緊張感漂う教室の中で先生の報告を待つ。

 

 

「雄英体育祭が迫ってる」

「「「くそ学校っぽいの来た〜!!」」」

 

(あ、はい)

 

 

 思わず脱力し、相澤先生もユーモアに富んだ発言をするんだな、と意外な一面に感心してしまった。

 

 〝雄英体育祭〟

【前世】では、世界中が熱狂した祭典と言えばオリンピックだった。しかし、〝超常黎明期〟を経て世間が〝個性〟を受け入れるようになると、人々の興味は画一化されたスポーツから離れていった。

 代わりに現代日本で国民が注目する祭、それが雄英体育祭だ。

 

 クラスメイトたちは、(ヴィラン)が襲撃してきた直後のこの時期に開催して大丈夫なのか、と不安の声を上げていた。

 しかし、相澤先生曰く、そんな時期だからこそ雄英の危機管理体制が盤石だと示す必要があると。警備も例年の5倍に強化するという話だ。

 

 そんな雄英体育祭は、ただ国民が観戦するだけではない。全国のプロヒーローたちもスカウト目的で見るのだ。

 トップヒーローの目に留まれば、そのまま彼らの事務所に相棒(サイドキック)として就職が決まることも少なくないと言う。

 年に一回、計三回しか与えられない大事な機会。その気があるなら準備は怠るなよ、と発破をかけて先生はホームルームを終えた。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 放課後──。

 

 帰り支度をしていると、なぜか教室の前にワラワラと人が集まり、あっという間に壁が出来上がってしまった。

 何事だろうね、と芦戸と話していたら爆豪がゆるりと人集りに近付いて行くのが見えた。

 

 

「敵情視察だろ、雑魚。(ヴィラン)の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてぇんだろ」

 

(視察ねぇ…。てか、ナチュラルに峰田のこと雑魚って言いませんでした?)

 

 

 人集りに対して騒いでいたことで雑魚呼ばわりされた峰田は、涙目になって震えていた。相変わらず酷いぞ爆豪。

 

 

「そんなことしたって意味ねぇから、どけモブども」

「知らない人のこととりあえずモブって言うのやめなよ!」

 

 

 爆豪のあまりの言いように飯田が注意したが、聞く耳持たずといった感じだ。

 私を『ゲロ女』呼ばわりしたこと、女子から総スカンを食らったときの様子を見て少しは溜飲を下げていたけど、今の態度見てやっぱりこいつは下水煮込み野郎だと再認識した。

 

 

「──うわさのA組、どんなもんかと見に来たが、随分と偉そうだな。ヒーロー科に在籍するやつは、みんなこんななのかい?」

「いや、一緒にしないでください、彼は特殊です」

 

 

 人集りから出てきた菫色の髪をした他クラスの男子の物言いに思わず反射で否定した。爆豪と同一に見られるのは甚だ遺憾だ。

 ギロっと爆豪に凄まれるが、私はプイっと顔を横に向けた。事実を言ったまでだ。

 他クラスの男子もチラリとこちらに視線を向けたが、すぐさま爆豪に向き直る。

 

 

「こういうの見ちゃうと幻滅するなあ…」

 

 

 確かにヒーロー科に爆豪のような態度の人が居たら、そう思うのも仕方がないと私は彼に同意した。

 彼は続きを話す。曰く、ヒーロー科以外にはヒーロー科に落ちたから入った者が結構おり、そんな者たちのために学校側はチャンスを残してくれていると。なんでも、体育祭の結果によってはヒーロー科に編入することも検討してもらえるらしい。

 流石、自由が校風の雄英高校と言ったところか。

 

 

「敵情視察? 少なくとも俺は、いくらヒーロー科とは言え調子に乗ってっと足元ごっそりすくっちゃうぞっつう…宣戦布告しに来たつもり」

 

(おお、大胆不敵ですね。良いですよー、そういうの好みです)

 

 

 上昇志向のある彼の言葉に、思わずニヤリと笑みを浮かべる。

 他クラスからの刺客、んー、如何にもバトル漫画でありそうな展開で気分が上がる。

 

 その後、隣のB組からも1人乱入してきたが、爆豪は一瞥だけくれて意に介さずスタスタと帰路につこうとする。

 

 

「待てこら爆豪! どうしてくれんだ! おめえのせいでヘイト集まりまくってんじゃねえか」

「──関係ねえよ」

 

 

 爆豪を止めに入った切島に爆豪が言う。

 

 

「上に上がりゃ関係ねえ」

 

 

 言いたいことを言って、彼はそのまま人集りの奥へ消えていった。

 

 

(上に上がれば、ですか)

 

 

 傍若無人、唯我独尊。入学初日から突っかかってくるし、暴言は酷く、私のような美少女に向けて酷い蔑称で呼んだ爆豪。印象は最悪な彼だったが、なるほど、彼は彼なりに強い向上心と信念を持っているようだ。

 今の言葉には爆豪の想いが込められており、それを感じ取った私は少しだけ、ほんの少しだけ彼のことを見直した。

 口の悪さはいただけないけれど。

 

 

(…だけど、一位になるのはこの私ですよ)

 

 

 爆豪がどれだけ熱意を抱いていようとそれは譲れない。

 お父さんたちから受け継いだ〝個性〟、お婆ちゃんの下で重ねた鍛錬。なにより、私自身の〝原点(オリジン)〟のために。

 

 雄英体育祭。目指すは一位だ。

 

 

 




次回からは雄英体育祭が始まります。
今まで奇襲や増援を呼びに行ったりと、戦闘描写がなかった移ちゃんも、この章ではガッツリ戦います。
話も複雑になってくるし、伏線もばら撒きたいなーと考えているので、一旦時間をもらって書き溜める予定です。

体育祭終了までとなると長くなってしまうため、途中で投稿するつもりですが、それでもこれまでより期間は空くと思います。
よろしくお願いします。
…エタらないから安心してね!(フラグ)
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