TSテレポーターのヒーローアカデミア   作:tsuna屋

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書き溜めると言ったな、あれは嘘だ。

はい。すみません。定期更新の方が良いと思ったんですが、僕はそういうことが出来ないタイプのようです。
突然更新期間が空くことがあるかもしれませんが、できるだけそうならないようにします。
プロットはあるので大丈夫だと思いますが、後々大幅修正することにならないよう気をつけます。(大丈夫だと思いたい)





雄英体育祭:選手宣誓

 ──あれから2週間が経過した。

 

 雄英の高水準な授業や課題をこなしつつ、空き時間を見つけては〝個性伸ばし〟と武術の修練に勤しむ毎日。体力的にはヘトヘトになっていたが、体育祭が近付くに連れて精神的にはドンドン充足していった。

 決して侮っているわけではないけれど、負ける気がしない。私は自信に満ち溢れていた。

 

 鏡の前に立つ。昨夜は体力の回復のために早めに就寝し充分に休息を取ったおかげか、肌艶・キューティクルばっちりなベストコンディションな美少女が鏡に映っている。雄英体育祭は、大勢の観客に直接見られるだけでなく、全国放送もされるのだ。動画はネットにも拡散されるだろう。

 アピールするのは私の実力だけじゃあない。私の可愛さも日本中に知らしめる、重要なステージなのだ。

 だから、身嗜みにも細心の注意を払わなければならない。与えられた素材に胡座をかいてはいけない。私は、向上心もある美少女である。

 

 

「移ちゃん、時間なくなるわよ?」

 

 

 いつの間にかお婆ちゃんが部屋の入り口からこちらを覗いていた。いかんいかん、没頭しすぎるのは本当に悪い癖だ。

 教えてくれたお婆ちゃんにお礼を伝えて、私はそのまま仏間へと向かった。

 

 ──立辺家は、そこそこに格式のある家柄だ。

 お爺ちゃん──〝立辺 理誠〟は次男であるため本家筋ではないのだけど、自身で一から会社を立ち上げ、今では大手サポートアイテム企業の代表取締役を務めている。彼の住む家は、【前世】の〝僕〟が住んでいた家とは大違いだ。

 そんな立辺家の一室、こぢんまりとした部屋の一角には、仏壇と4人の遺影が飾ってある。

 4人とも立辺姓ではないけれど、私がこの家に住まわせてもらうに当たってお爺ちゃんが用意してくれたのだ。

 線香を上げてりんを鳴らし、1分じっくりかけて黙祷する。

 

 

「…見ていてくださいね」

 

 

 4人の遺影の内、特に2人を見つめて呟く。

 優しくこちらに向かって微笑む両親の顔に、私は勇気付けられた気がした。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

「あーあ。やっぱコスチューム着たかったな〜」

 

 

 20人が集まっても狭さを感じさせない広さの控え室にて、紺色を基調とした学校指定のジャージを着た芦戸が不満の声を漏らした。

 

 

「せっかく全国放送ですもんね、気分の上がる服で出たいですよね」

「そう! ジャージだとどうしてもねぇ〜」

 

 

 これはこれで可愛いんだけど、と裾を引っ張りながら芦戸は口を尖らす。戦闘服(コスチューム)は被服控除で作られており、ヒーロー科にのみ与えられている。公正を期すためには仕方がない。

 

 各々が自由に過ごしている中、ガララっと勢いよく扉が開いて飯田が入ってきた。

 

 

「みんな準備はできてるか? もうじき入場だ!」

 

 

 飯田の言葉に緊張が高まった者、ヨシっと気合いを入れる者、淡々と動き始める者と、十人十色な反応を見せる。

 私は近くにいた芦戸と梅雨ちゃんに「行きましょっか」と声をかけて入り口の方へ向かう。

 

 

「──緑谷」

 

 

 すると、なんだか険のある言い方をして轟が緑谷の前に立ちはだかっているのに気付いた。

 みんなの視線が彼ら2人に集まる。

 

 

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」

 

(お、おおう。いきなりなんの宣言でしょーか…)

 

 

 爆豪は分かるが、今まで轟と緑谷の間に因縁があったようには見えなかった。轟の意図が分からない。

 

 

「──けど、お前。オールマイトに目かけられてるよな。…別にそこ詮索するつもりはねえが…、お前には勝つぞ」

 

 

 緑谷とオールマイト…。確かに、その2人は何かと一緒にいることが多い。この前も、緑谷がオールマイトから食事に誘われていたと麗日から聞いた。明らかに彼はオールマイトに目をかけられている。だからといって、轟からは嫉妬しているような感情は読み取れなかった。

 やはり意図がわからない。轟は言葉足らずな端がある。

 

 剣呑な雰囲気な轟に、切島が止めに入るが「仲良しごっこじゃねえんだ」と振り払われてしまう。轟はそのまま部屋から出て行こうとするが──。

 

 

「…轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのかは分かんないけど…」

 

 

 言われっぱなしだった緑谷が静かに語り出す。

 

 

「そりゃキミの方が上だよ。実力なんて、大半の人に敵わないと思う。客観的に見ても…」

「緑谷もそういうネガティブなこと言わない方が──」

 

 

 自虐的に話す緑谷に空気を軽くしようと切島が宥める。それをあえて無視する形で彼は「でも」と続けた。

 

 

「みんな、他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。遅れを取るわけにはいかないんだ。──僕も本気で取りに行く」

 

 

 いつもどこか自信がなさげな様子だった緑谷。あんなに凄い〝個性〟を持っていながら、育った環境か、〝個性〟制御が上手く出来ない過去があるからか消極的な言動が多い彼。

 そんな緑谷は、真っ直ぐ轟を見つめて覚悟を語った。

 

 

(いいですねー、男の因縁って感じ。懐かしいなぁー)

 

 

 ザ・青春と言った雰囲気に自分が少年だった頃のことを思い出し、ちょっとだけ羨ましく感じた。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

『ヘイッ! 刮目しろオーディエンス! 群がれマスメディア! 今年もお前らが大好きな高校生たちの青春暴れ馬…雄英体育祭が始まディエビバディ! アーユーレディー!?』

 

 

 収容可能人数約10万人の巨大なスタジアム。いくつも設置されたモニターには、雄英の教師でありプロヒーロー、かつラジオパーソナリティもこなしている有名人、プレゼント・マイクが映し出されており、溌剌とオープニングトークを披露していた。

 

 

『1年ステージ、生徒の入場だぁ!!』

 

 

 スタジアムの上空に花火が打ち上がる。観客の高揚感は高まり、辺りには割れんばかりの歓声が響き渡っていた。

 

 

『雄英体育祭! ヒーローの卵たちが我こそはと鎬を削る、年に一度の大バトル! どうせあれだろ? こいつらだろ!? (ヴィラン)の襲撃を受けたにもかかわらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星! ──ヒーロー科1年A組だろぉ!?』

 

 

 かなり贔屓された紹介だが、実際、観客たちの多くが彼らに注目していた。2週間前、(ヴィラン)連合と名乗る集団がオールマイトの殺害を目論み雄英に侵入したニュースは、全国民が知るところである。そして、ヒーロー仮免許も持たない入学したばかりの高校一年生が(ヴィラン)を退けたということも周知の事実だ。

 (ヴィラン)の襲撃を許したり、生徒を危険な目に合わせたことに対して非難の声もあったが、世論はそれ以上に生徒たちへの興味や期待する気持ちがまさっていた。

 

 スタジアムのステージ、円形に囲われた会場の壁。等間隔に設置された11ヶ所のゲートから各クラスの生徒たちが入場する。

 中心に集合した1年生総勢220名は、緊張した面持ちで開始の合図を待っていた。

 

 

「選手宣誓!!」

 

 

 生徒たちの視線が集まる壇上には、際どい戦闘服(コスチューム)を着た18禁ヒーロー〝ミッドナイト〟が色香漂う仕草で肩にかかる髪を払っている。今年の1年ステージの主審は、彼女が務めるらしい。

 

 

「選手代表1-A、空戸 移!」

「はい」

 

 

 ミッドナイトに呼ばれた少女が静かに前へ進む。ミッドナイトの色気に当てられていた観客たちの視線が彼女に集中した。

 その凛とした佇まいに、多くの者がほうっと息を漏らす。一本筋の通ったブレのない彼女の歩みと引き締まった体に、実力のあるプロヒーローたちは期待を寄せる。

 そこに気付かない一般客たちも、移の整った容姿に惹かれていた。柔和な顔付きにモデル顔負けなスタイルをした彼女は、容姿で代表に選ばれたのではと邪推する者もいるほどだ。

 

 移が壇上に上がり、スタンドマイクの前に立ち会場は静まり返った。10万人の大観衆が彼女に注目した。

 

 

『──宣誓』

 

 

 鈴を転がすような声が響き渡る。聞く者が自然と耳を傾けたくなるような、そんな魅力のある音だ。

 

 

『私たち雄英高校1年生一同は、夢を追い努力を重ねて当校に入学いたしました。入学後も研鑽し、級友たちと切磋琢磨しながら今日この日を迎えることになりました。日本中が注目するこの祭典に出場することが出来て、私は感慨深い思いでいっぱいであります。これまで、この会場で輝かしい活躍を披露してきた諸先輩方に恥じぬよう、正々堂々全力で戦いに挑むことを誓います』

 

 

 見本になりそうな見事な宣誓を堂々とこなす彼女に、聞いていた他の生徒たちも身が引き締まるようだった。それは、始めからやる気に満ちていたヒーロー科だけでなく、〝自分たちはヒーロー科の引き立て役〟と卑下する普通科の生徒たちにも影響を与えていた。

 

 

「すごい…! さすが空戸さんだ…!」

「ああ! 立派な選手宣誓だな! 俺も見習わなくては!」

「…ケッ!!」

 

 

 A組の面々も移の宣誓に感銘を受けていた。若干一名、非常に面白くなさそうにしているが。

 

 内容からして、そろそろ結びの言葉が来るだろう。そう思っていた一同だったが、突然スタンドからマイクを外し始めた移の行動に不審に思う。

 『失礼します』と言って反対を向き、生徒たち全員をゆっくりと見渡した移に全員が困惑した。いったい、何をするつもりだろうか。

 

 

『ここからは、私個人的な宣言になります。──私は、いずれNo.1ヒーローになるつもりです』

 

 

 ザワッ!! 

 

 優等生然とした宣誓から一変、唐突に語った内容に会場は騒然とした。

 No.1ヒーロー。それは、現代日本において、称号であると同時に個人を指す言葉でもある。即ち、オールマイトのことだ。

 No.1ヒーローになるということは、あのオールマイトを超えるという意味に繋がる。そんな大それたことを、雄英の生徒代表とは言え、学生が宣言するだなんて…。

 会場の困惑を他所に、移は確固たる意志を込めて宣言を続けた。

 

 

(オールマイト)に並び立つ。それを目標に据えて私は雄英で学んでおります。皆さんのことを侮っているわけではありません。良きライバルとして認めております。──それでも』

 

 

 言葉を切る。それまで以上の強い覚悟を言葉に乗せて、彼女は言う。

 

 

『私は今日、優勝することをここに誓います』

 

 

 それは、自分を追い込むための宣言。退路を経ち、必ず勝利してみせるという強い信念。

 予想だにしなかった選手宣誓に呆気に取られた会場は、一瞬の静寂ののち、割れんばかりの歓声に包み込まれた。

 

 「言うじゃねーか」「期待してるぜ」「応援するよ!」と、移の覚悟と度胸に感嘆した観客たちは、思い思いの賛嘆の言葉を送る。

 そして宣言を受けた生徒たち、特にヒーロー科の者たちは、彼女の言葉に込められた並々ならぬ想いに触れて奮然する。

 移は言った。自分たちのことを〝ライバル〟と。大観衆の前で臆することなく、オールマイトに並び立つと宣言した彼女に〝好敵手〟と言われたのだ。──ならばその目標(優勝)、全力を以って阻止してみせよう。

 

 雄英高校体育祭、1年ステージ。種目が始まる前から生徒たちのボルテージは最高潮となっていた。

 

 

 

 

 

 

 




ヒーロー科の一般入試において首席で合格したのは移ちゃんだったため、選手宣誓は彼女が務めました。
言い方は違いますが、内容はかっちゃんと同じですね。

因みに、容姿に優劣を決めるのはあまり好きではありませんが、あえて付けると、葉隠>>移=小大唯となります。小大ちゃんがヒーロー科1可愛いのは公式設定らしいです。それ以上に美人なのが葉隠ちゃんです。見えないけどね。
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