こんな体調になってしまうなんて、移ちゃんかわいそう…でもゲロインって可愛いから、どんどん吐かせるよ!!ごめんね!
皆さん、誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。わし現代文苦手なんじゃ…。
第一関門、第二関門を難なく抜けた轟は、背後から迫る爆豪を一瞥しつつも、あることを気にしていた。
(まだ空戸が一抜けした実況は聞こえてこねぇ。前にも後ろにも姿はない。いったいどこにいやがる…)
【ワープ】系〝個性〟で個性把握テストの長距離走において他を圧倒する記録を残したクラスメイトの少女。これまでの障害、4kmという距離。彼女であれば、僅か数十秒でゴールしていてもおかしくない。
しかし、今しがたプレゼント・マイクが一位は自分だと実況していた。ならば移は、視界に入らないほど後方にいることになる。
『優勝することをここに誓います』
(…あんな宣言した奴が手を抜く筈がねえ。敵情視察でもしてんのか?)
開幕のあの選手宣誓。こちら側を振り返った時、彼女と視線が合ったのを覚えている。全員に向けた宣言だったが、他と比べて轟に対する比重が大きかったことは間違いない。
(──関係ねえ。最後に一位になんのは俺だ)
移の思惑は分からない。どちらにせよ、この競技で全力の彼女に勝つことは最初から困難と考えていた。ならば、移のことは意識の外に追い出し、今は徐々に距離を詰めてきた爆豪に抜かされないよう走ることを考えよう。
移も爆豪も、緑谷も。全て負かして自分が優勝する。憎き左の力を使うことなく、母親の力だけで。
轟の目的は、それだけだった。
▽ ▽ ▽
『さあ、早くも最終関門。かくしてその実態は…一面地雷原!』
一着で最後の障害にたどり着いた轟に待っていたのは、数百m続く地雷の広場だった。
プレゼント・マイク曰く、地雷は威力は抑えめだが音と見た目は派手とのこと。踏まないよう慎重に進む轟に対して、焦った後続の生徒が地雷の餌食となり吹っ飛ぶ姿が確認できた。威力を抑えているにしては、人間が数m浮くのは矛盾しているが誰もつっこまない。
「──ハハァ! 俺は関係ねえ!」
先頭のため安全なルートを模索しながら進んでいた轟を、【爆破】の〝個性〟で宙を飛ぶ爆豪が追い抜かす。
「てめえ! 宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ!」
Booom!!
控室で轟が緑谷に向けた宣言のことだろう。自分を差し置いて他の人物、それも爆豪にとって因縁のある緑谷をライバル視する発言。己のことを問題視されていないように感じた爆豪は、私怨丸出しで轟に攻撃を仕掛けた。
『ここで先頭が変わったァ! 喜べマスメディア! お前ら好みの展開だァ!!』
プレゼント・マイクの実況が観客を煽る。開始から先頭をキープしていた轟に爆豪が追い付いたことで、観客席からは大歓声が上がった。
競技は佳境に入った。会場の熱はとどまる所を知らない。
爆豪の攻撃をいなしつつ、先に進まれないよう氷で牽制する轟。2人は、互いに邪魔をしつつも後続に追いつかれない速度で着実に前に進んでいた。
飯田や常闇、緑谷が2人を追随するも、差は縮まらない。このまま行けば、轟か爆豪のどちらかが一位で勝利するだろう。
──彼女がいなければ。
「──お二人とも余裕ですね?」
彼らの上空。辺りが地雷の爆音に包まれながらも、2人の耳にはその凛とした声が確かに届いた。
「一位を目指すなら、仲良くしている暇はありませんよ?」
そう言い残して、轟たちの頭上に落ちてきていた彼女の姿がかき消える。見上げていた2人は、揃って地雷原を抜けた先の道に目を向けた。
今の今まで何処にいたのか。全く存在感のなかった〝優勝宣言〟をした少女、空戸 移は最後に「お先です」と微笑んで、再び彼らの視界から消えた。
「クソっ…!」
「んの女ァッッ!!」
足の引っ張り合いをやめて全速力で先を目指そうとする轟と爆豪であったが、時すでに遅し。
ゴールであるスタジアムには、余裕の表情でゲートを潜る移の姿があった。
▽ ▽ ▽
最初は響めき、次第に状況を把握したのか歓声が大きくなりスタジアム中の声援が私を包み込んだ。
『あっという間の出来事だぁ! 急に姿を現したと思ったらトップ2人を置いてけぼり! いったい今までどこにいたー?! 雄英体育祭1年ステージ、第一種目を一番でゴールしたのは、優勝宣言したこの女ぁ! 空戸 移だぁぁ!!!』
(さすがマイク先生、盛り上げ上手。もっと私を讃えてくださいっ)
10万人の大喝采に表情筋が制御不能になりそうだったが、気合いで取り繕う。あくまで上品に、好感の持てる微笑みで。だらしない顔をしても私は可愛いが、今は我慢だ我慢。
会場の祝福の声に応えつつ、今の競技で得た情報を整理する。
第一関門では、仮想
また、地面を沼のように柔らかくした男子や仮想
続く第二関門。見ていた限り、空中を飛ぶことを出来たのは確認できただけでも2人。体をバラバラに分けられる女子、角を生やした女子。あと、サポート科らしき女子もアイテムを使用してかなりの距離を跳躍していた。ルール上、持ち込めるサポートアイテムは自らの発明品のみという話だから、あれらを作った彼女はかなり優秀な頭脳をしているのだろう。
最後の関門、地雷原。あそこでは爆豪と轟以外に目立った生徒はいなかったが、どの関門でもトップ層を維持していた【イバラ】の〝個性〟の女子は応用が効いて強敵になりそうな印象だ。
第一種目は私の〝個性〟を十全に発揮できる内容だった。それ故に情報を集める余裕があったし、一位を獲れた。しかし、今後の種目が(ないとは思うが)気絶するまで殴り合い、とかだったりすると私では分が悪い。ルール次第では、〝個性〟を封じられる可能性だってあり得る。
(この〝情報〟で優位を取らせてもらいますよ)
憎々しげな表情でゴールしてきた爆豪と轟を横目に、次の競技に向けて私は柔軟を始めた。
▽ ▽ ▽
『1年ステージ、第一種目もようやく終わりね。それじゃあ結果をご覧なさい!』
棄権者を除く全員がスタジアムに戻り、主審のミッドナイトの合図でモニターが切り替わる。
1位 私、2位 轟、3位 爆豪と続々と順位が発表される。42位まで発表された順位表の殆どをヒーロー科が占めており、残るふた枠にサポート科と普通科の生徒が1名ずつ入っていた。
この42名で次の種目を行うようだ。
そして間髪入れずに次の種目、騎馬戦が発表されてルール説明が始まる。
騎馬は2から4人で組み、基本のルールは普通の騎馬戦と同じ。ただ、奪い合う鉢巻には〝障害物競走の順位に従い振り当てられた個々のポイントの合計〟が表示され、チームの組み方によって騎馬のポイントが違ってくる。
好成績を残した生徒ほど、初期ポイントが高いということだ。
(与えられるポイントは下から5ずつ…なら私のポイントは210…)
そう思っていた私にミッドナイトが告げる。
『そして1位に与えられるポイントは、1000万!!』
「ほえっ? …んんっん」
思わず変な声が漏れてしまった。咳払いをして誤魔化す。
1000万って…実質、私の鉢巻を取ったら勝ち確じゃあないか。
周囲の視線が私に突き刺さる。獲物を見る目だ。
『上に行く者には更なる受難を。雄英に在籍する以上、何度でも聞かされるよ。──これぞPlus Ultra!』
「受難…ですか」
なるほど、いつもの理不尽を乗り越えろというやつか。…考えてみれば、寧ろラッキーかもしれない。全員に狙われることになるが、私は自分のポイントさえ死守すれば確実に1位になれる。乱戦でもルールが騎馬戦ならば、やりようはある。
(受難…いいですよ。その壁、乗り越えてみせます!)
『それじゃこれより15分、チーム決めの交渉スタートよ!』
モニターのタイマーが作動し、各自一斉に動き出す。仲のいい者、〝個性〟の相性がいい者、単純に高ポイントの生徒と組みたい者。それぞれが考えを持って勝つために動いていた。
(この競技…さっきの競走と違って今度は逃げ切りたいですね。それなら、〝彼女〟と組んでみたいんですが…)
キョロキョロと目的の人物を探す。失礼ながら、彼女が真っ先に勧誘されることはないと思うが、急がないと。
「──私と組みましょ! 1位の人!」
後ろからズズイっとゴーグルをかけた女子が近付いてきた。それは、私が探していたサポート科の彼女だった。
「フフっ、私はサポート科の──」
「探してましたよ! サポート科の人! 願ったり叶ったりです、組みましょ組みましょ!」
「発目、──おや、いいのですか?」
ゴーグルを外しながら自己紹介をする彼女を遮るように手を掴んだ私に、意外そうな表情を向けられた。おっと、気持ちが急いてしまった。
「はい! …あ、遮っちゃってごめんなさい。私は空戸 移です。あなたは発目…」
「明、発目 明です! 1位という目立つ立場を利用させていただこうと思いましたが、あなたの方も私を求めてくるとは思いませんでした!」
「利用…、ああ、サポートアイテムの紹介とかが目当てですか?」
サポート科の生徒の体育祭における参加意義は、大体が〝自分の発明をアピールすること〟だということは以前耳にしていた。彼女の目的もそういうことなのだろう。
「はい! 私のドッ可愛いベイビーたちが大企業の目に留まる絶好のチャンス!! これを逃す手はありません!」
発目は持っていたジュラルミンケースを開けて、そこに納められた数々のアイテムの紹介を訊いてない内から始めた。
「これなんてお気に入りでして…とあるヒーローのバックパックを参考に独自の解釈を加えて作った…」
「…あ!」
彼女が手に取ったアイテム、その形状に見覚えがあった私は思わず声を上げてしまった。
「それってもしかして、バスターヒーロー〝エアジェット〟ですかっ? 昔住んでた街の近所に彼の事務所があったんです! わー、懐かしい!」
「ホントですか!? そうなんです! この子はエアジェットの〝個性〟を用いなくても彼と似たような挙動を取ることができる優れものでして、私が今装備しているブーツと組み合わせれば、宙をホバリングすることも可能になるんです!!」
バスターヒーロー〝エアジェット〟──今彼女に言ったように、〝私〟が子供の頃に住んでいた街でよく見かけたヒーローだ。
まるで〝ガーディ◯ンズ・オブ・ギャラクシー〟の〝スター・◯ード〟のような挙動をする彼を見た時は胸が熱くなったのを覚えている。
そして、私が発目をチームに誘いたかったのもこのアイテム(正確にはブーツだけだったが)を障害物競走で見たからだ。
「発目、そのバックパックとブーツを使って私と騎馬を組みましょう! 必ず貴女の発明を目立たせてみせます!」
「オッケーですオッケーです! …して、あとの2人はどうしますか? 残念ながら、私にはこのベイビーたちを紹介することしかできませんが!」
これで目当てだった発目とチームを組むことが出来た。最大4人まで騎馬を組めるため、他の2名を探して辺りを見回す発目だったが、私はそんな彼女に「必要ありません」と伝える。
そう、必要ない。私の〝個性〟と彼女のアイテムがあれば、この騎馬戦、勝ちは決まったようなものである。
「私たち2人で制限時間の15分、──優雅に空の旅といきましょう」
なんたって、今回は逃げれば勝ちなのだから。
MCUではガーディアンズ・オブ・ギャ◯クシーが好きなランキング・ベスト3に入ります!ロケットかわいい!!
幼女の移ちゃんは、エアジェットを見て〝トゥンク…〟となっていたようです。
移ちゃん、すーぐアメコミと繋げるぅ。