いつもの如く、誤字脱字ばかりかと思います。足りないのは推敲か、僕の頭か…。
そんな拙作をいつも読んでくださり、ありがとうございます!
…高評価、お待ちしております!()
空が白んできたばかりの時間。ジャージを着た私たちは、宿泊施設の外に集合していた。
朝に弱い麗日や上鳴なんかは、寝癖を直す暇さえなかったのか、髪が爆発している。比較的早起きな梅雨ちゃんも隣で船を漕いでいる。
普段であれば起床して用意を始めているような時間。昨晩、心理的負荷が大きく寝付きの悪かった私も、欠伸を堪えることに必死だ。それでも紫外線対策だけはバッチリしてきた自分を褒めてあげたい。
「おはよう諸君。本日から本格的に強化合宿を始める」
全員時間通りに揃ったことを確認して、相澤先生が話を切り出した。
「今合宿の目的は、全員の強化およびそれによる仮免の取得、具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように。──という訳で爆豪、そいつを投げてみろ」
先生が投げた何かを爆豪が受け取る。覗き込むと、それはソフトボール大の…、春にやった体力テストで使用した計測機能付きのボールのようだった。
入学直後と今の記録、それを比較しようという試みらしい。先生が言うには、春の爆豪の記録は『705.2メートル』。そこからどれほど伸びているか。
(爆豪のセンスは抜群。運動能力もピカイチ。それはこれまでの訓練でも、体育祭でも肌で感じてきました。だけど…)
「んじゃまあ、よっこら……くたばれやァ!」
Boooom!!
(この種目の大きな変化は、ないでしょうね)
爆音と共に放り投げられたボール。綺麗な放物線を描いて遠くへ消えていったそれが何処に落ちたか、先生の手元の機器に表示される。
「709.6メートル」
「んなッ……!」
読み上げられた数字に、見ていた全員、特に投げた爆豪自身が驚き表情を崩す。誰かが呟くようにみんなの気持ちを代弁した。『思ったより伸びていない』と。
「入学からおよそ3ヶ月。様々な経験を経て確かに君らは成長している。…だがそれは、あくまでも精神面や技術面、あと多少の体力的な成長がメインで。〝個性〟そのものは今見た通りでそこまで成長していない。だから今日から君らの〝個性〟を伸ばす」
先生は脅すように、ニヤリと笑って言う。『死ぬほどキツイがくれぐれも…死なないように』
斯くして、林間合宿の本格的な訓練が開始された。
▽ ▽ ▽
〝個性伸ばし〟
筋肉が、適切に酷使して休息と栄養を摂ることで増強するように、身体能力の一部である〝個性〟も使い続ければ成長する。漫然と使用するのではなく、目標・目的を定めてトレーニングプランを組むことにより、短期間で効率的に〝個性〟を強くすることが出来る。プロのヒーローも実施している訓練法、それが〝個性伸ばし〟だ。
私が今まで実行してきた〝個性伸ばし〟は、主に〝範囲拡大〟と〝情報処理速度の向上〟に当たる。
【スフィア】は、その名前の通り、私を中心とした〝球体状〟に広がった範囲内の物体を探知・移送する〝個性〟だ。〝球〟の体積が広ければ広い程、一度に移送出来る距離が広くなり、探知の幅も広がる。
入学時点での【スフィア】の最大範囲は約400メートル。限界値を伸ばすには自宅の敷地では狭過ぎた。だから私は、雄英の広大な敷地で限界値を伸ばす為、入学直後に相澤先生から〝個性伸ばし〟の許可を取ったのだ。授業中や休憩中も絶えず行った〝個性伸ばし〟。その結果は昨日確認させてもらったデータの通り、最大範囲は4ヶ月で約100メートル拡大した。
同時に実施した〝情報処理速度の向上〟。これは探知・移送するために必要な情報を最低限かつ最速で得るための技術だ。
〝USJ襲撃事件〟にて、私は初の実戦による緊張で【
その失敗から学び、お婆ちゃんから教えてもらった方法で特訓してきた。
〝情報処理速度の向上〟は、素早く行動出来るようになっただけでなく、脳への負荷軽減にも繋がった。その結果、同時に継戦能力も向上した。
出来ることが増えた。成長はしている。
だけど、足りない。
No.3ヒーロー〝ホークス〟は、緻密で敏捷な動きを得意とする。彼から逃げられる
No.2ヒーロー〝エンデヴァー〟。彼の持つ驚異的な制圧力。超広域をカバー出来る【ヘルフレイム】は、高火力でありながら
アメリカNo.1ヒーロー〝スターアンドストライプ〟には謎が多い。国防上、〝個性〟の詳細が隠されているからだ。しかし、その活躍からも分かるように、彼女は〝自由〟だ。パワー、スピード共に優れ、遠近どちらの戦闘にも長けている。〝個性〟の応用なのだろうが、たまに摩訶不思議な事象を起こして事件を解決する彼女は、
そして、平和の象徴〝オールマイト〟。彼のことは言うまでもないだろう。数十年間、様々な脅威から人々を守り続けてきたオールマイト。スターアンドストライプ同様、彼も〝個性〟の詳細を明かしていないが、現在に秩序をもたらした1番の立役者は、間違いなく彼だ。
私は、彼らに追い付きたい。彼らのようになりたい。そのためには、今のままでは足りないんだ。疾さも、手数も、パワーも。
「ぅゔッ…、げえぇぇ……っっ!」
胃酸が喉を灼く。口腔内が不快な酸味に覆われた。地面に両手を付いて、涙で滲む視界で粘ついた吐物が広がるのを眺める。頭が痛い。割れそうだ。
(……少し
分かっていたつもりだったが、想像以上だ。
相澤先生から提案され、私が選んだこの訓練。眠っていた〝個性〟の機能、〝非接触
(まるで脳を直接掴まれて揺さぶられているみたいです…)
過度に【
〝非接触
春頃、緑谷に言ったことだが、私が【
武術において大事とされる丹田。私の〝個性〟は、この丹田を基準に発動している。そこへの意識を疎かにすると移送先がブレてしまったり、対象物を置いてけぼりにしてしまうなど、技の精度が落ちてしまうのだ。……昔、服が全て脱げてしまったのは苦い記憶である。
そしてこの基準点。実を言うと、丹田でなくてはならない、という訳でもない。基準点は移せるのだ。これが〝非接触
〝基準点をズラす〟こと。つまり、【
…理論上は。
「無事か?」
「……ハァ…、…ハァ……、…はい…、制御は、出来てます…」
持ってきていたハンカチを口元の吐物で汚しつつ、のろりと立ち上がる。地面に広がった黄色い液体をどうしようかと思案するも、いちいち気にするのも時間の無駄と割り切った。今日だけで何回嘔吐するか分かったもんじゃあない。
それに、何かしらを出しているのは私だけでもない。三半規管を鍛えている麗日は吐きながら宙を舞っているし、青山は半ば仮設トイレの住人となっている。気にしたら負けだ。
「そうか。暴発の兆しがあったら直ぐに俺が
「…りょーかい、です……」
相澤先生の心強い言葉掛けに、視線を向けずにサムズアップで応える。先生の言う通り、安心して吐き続けるとしよう。
「煌めく
「猫の手、手助けやってくる!」
「どこからともなくぅ、やってくる…ッ!」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「「「ワイルド・ワイルドぉぉ・プッシーキャッツ!!!!」」」」」
(嗚呼……、推しが決めポーズしてるのに…じっくり観られないなんて…ッッ!)
少し離れたところで、遅れてやってきたB組の面々に対して、〝フルバージョン〟の決めポーズを取るプッシーキャッツの姿が見える。昨日の2人に〝ラグドール〟と〝虎〟を加えたチーム全員で魅せるポージングは、横目で見ても圧巻だ。
しかし悲しいかな、訓練中につき注意散漫になる訳にはいかず。血涙を流しそうになりながら必死に
(合宿中に1枚で良いから記念撮影…してもらいたいです…)
▽ ▽ ▽
夕方。
あれから胃の中がすっからかんどころか、胃そのものまで出したのではと思うほど吐き続けた。最後の方なんて、基準点移動の反動による頭痛なのか、脱水症状なのか自分でも分からなくなっていた。
文字通り辛酸をなめたわけだが、成果は芳しくない。
朝と比べると、頭痛の程度は弱まったと思う。もしかしたら私が慣れてきただけかもしれないけど、倒れ込むほどではなくなってきた。だけど、肝心の基準点の位置は目標には程遠い。
丹田から移動することは出来た。しかし、どうしても体から離すことは叶わなかった。指先や額に移動することは出来ても、そこから先へは進まないのだ。
進展はある。これまで忌諱して使ってこなかった技だ。錆びついた歯車を動かすようなもので、それを一日で会得するなんて土台無理な話。負担軽減と基準点の体内移動が出来ただけでも大した一歩だろう。そう思わないとやってられないと言うのが本音であるが。
…さて。時刻は18時。気分を入れ替えディナータイムだ。
疲労困憊な体に鞭を打つように、ラグドールから命じられた夕食の自炊。ジャージから私服へと着替えた私たちは、合宿の定番料理、カレーライスを作ることになった。
飯盒、という物は初めて触ったし、野外で料理するなんて経験もないため、とても新鮮な体験だった。
「店とかで出したら微妙かもしれねえけど! この状況も相まってうめえっ!!」
「言うな言うな野暮だなっ!」
カレーライスを掻き込む切島。出来上がったカレーは、確かに雑な出来栄えだったが、空腹は最高のスパイスと言うべきか。市販のカレールーを使用した筈なのに、とても美味しく感じた。ただ…。
「美味しい。美味しいんですけど、胃には優しくないです…」
「私らは吐きまくってたもんね。食べないとアカンことは分かるけど…、胃腸に攻撃されてる気分やわ」
「ウィ……、同意見だね…☆」
消化器官が弱ってる組にはなかなかに刺激の強い食事だ。栄養バランスを考えれば理想的な食事だけど、正直今は雑炊とかを食べたい気分である。
「それにしても〝個性伸ばし〟ってこんなにキツイんだね…。自分の身体を浮かすの、ずっと避けとったからめちゃくちゃ疲れたよ…」
「相澤先生は言ってませんでしたが、本来なら体の成長に合わせてやることですからね。短期間で伸ばそうとすると、ああなるのも仕方ありません」
「キラメキが足りない訓練だよね…☆」
キラメキどころか、私たちは汚物塗れであったが…。食事中に指摘するのは止そう。
最後の一口を平らげた私は、周りに一言告げてからポケットに入れてあったピルケースから錠剤を取り出し、水と共に胃へ流し込む。うーむ、毎日飲んでいてもこの瞬間は好きになれない。
「そう言えば最近よく飲んでるよね。どっか具合悪いの?」
「ん? あー、これですか。…んー、まあ酔い止めみたいなもんです。今日みたいな無茶な訓練だと効果薄いですけどね。──あれ? 緑谷、どうしたんでしょう?」
カレーライスを持って施設から離れていく緑谷の姿を視界に収め、思わず声に出す。ぼちぼちみんな食べ終わってきたところなのに、手付かずの皿を何処に持って行くのだろうか。私に釣られて麗日と青山もそちらに視線を向ける。
「ほんとだ。デクくん、一人で何処に行くんかな?」
「追いかけてみなよ☆」
「ハッ…!? な、なな、なんで私ぃ!? や、別に嫌なわけじゃないけどもっ!!」
「…なんですかなんですかぁ? 何かあるんですか麗日ぁ?」
大袈裟なまでの彼女の反応に、なんだかピーンときた私はニマニマ顔で水を向ける。青春の香りがする。
「な、何でもない何でもないよッ!」
「え〜? ほんとーですかぁ?? 顔が赤いんですけどぉ?」
「ほんとほんと! 青山くんも何言い出すん急にっ!」
麗日はパタパタと手を振り必死に否定するが、朱に染まった頬が雄弁に語っていた。
ほほう、麗日が緑谷を、ねえ。飯田・緑谷と3人で一緒に居ることが多いことは知っていたけれど…、そうかそうか。
反応からして、まだ自覚したばかりだろうか。あんまりつついて意固地にさせても可哀想だし、野次馬根性も程々にしておく。恋を自覚する過程って楽しい時期だし、ゆっくり育まれていくのを横で堪能させてもらおう。
「な、なんなんその顔…」
「ん〜? いーえ、別に。ふふっ」
恋する女の子は、いつだって可愛いものだ。
「…ちゃうし、そんなんちゃうし……」
緑谷くんはこれから洸汰くんに〝余計なお世話〟を焼きに行くところです。ヒーローの本質ですね。
小説版ヒロアカの〝女子会〟を書く予定でしたが、本筋に関係ありませんし難しかったのでスキップします。
後日、書けたら載せようかと思います。
閑話を1話投稿後、合宿3日目に入ります。
近いうちに更新出来そうです。