TSテレポーターのヒーローアカデミア   作:tsuna屋

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連日投稿、3話目です。






vs.開闢行動隊③

 爆豪たちが(ヴィラン)から攻撃を受ける前に異変を察知できたことは幸運だったのだろう。

 突然、脅かし役の円場が彼らの目の前で倒れた。それが肝試しの仕込みではなく、(ヴィラン)による襲撃だと気付くのに時間は要らなかった。

 

 

「このガス…自然に発生した物じゃねぇ」

「ったりめぇだ。クソ(ヴィラン)が忍び込んでんなァ」

 

 

 山道脇に潜んでいた円場が吸い込んだと思われる紫色のガスから距離を取り周囲を警戒する2人。付近に下手人が居るのか、(ヴィラン)は複数なのか。円場の他に要救助者が隠れている可能性も高く、逃避、探索、迎撃…、どう行動するか逡巡すること数秒。悩む彼らの前に軽傷を負った切島が音もなく現れた。

 

 

「ぐぅ…ッ! ……って、あれ? 爆豪! 轟!」

「切島…? 今のは空戸のか?」

 

 

 着衣の乱れと全身を【硬化】して防御姿勢を取っていた切島の姿に、唯ならぬ事態だったと推察した。移の【空間移動(テレポート)】で現れたことは分かるが、何故彼一人なのか。轟の疑問に切島は慌てて説明する。

 

 

「そうだ…! 空戸が危ねえ! (ヴィラン)に胸を刺されて捕まってる!!」

「ッ! そっちにも居やがンのか」

「…切島、(ヴィラン)の数と〝個性〟は?」

「俺が見たのは【歯を刃物にして伸ばす】ヤツ一人だ! 俺の【硬化】で防げたが、手数とリーチがやべぇ…! 近付けもしなかった…ッ」

 

 

 轟は暫し思案し、腕に抱えていた円場を切島へと渡す。

 

 

「円場を頼む。ガスを吸って倒れた。恐らく、付近に(ヴィラン)は居ねえ。円場を抱えてここから離れてくれ」

「お、おう。お前らは?」

「──決まってンだろ」

 

 

 円場を背負った切島は、両手から小さな爆破を繰り出す爆豪を見る。

 

 

「カス共をぶっ殺してくンだよ」

 

 

 凶悪な笑みを浮かべた爆豪は、轟と共に駆け出していった。

 

 

 


 

 

 

 不意打ちを決めた爆豪と轟は、油断なく(ヴィラン)たちを注視していた。

 

 

「クソ髪が言ってた【歯】の野郎は伸したが」

「2人増えてるな。空戸は…仮面の男の〝個性〟か」

 

 

 (ヴィラン)と接敵する直前、仮面の男──Mr.コンプレスが移をビー玉状の物体に閉じ込めた様子を確認していた。間に合った、と言えるか分からない状況だが、少なくとも(ヴィラン)の狙いは空戸の殺害ではなく誘拐であることが推測できた。前者であれば、態々閉じ込めずにあの場で息の根を止めていただろう。しかし、実行犯は爆豪と轟によって無力化・捕獲され、ギリギリのところで食い止められた。後はMr.コンプレスから移を取り戻すだけ。

 遠目から見ただけだが、移が負っている傷は相当の深さだろう。一刻の猶予もない。だからこそ、轟たちはプロヒーローの指示を待たずに行動した。例えそれが、保須市の事件をなぞる結果になろうとも、〝救けない〟選択肢は彼らにはなかった。

 やがて(ヴィラン)の襲来に気付いたプロヒーローたちから指示がやってくるだろう。それより先にけりを付ける。轟が氷漬けにしたMr.コンプレスに近付こうとした直後、爆豪が声を上げる。

 

 

「おい待て。裸女は何処行きやがった!」

「何処って、氷の中に──」

 

 

 Mr.コンプレスの隣を見やる。そこに居ると思っていた裸の少女の姿は何処にもなかった。

 少女──トガの不在を認識した次の瞬間、轟は左後方から迫る何者かの気配を察知した。轟は背後を振り向きつつ、左手を構える。牽制を目的に炎を燻らせて──相手の顔を見て動きが止まる。

 

 

「──空戸…?」

「アホがッ! 避けろ半分野郎ッ!!」

「っ!? くッ……!!」

 

 

 炎を消した轟は、すんでのところで迫っていたナイフの直撃を躱す。表皮が僅かに裂け、ツーっと首筋に血が流れた。

 轟と爆豪に睨まれながら、ナイフを握った人物はじっと刃を見つめている。見たいものが見られなくて、さも残念、と言った様子だった。

 

 轟は、傷を抑えつつ〝移の顔をした少女〟と距離を取る。落ち着いて全身を観察しても、その姿は移そのままだった。顔、着ていた衣服、体型…、全てが記憶通りの彼女。ナイフを向けていなければ、何の疑いも持たずに近付いていただろう。

 

 

「クソ髪が言ってた〝胸の傷〟がねぇ。ホンモノを操ってるワケじゃねーな」

「空戸じゃねぇなら…、さっきの(ヴィラン)が化けてるのか?」

「──もうバレちゃいましたか」

 

 

 移と同じ声で彼女は言う。

 

 

「トガです。カァイイものが好きです。移ちゃんはぼろぼろで大好きです! 早くお友達になりたいものです」

 

 

 上気した彼女の顔で、彼女の声で艶かしく、彼女の級友たちにトガは語る。

 

 

「ああ? …なに抜かしてやがる」

「あなたたちに興味はないけど…、ボロボロになると素敵かもしれません。──だから血を見せてください! チウチウさせて!」

「てめェ、イカれてんのかッ!」

「残るはお前だけだ。もう不意は突かれねぇ、大人しく捕まってくれ」

 

 

 トガと名乗る少女の理解できない主張を一蹴する。投降を呼びかけながらも、相手がいつ暴れても対応できるよう、轟たちは油断なく構えを取る。

 さっきは意表を突かれたが次はない。2人で囲んでいる現状で逃す訳がない、と。

 

 ジリジリと距離を詰める2人。いつでも取り押さえられる。そう思った時だった。

 

 

『A組B組総員! プロヒーロー〝イレイザーヘッド〟の名において戦闘を許可するッ!』

「「!」」

 

 

 轟たちの耳に声が──マンダレイの【テレパス】が届けられる。

 この3日間、何度か経験した【テレパス】だったが、戦闘中の意識外からの伝令は2人の集中をほんの僅かに途切れさせた。その隙を、トガは見逃さなかった。

 

 前後に陣取る2人に対して手首のスナップだけでナイフを投げる。腹部に向かって的確に投射されたそれらは、ギリギリで反応した轟たちによって空を切る。しかし、2人が同時に避ける動作を取ったことにより、トガに更なる時間的余裕が生まれた。

 まるで四足獣のように身を屈めて駆けるトガに、出遅れた轟たちが必死に追い縋る。

 

 

「──と思いましたがやっぱり気分じゃありません。もっとカッコいい人を探すのです」

「くっそ、待て!!」

 

 

 轟の氷が逃げるトガの背中を追う。茂みに身を隠さんとするトガに接近した氷塊は、しかし突如現れた樹木や岩に行手を阻まれてしまった。更には押し潰さんと2個3個と降る岩に、轟は堪らず距離を取る。

 

 一体、何処から…? 

 

 呆然とした轟に、今度は頭上から男の声が降ってきた。

 

 

「──危ない危ない。やっぱヒーロー候補生は馬鹿にできねーな」

 

 

 轟は声の方を見上げる。そこには、確かに氷で捕獲した筈のMr.コンプレスが器用に樹枝に立ってこちらを見下ろしていた。

 

 

「そこで伸びてるムーンフィッシュ、【歯刃】の男な。彼はあれでも死刑判決控訴を棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それを不意打ちとは言え、ああも見事に無力化しちまうたぁ、大したもんだよまったく。賞賛ついでにひとつ良いことを教えてやろう。──マジシャンってのは欺くのが得意なんだ」

(アイツ!! ()で捕まえてた筈! この短時間で音もなく逃げ出したのかッ)

 

 

 Mr.コンプレスを捕まえていた筈の氷塊は球状の穴だらけになっていた。トガに意識を割いたことを見透かされたのだ。そして、肝心のトガの姿も既にない。再び襲い掛かる隙を窺っているのか、はたまたこの場から逃げたのか。

 油断などしていなかった。少なくとも倒れた円場を発見した時からは、あの〝ヒーロー殺し〟と相対した時と同程度の警戒心を払っていた。しかしいとも容易く、盤上はひっくり返されてしまう。

 先手を取ったアドバンテージは既になくなった。

 

 そして状況は、轟の認識よりも遥かに悪い。

 

 

「爆豪っ! 空戸に化けたヤツは後回しだ! アイツを捕えるぞ! ………おい、爆豪…?」

 

 

 おかしい。一向に返事がない。爆豪ならば、間髪入れずに『指図すンじゃねえ!』などと返してくるだろうに。

 その轟の疑問に、(ヴィラン)は可笑しそうに応える。

 

 

「おいおい、俺は言った筈だぜ? 欺くのは俺の取り柄なのさ」

 

 

 Mr.コンプレスが態とらしく手首を反す。すると、手品の如く、指間に球体が一つ、二つと現れた。その意味を理解する。理解させられる。爆豪までも囚われたのだと。

 

 

(ヴィラン)の狙いが二つ判明! 狙いは生徒のかっちゃんと空戸さん! 2人はなるべく戦闘を避けて!』

「標的がノコノコと現れたら、そりゃ捕まえずにはいられないってハナシよ!」

(くっ、テレパスが少し遅いですよマンダレイ!!)

 

 

 轟は直ぐに動いた。地面を右足で強く踏み締める。足下から氷が広がり、瞬きをする間に一面が氷漬けになる。絶対に捕える。轟の覚悟が込められた森を覆うほどの氷塊は、しかし(ヴィラン)に届かない。

 

 

「悪いな、俺は戦うことは苦手でね! エンデヴァーの息子なんて、相手にしてらんねーのよ! ──開闢行動隊、目標回収達成だ。ほんの僅かだったがこれにて幕引き! 総員、回収地点へ向かえ!」

 

 

 氷の牢獄を避けて宙を舞う姿は余裕綽々と言った様子だった。飄々とした態度を崩さなかった彼は、轟に背を向けて森を駆けていく。悪路をものともせず、彼の姿はあっという間に小さくなった。

 

 

「(今の通信、もう引き上げる気か!)させねぇ、逃がすか!!」

 

 

 行動が余りにも早い。USJ襲撃事件の時よりも、格段に洗練された計画的犯行。(ヴィラン)の質も、あの時に一蹴したチンピラの寄せ集めとは違う。焦燥感が伸し掛かる。

 

 

(だからって、諦めんのか? そんな訳がねえッ!!)

 

 

 諦めない。必ず救ける。2人が誘拐されたことを知っているのは、己のみだ。ここで救け出せずに、なにがヒーロー志望か! 

 轟は小さな炎を纏いながら走る。冷えた身体と弱気な心に熱を入れるようにして。

 

 

 


 

 

 

(かっちゃんと空戸さんは肝試しの一番手と二番手! だからゴール地点から逆走すれば直ぐに合流できる筈!!)

 

 

 緑谷はどす黒く変色した両腕を引っ提げて一人森を駆け抜けていた。

 

 マンダレイの従甥、出水洸汰が孤立していると予見した緑谷は、(ヴィラン)の襲撃を知るや否や彼の下へ向かった。その先で出逢った(ヴィラン)〝血狂いマスキュラー〟と戦闘になり、両上肢を幾重にも骨折しながら、なんとか洸汰を守り勝利を納めた。

 その後、洸汰を相澤に預けた緑谷は、相澤からの伝言と〝マスキュラー〟が洩らした(ヴィラン)の目的をマンダレイへと伝えた。〝戦闘の許可〟と〝(ヴィラン)の狙いは爆豪と移〟という情報だ。

 

 2人の安全を確保するために疾走する緑谷だが、彼自身、本来であれば動ける状態にない。固定されていない両腕は力を入れるだけで激痛が走り、限界以上に酷使した身体は体力が底を突いている。

 マスキュラーとの戦闘。それにより一種のトランス状態になっていることで緑谷は限界を超えて動いていた。

 

 

「──あれは!? 轟くんの氷だ!!」

 

 

 視界を覆う木々の隙間から見覚えのある氷塊が空へと伸びていく所を視認する。体育祭の会場を埋め尽くした時と同規模の氷は、轟がそれだけの強敵と対峙していることを示していた。

 

 歩みを止めずに進路を変える。出力6%の【OFA(ワン・フォー・オール)フルカウル】で強化された脚力により、十秒足らずで目的地へ辿り着く。

 

 

「轟くん!!」

 

 

 巨大な氷の先で緊迫した表情をした轟を見つけ、そこに爆豪が居ないことに気付く。全力疾走で何処かへ向かおうとしている轟の姿に、嫌な予感がした。

 

 

「緑谷…、お前その腕ッ!?」

「僕は大丈夫だから!! そんなことよりかっちゃんは何処ッ!?」

「くッ……、──前を走ってるあの(ヴィラン)に捕まっちまった! 空戸も一緒だ! 奴の〝個性〟でビー玉みてぇに小さな玉に閉じ込められてる! アイツら、目的は果たしたとかで逃げるつもりだ!!」

 

 

 予感は的中してしまった。否、最悪と言うべきか。

 

 

「そんな…っ! …そうだ、空戸さんの【スフィア】なら抜け出せるんじゃ!!」

「それも想定済みなのか、捕まる前に重傷を負わされてる! 容体は分かんねえが、自力で脱出できる状態じゃねえ。だから俺たちが助け出すぞ!」

 

 

 【フルカウル】による疾走を若干弱めて轟と並走していた緑谷は、この状況をどう打開するか思案する。

 両腕が使えない今の自分に出来るのは精々頭突きかタックルくらい。残りの(ヴィラン)の数は不明。この先、どんな〝個性〟を持つ(ヴィラン)が待ち受けているのか分からない。未知数の相手から2人を奪い返すため、手負の今の自分の役割は…。

 

 

「…轟くん。僕が先に行って囮になる。(ヴィラン)が言っていた。僕は〝優先殺害リスト〟ってのに載ってる、って」

 

 

 マスキュラーと、マンダレイたちが戦っていた(ヴィラン)が漏らしていた情報。それによると、彼らは優先して緑谷の命を狙っている。だとすれば、自身が姿を晒せば、(ヴィラン)の注意をそらせるのではないか。緑谷はそう思い付いた。

 

 

「…それを聞いてお前を1人で行かせる訳がねえだろ。その怪我、動いちゃいけねえレベルじゃねーか」

「だからって休んでなんかいられない!! (ヴィラン)たちの足止めをしとくから、轟くんは隙を見て2人を取り戻して!!」

 

 

 そう言い残して緑谷は加速する。後ろから、轟の制止の声がかけられたが、止まらない。止められない。〝救けなきゃ〟という思考に執われた緑谷は、自身の安全を勘定に入れない。囮になり、足止めをした結果、己がどうなろうとも気にならなかった。

 

 ()()()()()()()()

 

 

「救ける…ッ!! 絶対にッ!!!」

 

 

 ──だから、もっと、疾く!! 

 

 

 両腕が使えないと言うことは、走行姿勢を正しく取ることもできないと言うこと。普段よりも遅い今の状態では、間に合わない可能性がある。そう考えた緑谷は、更にギアを上げることを選択する。

 

 

(【OFA(ワン・フォー・オール)フルカウル・8%】!!!)

 

 

 安定して発動できる割合を超えた【フルカウル】をすることで、姿勢の不利を覆す。一歩間違えると自爆しかねない博打。緑谷はそれに勝利する。

 遠く離れていた(ヴィラン)との距離が一気に縮まり、ついにその背中を捉える。

 

 

「返せぇぇえぇッ!!!」

「ぬおッ!!?」

 

 

 走ってきた勢いをそのままMr.コンプレスの背中にぶつける。猛タックルを受けたMr.コンプレスが地面を転がった。当然、緑谷も無事では済まず、バランスを崩して転倒した。

 

 

「ぅぎッ…!!!」

 

 

 受身なんて取れる筈もなく、骨折した両腕ごと全身を打撲する。稲妻が走るような痛みが走り、噛み締めた奥歯が軋んだ。意識を失ってもおかしくない衝撃が彼を襲う。

 しかし、ここで立ち止まることはできない。痛みに呻きつつ、なんとか顔を上げて(ヴィラン)に目を向ける。そこで初めて、(ヴィラン)()を認識した。

 

 

()っつつぅ……、なんだよ突然…」

「ミスター大丈夫か!? ──なっさけねぇな、おい! 

「こいつはリストにあった…」

「わわ、ぼろぼろ…! 出久くん、だよねっ!」

「ネホヒャン!」

 

 

 5人の(ヴィラン)が緑谷へ顔を向けている。そして、彼らの背後には黒い靄──USJ襲撃事件にて猛威を奮っていた黒霧の【ワープゲート】が広がっていた。

 

 完全に想定外の人数。加えて、(ヴィラン)は脱出寸前。あと数歩も進めば、手の届かない所へ行ってしまう。

 それだけは許してはいけない。何としても。

 

 

「かっちゃんと空戸さんを、返せよっ!!」

 

 

 緑谷は吼える。

 すぐ目の前に救けたい人が居る。

 立ち上がって、喰らい付き、(ヴィラン)の手から取り戻さなくては。

 足に力を込める。走り出した彼の身体は、しかし明らかに精細さを欠いている。

 限界を超えて動かしていた身体は、一度痛みを認識したことで枷をかけたように重くなっていた。

 

 

「返せ? 妙な話だぜ…。爆豪くんも空戸ちゃんも誰のものでもねえ。彼らは彼ら自身のものだぞ、エゴイストめ」

 

 

 対して、易々と立ち上がったMr.コンプレスは、フラフラな緑谷に見せびらかすように【圧縮】した爆豪たちを懐から取り出す。

 

 

「今のお返しをしてやりたいが時間がなくてね。爆豪くんはもっと輝ける舞台へ俺たちが連れていくよ。キミは身体を休めながら、新しい爆豪くんをテレビとかで眺めといてくれ」

 

 

 (ヴィラン)たちが靄へ入っていく。ある者は無感動に。ある者は悠々と。ある者は別れを惜しみながら。

 囮になれると考えていた緑谷だったが、(ヴィラン)たちは彼に時間を割かなかった。爆豪と移の誘拐を第一目標に掲げた彼らにとって、それを達成した今、緑谷の生死はおまけ程度にしか価値がなかったのだ。

 

 しかし、ほんの数秒。緑谷が集めた注目は、彼を間に合わせた。

 

 思惑が外れて焦る緑谷の横を氷柱が通り過ぎる。

 

 

「──行かせるかッ!!」

 

 

 轟が到着した。Mr.コンプレスの腕を凍らすべく氷柱が迫る。今度こそ確実に捕らえる。

 だが彼の隣に居た男──荼毘が【蒼炎】を放ち禦がれてしまう。荼毘は汗を滲ませた轟を見て愉しそうに嘲る。

 

 

「そんじゃ、お後が宜しいようで──」

 

 

 もう間に合わない。緑谷も轟も、誰もが。

 勝利を確信したMr.コンプレスが気取ったポーズを取り──、青白い一筋の光が彼の手を貫いた。

 

 

「青山くんッ!?」

 

 

 緑谷が叫ぶ。光は、青山の【ネビルレーザー】だった。少し離れた草陰から、怯えた様子の青山が姿を覗かせる。今の今まで、姿を隠して潜んでいたのだ。偶然、(ヴィラン)の集合地点に居合わせた彼は、恐怖で縮こまっていた。しかし、奮闘する緑谷を見て、友人の危機を感じ、萎縮した心を奮い立たせた。

 その勇気は、しっかりと届いた。

 

 

「がはッ!」

 

 

 Mr.コンプレスの手が開かれる。

 ビー玉状の物が2つ、宙を舞った。

 

 

(これがっ!)

(最後のチャンス…!!)

 

 

 緑谷、轟、荼毘。3人が手を伸ばす。

 しかし緑谷は、腕の急な可動によって激痛に襲われ姿勢を崩す。

 残った2人が1つずつそれを手に取り、視線が交差する。

 

 

「くッ…!!」

「そっちはくれてやるよ、轟焦凍。──確認だ、解除しろ」

「あ〜クソ! 俺のショーが台無しだ!」

 

 

 荼毘に指示されたMr.コンプレスが憎々しげに指を鳴らし〝個性〟が解除される。【圧縮】されていた2人が姿を現す。

 

 轟の腕に、爆豪勝己が。

 

 そして荼毘の手に。

 

 

「空戸さんッ!!!」

「空戸ッ!!!」

 

 

 赤黒く染まったシャツを着た空戸移が、闇の中へ消えていく。継ぎ接ぎだらけの荼毘の顔が愉悦に歪む。

 

 やがて靄も消え去り、残されたのは茫然自失とした少年たちと轟々と蒼く燃える森の熱だけだった。

 

 

 

 







あぁ〜! 曇らせの音ォ〜!!


駆け足感が否めない…が、負け戦だからとっとと次行ってもらいました。

開闢行動隊とA組の動きは以下の通りです。

①移ちゃんの詳細な位置を【測位】の脳無で捕捉。他の目標もある程度確認し、作戦開始。
②ムーンフィッシュ、トガ、ミスターたちが移ちゃんを襲撃。同時に各地で戦闘開始。
③爆豪と轟が移ちゃんの下へ猛ダッシュ。同時刻、緑谷が洸汰の下へ猛ダッシュ&原作以上の速度で筋肉達磨を撃破(微強化の影響)。同時刻、ラグドールがネホヒャン脳無にやられる。
④爆豪と轟がムーンフィッシュを撃破。同時刻、緑谷が洸汰を相澤先生へ預ける。
⑤緑谷がマンダレイと合流。その後、爆豪がミスターに捕まる。
⑥離脱したトガ、出会したお茶子・梅雨ちゃんにちょっかいかける(描写なし)。同時刻、轟とミスターが追いかけっこ開始。同時刻、八百万がネホヒャン脳無にGPS装置を取り付ける(描写なし)。
⑦緑谷と轟が合流。緑谷猛ダッシュ。
(ヴィラン)たちがワイワイしてるところに緑谷乱入。
⑨爆豪奪還成功、移ちゃん奪還失敗。(ヴィラン)たち逃走。雄英敗北。


です。自分でも「そんな時間ある??」って突っ込んでしまう展開速度ですが…。…うーん、ヨシっ!!(現場猫感
原作では肝試し一番手だったためムーンフィッシュと遭遇した障子・常闇ペアですが、拙作では飯田たちと一緒に逃げています。活躍の場を奪ってしまって申し訳ない…。


次回に過去回を挟んで林間合宿編は終了です。対ありでした。

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