本誌ヒロアカ最終回目前なので初投稿です。
時系列が少しわかりにくいので補足。
林間合宿編の冒頭のシーンに戻ってきました。
僕は人気投票で毎回オルフォおじさんに投票するほど彼が好きです。
だから!いま!楽しい!!!
高評価をいただけるともっと楽しい!!!!
追記:ランキング9位!ありがとうございます!!
更に追記:編集して時系列を整理しました。
邂逅
硬く冷たい感触。薬品と微かな硝煙の匂い。近くで何か崩れる音。
視野がぼやける。霞んだ目を瞬かせてやっと見えてきたのは、リノリウムの床と淡い緑のランプ。薄暗い空間を照らすその光は、出口の方向を示す非常灯のようだった。
「ここは……」
のっそりと起き上がる。硬い床に横たわっていたにしては、どこにも不調はなく、労せず動けた。
辺りを見回す。其処彼処に瓦礫が落ちている。天井や壁が一部剥がれ落ちていた。ここは学校か病院、何らかの施設の廊下だろうと推測した。
違和感。否、既視感…。
事故か災害に遭ったと思わせるこの場所に、どこか懐かしさを感じる。同時に、焦燥感で喉の奥がひりつく。
心に沸いた不詳な感情に頭を悩ませること十数秒。ぼうっと立ち尽くしていた私は、漸く疑問を抱く。
何故私はここにいる?
そうだ。
最後に見たのは、増井の体が崩れて中から少女が現れたところ。〝個性〟で増井に化けていたんだ。単純なカラクリ。冷静に考えることができていれば、遅れを取ることはなかった筈。不意をつかれたとしても、いくらでも挽回できる場面だった。
そもそも、彼らはどうやって私のウィークポイントを把握したというのか。あの事件の犯人、増井については公安によって秘匿されている。他に知る者が居るとしたら…。
カツン、カツン──。
不意に廊下の先から響く足音が耳朶を打つ。
既視感が強くなる。
この光景。このシチュエーション。私には覚えがある。
寒さを感じる廊下で汗がつたった。近付く気配に、思わず後退りする。
(嗚呼…。そうだこの場所は…っ。私が、
思い起こすは負の感情を煮詰めた情景。醜悪なあの男と出会い、愚弄され、多くを奪われた地。積年の恨みと嫌悪が蝕むように湧き上がる。
足音が大きくなるに連れて廊下の先から闇が広がる。砂嵐のような影が空間を侵食していく。
足音が止む。薄暗い廊下で闇を背負った男が佇んでいる。
喪服のような背広。堂々たる体躯と焼けて潰れた顔面はあの頃と違ったが、厭らしく吊り上がった口角は記憶の通り。
「やあ。会えて嬉しいよ」
「オールフォー…ワン…ッ!!」
悪魔が、嗤っていた。
「へえ。僕のことを
「…惚けたことを。私たち家族にしてきたことを忘れたとでも? 教えられてないわけがないでしょう」
いけない。今のは失言だった。感情の昂りが抑えきれない。それで痛い目を見たばかりじゃあないか。この男に余計な情報を与えてはいけない。
冷静に対処しなければ…。
何故この場所に居るのか。理由は分からないが、兎に角ここから離れるべきだ。
「──あ、れ?」
そう考えて、いつものように〝個性〟を使おうとする。使おうとしたが、何も起きない。
「初対面だがキミのことは良く識っていてね。【スフィア】。とても素晴らしい〝個性〟を持っているじゃないか。それがあれば、僕から逃げることも、僕を細切れにすることも容易いだろう。──どうした? そのどちらもしないのかい?」
「そんな、まさか…。〝個性〟が…っ!」
〝個性〟が使えない!!
汗が吹き出す。これまで当たり前に使っていた〝個性〟。相澤先生に視られている時のように、使おうとしても使えない。巨悪を前に、全くの無力となっていることに気付かされた。
どうして〝個性〟が使えない?
まさか、既に
──カツン、カツン。
男が、
(まずい、まずいまずい! 〝個性〟なしに立ち向かう? 無謀が過ぎるッ!)
ひとまず距離を取ろうとするが、金縛りにかかったように体の自由が効かなくなる。
──カツン、カツン。
奴が私へ手を伸ばす。奴の掌に空いた穴がしっかりと見えた。きっとあの穴が〝個性〟を奪う仕組み。穴が、黒が、段々と大きくなり。
しかしピタリと止まる。1メートルほど前方。力んでいるのか小刻みに動くその手は、しかしパントマイムのように空中で固定されていた。
奴が背負っていた砂嵐のような影も、蠢きながらも侵食を止めている。
「──この子に触れるんじゃあない」
突然、背後から声が降ってきた。その声に伴い、
私は吸い寄せられるようにゆっくりと振り返る。そして、そこに在った顔を見て思考が停止した。
「………ぁえ、…………ぼ、く?」
体感で13年前。百有余年前は毎朝見てきた顔。
【前世】の私。前田世助が険しい表情をして私の背後に立っていた。
硬い処置台のような場所で四肢を固定されている私は、朧げながらこれまでのことを思い出す。
(合宿で襲われて…、気付いたら病院の廊下であの男と対峙した。そして
記憶を辿り出した答えは、さっきまでのことは夢だった、ということ。現実じゃあない。憤怒や焦燥は真に迫るものだった。思い出すだけで今でも鳥肌が立つ。
だが、最後のあれ。世助が私を助ける、なんてことはあり得ない。だって、僕は私で、大昔に死んでいる。ただの【記憶】で、〝異能〟の残穢。それが現れて助けてくれた?
「……酷い妄想ですね。笑えない」
鼻を鳴らして吐き捨てる。
そもそも、あれが現実ならば、今もこうしてジクジクと痛む胸と太ももの傷はどうしたのだ。あの瞬間、私は痛みを感じることなくすんなりと立ち上がっていた。【歯】の〝個性〟の男に刺された2箇所は、ある程度の治療を施されたようだが、存在を忘れるほど治癒できていない。身じろぎの僅かな振動でそれを実感している。
(それにしても、これはどんな状況です?
金属製の拘束具をもって固定されてはいるが、私にとってそれは無意味、解錠することも破壊することもなく容易に抜け出せる。流石にそれを想定していないことはないと思うが…。
深く考えても仕方がない。奴らは、私が目覚めると考えてなかったのかもしれない。いずれにしてもこれはチャンス。ここが何処なのか知らないが、深海や大気圏外でもない限り、私が逃げられない道理がない。
(考えるのは後回し。まずはこの悪趣味で時代錯誤な拘束からの脱出です。【
──BZZZZT!!!
「〜〜〜っっ!!? あああぁああぁッ!!!」
体が跳ね上がる。激痛が全身を襲い、一瞬、頭が真っ白になった。数秒か数十秒か。息も出来ないほどの突然の痛みは、これまた突然過ぎ去った。
ドッドッドっと心臓が激しく鳴る。息を忘れていた体は、酸素を求めて無理矢理空気を吸い込んだ。
「──ハァッ、ハァ、ハァ、はぅッ! げほっげほっ!」
咳の振動が傷口を刺激した。無意識に右脇を押さえるため腕を動かそうとするが、腕輪が皮膚に食い込むだけに終わる。ただただ耐えるほかなかった。
「──キミのために用意した最上級のベッドだ。良い目覚めになったろう?」
いつからそこに居たのか。腹に響くようなバリトンが、息をすることすらやっとの私を穿つ。
「脳波を読み取ることで〝個性〟の使用を感知する仕組みでね。入った経験はないけど、タルタロスでも採用されているそうだ。死にはしないが、キミを無力化するには丁度良いと思ってね」
フルフェイスの防毒マスクのようなものを被った人物が、楽しそうに言う。見る者を威圧するそのマスクの下は、きっと笑みを携えているのだろう。
ああ…。
「さて。話をしようか。空戸移」
悪が再来した。
「本題に入る前にまずはキミが抱く疑問から解消していくとしよう。混乱したままだと、まともに問答も出来ないだろう」
僕は親切なんだ、と恩着せがましく続ける。
「まず前提として、さっきのは夢じゃない。まるっきり現実というわけでもないけどね。僕とキミが会話したのは事実だ」
あの病院が夢じゃあないとは俄かに信じがたいが、この男も認識している以上、うそではないのだろう。しかし、奪った〝個性〟による幻覚という線も捨ててはならない。疑ってかかった方が良い。
「キミがここにいるのは、僕が弔に命じたからだ。識っての通り、僕は
「……それは残念でしたね。彼は6歳児にしてやられましたよ」
「そう、それだよ。キミはあの洗脳を打ち破った! 土壇場で〝個性〟が成長した? いや、その程度のことで回避できるとは思えない。キミ自身に秘密があると僕は睨んでいる。──先ほどキミの背後にいた男と、キミに隠されたもうひとつの〝個性〟が関係しているのかな?」
心臓が跳ね上がる。なぜ、こいつが〝個性〟のことを知っているんだ。
マスクの裏で男の笑みが深まる気配がした。
「図星かい? 〝個性〟のことなら隠しても無駄だよ。ラグドールの〝個性〟を知っているだろう? 僕は良い〝個性〟を見るとつい欲しくなってしまうんだ。前々から気になっていたからね、拝借させてもらったよ。実に良い〝個性〟だよ、彼女の【サーチ】は」
〝個性〟【サーチ】…。そんな…。ラグドールまで誘拐されてしまっていたなんて…!
こめかみに汗が伝う。拘束された私はそれを拭うことすらできない。
尊大な動作で腕を私に向けた
じくじくした痛みに呻きが漏れた。
「見せてもらうよ、キミの裏側を。
──【個性強制発動】」
ヒロアカ終わっちまうよぉおおおお!!!!!
堀越先生おつかれさまでしたぁあああ!!!!!!!