TSテレポーターのヒーローアカデミア   作:tsuna屋

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前回のあらすじ

おるふぉおじさんの【個性強制発動】により自身も知らない前田世助の実態を暴かれた移ちゃん。
可哀想だから助けてあげるよって言われたけど…。





原点

 

 

 

 さっきのヴィジョンに嘘はなかったように思う。

 あれは確かに前田世助の──正しくはその〝個性〟の──辿った過去であり、私に【記憶】が宿った経緯だった。

 

 不可抗力なのだろう。少なくとも世助が悪意を持って私に〝個性〟を使ったわけではない。寧ろ、〝個性〟事故により重傷を負い死の未来にあった私を生かしたのは、彼がいたからこそ。感謝こそすれど批難することはない。

 

 〝彼〟…か。

 

 どうやら私はすでに、『私』と、私の中にいる存在を違う人格と認識したようだ。依然として〝前田世助〟の人生の延長線上に〝空戸移〟があると捉えているにも関わらず。

 

 異なる人格だと認識した理由。それは〝個性〟として私たちの中で生きてきた彼に、たとえ肉体がなくとも、その想いと意志が、生きた人間のものだと感じたからだ。

 苦悩と後悔と怨恨と、そして深い愛情。

 私の中で、いや、『私たち』の中で何十年も生き続けた『1人の人間』だと。

 あれは、確かに私ではない()()()だった。

 

 

 では、私は何者だ。

 

 

 認識している過去は他人のもので。その過去の上に築いてきた私の人生を、私はどう捉えたら良い。

 

 

 私は、どうしたらいい…? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっごーい! 空戸っ、凄かったよーっ!!」

 

 

「びっくりしたぜ! 俺が走り出した時にはもうゴールしてんだもんなぁ!」

 

 

「MVPは文句なし! 空戸少女だ! 自分たちと相手の〝個性〟をよく理解した上で適切な行動を取れていて実に良かった! 見事だぞ、空戸少女!」

 

 

「空戸さんみたいな実力のある人にアドバイスを貰えるなんて、心強いよ!」

 

 

 

 …違う。私は、〝私は〟どうしたい。

 

 

 

「──空戸さん、キミに託します。」

 

 

「でもでも、移ちゃんのおかげで先生たちが駆けつけてくれたんだよね! あの靄の時も助けてもらったし、ほんとありがとう!」

 

 

「…ああ。キミなら絶対になれるとも!」

 

 

「俺ぁ感動したぜ! 漢気を感じた!!」

 

 

「今回は負けねえッ! 俺が〝イチバン〟だ、ってえことを証明してやるよッ!!」

 

 

 

 私は、ヒーロー科の生徒だ。

 

 

 

「──貴女は、何も悪くない。あの日のことも、【生まれ変わった】ことも。誰も貴女を責めたりなんてしないわ。私たちは、貴女を愛している。貴女は私の大事な大事な孫娘なのよ」

 

 

「だから、大丈夫よ。私の…私たちのかわいい移ちゃん」

 

 

 

 私は、お父さんたちの娘。

 空戸家の人間だ。

 

 

 

「テレスキュウさん、ついて来れる? ──上出来」

 

 

「お前は立派だよ。俺の先を行くライバルで、彼らにとっては紛れもない〝ヒーロー〟だった。だから、…そう自分を責めないでやってくれないか」

 

 

「仮免許試験に合格したらまた来なよ」

 

 

「被害も最小限、かつ迅速な解決。見事だね」

 

 

「〝個性伸ばし〟の成果がしっかりと出ている。自主トレだから少し心配だったんだが……、良くやったな」

 

 

 

 〝ヒーロー〟になる。それが私の目指した未来。

 その理由はなんだったか。

 空戸家の娘になるため。

 奪ってしまった少女の人生に報いるため。

 

 これらの動機は、どうやら根本からズレていたようだけど…。

 

 

 

「空戸のこと気持ち悪いなんて、そんなこと絶対思わないっ! 思うわけないじゃん!!」

 

 

「勇気を出して、教えてくれて、ありがとう」

 

 

「どんな貴女でも、移ちゃんは移ちゃんよ。私の大切なお友達だわ。それは覚えておいてほしいの」

 

 

『キミの【前世】が何者だろうと、その記憶を持っていようと。キミが、私たちの娘であることに変わりはないんだよ。移。キミは私たちの大切な愛おしい、たった1人のかわいい自慢の娘だよ』

 

 

 

 …そうだね。私は始まりから間違えていた。

 〝ヒーロー〟であろうとなかろうと、私は私。みんなずっと言ってくれていたじゃあないか。

 報いることを、だれも強いてはいなかったんだ。

 

 なら〝ヒーロー〟を目指すことは失敗だった? 

 人助けをしたいなら、目指す夢は危険のない医者でも良かった筈。なのに、私は〝ヒーロー〟になることを選んだ。

 

 それは何故だ。

 

 無数にあった未来から、私が選んだその道にどんな意志が宿っていたのだっけ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、空戸少女! 見事な優勝だ!」

 

 

 

 

 ──ああ、そうだった。

 

 

 

 

「爆豪少年の猛追を躱しつつ、限られた空間全てを活用するその手腕! 素晴らしかったよ!」

 

 

 

 

 〝私〟が生まれた日。

 その日に目撃した平和な世界。悪が蔓延る超常黎明期(過去)を打開し、平穏な今を作り出した圧倒的な個人(超人)

 混沌から秩序をもたらした英雄。

 

 

 

 

「キミはいつか私に並び立ち、そして超えていく。そんなヒーローになると私は予感しているよ」

 

 

 

 

 

 そんな〝ヒーロー〟に憧れた。

 だから、私は──。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 


 

 

 


 

 

 

 そうだ。

 この男に言われるまでもない。とうの昔に私は『私』だ。

 何が混ざっていようと、みんなが今の私を認めてくれている。それだけで充分じゃあないか。

 しっかりと。目の前の巨悪を睨みつける。

 

 

「──私が、貴方の手を取ることは、あり得ません」

 

 

 迷いはもうない。

 恐怖も、憎悪も、悔恨も、自虐も。今、この瞬間に必要ない。

 私に求められるのは。

 

 

「私は、空戸移は。

 ──〝トップヒーロー〟になる女です」

 

 

 巨悪に屈さぬ意志の力──! 

 

 

「…トップヒーロー、ねえ。キミもオールマイトに憧れた口かい?」

 

 

 AFO(オールフォーワン)は面白くなさそうに返答した。同時に、先ほどまで感じていた『圧』が緩和したようだった。

 そう、そうだ。これでいい。この男のペースに呑まれるな。そして時間を稼ぐんだ。この絶望的な状況をひっくり返す活路。会話を引き伸ばしてヒーローたちが辿り着く時間を稼ぐ…! 

 

 

「…ええ。かつて貴方を阻んだこともある彼に並び立ち、いずれは超えるつもりです」

 

 

 オールマイトに敗れた経験を持つこの男には耳の痛い言葉だろう。奴のペースを崩してイニシアチブを握るんだ。

 

 

「勇ましいじゃないか。彼を超える、結構なことだ。──無様に張り付けられていなければ格好ついたと思うぜ」

 

 

 ひんやりとした拘束具が皮膚に食い込む。ガチャンと無機質な音が暗闇へ消えていく。

 

 …そうだ。この拘束だ。考える暇もなかったが、よくよく考えると〝やはりこれはおかしい〟。

 

 

「…その無様な拘束をした意味が分かりませんね。目覚める前に私の〝個性〟を取り除けば、こんな手間も資金もかかる拘束の必要はなかった筈です」

 

 

 そうなのだ。この男の〝個性〟は【奪い与える】と聞いている。AFO(オールフォーワン)の言葉を信じるなら、ラグドールの〝個性〟はすでに奪われている。ならば何故、私は奪われていない? 

 ラグドールが【奪われて】、私は【奪われて】いない理由。奴の〝個性〟の発動条件を満たしていないのかもしれない。奪えるのであれば、そうしない理由がない。

 

 きっと答えはこれまでの問答にあるはずだ。

 

 奴が持ち掛けてきた提案。『癌細胞を取り除く』、そのために『委ねなさい』と言っていた。もしや、奪うには同意がいるのではないだろうか。全ての状況で相手の同意を用するのかは分からない。しかし、今この状況においては必要なのではないか。

 確証はない。だが、そこを揺さぶる価値はある。

 

 

「しかし、私の〝個性〟は依然ここにある。妙ですよね。どうして奪っていないのです? ──奪わない、ではなく奪えないのですね? 私の〝個性〟も世助の〝個性〟も。

 だから貴方は欲した。『委ねろ』と、私の同意を…!」

 

 

 揺さぶれ。そして時間を稼ぐんだ。奴の気を惹き会話を長引かせる! 

 公安が、ヒーローたちがここを見つけるためにできる限りのことをしろ!! 

 

 

「ふむ。概ねその通りだ。この僕を前にしてそこまで冷静に分析できたことは素直に褒めておこう」

 

「!! やはりそうなん──」

 

「だがよく喋る。──時間を稼いでいるつもりかい?」

 

 

 再びガシャンと拘束具が鳴った。

 

 

「〝特殊個性所持者保護プログラム〟…僕が知らないとでも思ったか? その可能性を考慮していないとでも?」

 

「…なにが言いたいのですか」

 

「本当に何の策も講じずに僕が現れると? 平穏しか知らぬ楽観的で愚鈍な思考だ。首の〝マーキング〟はすでに無効済みさ。公安はキミの居場所を辿れない。簡単に言おう。

 ──〝ヒーロー〟は来ない」

 

 

 表情を繕えない。焦りが顔に浮かぶ。()()に何かをされた痛みはない。だが、奴の言葉に嘘がなければ、昔公安に仕込んでもらった〝チップ〟は既にもう…。

 

 

「さっきまでの威勢はどうした? やはりただの虚勢だったか。愚かにも夢を抱いてしまったのだね。あの男に、オールマイトに魅せられて自分も英雄になれると。所詮キミは、先祖に呪われただけの只のモブに過ぎないというのに。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()でどうにか出来る筈がないだろう? それに、キミが僕の提案に応じても拒否しても、キミの辿る道はどうせ同じだ」

 

 

 頰を吊り上げたAFO(オールフォーワン)が私に向けて手をかざす。掌から緩やかに溢れ出した煙が私の顔を覆った。

 口を閉じて息を止めるが一分も保たず、大きく煙を吸い込んでしまう。

 どうにかせねばと一縷の望みをもって〝個性〟を使おうとしたが、再び全身に激しい痛みが襲う。

 

 

「安心しろよ、毒じゃない。これから行う()()のための薬さ」

 

 

 四肢の痺れを感じつつも、頭が朦朧とする。

 急激な眠気と脱力感が全身を覆う。

 

 

「せっかくだから教えておこう。僕が奪えなかった〝個性〟はキミで二つ目だ。キミと、それからオールマイトの〝個性〟さ」

 

「オール、マイト…?」

 

「正直言って、ただの医者でしかなかった彼の〝個性〟が奪えないことには驚いたよ。キミの〝個性〟(【スフィア】)だけ取り出せないのも彼の〝個性〟が癒着し絡みついているせいだろうね。しかしどちらも解決の目処は立っている。キミのことを調べ上げれば、僕の()はより確実な物となるだろう」

 

 

 ああ………。

 

 

「感謝するよ。キミから得られる情報であのウドを窮地に追い込める! 分の悪い賭けだったが、この道をより信じられるようになった!」

 

 

 ごめんなさい……お婆ちゃん………。

 

 

「…疲れたろう、眠りなさい。もう二度と、キミが思考を巡らす必要はない」

 

 

 私の……私、は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 


 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんと。個性因子にある種のセーブ機構が組み込まれておる。これでは抽出は諦めるしかないのう」

 

「歴代OFA継承者の個性因子と類似性が見られる…。これがAFO(オールフォーワン)を阻んでいたわけか」 

 

「おもしろい! 実に調べ甲斐のある検体じゃ!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はもう〝ヒーロー〟を侮らない。持てるすべてでオールマイトの残滓どもを粉にする。次で最後にする。──それで、どうして雄英のガキがここにいる?」

 

「これの個性因子はどうやら特殊な変化が起きていてのう。無理に脳無にも出来んからここで保管してあるんじゃ」

 

「なーに、安心せえ。施術を終えた後のお主ならば問題なく【奪える】筈じゃ」

 

「壊したと思ってたモンが生きてんのは面白くねぇんだけどなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルナ・アークッ!」

 

 

「空戸! …助けるの遅くなって、すまねえッ!」

 

 

 「エクスレス! 死柄木頼む!」

 

 
 
 「もう終わりじゃ。終わってしまう…。魔王の…夢が…」

 
 
「イレイザー! 助けたぜ! それに捕まえた!」 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「全員退避! ヒビに触れるな! 死ぬぞ!!」 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 「お前たちの積み重ねなど彼の目覚めのひと撫でで瓦解する! わしらの! 勝ちじゃあ!」
 
 
 

「ただ一手! 死柄木の目覚め! この一手ですべてが覆った!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「なんだ…なんなんだこれはよぉ…。おれたちは夢でも見てんのか…」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きて、移ちゃん」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 






1年間お待たせしました。
あと1話だけできていますが『今から続きを書き始めます』
ので、再びお待たせすることになります…。
すみません。

幕間挟んでから原作の最終章です。

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