TSテレポーターのヒーローアカデミア   作:tsuna屋

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最新話更新してないけどタイトルに〝TS〟を足した途端にUAが伸びました。
TSは正義ってハッキリわかんだね。

お待たせしました、訓練終了後のあれこれです。


訓練後

 それからの三戦は、流石天下の雄英生といった感じだった。

 

 私たちの次に行われた第三戦は、推薦合格者の〝轟 焦凍〟による一手で決着した。

 彼の〝個性〟は【氷を生み出す】系統らしく、その威力は数秒の内に5階建てのビル全体を氷結させる程だった。

 身動きを取れなくなった敵チームに対して、轟は余裕綽々といった様子で核兵器に触れて危なげなく勝利した。

 

 続く第四戦では、全員が自身の〝個性〟を最大限活用して熱戦を繰り広げた。防衛に強い切島と瀬呂に対して、攻守優れる梅雨ちゃんと常闇の戦いは、観戦する私たちにも得るものが多かった。

 

 最終戦は敵チームの八百万が〝個性〟【創造】により強固な牙城を作り上げていた。ヒーローチームの芦戸と〝青山 優雅〟も高い攻撃力で奮闘するも、短い準備時間ながら緻密に組まれたバリケードとトラップに阻まれてしまい、会敵することなくタイムアップとなっていた。

 

 全員が全員、あの入学試験を合格しただけあって、〝個性〟の使い方や身体能力が高く、戦闘服を着ていることもあり、まさしく〝ヒーローの卵〟といった様子だ。

 実技試験では一位を取れていたみたいだが、試験内容が違えばどうなるかわからない。サボるつもりは毛頭なかったが、より一層、身を引き締めて訓練に挑まなければいけないだろう。

 

 全員の戦闘訓練が終了して、私たちはオールマイトの指示の下、グラウンドβの出入口に再集合した。

 

 

「お疲れさん!」

 

 

 素敵なアメリカンスマイルをしたオールマイトが言う。

 

 

「緑谷少年以外は大きな怪我もなし。しかし、真剣に取り組んだ。初めての訓練にしちゃみんな上出来だったぜ!」

(…そう言えば緑谷は昨日も今日も、〝個性〟を使う度に怪我をしていましたね)

 

 

 地味目な外見ながら、ぶっ飛んだ行動や結果を残す同級生を思い出す。

 自分の〝個性〟で怪我をするなんて、彼は〝個性〟が体と合ってないんだろうか。今後もあんな調子だと、ちょっと心配だな。

 

 

(なにか、力になれることがあれば協力したいですけど…)

 

 

 私も昔は──〝移〟としての子供時代では──〝個性〟の制御に苦労した質だ。彼の【増強系】と私の〝個性〟では勝手が違うだろうけど、何らかのアドバイスが出来るかもしれない。緑谷さえ良ければ、近いうちに話してみようか。

 

 

「──それじゃあ、私は緑谷少年に講評を聞かせねば! 着替えて教室にお戻り〜!」

 

 

 バビューンッ!! と効果音が聞こえて来るほどの速度で去っていくオールマイトは、あっという間に姿が見えなくなった。

 上鳴や峰田が「すっげぇ」やら「かっけぇ」やら呟いていたが、完全に同意である。

 走り姿だけでこれほど魅了されるのだから、そりゃあ人気投票一位になれる筈だ。

 

 それから訓練のことでワイワイ盛り上がりながら、私たちは更衣室へと足を運んだ。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 ──夕方。

 

 初の戦闘訓練で大怪我をし気絶した緑谷は、養護教諭の〝リカバリーガール〟の下へ運ばれて今の今まで意識を失っていた。

 入学2日目にして午後の授業を病欠してしまった彼は、勉強に遅れることよりも強烈な担任からお叱りを受けることに対して憂鬱になっていた。

 

 

「──あれ、緑谷。右腕は治してもらえなかったんですか?」

 

 

 とぼとぼと教室に向かっていた緑谷に正面から声がかかる。俯いていた彼が顔を上げると、見覚えのある女子──クラスメイトの移がそこにいた。

 疲労困憊といった様子だった緑谷は一気に覚醒し、見るからにアタフタとする。移は知るよしもないが、実は緑谷という男は、これまでの人生で女子とまともに会話したことなどほとんどない。数少ないまともな会話も、雄英に入学してからだ。

 幼馴染からは〝クソナード〟と蔑称で呼ばれる緑谷は、その通りナード(恋愛に奥手)であった。

 

 

「あ、いや! こ、これは、僕の体力のあれで…!」

「…ああ、確かリカバリーガールの【治癒】は相手の体力を消耗してしまうんでしたね。そういうことですか」

「う、うん! そうなんだ。だから、これはリカバリーガールのせいではなくて完全に僕が怪我をし過ぎたせいであって、寧ろあんな大怪我をしてもたった半日でここまで治癒してしまうリカバリーガールの〝個性〟は本当に凄いって言うか、間近で見せていただいて思ったことがあって、やっぱり彼女の〝個性〟の素晴らしいところは──」

 

 

 そして、これも緑谷の特徴だった。さっきまでの吃音はどこにいったのやら、彼は趣味(ヒーロー雑学)の話を始めると饒舌になる生粋のオタク気質なのだ。

 ブツブツとリカバリーガールの現役時代の活躍から〝個性〟の有用性まで呟く彼に、移は呆気に取られていた。しかし、思わずといった様子でクスリと笑った。

 

 

「──ハッ! ごごご、ごめん!! 急にこんな話始めちゃって…!!」

 

 

 やらかした、と思った。同時に恥ずかしさから顔が真っ赤になる。昨日今日知り合った、しかも会話も碌にしたことがない異性にいつもの調子で雑学を語ってしまった。最早癖になっているこの行動は、側から見たら気味悪く映ることは理解していたというのに…。

 しかし、続く移の言葉は、中学の頃の周りの反応とは違っていた。

 

 

「すみません、〝ヒーロー〟…好きなんだなってとても伝わってきたものですから、つい」

 

 

 朗らかな笑顔を浮かべて真っ直ぐ緑谷を見つめる移には、嘲笑するような様子は微塵もなかった。

 

 

「実は、私も好きなんです。オタク…というより、ミーハーですかね? さっきの緑谷ほど語れはしませんが、私も結構詳しいんですよ?」

 

 

 移は腰の後ろで両手を組み悪戯っぽく緑谷を覗き込んだ。さっきまでと違う意味で緑谷の顔が赤くなった。

「あ、え、ど、うぇ?」と、今までにない反応と異性の接近により、緑谷の言語中枢は故障した。実にナードである。

 緑谷の混乱を知ってか知らずか、移は思い出したかのように「そうだ」と呟き、彼に更なる爆弾を落とす。

 

 

「緑谷って、体と〝個性〟が合っていなかったりしません?」

 

 

 それは、緑谷にとって最大級の秘密にまつわる質問だった。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

 放課後になり、とある質問と要望を伝えるため職員室に向かっていた私は、戦闘訓練で大怪我を負った緑谷と廊下で遭遇した。

 二言三言話すと急に怒涛のヒーロートークが始まり度肝を抜かれたが、彼の中にヒーローへの愛を感じて親近感が湧いた。何を隠そう、私はかなりのヒーローオタクなのだ。【前世】ではフィクションでしかなかった〝ヒーロー〟が現実に存在している。超常黎明期以前に刊行されていたアメコミやそれを元にした映画などは、〝前田 世助〟時代にかなーり嵌まったものだ。そんなアメコミヒーローのような存在が〝ヒーロー飽和時代〟と言われるほど沢山居る。

 ──これを目の当たりにして我慢できるものか。

 

 そんなわけで、私はいま、同類(ヒーローオタク)と出会ったことで大変気分が良かった。興奮して思わず彼に近寄り過ぎるほどに。

 

 

(と…、いけませんね。あんまりはしたないことをしていては、またお婆ちゃんに叱られちゃいます)

 

 

 前のめりになっていた体を戻し冷静さを取り戻しつつ、そういえば彼に伝えておきたいことがあったと思い出す。

 昼間に感じた、彼の体と〝個性〟のことだ。

 

 

「緑谷って、体と〝個性〟が合っていなかったりしません?」

「………えっ」

 

 

 緑谷は目が点になり口を大きく開けた。…うーん、なんか訊かれたくないことだったんだろうか。

 途中で止めるわけにもいかず、私は会話を続ける。

 

 

「昨日も今日も、〝個性〟を使ったら体が耐えられずに大怪我していますよね。それって、〝個性〟を発現したての幼児に見られる現象だと思うんですけど、今までどうしてたのかなーっと気になりまして…。すみません、不躾が過ぎましたかね…」

 

 

 緑谷の〝個性〟について力になれるかもと思い話し始めたが、なんだか失礼な人になってしまっている気がする。

 彼の反応を窺っていると、突然再起動したように明後日の方向に視線を向けて話し始めた。

 

 

「いや! 確かにその通りで、なんて言うか僕の〝個性〟は強力過ぎて扱いきれていないんだ。少しずつ慣れていこうとしているんだけど、まだまだ上手くいかなくて…」

 

 

 緑谷は気に障った様子はなさそうだが、何か隠しているような、それでいて真剣に悩んでいるようだった。

 

 

(ま、知り合った直後ですし、あんまり踏み込むのも良くないですよね)

 

 

 分かっていたことだが、緑谷は〝個性〟制御に難航しているようだ。出会って2日目、悩みにあんまり深く突っ込むのも悪いと思い直し、とりあえず最低限伝えたいことだけ言うことにした。

 

 

「緑谷。私とキミの〝個性〟って系統はだいぶ違いますが、私も昔は〝個性〟の制御に凄く苦労したんですよ」

「…空戸さん?」

「それで、えーと。もし緑谷が〝個性〟制御で悩みを抱えているなら、私の経験から何か教えられることがあるかなーって思いまして」

 

 

 拙い説明だったが、私の意図を理解してくれたらしく、緑谷はパーっと嬉しそうに笑った。

 

 

「あ、ありがとう! 実は〝個性〟についてオ…、お師匠に教えてもらってはいるんだけど、それでも行き詰まっていたところなんだ! 空戸さんみたいな実力のある人にアドバイスを貰えるなんて、心強いよ!」

(うわ、急に褒められた! やめろよ、嬉しいでしょ…!)

 

 

 不意打ちで裏のない顔で褒められたことで動揺してしまった。いや、しかし緑谷には師匠がいたのか。それなら、私が出る幕はないような気がするけど、緑谷が求めてくれるのなら出来る限りのことはしよう。

 私は表情に気を遣いつつ、緑谷に向き直る。

 

 

「ええ、今日はもう遅いですが、また時間のある時にでも。──そう言えば、緑谷は教室に戻るところでしたよね? すみません、長く引き止めてしまって」

「ううん! こっちこそごめんね。空戸さんは、今から帰るところだった?」

 

 

 そうだった。緑谷に言われて、自分の用事を思い出した。

 私は、職員室──正確には、担任の相澤先生に話をするために向かう途中だったことを緑谷に伝えた。相澤先生がいつまで学校にいるかわからないし、そろそろ向かわないといけない。

 

 

「じゃあ、私はこれで。──あ、そうそう。私は参加できませんが、教室で殆ど全員が残って訓練の振り返りをしてました。結構有意義になりそうでしたよ」

「そうなんだ、そりゃ急がなきゃ! …、ほとんど?」

 

 

 私が付け足すように教室のことを伝えると、緑谷は「まずい」とでも言うような顔をした。なんだろう、彼は表情がコロコロ変わるな。

 

 

「あの、空戸さん、かっちゃんは…」

「かっちゃん…?」

 

 

 かっちゃんって誰っちゃん? と少し悩んだが、そういえば緑谷は爆豪のことをそう呼んでいたのを思い出した。

 

 

「爆豪のことなら、参加せずに帰りましたよ。私が教室を出る少し前でしたかね…」

「っ!! ごめん空戸さん、用事を思い出した!」

 

 

 バッと踵を返して廊下を走り出す緑谷。爆豪のことを聞いてあの反応ってことは、彼に話でもあったのだろうか。なんだか、二人は因縁がありそうな様子だったから、それ関係かと思うが…。

 

 

(あの怪我でよくダッシュできますねー)

 

 

 痛みを感じさせない様子に、私は素直に感心した。

 

 

 

 ▽ ▽ ▽

 

 

 

「『〝個性伸ばし〟について』…?」

 

 

 職員室には目的だった相澤先生が残っており、早速彼に相談を持ち掛けた。椅子に座りながら内容を聞いた先生は、目を丸くして不思議そうな顔をした。

 

 

「はい、許可を頂ければ、学校にいる間は【空間探知(ディテクト)】を展開して持続時間の増加や探知精度の強化を図りたいのですが…、ダメでしょうか」

 

 

 〝個性伸ばし〟

 それは、一般人には馴染みのない言葉だ。しかし、ヒーローにとってはスタンダードな訓練の一つである。

 現代では、〝個性〟は身体機能の一つに過ぎない、というのが基本通念だ。筋肉を鍛えるために負荷を掛けるように、〝個性〟を酷使すれば限界値は伸びていく。もちろん、筋トレと同じでやり方を間違えると効果的でないばかりか体を壊すことに繋がるが、正しく〝個性伸ばし〟を行うことは、ヒーローを目指す上で必須の訓練なのだ。

 

 

「いや、ダメではないが…。──ああ、そう言えばお前の家族はプロヒーローだったか」

「………はい、同居している祖母が元プロヒーローです」

 

 

 ああ、先生が不思議そうにしていたのは、私が授業で習っていない〝個性伸ばし〟について知っていたからか。

 先生が指摘したように、私のお婆ちゃんは元プロヒーローである。私がヒーローを目指すようになってから稽古をつけてくれたのがお婆ちゃんだ。

 お婆ちゃんは元プロヒーローだけあって、自宅には稽古をするための稽古場が併設されている。私が〝個性伸ばし〟を知っていたのは、昔から稽古場でそれを実践していたからだ。

 

 先生は下を向き頭をガシガシと掻いた後に、眠たげだが意志のこもった目でこちらを見上げる。

 

 

「本来なら授業で〝個性伸ばし〟をするのはずっと先なんだがな。お前の場合、前から家でやってた訳だな?」

「はい。合法的に〝個性〟を使えるのは自宅くらいですから、最近は寝る時以外は探知するようにしてました」

 

 

 許可なく公共の場で〝個性〟を使用するのは犯罪行為であり、【空間探知(ディテクト)】を使用しても誰にもバレることはないと言っても違法は違法だ。それは学校であっても同様で、先生の許可なく勝手に〝個性伸ばし〟を行うのはルール違反に当たる。

 今までは自宅か民間の〝訓練場〟をレンタルした時しか出来なかったが、プロヒーローが在籍している雄英なら広範囲の探知を長時間訓練できる訳だ。出来るなら早いに越したことはない。

 

 

「…条件付きで許可しよう。分かっているだろうが、探知する範囲は雄英の敷地内に収めること。授業中は実施しないこと。職員室や更衣室・トイレなどは対象から外すこと。これを守るならやっても構わない」

 

 

 指を三本立てて先生は条件を提示してきた。どれも想定していた内容だ。流石自由が校風の雄英高校、融通が効いて助かる。

 

 

「わかりました。当分の間は校舎内は探知せずに有効範囲ギリギリの屋外に絞って訓練しようと思います」

 

 

 校舎内から【空間探知(ディテクト)】したとしても、意識の外に置いたら職員室等を探知することはない。人間が視界に入っているもの全てが見えている訳ではないように、私の探知も意図して使わない限り全て網羅しないのだ。じゃないと、情報量に頭がパンクしてしまう。

 

 相澤先生にお礼を言い、職員室を退室する。これで自宅の訓練でネックだった長距離の探知精度の上達に取り掛かれるだろう。

 新しい訓練方法を獲得したことで、私は上機嫌で教室へと戻るのだった。

 

 

 




移の〝個性〟はかなり複雑です。情報を小出しにしていくので「なんのこっちゃ?」と思うかもしれませんが、今後をお待ちいただけると助かります。

USJ終了までは、不定期で更新する予定です。よろしくお願いします。
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