見えない世界で少年は彼女達と出会った…   作:とあるP

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エピソード002 新たなる世界

音葉が学園から帰って部屋で勉強していると部屋に燐子と雫が入って来る気配がしたので、一旦勉強の手を止めた。

 

「音葉入るわよ」

 

「…うん」

 

「それでどうだった?初めての学校は?」

 

「…授業はオリエンテーションだけだったから、本格的なのは明日からかな?」

 

「そうなのね。他はどうだった?」

 

「…姉さんの挨拶良かったよ」

 

「え!あ、ありがとう///」

 

「あとは…知らない女子にお化け呼ばわりしたくらいかな?」

 

『え?』

 

それを聞いた途端雫と燐子の顔が強張った。愛しの我が子をお化け呼ばわりした子を生かしておくべきかと…

 

「…だけど、仕方ないよね。女子高に男の僕が通っている自体おかしいんだもん」

 

「…音葉」

 

「大丈夫だよ。お姉ちゃんが一緒だもん」

 

「そうよ音葉。だから、気にしないでね」

 

「…わかったよ」

 

そう言って、音葉は宿題の続きと予習を済ませるのであった。お風呂は手すりを使い何とか入っている。十分に暖まるとパジャマ姿になり、部屋へと戻っていく。

 

「それじゃあ母さん。姉さんおやすみ」

 

『おやすみ~』

 

 

 

次の日。燐子は早めに起きて身支度をしていた。今日から音葉と一緒に登校する為である。眠い目を擦りながら準備をしていると、音葉も身支度を済ませて起きてきた。

 

「…おはよう」

 

『おはよう音葉』

 

「…姉さん?何だか今日は早いね?」

 

「…うん。今日から音葉と一緒に登校するから?」

 

「…はい?」

 

「…聞こえなかった?今日から「違う違う!」どうしたの?」

 

「…どうして一緒に行く事になっているのか聞いているの」

 

「…だって、心配何だもん」

 

見えないけど、姉さんが心配しているのはわかる。けど、女学園に男子と一緒に行って変な噂が立たないか心配している。

 

「大丈夫よ。音葉が気にしている事はないから」

 

「…母さん?ホントに?」

 

「ええ、燐子が行くのはあくまで校門前までだから。そこからは咲が迎えに来る予定だから心配しなくても大丈夫よ」

 

「…ならいいけど…」

 

「…うん。けど、お姉ちゃん頑張るね」

 

頑張るって何をって思ったが、そこは黙っておくことにした。音葉は、ここまでしてくれた姉の頑張りを無下にしたくないと思い、結局は一緒に行く事になったのだ。

 

そして、ご飯と白杖を持って2人は家を出て行く。

 

『いってきま~す』

 

「はい、いってらっしゃい。あ、そうそう母さん今日遅くなるから、夕飯は2人で食べておいてね」

 

「…わかったよ」

 

「…うん」

 

そう言って、2人は出て行くのであった。車道側を燐子が、歩道を音葉が歩く形で登校して行った。桜並木がまだ明るくなる前だったので、少しだけ肌寒い。

 

そんな中を燐子と音葉は手をつないで歩いていた。そして、校門前の前までたどり着くと燐子と別れるのであった。

 

「じゃあまたお昼休みね」

 

「…うん」

 

そして、咲が来るまで待っていると、誰かが来る雰囲気があった。そちらに顔を向けると凛とした声が聞こえてきた。

 

「貴方は誰ですか?ここは女学園ですよ」

 

「…えっと…」

 

「それに、ここの制服を着ているとは…もしかして不審者ですか」

 

「えっと…」

 

流石に不審者扱いはマズイと思ったが、運よく咲が現れたので不審者にはならなかった。

 

「あ!いたいた!音葉く~ん」

 

「あ、白瀬先生」

 

「先生…この人は誰ですか?」

 

「この人は白金音葉くん。燐子さんの弟さんよ」

 

「白金さんの…それでも彼は男の子ですよ。何か特別な事情があるんですか?」

 

「えっと…音葉くん言っても大丈夫?」

 

「…はい。えっと…貴女は今どこを(・・・・)向いていますか?」

 

「それは貴方の正面を…え?」

 

「そうなのよ。この子はね、目が見えていないの(・・・・・・・・・)

 

その話しを聞いた少女は驚いた。けど、疑問もでた。なぜここ花咲川女学園に来たのか?他に行くところはなかったのか?そして、そこまでして通いたい気持ちは何なのか?

 

しかし、そんな事を考えている内に徐々に生徒達が集まって来た。音葉は咲に教室に連れて行くように指示した。

 

「…先生そろそろ」

 

「うん。そうね、それじゃあまたね氷川さん(・・・・)

 

「ええ…」

 

そう言って、少女…氷川さんと別れた。その後咲と一緒に特別教室に来た音葉はいつも通りのSHRを行って授業を進めるのであった。

 

お昼休み。燐子は弁当を持って特別教室に行こうとした時に、ある少女に呼び止められた。その子は美しいエメラルドブルーの髪をなびかせ、翡翠石の様な目で燐子を呼び止めた。

 

「白金さん、ちょっといいですか?」

 

「…氷川さん?どうしたんですか?」

 

「白金さんにお聞きしたい事があるんですけど」

 

「手短でいいなら…」

 

「わかりました。今朝校門前で、白金音葉と言う子に会ったんですが、白金さんの知り合いですか?」

 

「ええ…音葉は私の弟です」

 

「そうでしたか…」

 

「あの~もう行ってもいいですか?音葉が待っているので…」

 

「…白金さん。もう一つだけいいですか?」

 

「なんでしょう?」

 

「それは…」

 

 

音葉は特別教室で弁当も開けずに待っていた。『ご飯の時は一緒に食べる』これが白金家でルールとなっている為音葉は燐子が来るのを待っていた。

 

そして、ドアが開くと音葉は燐子以外の気配がしたので驚いた。

 

「…え?姉さんと誰ですか?」

 

「遅れてごめんね音葉」

 

「申し訳ございません。少々白金さんと話してしまって遅れました」

 

「えっと…今朝校門前であった人ですか?」

 

「はい。私の名前は氷川 紗夜(ひかわ さよ)と言います。白金さんとは同じクラスでバンド仲間です」

 

「…そうでしたか。僕の名前は白金音葉と言います。よろしくお願いします」

 

そう言って、音葉は頭を下げたが、紗夜と違う明後日の方向に下げてしまった。これを見た紗夜は(本当に目が見えないのね)と思っていた。

 

「…それで氷川さんはどうしてここに?」

 

「ええ、貴方と白金さんと一緒にご飯を食べたくてここに来ました。…ダメでしたか?」

 

「…いえ、姉さんが良ければ」

 

「私は…大丈夫だよ」

 

「なら、3人で食べましょうか」

 

そう言って、3人で食べるのであった。音葉はフォークで食べるが上手く刺さらない。そんな時いつもなら燐子がサポートするのであったが、今日は以外な人物がサポートしていた。

 

「うんっしょ…」

 

「大丈夫音葉?」

 

「な、なんとか…」

 

「…音葉さん。貸してください」

 

『え?』

 

「私が食べさせてあげます。どれがいいですか?」

 

「そ、そんな!悪いですよ。氷川さんはお客様なのに…」

 

「いえ、こちらが無理を言ったのでこれくらいはさせて下さい」

 

「けど…」

 

「ダメですか…」

 

明らかに、声のトーンが落ちているのに気づいた音葉は、これ以上ごたごたを起こしたくないと思い了承するのであった。

 

「わかりました。お願いします」

 

「了解です。どれにします?」

 

「じゃあ…」

 

初めて姉以外からの食事に少しだけドギマギしながらも、食べ進めていった。その横で燐子がぷくーと頬を膨らませているとも知らずに…

 

あっという間に昼食を終えた3人は音葉の話しになっていた。

 

「音葉さんは何時から目が見えなくなってしまったんですか?」

 

「…最後に覚えているのは小5の時に姉さんがコンクールで金賞を受賞した時の笑顔ですね。あの後直ぐに高熱が出て、それ以降は…」

 

つまり、高1になる5年間はずっと目が見えていないのだ。それを聞いた紗夜は配慮が足りなかったと後悔した。

 

「すみませんでした。変な事を聞いてしまって…」

 

「…大丈夫ですよ。確かに目が見えなくなってしまったのは痛いですが、他は五体満足なので」

 

「お強いんですね」

 

「…そんなことないですよ」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「あれ、そろそろ昼休みも終わりますね」

 

「そうですね。じゃあ音葉またね」

 

「…うん。今日は生徒会の仕事は?」

 

「色々あるから…遅くなるかもしれない」

 

「…わかったよ。なら、先に帰っているね」

 

「…うん。大丈夫?」

 

「…平気だよ。道は覚えているし、最悪母さんに迎えたのむから」

 

「ごめんね」

 

「あの、もし良かったら私が白金さんが終わるまで、面倒を見ましょうか?」

 

「え?氷川さんがですか?」

 

「幸いにも今日は、風紀委員の仕事もありません。バンドの練習も休みだったはずです」

 

「けど…」

 

燐子は一瞬音葉を見たが、嫌な感じに取っていなかった。それに、一緒に帰れると燐子にとってもいい事なのでお願いするのであった。

 

「じゃあ…お願いします」

 

「わかりました。では、音葉さん授業が終わったら迎えに来ますからね」

 

「…はい。お願いします」

 

そう言って、燐子と紗夜は教室に戻っていくのであった。

 

 

放課後。皆が部活動や委員会の仕事をしている傍ら、音葉は特別教室で待っていた。そして、紗夜が入って来る気配を感じ取っていた。

 

「お待たせしました」

 

「…いえ、大丈夫ですよ。氷川さん」

 

「そうでしたか。それで白金さんが帰って来るまでどうしましょうか?」

 

「…あの、この学園に音楽室ってありますか?」

 

「ええ、3階の左端にありますね」

 

「…もし良かったら、案内して頂けますか?」

 

「いいですよ。では、行きましょうか」

 

そう言って、音葉は白杖を持って紗夜の肩を掴みながら音楽室へと行くのであった。

 

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