見えない世界で少年は彼女達と出会った…   作:とあるP

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エピソード004 彼女達の世界

紗夜と日菜は音葉と燐子が帰った後氷川家では、家族会議と言う名の夕食が行われていた。

 

「日菜。もしかして、音葉くんで良からぬことを企んでいないでしょうね?」

 

「え~?別にそんな事ないよ」

 

「本当かしら?」

 

「でも、お姉ちゃんが男の子こと気にするなんて珍しいね」

 

「な!///べ、別にいいでしょう///」

 

「え~何々!ついに紗夜にも春が来たのかしら!」

 

「からかわないでください。お母さん」

 

紗夜や日奈と同じ髪色・目の色で腰まである長髪をなびかせ、夕ご飯の準備をする女性。氷川 紗枝(ひかわ さえ)は、娘の成長に喜んでいた。

 

容姿も紗夜に負けず劣らずのプロポーションでありながら、時折美人三姉妹に間違われる程である。夫に先立たれ、今まで音楽一筋で生きてきた紗夜にとって、音葉はいい意味での起爆剤になったかもしれない。

 

「それで?その子はどんあ子なの?母さん気になるわ~」

 

「…あまりいい話ではないですよ」

 

そう前置きを言って紗夜は話し始めた。最初はワクワクしていた紗枝だが、音葉が盲目であると知った途端、急にテンションが低くなって行くのが分かった。

 

「…ですから、あまりいい話ではないと言ったでしょ」

 

「…そうね。気軽に聞いてしまってごめんなさいね」

 

「いえ…」

 

「…それでお姉ちゃんはどうしたいの?」

 

「え?」

 

「音葉くんとこれからどうしていきたいと思ったの?」

 

「…わからないわ。少なくとも急に態度を変えるつもりはないわよ」

 

「それでいいのよ。貴女の思うようにやりなさい。お母さんは応援するわよ」

 

「お母さん…ありがとうございます」

 

「ねぇねぇ、久しぶりにママとパパの話しを聞きたいな~」

 

「え~?日菜ったら、おませさんね!いいわよ。あれはね…」

 

そう言って、昔話に花が咲いた氷川家であった。

 

 

 

 

 

一方の白金家。母の雫は今日は遅くなるとの連絡を受けていたので、2人だけの食事となっていた。

 

「…はい。あ~ん」

 

「ね、姉さん!1人で食べれるから大丈夫だよ」

 

「本当に?昼間は…氷川さんに…食べさせてもらっていたのに…」

 

「…あ、あれは仕方なかったんだよ」

 

「…お姉ちゃんが…ダメで…氷川さんが…いいのは…なんで?」

 

「…そ、それは」

 

「…ねぇ音葉」

 

「…な、なに?」

 

「…お姉ちゃんのこと…嫌い?」

 

「…そ、それは」

 

それを出されるともう燐子には勝てない。音葉は諦めて両手を上げた。

 

「…降参だよ。姉さん」

 

「…やった!」

 

観念した音葉はスプーンを燐子に預けて夕食を食べるのであった。お風呂は流石に別々に入った2人は特にすることなく過ごそうと思ったが、音葉から「久しぶりに連弾したい」と提案があったので、地下室にあるスタジオに向かった。

 

ここでは、偶に雫や燐子が定期演奏会に向けて練習するように、自宅の地下に防音を施したスタジオを、完備している。そこには1台のグランドピアノが置いてあった。値段は余り詳しくは言えないが、軽自動車が買えるくらいのお値段とでも言っておこう。

 

そのピアノに燐子と音葉は椅子に座って演奏する曲を話し合っていた。

 

「今日は…どうする?」

 

「…そうだね。アレにする?」

 

そう言って、音葉はタブレットにある1曲を選択した。

 

「『トリッチ・トラッチ・ポルカ』?」

 

「…うん。連弾するならこれがいいかなって?」

 

「わかったよ」

 

そう言って、2人は所定の位置に手を置いて、燐子が鳴らし始めた。

 

♪!♪!♪!

 

~ヨハン・シュトラウス2世『トリッチ・トラッチ・ポルカ』~

[この曲は、ヨハン・シュトラウス2世が1858年に作曲した曲で、軽快で威勢が良い。日本においては、小学校の運動会などで比較的よく流される曲であり、知っている人も多い。]

 

そんな曲を連弾すると、今度は音葉が1人で弾きたいと言いだしてきたので、燐子は聞き役に徹した。

 

「それで…音葉は…何を弾くの?」

 

「…『トルコ行進曲』とかいいかな?」

 

「大丈夫?」

 

「…大丈夫だよ。見てて」

 

そう言って、音葉は所定の位置に指を置いて、弾き始めた。

 

♪~

 

~ピアノ・ソナタ 第 11番『トルコ行進曲』~

[モーツァルトの作品においてもっともポピュラーなもので、「トルコ軍の軍楽隊の響き」がもとになっている。特にトルコ軍の軍楽隊の「ドン♫」「ドン♫」「ドン♫ドン♫ドン♫」というリズムを取り入れて人びとに親しまれやすく、また聴きやすい曲に仕上がっている。]

 

「…ふぅ~疲れた」

 

「お疲れ様…いい…演奏だったよ」

 

「…本当かな?」

 

「ええ、とてもいい演奏だったわよ。音葉」

 

「…母さん?」

 

そこには、仕事帰りでシャワーを浴びてきた雫の姿がいた。燐子同様に美しい黒髪で腰までありながら、綺麗になびかせながら、歩く姿は何物にも代えがたい美しさを見せる。そんな雫は髪が若干濡れていた。

 

どうやらシャワーを浴びてそのままだったらしい。

 

「音葉は格段に上手くなっているわよ。自信を持ちなさい」

 

「…うん。ありがとう母さん」

 

「さて、風邪をひかない内に早く寝なさい」

 

『うん』

 

「お母さんも…ちゃんと髪…乾かしてから…寝てね」

 

「分かったわよ」

 

そう言うと雫は、洗面台で髪を乾かして床に就くのであった。

 

 

 

 

次の日。朝早くから燐子と一緒に歩いていると、学園の校門前で1人の女子生徒が『風紀委員』の腕章を付けながら立っていた。

 

「おはようございます。…氷川さん」

 

「おはようございます。白金さん。音葉くん」

 

「…氷川さん。おはようございます」

 

「…」

 

「…氷川さん?」

 

「…」

 

「…紗夜さん」

 

「はい。おはようございます」

 

「…はぁ~昨日の件まだ続いているんですね」

 

「一度決めた事は曲げたくない主義なので」

 

「…さいですか」

 

燐子はこの2人のやり取りがかなり癪にさわる。愛しの弟が同級生とイチャイチャするのは、何だか面白くないと思うのであった。

 

「音葉…デレデレしすぎ…」

 

「…え?そんな事ないと思うけど」

 

「まぁまぁ、いいじゃないですか。それよりも、そろそろ白瀬先生が来る頃ですよ」

 

そんな3人で話していると担任の白瀬先生がこちらにやって来た。どうやら急いでいる用だった。

 

「ごめんね。先生これらから大事な職員会議があるから、音葉君を教室まで送れないの~」

 

「それじゃあ…私が送って…行きますよ」

 

「白金さんね。助かるわ~それじゃあまたね音葉君!」

 

そう言って、咲は大急ぎで来た道を戻っていくのであった。紗夜は今直ぐにでも教室に送って行きたい気持ちをこらえて、風紀委員の仕事をして行くのであった。

 

特別教室に来た燐子は音葉と一緒に朝のSHRの準備をしていた。そんな時特別教室のドアが一気に開いた。燐子は香澄たちだと思っていたが、入ってきたのはそれを斜め上に行く人物であった。

 

「美咲!ここから笑顔の気配がするわよ!!」

 

「ちょっと待ってよこころ~」

 

「み、美咲ちゃん…こころちゃん…早いよ…」

 

「ひ!つ、弦巻さんに奥沢さん?それに松原さん?」

 

「あ、燐子先輩おはようございます。えっと…そちらの方は?」

 

「ふぇぇ…!お、男の子…」

 

「あら!貴方笑っていないわね!笑顔になりましょう!」

 

「…えっと…姉さん説明をお願い」

 

そう言って、燐子は戸惑いつつも3人の説明をするのであった。金髪でアグレッシブな「いつも笑顔に!」をモットーに生きている、ハローハッピーワールドのヴォーカル兼リーダー

 

「アタシの名前は弦巻 こころ(つるまき  )よ!よろしくね!」

 

小柄でいつも3バカのストッパー役。くまのぬいぐるみ「ミッシェル」の中の人

 

「んっと…私は奥沢 美咲(おくさわ みさき)って言います」

 

水色のふわふわした髪が特徴でクラゲをこよなく愛する、いつも怯えていが芯が強く美咲の理解者

 

「えっと…松原 花音(まつばら かのん)って言います…ふぇぇん美咲ちゃん~」

 

「あはは…花音さん男の人苦手ですもんね」

 

「…すみません。白金燐子の弟の音葉と言います。今年入学して来ました」

 

「あら?でも入学式に男の子はいなかったはずよ?」

 

すると、どこからともなく黒服を着た女の人が現れて、こころに耳打ちした。

 

「こころ様、こしょ…こしょ…」

 

「なるほどね!そうだったのね音葉!けど、明日からは大丈夫よ!」

 

『へ?』

 

「この私があなたの夢を叶えてあげるわ!」

 

「えっと…」

 

その約束の意味を知るのは後日になるかもしれない…

 

「それじゃあ、またね音葉!」

 

「えっと…」

 

そう言って、こころ達は出て行くのであった。そして、入れ違いになる様に白瀬先生が入って来たので燐子は「お昼ご飯…食べに来るね」と言って出て行くのであった。

 

「もしかして、邪魔しちゃた?」

 

「…大丈夫ですよ」

 

「そっか、なら始めましょうか」

 

そう言って音葉はカバンから教科書を取り出していった。

 

 

 

 

 

お昼休み。普段なら、燐子か紗夜が来るはずだが、いっこうに来ない。そこに音葉のスマホが揺れだした。音葉はたどたどしくスマホを耳に当てた。

 

「…もしもし」

 

『音葉…ごめんね。生徒会の…仕事があって…抜け出せないの…』

 

「…わかったよ」

 

『ごめんね…』

 

「…生徒会の仕事なら仕方ないよ」

 

そう言って電話を切った。仕方なく1人でお昼ご飯を食べようとしたら、またしても教室のドアが勢いよく開いてしまった。

 

「もう~千聖ちゃんどこ行っていたの?」

 

「ごめんなさいね彩ちゃん。花音を探していたら、こんな場所に出てしまって…」

 

「大丈夫ですヨ!まだ時間がありますカラ」

 

音葉は朝きた3人とは違う声をして、驚いてしまった。

 

「えっと…誰ですか」

 

『え?』

 

どうやら、音葉に安息の時間はなさそうだ…

 

 

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