見えない世界で少年は彼女達と出会った…   作:とあるP

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とあるPです。

今回はちょっと強引ですが、商店街で暮らす人々を登場させようと思います。

それでは本編どうぞ!!


エピソード006 商店街の人々

 

5月。GWも家で過ごす日々だった音葉は今商店街に来ている。流石にいつまでも部屋の中に居ては感覚が鈍ってしまうので、燐子に断りを入れて商店街にきていた。

 

「いらっしゃい!いらっしゃい!お肉が安いよ~!」

 

「さぁいらっしゃい!今日はゴボウが何と100円!お買い得だよ~!」

 

活気あふれる商店街をぶらついていると、パンのいい匂いがして来た。丁度小腹がすいてきた音葉は匂いがある方向へと向かった。自動ドアをくぐるとより一層パンの匂いが強くなった。そして、聞き覚えのある声がして来た。

 

「いらっしゃいませ~!あら、音葉くん」

 

「…こんにちは、山吹先輩。ここは?」

 

「うん。ここは「やまぶきベーカリー」って言ってパン屋なんだ」

 

どうりでパンの香りがする訳だ。音葉はパンを選ぶのを沙綾に頼むんであった。

 

「…すみません、山吹先輩。どのパンがあるか教えてもらえますか?」

 

「うふふ///いいよ。えっとね…」

 

そこからは沙綾におすすめのパンを教わりながら買い物を楽しんだ。そして、店を出ようとした時突如として後ろから誰かが抱きついてきた。

 

『ドーン!』

 

「うわぁ!」

 

「音葉くん!」

 

突然の事で対処出来なかった音葉は前のめりに転んでしまった。それにより先程買ったパンと白杖が落ちてしまった。

 

「…いててて…あれパンは?それにあれは?」

 

「はいこれ。それとごめんね折角のパンをダメにしちゃって」

 

「…大丈夫ですよ。また買いに来ます」

 

「そう…ちょっと待って!」

 

そう言って、沙綾は何処かに行ってしまった。数分後戻って来た沙綾の手には先ほど音葉が落としたパンが握られていた。

 

「はいこれ。ほら純たちも謝って!」

 

 

『ごめんなさい』

 

 

「…山吹先輩この子達は?」

 

「ああ、弟の純と妹の紗南だよ。ほら、2人とも挨拶しなさい」

 

「純です!」

 

「…さ、紗南です」

 

「…こんにちは。僕は白金音葉って言います。よろしくね」

 

そうやって、握手をしようとしたが空を切ってしまった。それを見かねた純と紗南は手を重ねた。

 

「こっちだよ!お兄ちゃん大丈夫?」

 

「…ああ、実は僕目が見えないんだ」

 

『え!?』

 

「…うん。だから今度からあった時は優しくして欲しいな」

 

『…うん』

 

なんだか微妙な空気になってしまったので音葉はやまぶきベーカリーから退散することにした。

 

「…それじゃあ山吹先輩。また学園で」

 

「あ、うん…」

 

再び商店街に出た音葉は喉が渇いたので、近くにあった喫茶店に入ることにした。コーヒーの香りに誘われて赴くままに入ると可愛い声の店員さんが出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませ~お一人様ですか?」

 

「はい」

 

「それじゃあカウンターへどうぞ」

 

白杖を叩きながらカウンターへと向かうのであった。そして、席に座ると先程の店員がメニューを渡してきた。

 

「ご注文が決まりましたら、呼んでくださいね」

 

「あ、あの…」

 

音葉は「自分は目が見えない」と説明する前に店員が行ってしまった。仕方なく無難なコーヒーにしようかと思っていたら後ろのボックス席から話し声が聞こえてきた。

 

「ねぇねぇあのカウンターに座った人イケメンじゃない?」

 

「まぁたひーちゃんの悪い癖が始まったよ」

 

「アハハ!ひまりは誰でもいいからな」

 

「え~そんなことないよ。そうだよね蘭!?」

 

「けど、ひまりって誰でもいい感じするよね」

 

「誰でもってないからね!私は薫さんの様なイケメンがいいんだって!」

 

「いや、それは無理があるだろ…ちょっと待って」

 

「どうしたの巴?」

 

「さっきの客つぐに色々聞いているぞ。あ!」

 

 

 

僕は先程の店員さんを呼んでメニューについて説明してもらおうとしていた。けど、目が見えないから上手く出来なかった。その為店員さんにメニューを見せるため身体を近づけてしまった。

 

「…すみません。ちょっといいですか?」

 

「はい」

 

「…えっと…メニューの説明をして欲しいんですけど」

 

「いいですよ~」

 

「…ありがとうございます。

えっと…今どのメニューを見せていますか?(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「え?」

 

『ちょっと待ったーー!』

 

「はい?」

 

『確保――!』

 

「え?え?」

 

音葉は訳も分からず、4人の女の子達に囲まれてしまった。先ほどの店員さんも遠くから様子を伺っているようだ。

 

「ちょっと、うちらのつぐに何しようとしてるの」

 

「そうだー!そうだー!場合によってはひーちゃんを生贄に捧げるぞ」

 

「うぇぇ!ちょっとモカやめてよね!」

 

「てめぇつぐに手を出そうとはいい度胸じゃあねぇか!」

 

「ちょっと皆…私は大丈夫だよ」

 

「あの~」

 

『なに!』

 

僕が絶体絶命のピンチに途方に暮れていると別の方から声をかけてくる人物がいた。

 

「オトハサン!どうしたのデスカ?」

 

「…あれ?若宮さん?」

 

そこには、学校で会ったことのあるイブの声が聞こえて来た。そして、イブは音葉について説明するのであった。

 

「オトハサンは目が見えないんですよ。だから、ツグミさんに聞いていたんですヨ」

 

「えっと…そうなんですか?」

 

「…まぁその通りです。はい…」

 

その事実を知ったした4人は顔を合わせて、音葉に向けて頭を下げたのだ。

 

『ごめんなさいー!』

 

「…大丈夫ですよ。説明しなかった僕が悪かったんですから」

 

「けど、アタシらも疑ったのも悪いことしたんだから…」

 

「うん…そうだよね」

 

「だから、ひーちゃんを生贄に「しないからね!」む~」

 

「アハハ…」

 

「…じゃあ、自己紹介しとかないといけないですね。花咲川女子学園 白金 音葉と言います」

 

「花咲川女子学園?女子校なのに通っているの?」

 

「…ええ、姉がどうしても通って欲しいと言っているので…」

 

「ああ、燐子さんか…アタシは羽丘女子学園美竹 蘭(みたけ らん)って言うよ」

 

「なら、次はアタシだね。羽丘女子学園宇田川 巴(うたがわ ともえ)って言うよ。宜しく!」

 

「私は羽丘女子学園上原(うえはら)ひまりって言うよ~!一応Afterglowのリーダーやってるの!」

 

「モカちゃんは青葉(あおば)モカって言うよ~よろしく~!」

 

「私は羽沢(はざわ)つぐみここ羽沢珈琲店で働いています。よろしくお願いします」

 

そう言って、音葉との自己紹介を終えた。音葉はAfterglowの意味を聞いてみた。

 

「…あの~Afterglowってどう意味があるんですか?」

 

「Afterglow。それは、アタシ達のバンド名なんだ。いつも通りの日常を送る為にね」

 

「いいですね。いつも通りの日常…」

 

「そう言えば、音葉は完全に見えないの?」

 

「…ええ、小5から見えなくなっているんですよ…」

 

「その不安とか無かったのか?」

 

「…少しはありましたよ。けど、もう慣れましたよ」

 

「そうなんだ…」

 

何だか答えてみると、暗い雰囲気になってしまった。話題を変えようと思っていたらモカからこんな提案があった。

 

「ねぇねぇ、音葉君って得意なことってあるの?」

 

「…姉がピアノを弾いていたので、自分もピアノを弾けるんですよ」

 

「へぇ~どんなのが弾けるの?」

 

「…主にクラシック系ですかね」

 

「なら~ここにあるピアノで、弾けるのとかありますか?」

 

そう言って、モカは店にあるピアノを指した。それを聞いた音葉は弾いてみたいと思いモカにピアノの傍まで案内するように言ってきた。

 

「…本当ですか?なら、お願いします」

 

モカに手を引かれながらピアノの前まで来た音葉はあの曲を弾きだしだ。

 

♪~

 

「この曲って…」

 

優しい旋律で弾き始めたのは『ワルツ 春の声』であった。

 

~ヨハン・シュトラウス2世 ワルツ 春の声~

[1882年にヨハン・シュトラウス2世は、ピアニストであり親友でもあった当時71歳のフランツ・リストと即興演奏パーティで同席した時、余興でまとめ上げたといわれる。当時ヨハン・シュトラウス2世も3度目の結婚で得た幸福感を味わっていたことが、曲名や曲想に反映されたという説もある]

 

そんな曲を音葉楽しくそして、心を込めて演奏していた。終盤になると店にいた客全員が音葉のピアノの虜になっていた。そして、弾き終わると店中の客から拍手が起こった。

 

そんな中で1人の男の人と女の人が音葉に話しかけて来てくれた。

 

「ふう…」

 

パチパチパチパチパチパチパチパチ!

 

「…え?え?」

 

「いゃ~素晴らしかったよ!なぁお前!」

 

「ええ、いい演奏だったわね貴方」

 

「あ、あ…ありがとうございます」

 

「おっとすまなかったね。私は羽沢 雄二(はざわ ゆうじ)ここのオーナーでつぐみの父親だ」

 

「同じく妻の美智子(みちこ)と言います」

 

「…どうも。白金 音葉です。すみませんでした、勝手にピアノを使ってしまって…」

 

「なに、いいってことよ。どうせ、店のレイアウトで置いていただけだから」

 

「ええそうよ。この子も使って貰って本望だと思うわ」

 

「…そうですか。なら、良かったです」

 

そう言って、席に戻ろうとしたが、いつも使っている白杖が見当たらない。たまらず音葉は羽沢夫妻に尋ねてみた。

 

「…あの、すいません。この近くに白い棒とかありませんか?」

 

「ああ、これかい?」

 

「ありがとうございます」

 

「もしかして貴方目が…」

 

「…ええ、かれこれ5年以上見えてないんです…」

 

「……」

 

「…けど、もう気にしていませんから大丈夫ですよ」

 

「そっか…わかったよ」

 

「ええ、辛いけど頑張りなさいよ」

 

「はい」

 

「何ならウチのつぐみを嫁に貰わないか?家事も出来るし親の俺が言うのも「お父さん!!」うん?」

 

そこには、顔を真っ赤にして涙目になっているつぐみと青筋を立てているAfterglowのメンバーがいた。

 

「じょ、冗談だよ。つぐみは何処にもやらんよ…」

 

「もう、お父さん何か知らない!!」

 

その言葉にショックを受けた雄二はOTLのポーズのまま固まってしまった。

 

「あらら、仕方ないわね。音葉くんゆっくりと休んでいってね」

 

「…あ、はい。ありがとうございました」

 

「ウフフ、こちらこそこれからも羽沢珈琲をよろしくね」

 

それを見かねた美智子は固まってしまった雄二の首根っこをつまみ厨房の方に行ってしまった。先程件で有耶無耶になってしまったが、音葉はアイスコーヒーを頼むとカウンターに座っていた。

 

そんな音葉を見ていたAfterglowのメンバーは同じボックス席に座る様に指示した。

 

「ねぇ白金君もこっちで飲んだら?」

 

「えっと…いいんですか?」

 

「うん。大丈夫ですよ。それじゃあお席にご案内しますね」

 

そう言って、つぐみは音葉の手を取ってボックス席に案内した。すると、両サイドから抱きついてくるのが分かった。

 

ひまりは先程の演奏から音葉に対して興味津々だった。気付けば音葉の腕に抱きついていた。

 

「それでいつからピアノをしていたの?」

 

「…小5の時ですかね。最もそれより前から興味があったんで…」

 

「てか、ひーちゃんさっきから音葉君に近くない?」

 

「え!あ、あのこれは…その…///」

 

「あのひまりがここまでグイグイ来るなんてねぇ~」

 

「べ、別にいいじゃん!巴だって気になるでしょ!」

 

「まぁな。けど、ひまり程じゃあないよ」

 

その答えに苦い顔をするひまりであった。音葉はアイスコーヒーを飲みながら彼女達の話しに耳を傾ていた。やがて、夕方になり羽沢珈琲を後にする。

 

夕ご飯まであと少し。急いで帰ろうとしたが商店街の出入口からコロッケのいい匂いがして来たので、夕ご飯のおかずにと思って、立ち寄る事にした。

 

「…すみません。コロッケ3つお願いします」

 

「は~いちょっと待っていてね!」

 

元気のいい店員さんだと思っているとコロッケを渡されたので慌てて取ろうとした。

 

しかし、見えない音葉は上手く取ることが出来ずアツアツのコロッケに指が当たってしまった。

 

「はい!コロッケ3つおまちどおさまです!」

 

「あ、ありがとうございます…熱い!」

 

「あー!ごめんなさい!ちょっと待っててね…お母さん~!」

 

「どうしたのはぐみ?」

 

「あのね冷やしたタオル持ってきて!大至急!」

 

「あらら、わかったわ」

 

そう言って、女性は店の奥に引っ込んでしまった。そして数秒後にタオルを持ってきて音葉の手に当てた。

 

「これで大丈夫でしょう」

 

「…ありがとうございます」

 

「いえいえ、こちらこそ配慮が足りなくて申し訳ございません。ほら、はぐみも謝りなさい」

 

「うん…ごめんなさい」

 

「大丈夫ですよ。そんなに熱く無かったので」

 

「ならいいけど…あれ?貴方もしかしてこころんとみーくんが言っていた男の子?」

 

「…はい。多分そうだと思います。貴女は?」

 

「そうなんだ!アタシはね北沢(きたざわ)はぐみって言うよ。よろしくね!」

 

「白金 音葉です。よろしくお願いしますね」

 

「うん!宜しく~」

 

そう言って、はぐみは手を出してきたが音葉はどうすることもできない。見かねたはぐみは強引に手を取って握手をして来た。

 

「こころんとみーくんから話しは聞いてるよ~!これからもよろしくね」

 

「!」

 

はぐみの素直な気持ちに驚いた音葉であったが、コロッケはしっかりと受け取っていた。

 

「ありがとうございます。北沢さん」

 

「はぐみって呼んで!私も音葉くんって呼んでもいいかな?」

 

「ええ、いいですよ。それじゃあまた…」

 

「ありがとうございました~!」

 

そう言って、白杖を手に持ち自宅へと帰って行った。夕ご飯の時に今日会ったことを話していたら、雫は喜んでいたが、燐子は終始むすっとしていた。

 

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