見えない世界で少年は彼女達と出会った…   作:とあるP

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とあるPです。

久しぶりにバンドリ投稿となります。

それでは本編をどうぞ


エピソード008 交換留学生制度

定期演奏会が終わり数日経ったある日の朝の理事長室。そこには、生徒会長の燐子と風紀委員長の紗夜の2人が呼ばれていた。

 

『交換留学生制度?』

 

「ええ、そうです」

 

そう言い出したのは、花咲川女学園の理事長藤野 美羽(ふじの みう)。齢40代で花咲川女学園を一躍有名にした手腕を買われている。

 

ただ最近の悩みとして、娘に彼氏が出来ていない事があり少しだけ焦っている。

 

「先程羽丘学園の学園長及び生徒会長である、氷川日菜さんから要望がありましてね。わが校の白金音葉君を1ヶ月程交換留学生として迎え入れたいと…こちらとしては「一旦保留する」と時間をおきましたが」

 

「そうですか…ウチの日菜が申し訳ございません」

 

「紗夜さんが謝る必要はありませんよ。それにこれは、チャンスだと思います」

 

『チャンスですか?』

 

「ええ、お世辞にもわが校は、白金君の様な才能がある子を伸ばせる程の環境が整っていません。それと比べてあちらは共学と言います。同性の子がいる方が彼の負担も少なからず軽くなるでしょう」

 

「…」

 

「それに、今は彼の為にバリアフリー化の工事中です。恐らく彼がいる特別教室も工事が入るかもしれませんからね」

 

「理事長…」

 

「これは彼にとってまとないチャンスだと思っています。強制はしませんが、一度姉である貴女には、話しておきたいと思って呼びました」

 

「そう…ですか…」

 

「いい返事を待っていますね」

 

そう言って、2人は理事長室を出て行くのであった。その足取りは重くどうやって音葉に伝えればいいか悩んでいた。

 

 

昼時。いつものようにお弁当を持って特別教室に向かう燐子と紗夜。朝に理事長から聞かされた話しをどう切り出せばいいか悩んでいた。

 

「…」

 

「白金さん。朝の話しですがハッキリと音葉君に伝えるべきだと思います」

 

「氷川さん…そう…ですよね」

 

「大丈夫です。私もいますから」

 

「…はい」

 

そう言って、2人は音葉がいる特別教室の所まで来ていた。すると、教室の中から話し声が聞こえてきた。そこには、ポピパのメンバーとパスパレのメンバーが音葉と談笑していた。

 

「音葉君この前の演奏凄かったよ!キラキラしているみたいだったよ!」

 

「うん、香澄ちゃんの言う通りだったね。私感動して泣いちゃったよ~」

 

「彩先輩もですか!けど、りみりんも泣いていてよね」

 

「それは言わない約束だよ香澄ちゃん///」

 

「まぁ彩ちゃんが涙もろいのはいつもの事だから仕方ないわよね。けど、本当に凄かったわよ音葉」

 

「…あ、ありがとうございます」

 

「うん。流石私の音葉だよね」

 

「…えっといつから僕はたえ「おたえ」…おたえさんの物になったんですか?」

 

「えっと…出会ってから?」

 

「…僕に聞かれても分からないですよ」

 

そんな風に話しをしてる中燐子と紗夜は特別教室に入って行き、先程学園長から知らされた話しを音葉にするのであった。

 

「音葉…いる?」

 

「…どうしたの姉さん」

 

「ちょっと…話しがあるんだけど…いいかな?」

 

「…僕は構わないけど」

 

「私達も構いませんよ!ねぇ皆!」

 

「うん。そうだよね香澄ちゃん」

 

「いや、ここは帰るだろう…普通」

 

「…」

 

「わかった。あのね音葉…その…」

 

「白金さんの代わりに私が話しますね。実は、音葉君に『交換留学生制度』の話しが持ち上がっているんです」

 

『交換留学生制度?』

 

「はい。これは、他校の生徒と音葉君を一時的に交換留学させ、その学園で勉強をする事です。この制度は来年度から実施予定だったんですが…その…」

 

紗夜はこの場ではっきり言うか迷っていたが、どうせバレるのであればここで言ってしまうと思ったのであった。

 

「その制度を先行して実施して来たのが…「羽丘学園」なんですよ」

 

「羽丘学園ですか?」

 

「はい。恐らくですが、以前の定期演奏会で音葉君の演奏が多くの高校に知れ渡りました。その際にいた妹の日菜が、学園長に取り繕ったのだと思います」

 

「そうですか…」

 

音葉としては、多くの人に聴いてもらって嬉しいと思っていた。しかし、同時に不安もあった。

 

共学とはいえ燐子や信頼出来る者がいないまま、他所の学校に行っても迷惑にならないだろうか。ましてや、自分は障害者だ。

 

他の人に迷惑がかかってしまうかもしれない。そんな不安を感じたのか燐子が優しく手を握って来た。

 

「音葉…」

 

「なに、姉さん」

 

「音葉は…どうしたい…」

 

「…正直言って迷っている。確かに他所の学校に行って見聞を広めたいと思っている。けど、僕みたいな障害者が行っても迷惑をおかけないだろうか」

 

「…音葉…」

 

「…それに、もっと多くの人にピアノの良さを知ってもらいたいんだ」

 

その言葉に共感した燐子は優しく音葉の手を握り、羽丘学園への交換留学を進めるのであった。

 

「大丈夫…」

 

「え?」

 

「大丈夫…音葉なら…出来るよ。きっと!」

 

「姉さん…ありがとう」

 

燐子からの支えもあり、音葉は羽丘学園への交換留学を進めるのであった。

 

「…氷川さん。羽丘学園への交換留学お願いします」

 

「そうですか…わかりました。では、学園長に話しておきます」

 

そう言って、紗夜は学園長に話して音葉は来週から羽丘学園へと留学するのであった。

 

 

 

留学当日。

既に友人達には留学の件を伝えてあった。ポピパのメンバーはもちろんのことイヴやはぐみ、美咲やこころ。そして、花音や千聖、彩と言った上級生にも伝えている。

 

彩には泣かれていたが、千聖は『可愛いおも…後輩が居なくなるのは寂しいわね』と何か言いたそうだった。

 

羽丘学園からは、日菜が一ヶ月花咲川女子学園に通うことになる。本人は『お姉ちゃんと一緒に通えることになって、るん♪ってなるね』と喜んでいた。

 

そして、羽丘学園の校門前。急遽のため音葉は花咲川女子学園の制服を纏って立っていた。そこに、聞き覚えのある声が入って来た。

 

「こんにちは!音葉さん」

 

「え?」

 

「うふふ、こっちですよ。羽沢つぐみです。この前はどうもありがとうございました」

 

「…こちらこそ、美味しいコーヒーありがとうございました」

 

「いえいえ、あっ!そうだった。今日から私が音葉さんの世話をしますからね」

 

「…そうですか。それと、僕は羽沢さんより年下なので敬語は必要ないですよ」

 

「そうなの?じゃあよろしくね音葉くん」

 

「…はい。こちらこそよろしくお願いします」

 

そう言って、白杖を持っていない反対の手をつぐみが握って校舎内に入って行くのであった。

 

つぐみと一緒に校舎内に入るとAfterglowのメンバーに見つかるのであった。

 

「よっ!音葉、久しぶりだな」

 

「…お久しぶりです巴さん」

 

「久しぶり。元気してた?」

 

「…ええ、蘭さんもお元気そうですね」

 

「あれ?どうしてここに音葉君がいるの?」

 

「ひーちゃん聞いてなかったの?花咲川女子学園との交換留学生制度の話し」

 

「そういえば日菜さんがそんなこと言ってたっけ…あれ?それじゃあ、花咲川女子学園から来たのって…」

 

「…はい。僕が来ました」

 

それを聞いた瞬間ひまりの顔が真っ赤に染まるのが見えるのであった。しかし、目の見えない音葉は何が起こっているのかわからなかった。

 

「ええ~!それじゃあ、毎日音葉君と一緒に過ごせるの!?///」

 

「…一ヶ月程度ですけどね」

 

「どどどどうしよう、モカ!アタシ緊張してきちゃったよ~!」

 

「落ち着きなよひーちゃん。はい、いつものメロンパン」

 

「ありがとう~って!いつも食べてないよ!」

 

アハハ!とAfterglowのメンバーが笑っていたが、音葉は見えないため、どんな状況になっているのかわからなかった。

 

つぐみと一緒に1年生の教室に向かうと、クラスメイト達が一斉に音葉へと目を向けるのであった。

 

今回は特別教室の様に音葉専用の教室ではなく、一般生徒達と一緒に授業を受ける様にした。これは、音葉からの要望であり、学園側も事前に音葉のような人が一時的にではあるが、一緒に授業を受ける様に説明している。

 

そんな中を白杖を頼りに教壇に上がっていく。それを見た先生は音葉の自己紹介をするのであった。

 

「はい、はい。みんな席について。それじゃあ、一ヶ月だけだけど、新しい仲間を紹介します。それじゃあ、お願いね」

 

「…はい。初めまして、花咲川女子学園から交換留学生として来ました。白金 音葉と言います。趣味はピアノを弾く事です。その他はあまりないですけど…よろしくお願いします」

 

パチパチパチ

 

そう言って、音葉は頭を下げた。すると、教室からは拍手が巻き起った。そして、先生に促されて席に着くのであった。すると、早速隣の子から自己紹介があった。

 

「ふぅ…」

 

「お疲れ様。緊張しちゃった?」

 

「…はい。こんな事がなかったので。えっと…」

 

「あ、あたしは大西 沙織(おおにし さおり)って言うの。よろしくね」

 

薄紫色のロングヘアに、透き通った青色の目。そして、音葉と同じくらいの背丈を持つ彼女はこのクラスのアイドル的存在な子だ。

 

そんな子が話しかけているのにもかかわらず、音葉は次の授業の準備をしていたのであった。

 

「…ありがとうございます。僕は白金音葉と言います。短い間ですがよろしくお願いしますね」

 

「そんなにかしこまらなくてもいいよ。あたし達同い年なんだから」

 

「…そうですね。それじゃあ、これからもよろしく」

 

「ええ、よろしくね音葉くん」

 

そう言って、沙織は手を差し出すが、音葉はそのままだった。その行動に沙織は、ばつそうに顔をしかめた。

 

「あ、そうだった…見えなかったわよね。ごめんなさいね」

 

「…い、いえ気にしないでください」

 

「それじゃあ…はい。これ」

 

そう言って、沙織は音葉の手を取ると強引に握手させた。これには周りの人達がざわついた。

 

「あ~!沙織さんが音葉君と手を繋いでいる」

 

「う、羨ましい…俺なんて声をかけてもらっていないのに…」

 

「これが、転校生効果なのか…」

 

周りの人達から羨望と憎しみの眼差しを向けられるも、音葉にはいまいちわからなかった。

 

朝のSHRが終わり、通常授業になろうとしている時に廊下から音葉を呼ぶ声があった。どうやらAfterglowのメンバーが音葉の様子を見に来たようだ。

 

「おーい、音葉!」

 

「あれ?あの声は、巴さん?今行きます…あ!」

 

巴の声を聞いて、音葉は白杖を取って廊下に行こうとしたが、運悪く白杖を落としてしまった。すると、白杖を拾った子が音葉に手渡してきた。

 

「はい、これでよろしでしょうか?」

 

「…あ、ありがとうございます。えっと…」

 

その子は黒髪のロングヘアに茶色の瞳。つり目が特徴で、抜群のプロポーションを持っている子であった。クラスで沙織とは1、2位を争う美人の子だった。

 

「失礼。私は楠 香織(くすのき かおり)と申します。以後お見知りおきを」

 

「…ご丁寧にありがとうございます。僕は「白金音葉さんですよね」…ええ、そうです」

 

「お噂はかねがね聞いておりますわ。何でも、定期演奏会で素晴らしい音色を奏でたと…」

 

「…その事まで知っているんですね」

 

「ええ。私貴方の音色を是非一度聞いてみたいと思いますわ」

 

「…その、機会があれば」

 

「楽しみにしておりますわ♪」

 

そう言って、香織は去っていった。そして、巴のところに向かうのであった。ひまりとつぐみは複雑そうな顔をしていたが、蘭とモカそれに巴は苦笑いをするのであった。

 

 

そして、授業が終わり昼休み。皆思い思いの人達でお弁当を食べている。音葉も弁当を食べようとすると、沙織と香織から声をかけられた。

 

「音葉くんよかったら一緒に食べない?」

 

「音葉さんご一緒にいかがでしょうか?」

 

『え?』

 

2人の声が重なった時にクラス中の人達が驚いていた。いつもは、一人で食べていた香織と沙織が一緒に食べようと言い出してきたのだ。

 

「ちょっと待って香織。いつ音葉君と知り合いになったの?」

 

「沙織さんこそいつ音葉さんと?」

 

「アタシは音葉君と席が隣同士になったのよ。その時にちょっとね…」

 

「そうでしたか…私は音葉さんが困っていたので、助けたんです。その時にお友達になりましたの」

 

「フ~ン…どうだか」

 

ただならぬ気配を感じ取った音葉は2人一緒に食事をしようと言ってきた。2人は二つ返事でOKにした。

 

「…あの~そろそろ昼休みが終わるから、一緒に食べましょうよ…ね?」

 

「はぁ~音葉君がそう言うなら別にいいわ」

 

「…致し方ありませんね。では、ご一緒致しましょう」

 

そう言って、音葉の両サイドに座るような形で2人は座るのであった。傍から見たら「両手に花」状態であるが、男子生徒からの嫉妬は半端なかった。

 

但し、他の女子生徒達からは「健気な音葉を守ろう」と暗黙のルールが転校初日から成り立ったので、男子生徒達も手を出しにくかった。

 

そして、放課後。音葉はある場所に行くために、Afterglowのメンバーを呼んで向かうのであった。

 

沙織と香織はそれぞれ部活(沙織は剣道部、香織は生徒会)に行っているため、ここにはいない。そして…

 

「音葉、着いたよ」

 

「…ありがとうございます。蘭さん」

 

「いいよ。本当にここでいいのかい?」

 

「…ええ。一度ここに来て見たかったんです」

 

「しかし、放課後の音楽室って結構不気味だよな」

 

「以外だね。巴ちゃんでも怖いのがあるんだ」

 

「つぐはアタシの事どう思っているんだ?」

 

「あははは、ごめんごめん」

 

「でも、音葉君。ここでよかったの?学園には他にもいっぱいあるんだよ」

 

「…ええ、ここで大丈夫です」

 

そこは、花咲川女子学園よりも多くの楽器が収められている音楽室であった。そして、音葉は迷うことなくピアノに連れて行くように言った。

 

「…すみません。ピアノのところまで連れていってくれませんか?」

 

「ああ、いいよ」

 

そう言って、蘭は音葉の手を握り1台のグランドピアノの前まで連れて行くのであった。そして、ピアノの前に座って鍵盤に手をおくのであった。

 

ピン!

 

「うん。いい音だ」

 

そして、おもむろに1曲弾き始めた。

 

♪~♪~

 

「この曲は…」

 

「確か『英雄』だったよね。ショパンの」

 

「詳しいなつぐ」

 

「うん。音葉君がウチのピアノを弾いた時から勉強しているんだ」

 

そんな事も知らずに音葉は、弾き続けるのであった。

 

~ショパン ポロネーズ第6番「英雄」~

[この作品は、ショパンが亡くなる7年前の1842年、32歳のときに作曲された。ポロネーズ第6番は男らしく勇ましい魅力を持つことから「英雄」というニックネームで呼ばれている。]

 

そして、音葉が弾き終わるとAfterglowのメンバーは拍手をするのであった。

 

パチパチパチ

 

「相変わらず凄い演奏だよね」

 

「うん。アタシ思わず感動しちゃったよ~」

 

「凄いよ音葉君!」

 

「お~流石ですなぁ」

 

「…ありがとうございます。それじゃあ、僕はもう帰ります」

 

「ああ、転校初日で疲れただろう。玄関まで送って行くよ」

 

そう言って、巴が手を差し出し玄関まで送りだすのであった。そんな事をしているとつぐみとひまりは「あの巴(ちゃん)が…」と驚いていた。

 

 

音葉たちが帰った後の音楽室。そこに居たのは沙織でも香織でもない、第三者だった。巴と同じ赤色の髪の毛でややショートヘアー。クリーム色の瞳は見る者を惑わせる様な感じであった。

 

そして、その容姿だが香織にも取るに足らないくらいのボディで、クラス一の美人ともいえる。

 

但し、音葉と同じ1年生ではなく生徒手帳が赤いことから3年生である。

 

「ふぅ~ん…あれが例の転校生なのね…中々可愛いじゃない♡」

 

彼女が見つめるその先には、Afterglowのメンバーと一緒に帰って行く音葉の姿があった。

 

「待ってなさいね。白金音葉君。もうすぐ君はこの私、九条 明日香(くじょう あすか)の物になるのだから…」

 

それを見た明日香は、音葉を我が物にするべく音楽室を後にするのであった。

 




今回音葉3人も登場させましたが、今後も増えると思います。乞うご期待!

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