鬼殺しのかぐや姫(リメイク前)   作:しやぶ

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迫る鬼の手

 

 ──ここは、無限城か。

 琵琶(びわ)の君、鳴女(なきめ)殿の血鬼術により支配される異空間だ。

 そして今ここに、全十二鬼月が集結させられていた。全上弦が呼ばれるだけでも108年ぶりだというのに、全下弦も呼ばれている。

 いや──

 

(こうべ)を垂れて(つくば)え。平伏せよ』

 

 言葉に従い、平伏する。

 しかし、これはどういうことか。欠けているのは……

 

姑獲鳥(うぶめ)が殺された。下弦の壱だ」

 

 うん。姑獲鳥ちゃんだ。確かに下弦の中では気に入られていたけど、下弦が欠けるなんていつものこと。上弦まで呼ぶような事案ではない筈だ。実際俺以外の上弦は、彼女のことなんて今初めて知ったのではないだろうか。

 

「あぁ、その通りだ。本来なら、何度入れ替わったか数えるのも億劫(おっくう)になる下弦なぞの生死で、一々貴様らを呼んだりはしない」

 

 おっと珍しい。俺の思考を読んだのかな? いや、コレに関しては皆、思うことは同じか。

 

「今回は、姑獲鳥を殺した者が問題だ……今から貴様らに、少量だが血をくれてやる。そこから記憶を読め」

 

 そう言うと無惨様は、全員へ否応なしに触手を突き刺し血を下賜(かし)され──

 

 

()()()()()()()()

 

 

 ────え?

 

 

「その女は、産屋敷だ」

 

 無惨が何か言っているが、()()()()()()

 

「前線に出ている以上、養子か何かだろうが……産屋敷の本拠地を知っている可能性は高い」

 

 どうでもいい。そんなことはどうでもいい……!

 

「コイツは鬼にして情報を抜き取る。見つけたら私に連絡しろ。見つけたのが下弦であれば、増援として()()()()()()()()

 

「「その役目、どうか()に──」」

 

 同時に名乗りを上げた黒死牟殿と、目が合う。

 

「いやいや、黒死牟殿が出るような相手じゃない。ここは俺に任せてほしいのだけど」

「産屋敷は……巧妙に、姿を隠している……ここは、確実にいくべきだ……無惨様、どうか私に──」

 

「──では童磨、お前に任せる」

 

「……!? 無惨様、何故……!」

 

 おや意外。黒死牟殿が粘るなら、流石に厳しいかと思ったのだけど。

 

「……話は以上だ。鳴女、黒死牟以外はもう帰していい」

 

 すると『ベベン』という琵琶の音と共に、足元へ(ふすま)が出現して落ちていく。行き先は、万世極楽教教主()の部屋だろう。

 その最中、黒死牟殿から凄まじい殺気が浴びせられたものの……やはり『何も感じない』

 

 ──でも、それはもうすぐ終わるハズだ。

 

 だって、だって……!

 

「アレは確実に、血鬼術が消されていた。血鬼術を消せるのは術者か無惨様、もしくは()()()()

 

 つまり、だ。

 

()()()()。少なくとも『日の神』は……!」

 

 今まで、極楽浄土なんて無いと思っていた。死んだら終わりだと思っていた。

 だけど神がいるのなら、その神と繋がりを持つ者がいるのなら──!

 

「あぁ、繋がりがあると言っても声は聞こえるのかな? 姿は見えるのかな? 匂いまで感じられたりするのだろうか。そもそも日の神以外とも繋がれるものなのかな? そうじゃないと困るわけだけど。あぁ、聞きたいことが沢山あって困っちゃうぜ!」

 

 ──彼女は鬼にする。絶対に。

 そうすれば隠し事はできない。格下の鬼が相手であれば、上弦の権限で確実に聞き出せる。

 それに、堕姫ちゃんに匹敵するほど容姿も整っている。側に置いておくのも悪くない。

 

「あぁ、早く()()()()なぁ」

 

 そしてどうか、どうか────『どうか?』

 

「……いま俺は、()()()のか?」

 

 願いは『感情』だ。俺には無いと思っていたものだ。だけどコレは、この心臓が脈打つ感覚は……!

 

「間違いない! 俺は『願い』を手に入れた!」

 

 あぁ、会いたい。逢いたい……!

 そしてどうか、『■■■■■■■■』と──

 

「……アレ? それから、どうしたいんだろ? どうしてほしい、のか? あれ? あれれ??」

 

 駄目だ。モヤがかかって、いつものように思考が回らない。

 

「……まだ、『願い』を自覚しきれていないってことなのかな?」

 

 実際にあわなければ、この先は自覚できないということか。

 あぁ、待ち切れない。今すぐ飛んでいきたい。

 

「ハハハ、『飛んでいく』ってどこにだい? どうやら俺は頭が悪くなってしまったらしい」

 

 とりあえず、気持ちを落ち着けるために食事でもしよう。今日は珍しく、男でもいい気分だ。

 

「──さぁ、■■■■(俺に救いを求める)人間はどこかな?」

 

 モヤがかかった思考に気付かぬフリをして、俺は部屋を出た。

 

 

 

 *

 

 

 

「……何故、私に任せてくださらなかったのですか……!」

 

 黒死牟は、怒りを隠すことなく無惨を睨みつけた。無惨が唯一『パートナー』とまで評する黒死牟でなければ、この時点で首が飛んでいるだろう。

 

「鬼にする──つまり『生け捕りにしろ』と、私はそう言った。だが貴様、抑えられるのか?」

「……っ!」

 

 彼自身、分かっているのだ。

 

「奴と同じ呼吸を使うだけでも忌々しいと感じるお前が、奴と同じく『神の寵愛を一身に受ける者』と対峙して……()()()()()()()()()()?」

「────ッッ!!!」

 

 顎が砕けるまで歯を食いしばり、瞬時に再生する。

 

「……出過ぎた真似を、致しました……申し訳、ございませぬ……」

「ふん、分かったならいい。鳴女、送ってやれ」

 

 琵琶の音が鳴り、黒死牟も消えた。

 

(……しかし、童磨に感情が芽生えたか……)

 

 彼は変化を嫌う。だが元が好ましくないものであるのなら、それはどうか。

 

(産屋敷、日の呼吸、童磨の執着──面白いことができそうだ)

 

 鬼の首魁は、嗤いながら城を後にした────

 

 

 

 *

 

 

 

 明治コソコソ噂話

 

釜鵺 「これは……下弦の壱以外にも、コイツに殺された奴の記憶が何個も……! 他の奴らはなんで平気そうな顔なんだ!?」

 

 他の十二鬼月の内心。

 

塁  「……この行動範囲、ウチの山に来る可能性があるね。面倒だな……家族にも情報を共有しないと……」

零余子「え、上弦に任せて逃げていいの!?」

病葉 「逃げていいっぽいな!」

轆轤 「ヨシ、少量だが血を貰えたぞ!」

 

堕姫 「食べたかったけど、無惨様が鬼にしろって言うなら……」

妓夫 「……これ、手加減できる相手じゃねぇなぁ。上の誰かに任せるかぁぁ」

玉壺 「鬼にしたら作品の材料を無限に取れるな。ヨシ!」

半天狗「怖いからやだ」

猗窩座「女だが、柱か。共に鍛錬ができそうだな」

童磨 「キミも鬼にしてやるぜ」

黒死牟「殺す殺す殺す殺す殺す」

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