──ここは、無限城か。
そして今ここに、全十二鬼月が集結させられていた。全上弦が呼ばれるだけでも108年ぶりだというのに、全下弦も呼ばれている。
いや──
『
言葉に従い、平伏する。
しかし、これはどういうことか。欠けているのは……
「
うん。姑獲鳥ちゃんだ。確かに下弦の中では気に入られていたけど、下弦が欠けるなんていつものこと。上弦まで呼ぶような事案ではない筈だ。実際俺以外の上弦は、彼女のことなんて今初めて知ったのではないだろうか。
「あぁ、その通りだ。本来なら、何度入れ替わったか数えるのも
おっと珍しい。俺の思考を読んだのかな? いや、コレに関しては皆、思うことは同じか。
「今回は、姑獲鳥を殺した者が問題だ……今から貴様らに、少量だが血をくれてやる。そこから記憶を読め」
そう言うと無惨様は、全員へ否応なしに触手を突き刺し血を
『
────え?
「その女は、産屋敷だ」
無惨が何か言っているが、
「前線に出ている以上、養子か何かだろうが……産屋敷の本拠地を知っている可能性は高い」
どうでもいい。そんなことはどうでもいい……!
「コイツは鬼にして情報を抜き取る。見つけたら私に連絡しろ。見つけたのが下弦であれば、増援として
「「その役目、どうか
同時に名乗りを上げた黒死牟殿と、目が合う。
「いやいや、黒死牟殿が出るような相手じゃない。ここは俺に任せてほしいのだけど」
「産屋敷は……巧妙に、姿を隠している……ここは、確実にいくべきだ……無惨様、どうか私に──」
「──では童磨、お前に任せる」
「……!? 無惨様、何故……!」
おや意外。黒死牟殿が粘るなら、流石に厳しいかと思ったのだけど。
「……話は以上だ。鳴女、黒死牟以外はもう帰していい」
すると『ベベン』という琵琶の音と共に、足元へ
その最中、黒死牟殿から凄まじい殺気が浴びせられたものの……やはり『何も感じない』
──でも、それはもうすぐ終わるハズだ。
だって、だって……!
「アレは確実に、血鬼術が消されていた。血鬼術を消せるのは術者か無惨様、もしくは
つまり、だ。
「
今まで、極楽浄土なんて無いと思っていた。死んだら終わりだと思っていた。
だけど神がいるのなら、その神と繋がりを持つ者がいるのなら──!
「あぁ、繋がりがあると言っても声は聞こえるのかな? 姿は見えるのかな? 匂いまで感じられたりするのだろうか。そもそも日の神以外とも繋がれるものなのかな? そうじゃないと困るわけだけど。あぁ、聞きたいことが沢山あって困っちゃうぜ!」
──彼女は鬼にする。絶対に。
そうすれば隠し事はできない。格下の鬼が相手であれば、上弦の権限で確実に聞き出せる。
それに、堕姫ちゃんに匹敵するほど容姿も整っている。側に置いておくのも悪くない。
「あぁ、早く
そしてどうか、どうか────『どうか?』
「……いま俺は、
願いは『感情』だ。俺には無いと思っていたものだ。だけどコレは、この心臓が脈打つ感覚は……!
「間違いない! 俺は『願い』を手に入れた!」
あぁ、会いたい。逢いたい……!
そしてどうか、『■■■■■■■■』と──
「……アレ? それから、どうしたいんだろ? どうしてほしい、のか? あれ? あれれ??」
駄目だ。モヤがかかって、いつものように思考が回らない。
「……まだ、『願い』を自覚しきれていないってことなのかな?」
実際にあわなければ、この先は自覚できないということか。
あぁ、待ち切れない。今すぐ飛んでいきたい。
「ハハハ、『飛んでいく』ってどこにだい? どうやら俺は頭が悪くなってしまったらしい」
とりあえず、気持ちを落ち着けるために食事でもしよう。今日は珍しく、男でもいい気分だ。
「──さぁ、
モヤがかかった思考に気付かぬフリをして、俺は部屋を出た。
*
「……何故、私に任せてくださらなかったのですか……!」
黒死牟は、怒りを隠すことなく無惨を睨みつけた。無惨が唯一『パートナー』とまで評する黒死牟でなければ、この時点で首が飛んでいるだろう。
「鬼にする──つまり『生け捕りにしろ』と、私はそう言った。だが貴様、抑えられるのか?」
「……っ!」
彼自身、分かっているのだ。
「奴と同じ呼吸を使うだけでも忌々しいと感じるお前が、奴と同じく『神の寵愛を一身に受ける者』と対峙して……
「────ッッ!!!」
顎が砕けるまで歯を食いしばり、瞬時に再生する。
「……出過ぎた真似を、致しました……申し訳、ございませぬ……」
「ふん、分かったならいい。鳴女、送ってやれ」
琵琶の音が鳴り、黒死牟も消えた。
(……しかし、童磨に感情が芽生えたか……)
彼は変化を嫌う。だが元が好ましくないものであるのなら、それはどうか。
(産屋敷、日の呼吸、童磨の執着──面白いことができそうだ)
鬼の首魁は、嗤いながら城を後にした────
*
明治コソコソ噂話
釜鵺 「これは……下弦の壱以外にも、コイツに殺された奴の記憶が何個も……! 他の奴らはなんで平気そうな顔なんだ!?」
他の十二鬼月の内心。
塁 「……この行動範囲、ウチの山に来る可能性があるね。面倒だな……家族にも情報を共有しないと……」
零余子「え、上弦に任せて逃げていいの!?」
病葉 「逃げていいっぽいな!」
轆轤 「ヨシ、少量だが血を貰えたぞ!」
堕姫 「食べたかったけど、無惨様が鬼にしろって言うなら……」
妓夫 「……これ、手加減できる相手じゃねぇなぁ。上の誰かに任せるかぁぁ」
玉壺 「鬼にしたら作品の材料を無限に取れるな。ヨシ!」
半天狗「怖いからやだ」
猗窩座「女だが、柱か。共に鍛錬ができそうだな」
童磨 「キミも鬼にしてやるぜ」
黒死牟「殺す殺す殺す殺す殺す」