鬼殺しのかぐや姫(リメイク前)   作:しやぶ

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猗窩座と童磨(鬼sideのみ)

 

 当然の話だが、(きた)る決戦の前に、戦力の増強を行なっているのは鬼殺隊だけではない。

 

「──やぁ、猗窩座殿。やっぱりここに居た」

「……何の用だ、()()

 

 人里離れた山奥の、とある滝。

 滝行を行なっていた猗窩座に童磨が声を掛け、()()()()()()。彼らの関係を知る上弦達が見たら、幻覚系の血鬼術を疑う光景だ。童磨自身返答は期待していなかったのか、()()()()になる。

 

「……()()()ねぇ。まさか猗窩座殿が、俺とお喋りしてくれるなんて」

「用件を言えと、そう言った筈だな」

 

 不機嫌そうな声色だが、やはり本題に関しては聞いてくれるらしい。彼の気が変わらない内に、童磨は素直に用件を伝えることにした。

 

「……猗窩座殿、俺に──破壊殺を教えてくれ」

 

 そして童磨は両手を地につき、頭を下げた。無惨相手ですら膝を突いての敬礼で許される上弦が、平伏したのだ。猗窩座の唇が、三日月状に裂ける。

 

「やってやらん理由も無いが、同じくやってやる理由も無い訳だが?」

「当然、見返りは用意する」

「最初に言っておくが、女は食わんぞ」

「知ってるさ。そうじゃない。猗窩座殿にとっては、もっとイイものだよ」

「じゃあなんだ、まさか『上弦の弍番(お前の数字)』を寄越すとでも言うつもりじゃあないだろうな?」

 

 冗談混じりに言った猗窩座に対し、童磨は──。

 

「…………えっと、うん。そう言うつもりだったんだけど……もしかして、いらない?」

 

 『困ったな……』とでも言い出しそうな苦笑いで、童磨は猗窩座の顔色を伺っている。

 

「…………」

 

 猗窩座は無言で『術式展開』を行い、童磨の闘気を読んだ。羅針盤がグリングリンと暴れ出した。

 奇襲・奥の手が破られて『アテが外れた! どうしよう!?』と焦っている鬼殺隊士と同じくらい、乱れまくった闘気だった。

 

「正気か!?」

「うん、正気正気」

「お前、『血戦』経験者なら知っているだろう!? 降格する鬼が、一体どうなるのか!!」

「うん、知ってる。俺は猗窩座殿に喰われるだろうね」

「何が、お前にそこまでさせる?」

「……死んでも、()()()()娘ができたんだ」

「貴様、本当に童磨か?」

 

 猗窩座には、つい最近まで『喰うことが救い』と嘯き、女性を好んで喰らっていた鬼の台詞とは思えなかった。

 

「本物だよ? 証拠にほら──」

 

 血鬼術によって出現した人形が、一瞬で滝を凍らせた。

 これほどの出力は、紛れもない上弦の証。だが猗窩座は、まだ『解せない』という顔のままだ。

 

「……貴様が、自分で守ってやればいいだろう」

()()()()()()()()()()()。悔しいけど、俺だけの力じゃ守り切れない」

 

 『なるほど』と、猗窩座が頷こうとして──ふと、黒死牟が殺意を燃やす相手に、思い当たる節があったことに気付く。

 

「……おい待て、確認させろ。まさかその『娘』というのは……こないだの産屋敷か?」

「うん、そうだよ」

「確認その2だ。お前、もう既にそいつを鬼にしたんだろう?」

 

 鬼になっているなら、自分から『血戦』でも申し込まない限りまず死なない。そもそも守ってやる必要なんて──

 

「いやぁ、それがさ……俺、あの娘と引き分けちゃったんだよねぇ……」

「────」

 

 猗窩座は完全に絶句した。

 口にこそ出さないが、彼は童磨の頭脳と戦闘力に関しては、自分以上と認めていた。その彼が、『()()()()()』なぞ……到底信じられることではなかった。

 

「あの娘は血鬼術──より正確に言うと、『鬼由来のもの』を触れただけで焼き滅ぼせる。人の形をした太陽そのものなんだよ。つまり俺の天敵だったって訳」

「それは最早黒死牟どころか無惨様も殺せるんじゃないか? むしろお前、よく引き分けたな」

 

 ますます守ってやる意味が分からない……と、猗窩座でなくとも頭を抱えるだろう。

 

「……あの娘は、俺の『粉凍り』を焼き払った直後に、吐血して倒れたんだ」

「反動があるというワケか」

「……もう、あの娘に血を吐かせたくない。そのためには、血鬼術を使わず戦闘不能にする必要がある」

「そのための破壊殺か」

 

 ようやく猗窩座にも、話が見えてきた。

 

「貴様は俺から体術を学び、産屋敷の娘を倒して鬼にする」

「猗窩座殿はその後、報酬として俺を喰うといい。そして──」

「俺は黒死牟()に、『血戦』を挑む」

「俺の血鬼術を吸収して、更に身体能力も跳ね上がった猗窩座殿なら──」

 

「──いいだろう、お前に素流(破壊殺)の真髄を叩き込んでやる」

 

 上弦の弍と参が、手を組んだ。

 

 

 

 *

 

 

 

 明治コソコソ内緒話。

 

 

 ──猗窩座殿。感情が無かった頃から、俺がキミを『親友』だと言い続けていた理由が分かったよ。……猗窩座殿が、俺を毛嫌いしていた理由もね。

 

 言ったら猗窩座殿は怒るだろうけど……俺達は、()()だったんだ。

 今なら分かる。猗窩座殿も、『虚無』を抱えていたんだって。本当は死にたいくらい、自分が大嫌いなんだって。キミが殺したいくらい大嫌いだった弱者は、きっと過去のキミ自身なんだろうね。

 ……つまるところ、同族嫌悪だったんだよ。

 

 でも今の俺は、同族ではなくなってしまった(やりたいことができた)から。きっと猗窩座殿も、話を聞いてくれたんだろうね。

 

 ……今でも俺は、キミを親友だと思っている。なのに私欲で利用するだなんて、相変わらず最低な自分に嫌気がさす。

 でも、キミしか適任がいないんだ。黒死牟から守ってやれる実力と、女性を殺さない信念を併せ持つ、猗窩座殿以外には任せられない。

 

 だからきっとこれでいい。これで……

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