鬼殺しのかぐや姫(リメイク前)   作:しやぶ

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 唐突に始まる無限城戦。原作でも無惨は割と突然現れてたから許して……


無限城・産屋敷邸戦
全面対決、開始


 

 ──それは、1907年12月の末に起こった。

 

「……初めましてだね。鬼舞辻無惨」

「……何とも、痛ましい姿だな。産屋敷」

 

 日が落ちてすぐ、産屋敷邸に琵琶の音がして。耀哉の前に、無惨が現れたのだ。

 

「額の爛れが気になるかい? これはね……我が一族から鬼を──君を生み出したことによる、神仏からの呪いだよ」

「……忌々しいことに、お前と私の顔は同じだ。血縁なのは認めよう。しかし、私が鬼になったことと貴様の病は関係あるまい。何故なら私には、一切の天罰が下っていないのだから」

「君はそう考えるんだね。だが、私には私の考え方がある」

「貴様の考えなぞ知らぬ。どうでもいい。

 そんなことよりも、だ。答えろ、産屋敷かぐやはどこに居る」

「どこって……()()()()()かな?」

「は──¿」

 

 無惨が振り返った時には、彼の頭は鼻から上が飛んでいた。

 逆転した視界の中では、身体中に目玉模様の紙札を貼り付けたかぐやが、刀を振り抜いている姿が見えているだろう。

 

「──鳴女ェェェェ!!!」

 

 再び、琵琶の音が鳴り響く。

 現れた襖は二つ。一つは屋根近くに。もう一つは無惨の足元に現れた。

 対するかぐやは──()()()()()()して、()()()()()()()()()()()

 

(コイツ、なんて怪力……! やはり縁壱(アレ)と同種のバケモノだったか……!)

(無惨の方はこれでいい。もう一つの襖は──)

 

「……やぁ、かぐやちゃん。三ヶ月ぶりだね」

「──チッ!」

 

(まぁ、貴方ですよねチクショウ!!!)

 

 現れたのは、上弦の弍。超広範囲の血鬼術を使う、護衛戦をする上で最悪の相手。

 かぐやはすぐさま、『塵旋風・削ぎ』を使って童磨も同じく吹き飛ばした。

 

「痛ったた……久しぶりに会ったのに、いきなり舌打ちは酷くない?」

「馴れ馴れしく話しかけるな、人喰い鬼……!」

「……かぐやちゃん?」

 

(あばば、口が勝手に暴言吐きおった。コレはプランB……珠世さん方式の引き込みも難しいか?)

 

 珠世が無惨の支配を外れたのは、彼女が常にそれを望んでいたからという理由もあるが……無惨が瀕死になるという大きな切っ掛けが必要だった。

 しかし逆を言えば──無惨を追い詰めることができたなら、その時だけは鬼を味方に引き抜くことが可能なのだ。かぐやはそれを狙っているが……

 

「フーッ、フゥゥッ!」

 

(やっっばい、殺意が止まんないわ。身体の調子が良すぎて、()()()()()()()()()()()()のもヤバい)

 

 彼は気付いていないが、今かぐやの痣は月模様の中心に、それより小さな日の丸模様が浮き出た状態だ。そしてそれは、少しずつ大きくなっている。

 ──月の痣が完全に上書きされた時が、彼の最期となるだろう。

 童磨は何となく、それを『嫌な予感』として察知した。

 

「かぐやちゃん、キミはもう戦っちゃ駄目だ! 取り引きをしよう!」

「そうだ! 産屋敷かぐや、取り引きだ!」

「断る! 悪鬼──滅殺!!」

 

 『()()()()()赫刀(しゃくとう)化』が発動し、遂に鬼と鬼殺隊の決戦が始まった──

 

 

 

 *

 

 

 

「──というのは嘘です聞くだけ聞いてみて良いですか!?」

「う、うん。聞いてくれるなら、嬉しいけど……」

 

 童磨さん、頼むからその『ヤベー奴を見る目』を止めてくれ。その視線は私に効く。身体の自由が戻ったのがついさっきだったんだからしょうがないだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。

 無惨? こっち見んな殺すぞ。

 

「さて童磨さん、聞かせてください」

「……いいかい、落ち着いて聞いてくれ。さっきの襖の血鬼術で、かぐやちゃん以外の鬼殺隊士は今、全員鬼の本拠地に幽閉されてる。だけど全員、まだ傷一つついてないから安心してほしい」

「人質を取っておいて『取り引き』とは。どこまで下劣なんですか」

「……ごめん」

「童磨さん、貴方じゃないです。

 ──そこで()()()()()()()()クソに言ったんですよ」

 

「──ッッ!」

(え? 本当に震えて……)

 

「さて童磨さん、話を遮ってしまい申し訳ありません。続きをお願いできますか?」

「えっ、あ、うん。

 こちら側の要求は一つ。産屋敷かぐや(キミ)が鬼になること。そうすれば──」

「ごめんなさい。その要求だけは、何があっても呑むワケにはいきません。再び身内から鬼を出せば、産屋敷は終わりです」

「……じゃあ口頭でいいから、青い彼岸花の咲く場所と時期を教えてくれ」

「そうすれば、お前の仲間は解放する。二度と鬼は増やさないと約束する。今いる鬼も、上弦を数名残して処分する。これで、どうだ……?」

「…………」

 

 さて、どうしたものか。棚ぼたな赤い刀で、ちょっち寿命が伸びたけど……感覚的に、それでも私の自意識は残り四半刻も持たない。

 雲取山の場所を教えて、『咲くのは5年後の9月』とでも言っておけば、私は充分お膳立てに貢献したと言えるだろう。

 ……唐突で、華はなく、助けたいと願った鬼は助けられず終い。ヒドイ退場の仕方だが、まぁ……私らしいと言えば私らしい最期か。

 

「いいでしょう、5年後の9月に──」

 

「カアアアッ! かぐや様、伝令です! 柱達と上弦が、戦闘を開始しました! 無惨の要求を呑んではいけません!!!」

 

「えっ、誰がそんなバカな──」

「──なっ、何をやっている黒死牟ォォォ!!!」

 

「……おい」

 

 柱達が、上弦と戦闘……? まさか、まさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさかまさか

 

「──ヒッ!?」

「煉獄さんは、誰と戦ってる?」

「まっ、待て! 誤解だ! 上弦の壱が余計な挑発をして、小競り合いになっただけで──」

「そんなこと聞いてない。煉獄さんは、上弦の、誰と戦ってるの?」

「れっ、煉獄──代々同じ顔の炎柱だな!? それなら、上弦の()が──」

 

「──よし死ね」

 

「ギッ、アアアアアアアア!!?!? 私の腕がアアア!?」

 

 殺す。煉獄さんが殺される前に、一刻も早くコイツを殺す。そもそもが父の仇。容赦しない。その上で私の杏寿郎を奪うなら、長く苦しめて時間をかけないように殺す。

 

 …………あれ、また思考が混ざってきた。はやくしないと。だから──

 

「……どーまさん。じゃましないで。殺すよ?」

「……ダメだ、かぐやちゃん。やっぱりキミは今すぐ鬼になるんだ。キミがキミでいられる内に。その力は、血鬼術の万倍(おぞ)ましい」

 

 そんなこと、しらない。しっていた。

 

「……ヒノカミサマにたてまつ──ぶっ!?」

「破壊殺『空式』」

 

 ……おいおい嘘だろ。それって、猗窩座の──

 

「目は覚めたかい?」

「……おかげさまで」

「意地でもキミを、死なせないから」

「……しつこい男は……嫌い、なんですがねぇ」

 

 そんなことのために、わざわざ習ったとあっては。こちらも──

 

「仕方ありません。意地でも貴方を助けます」

 

 やることは変わらない。童磨さんを死なない程度にぶった斬って、無惨も死ぬ寸前までぶった斬って、少し時間を置いてトドメを刺す。ハハッ、それなんて無理ゲー?

 でもまぁ……これが最期なんだし。やってやりますか!

 

 

 

 *

 

 

 

 明治コソコソ噂話

 

 かぐやの意識は既に半分以上汚染されていて、冒頭時点で残り数分の命だったみたいだぞ。

 それが四半刻弱まで伸びたのは、赫刀による失神が主人格の方に働いたから。加えて不意打ちの空式を頭に貰って更に意識が遠のいたことで、更にボーナスタイム発生。45分くらいは持つ──かもしれない。


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