「──むっ」「──んっ」
戦闘開始から3分で上弦を斬った二人は、奇しくも同じタイミングで琵琶の襖を開いた。
「これだけの短時間で上弦を倒すとは! 流石だ!!」
「まぁ、これでも最古参だからね。というか、同じ時間で参を倒してる杏寿郎の方が凄いよ……」
「結果だけ見れば、そうなのだが。アレは、何と言うべきか……いや、今はそれより」
二人は、一つ目鬼に視線を向けた。
「……そう睨まないでください。約束は守りますよ。ただ……」
「ただ、なんだろうか!?」
「……きっと、後悔しますよ」
「問題ない! ここで立ち止まる方が、確実に後悔する!!」
「同感だね」
「……忠告、しましたからね」
──『ベン』という音と共に、二人の剣士は落ちていった。
「……恋なんて、本当にロクでもない」
一人になった部屋で、彼女はポツリと呟いた。
鳴女が人であった頃、彼女には夫がいた。熱烈な恋をして、結ばれて──裏切られた思い出。
(でも、私がまだ『恋する乙女』のままだったのなら──
かつて命懸けで引き分けた強敵と、それよりも強い敵の首魁を前にして尚、
(……私には、関係のない話です)
鳴女は感傷を打ち切り、任務に戻った。
*
二人が送り込まれたのは、産屋敷邸のとある室内だった。
「よし、まず外に出るか!」
「……待て」
「むっ、愈史郎殿!」
室内には愈史郎と、透明化の札を貼られた子供達が居た。
「かぐやの加勢に行くんだろう? コレを持っていけ。鬼化を防ぐ血清と、透明化の札だ」
「助かる!」
「ありがとね」
そして二人が外に出ようとして──もう一度、制止の声が入った。
「まっ……まって、ください……」
「輝利哉様、なんでしょう?」
「……キョウジュロウ、さん。お願いです……ムザンなんて、殺せなくてもいいから……かぐやおばさんを、元に戻してあげてください……!」
「────」
杏寿郎は、理解した。
それは、つまり。
現時点で、3歳の子供が気付けるくらいには、かぐやが別人に成りかけているということ。
『彼女がかぐや様ではなくなった時──』
杏寿郎の頭に、かつての声が木霊する。
『──覚悟を決めておいてください』
「……大丈夫です、輝利哉様。
──だって彼はどうしても、彼女を喪う覚悟ができなかったのだから。
そうして杏寿郎は、真菰と共に外へ出て。
「はハっ! ゴひゅはハはははッ!!!」
タガの外れた声で嗤いながら戦うかぐやを見て、絶句した。
*
■■噂話
「もう遅いわ愚か者……と、言うのは……酷か。いくら奴には、アレを
……そう。杏寿郎は、杏寿郎だけが、
杏寿郎がその『手段』を知るのは、全てが終わった後だろう。