虚無を歩く者がオラリオに現れたようです 作:リバークラスト
天井の水晶から光が失われ、『夜』が生じた地下18階層。
ローグタウンの外は野営の焚き火がちらほら。何かとぼったくりなリヴィラは宿泊施設も例外ではないため、街の外で野営する者も多い。
エミール達も晩飯を購入した後、街の外で野営を決めていた。
焚火を囲みつつ、三人は簡単な夕餉を進める。
「そろそろ説明してください。あの人達は何なんですか? それとも、リリが聞いたら不味い話なんですか?」
リリルカがじれったそうに問う。
「ちょっと長くなるけど……」
アスラーグはそう前置きしてから話し始めた。
「ネヘレニア様が帝国の祭神になられる以前、諸島帝国とその周辺地域では元々『大衆の修道院』という宗教が主流だった。
この『大衆の修道院』は特定の神を信仰せず、宇宙論的超越領域の存在とその脅威に対抗する七つの戒律を旨とする宗教なのだけれど、その教えを逆説的に解釈するオカルティズムが発生したの。
“虚無”という超越領域とその“虚無”の住人、新しい言葉で“アウトサイダー”と呼ばれる超常存在を信仰する連中が出始めたのよ」
「虚無……アウトサイダー……」
聞き覚えの無い言葉に小首を傾げるリリルカ。エミールは黙々とサンドウィッチを齧っている。
「神々の時代が到来したことで、“虚無”を信じる者達は激増したわ。天界と神が実在するなら、“虚無”と“アウトサイダー”も実在するに違いない、とね」
「実在したんですか?」
リリルカの問いにアスラーグは首を横に振る。
「ネヘレニア様は『虚無やアウトサイダーというものを天界で見聞したことはない』とおっしゃった。小人族が信仰していた女神フィアナと同じだろう、と」
フィアナ。かつて小人族が信仰し、神々に実在を否定された女神。小人族達は下界した神々にフィアナが『空想の産物』と突きつけられ、宗教的アイデンティティが崩壊。『神なき民』として衰退していった。
アスラーグは残光が煌めく水晶の天井を見上げた。
「しかし、神に否定されたとしても、虚無とアウトサイダーを信じる者は絶えなかった。神々も宇宙論的超越領域とその存在を知覚し得ないのではないか、という仮説が否定されなかったから」
「? ? ?」
理解が追いつかなかったリリルカが、エミールへ説明を求めるように顔を向けた。
「安心しろ、アーデ嬢。俺にも分からん」
エミールはなぜか自信を込めて応じる。
2人の反応に微苦笑を浮かべ、アスラーグは棒きれで地面に二重円の図を描き、
「内側の円が人界、外側の円が天界だとしましょう。人界を包む天界は人界を窺うことが出来るけれど、人界は天界を窺うことはできない。この場合、」
二重円の外にもう一つ円を書き加えた。
「この三つ目の円……人界と天界の“外側”を、人間や神は観測できない。そして、この領域が虚無やアウトサイダーとするなら、神がその存在を否定したところで、証明にならない」
「……神様にも分からない領域のことだから、否定されても根拠にならない?」
リリルカの言葉に首肯しつつ、アスラーグは言った。
「では虚無とは何か。簡潔に言えば、この図が示す通り“外”よ」
「……別の世界、ということですか?」
「全ての外よ。世界の外であり、時空や次元の外であり、理の外。さらに言えば、我々の理解の外。アウトサイダーはその虚無における唯一の存在。神でありながら神ではない存在、と言えるかな」
虚無とアウトサイダーの説明に一区切りつき、リリルカの抱いた感想は――
「……正直、よく分かりません」
「この世界には不思議なことがある、くらいで充分だ」
なぜか得意顔でうそぶくエミールを横目に、リリルカはアスラーグへ問う。
「アスラーグ様は随分とお詳しいですけど……その虚無やアウトサイダーを信じてらっしゃるんですか?」
「まさか。私はネヘレニア様を崇敬しているわ」
棒切れを焚火にくべ、アスラーグは言葉を紡ぐ。
「ただ、私は自然哲学アカデミーという学術組織で長く虚無を研究してきた。どちらかと言えば、その実在の正否ではなく文化人類学的見地からだけど」
「学者様だったんですかっ!?」
リリルカは目を真ん丸にして驚く。
「……その驚き方は何か引っかかるわね」
秀麗な細面をしかめつつ、アスラーグは話を続ける。
「いくつかの論文や著作を出したら、虚無を信奉する連中に虚無研究の第一人者と思われるようになっちゃったわ。たとえば、さっきの店主みたいに」
「あー……なるほど」
納得しつつも、リリルカは何となく疑問が残る。あの店主はアスラーグの名を聞いた時、なぜ怯えた顔をしたのだろう?
そんなリリルカの疑問を余所に、アスラーグは話を続ける。
「面白いのはね、虚無信奉者達が独自の理論や方法で魔導具とか作っていること。彼らが製作する魔導具や装具は普通の品とはちょっと違うの。私もいくつか作れるけれど、ガチンコの連中ほどでは無いわ」
「ああ」エミールは同意して「マジの連中が作るボーンチャームは凄いぞ。変わりどころだと鼠を食えば、怪我や体力が回復するという効果とかな。ちなみに、生で、だ」
「気持ち悪いっ!」思わず悲鳴を上げるリリルカ。
「それに、ああいう変わり者は独自の人脈と情報網を持っているからね。渡りをつけておいて損はない」
アスラーグは腰を上げ、体を伸ばして煽情的な呻き声をこぼす。
「野営具も無いし、耐火装備に包まって雑魚寝しかないわね。リリちゃん、一緒に寝ましょ」
「えっと……夜番の順番を決めなくて良いんですか?」
リリルカがおずおずと告げる。
こういう場合、サポーターがキツい徹夜仕事――不寝番を押し付けられ易い。まあ、同時にクソ冒険者共に一泡吹かせる絶好の機会でもあったが。
アスラーグはリリルカのすべすべほっぺを両手で包みながら、“真顔”で語る。
「リリちゃん。女の美貌は消耗品なの。若さにかまけて手入れを怠ると、年を取ってからしっぺ返しを食らうわ。睡眠は採るべき時にしっかり採らなきゃダメよ」
「は、はい、アスラーグ様。気を付けます……っ!」迫力に気圧されるリリルカちゃん15歳。
「年季の入った言葉は重みがあるな」
エミールはつい口を滑らせた結果、アスラーグに尻を蹴り飛ばされて不寝番を仰せつかった。
★
地下とは思えぬ濃密な原生林が広がっており、また各階層は未踏破領域が存在するほど広く、“深い”。
生息するモンスターに有毒種が登場する。ダンジョンギミックも天候――“雨”が出現するし、毒性植物など“エグい”ものが増えてくる。
緑の地獄。人呼んで『大樹の迷宮』。
そんな『大樹の迷宮』に足を踏み入れたレベル4と3とサポーターの3人組は、『怪物の宴』と呼ばれる大量発生による歓迎を受けていた。
ダーク・ファンガスというキノコ型モンスターの群れ。群れ! 群れっ! 群れっ!!
強化種や異常種らしきキノコまで混じるキノコ大祭りだ。
「あわわわ……凄い数ですっ! 凄い数ですよっ!?」
キノコの奔流を前に悲鳴を上げるリリルカ。エミールはウームと唸る。
「流石に数が多すぎるな。苗床にされる前に逃げよう」
「キノコ如きに追われて逃走? そんな無様な真似、ごめんよ。“花”を使うわ」
垂れ気味の双眸を据わらせ、アスラーグはレイピアを抜く。
エミールは呆れ気味に頭を振り、小型背嚢と包丁モドキの鞘を降ろしてリリルカへ告げる。
「アーデ嬢、バッグを寄こせ。それから俺の背中に乗れ」
「ええっ!?」
「ほれ、早く。キノコの苗床にされたくないだろ」
「ぅ……分かりました」
リリルカはエミールにバカでかいバックパックを預け、ちょっぴり恥ずかしげに背負われた。
エミールはリリルカを背負い、背中の感触に片眉をあげた。
「ん? 華奢な割に意外と“育って”るな、アーデ嬢」
「やらしいこと言わないでくださいっ!」
背負われたリリルカが顔を赤くして眉目を吊り上げる。
「落ちないよう気をつけろよ」
エミールは自身の荷物とバカでかいバックパックの負革を右手に持ち、恩恵レベル3の高い身体能力と虚無の力――
「ひえええええええええええええええええええええ」
ジェットコースターの比ではない身体的負荷を味わい、リリルカの悲鳴が緑の地獄に響く。
異能を使うエミールほどでは無いが、アスラーグもレベル4の超人的身体能力を発揮して林冠を飛び移っていく。
「――爆ぜよ、爆ぜよ、爆ぜよ。野を薙ぎ払い、森を焼き払い、山を打ち砕け」
アスラーグは樹々の梢を飛び移りながら、
「――爆ぜよ、爆ぜよ、爆ぜよ。海を抉り、空を焦がせ」
音楽的美声で詩でも吟じるように呪文を紡ぎ、
「――爆ぜよ、爆ぜよ、爆ぜよ。全てを破壊し破砕せよ」
精妙精緻に魔力を練り上げ、
「――爆華大咲っ! 狂い咲けっ!」
自身の周囲に生じる魔法陣の中で朗々と吠える。
「サーモバル・アントスッ!!」
緑の地獄に巨大な爆炎の花が咲く。
アスラーグ・クラーカの最大攻撃魔法は炎熱の魔法、ではない。一種の気化爆弾に近い。
爆心地から生じた暴力的な超高熱圧衝撃波が荒れ狂った。激甚な熱波に大気中の水分が蒸発し、球状の蒸気膜が生じる。効力圏の木々の枝葉や藪が瞬時に焼き払われ、樹木がへし折られ薙ぎ払われていく。
激烈な音圧衝撃波と鮮烈な爆風が何もかも掃き払い、一酸化炭素に満ちた有毒ガスが広がっていった。
爆心地から静電気を帯びるほどの大きな爆煙が昇り、ダンジョンの天井を煤で真っ黒に塗り潰す。
巻き上げられた土砂や樹木の残骸がざあざあと降り注ぐ中――
地面の窪みに飛び込んで超高熱圧力の大津波をやり過ごした、エミールがプレーリードッグのようにひょこっと頭を出す。
エミールは頭のてっぺんから爪先まで灰と粉塵と土砂に塗れていた。鼓膜と肺に痛みを覚えながら周囲を窺うも、濃密な粉塵と爆煙に遮られて何も見えない。
「ぅぅううう……息が、息が出来ない、です……っ!」
窪みの底でゲホゲホと咳き込むリリルカだけだ。
リリルカは衝撃波こそやり過ごしたが、内臓や骨髄まで浸透する爆音と爆風の余波を受け、見事にヨレていた。エミール同様に全身が汚れており、白いローブマントがすっかり黒ずんでいる。
強く咳き込んだら真っ黒な痰が出て、「ひ」とリリルカは怖くなって半ベソを掻く。
「落ち着け、アーデ嬢。大丈夫だ。ゆっくり深呼吸しろ。それから水を少し飲むんだ」
エミールが小さく鼻息をつき、水筒を渡す。
言われたとおり、深呼吸を繰り返してから水を飲み、落ち着きを取り戻したリリルカは慄然と周囲を見回す。
「あ、アスラーグ様はこんな凄い魔法が使えたんですね……」
少なくとも半径1000メートルに渡って密林が円形に切り啓かれ、炭化した樹木が墓標のようにぽつぽつと散在している。
そして、立っているキノコ怪物共は一匹もいない。
高熱圧衝撃波で焼かれ、焦がされ、潰され、吹き飛ばされ、窒息し、死ぬか死にかけている。
魔法一つで『怪物の宴』が壊滅していた。
とてもレベル4冒険者の放つ攻撃魔法ではない。エミールが”タネ”を明かす。
「詳しくは言えないが、アスラの魔法はスキルとアビリティと装備で、レベル以上の威力が出る。レベル5のハイステータスに匹敵してるかもしれないな」
「―――」
リリルカが絶句している間に爆煙と粉塵が多少落ち着く。
エミールは小型背嚢と剣を担ぎ直し、車に轢かれた蛙のように倒れているアスラーグの許へ向かう。
「……やり過ぎだ。“鮫”の拡張式でも十分だったろうに」
「かもね。でもすっきりしたわ」
大の字になったまま、アスラーグは煤やら埃やらに汚れた顔を楽しそうに和らげる。
くすくすとアスラーグが笑っていると、大きなバックパックを担いだリリルカがふらつきながら歩み寄ってくる。
「大丈夫ですか、アスラーグ様。今、魔力回復剤を―――」
リリルカがバックパックを降ろそうとしたところで、
「待て」
エミールは背中から鮪切包丁モドキを抜き、霧のように漂う粉塵と爆煙の先を睨む。
「アーデ嬢。回復は後回しだ。すぐにアスラーグを連れて避難しろ」
「は、はい、エミール様っ! 失礼します、アスラーグ様っ!」
「ああああああああ……」
慌てるリリルカに両脇を抱えられ、ずるずると引きずられていくアスラーグ。なぜかちょっと楽しそう。
リリルカが窪みの中にアスラーグを引きずり込んだ直後、爆煙と粉塵の先から、それ“ら”は姿を現す。
4匹の熊型モンスター、バグベアー。
血走らせた目をぎらつかせながら傲然と。牙を剥いた口から荒々しい呼気を発しながら堂々と。
エミールは鮪切包丁モドキを右手に握り、バグベアーの群れへ駆けていく。
熊の怪物達も雄叫び上げ、その巨躯から想像もつかないほどの俊敏さで、エミールへ襲い掛かる。
両者の間合いが三メートルを切った直後。
「Sum Fdau」
エミールの姿が消え、一瞬でバグベアー達の背後に回り込む。
何が起きたのか分からぬ熊共の動揺を逃さず、エミールは装具ベルトのパウチからスプリングレーザーを取り出し、群れの真ん中へ投げ込む。
スプリングレーザーが“爆ぜ”た。
螺子巻き状に封じられていた鋼線剃刀が開放展張を開始。高速の運動エネルギーを伴った鋭利な刃が鎌鼬のように走る。
常人を八つ裂きにできるスプリングレーザーも、バグベアー共の強靭な巨躯をバラバラには出来ない。
が、流石に無傷では済まない。体躯を傷つけ、耳鼻目を削ぐ。
その峻烈な痛みがバグベアー達の動きを止め、間隙を生む。
エミールは再度の瞬間移動。一匹目のバグベアーの懐へ肉薄し、顎下から刺突。肉厚の片刃直刀が喉を抜き、頚椎を貫き、うなじから切っ先が飛び出す。
柄を捻り込んで抉りながら刃を抜く間、片目を失ったバグベアーが太い右腕で殴り掛かる。
エミールは地面を強く蹴ってスライディング。片目熊の一撃をかわしながらクロスボウで右膝を撃ち抜く。生死の狭間を掻い潜ったことでアドレナリンが分泌、アビリティ『
スライディングの勢いを殺さぬよう上体を起こして跳躍。鼻先を切り飛ばされている熊へ鮪切包丁モドキを振るう。
ばぎゃり。
斬撃とは思えぬ音色が響き、鼻無し熊の巨躯が袈裟に両断された。鮮血が飛散し、斬り飛ばされた上体の断面から臓物が零れ落ちていく。
そこへ4匹目のバグベアー、耳を失くした熊の化け物がエミール目掛けて吶喊。
「Swahh Skatis」
エミールは
死体と衝突した耳無し熊が体勢を崩した隙を用い、エミールは大上段から脳天唐竹割りを放つ。
耳無し熊が咄嗟に両腕をかざして頭を守ろうとするも、『飢血』の効果はまだ持続しており、脳天唐竹割りが致命の威力を発揮。
ごぎゃり。
破壊的な音色が轟き、『飢血』の一太刀が耳無し熊の太い両腕ごと頭を両断。腕を失い、頭を割られた耳無し熊が斃れる。
アドレナリンが醒める感覚を抱きながら、エミールは膝を撃ち抜かれて藻掻く片目熊へクロスボウを二連射。頭と心臓を矢弾に貫かれ、最後の熊が息絶えた。
バグベアー達を全滅させ、エミールは鮪切包丁モドキを大きく振るって刃の血脂を払う。
「いまいちボーンチャームの効果が実感できないな」
装具ベルトに吊るす骨細工を一瞥してから、エミールは周辺を見回す。
焼け焦げた啓開地には、炭化したキノコ、焼け焦げたキノコ、衝撃波で体内が圧潰して死んだキノコ、有害排煙で窒息死したキノコ、諸々死にかけているキノコ。ともかくキノコの死骸と残骸と欠片と死にかけキノコがそこら中に散乱していた。
「魔石と素材を回収するのが大変だな」
エミールは鼻息をつき、アスラーグとリリルカの許へ向かった。
★
橙色の夕日に照らされる巨塔バベル。
その足元から蟻のようにわらわらと出でてギルドへ向かう冒険者達。
彼らの中にひときわ小汚い者達が居た。
「……疲れました」
慨嘆するリリルカ。顔も肌も汗塗れで煤塗れで埃塗れ。白いローブも汚れに汚れて迷彩柄に化けていた。
「疲れたな……」
エミールも体や着衣を盛大に汚していた。歩く度、体のあちこちからパラパラポロポロとゴミや埃が落ちていく。
「お風呂入りたい……」
アスラーグも汚れまくっていた。麗しい銀髪は汚れすぎて黒くなっており、ケープマントも着衣もでろんでろん。美貌がいっそう悲惨さを強調する。
三人とも頭のてっぺんから爪先まで煤や埃、土や泥、草木の汁、モンスターの血、その他諸々に汚れていた。エミールの鮪切包丁モドキもアスラーグのレイピアも血脂でギトギト。
一言で言って、運が悪かった。
19階層でキノコ祭を終え、魔石や素材を回収した後の帰路。15階層まで戻ったところで、エミール達は余所のパーティからモンスターの群れを押し付けられ、二足歩行の一角兎アルミラージの大群とチャンバラ大会をやる羽目になった。
繰り返すが、運が悪かった。
一角兎の大群を相手に千切っては投げ千切っては投げ、と大立ち回りをしているところへ、牛頭の怪物ミノタウロスと大虎ライガーファングの小集団が横入り。
恩恵レベル的には、エミールとアスラーグにとって一角兎も牛頭怪物も大虎も雑魚の群れに過ぎない。
が、数の暴力という奴は侮れない。
エミールが魔法に見せかけた虚無の力ウィンドブラストや、クロスボウの爆裂ボルトで吹き飛ばした(手数が足りないため、リリルカのクロスボウでも爆裂ボルトを打たせた)。アスラーグもなけなしの魔力を搾って魔法を放った。
そして、エミールとアスラーグはひたすらに斬って斬って斬りまくり、リリルカは逃げて逃げて逃げまくった。
で、この有様である。
「爆裂ボルトは品切れ。手榴弾とスプリングレーザーも使い切った」
エミールはいろいろ汚れたクロスボウを一瞥してぼやく。
「剣だけでなくクロスボウも分解整備が必要だな」
「リリのクロスボウ、壊れちゃいました……」
クロスボウは案外応用が利かない。リリルカのクロスボウは規格違いの矢弾を何度も打ったことで傷み、壊れてしまった。
「弁償するよ。そういう契約だからな」とエミール。
「何はともあれ……明日はお休みにしましょ」
アスラーグの提案に、反対は出なかった。
いまいち話が進まず申し訳なく。