虚無を歩く者がオラリオに現れたようです   作:リバークラスト

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小話1:リリルカ・アーデ、冒険者への道。駆け出し編。

「アスラーグ様は今日もお休みですか?」

「ああ。魔導書を渡したのは失敗だったよ」

 

 案じる顔つきのリリルカに、エミールはさらりとカバーストーリーを語った。

 ここ数日、フェルズとの会見に備えて情報分析中のアスラーグは借家にこもっている。もちろん、そのまま事実を口にするわけにはいかないので、『買い出しついでに購入した魔導書を与えたら、眠っていた研究者気質の火が点いて家から出てこない』という話をでっち上げたのだ。

 

「そんなわけで今日も18階までのどこかをうろちょろして稼ごう」

「分かりました」

 リリルカはカバーストーリーを特に疑っていない。アスラーグならあり得る、と思っているようだ。完全に癖の強い変わり者扱いである。

「ところで、今日もリリが倒した分はリリの報酬で良いんですか?」

 

「構わないぞ」

 エミールの了承にリリルカはちょっぴり嬉しげ。

 

 というのも、アスラーグが諸島帝国製のクロスボウを買い与えていたからだ。

 

 ※   ※   ※

 エミールの使用しているリバースドロー式と異なるそれは、とある王室護衛官が愛用していたモデルと同じだ。ベーシックモデルを購入したところ、エミールが「ちょっと弄らせてくれ」と“自費”で改造。稼ぎをブッコみ『ディーラー』と呼ばれるマスターグレードモデルと同然になっていた(その総額は数十万ヴァリスだ。アホかと)。

 

 ぶっちゃけ、恩恵レベル1の非力な小人族の少女には、扱い辛い有様になってしまった。

 それでも、リリルカは文句一つ言わず、それどころか恐縮しつつもエミールの厚意を頂戴した。

 

 じつのところ、エミールがガシャコンガシャコンとクロスボウを連射し、モンスターを次々と撃ち倒す様に、リリルカは憧れていた。

 

 リリルカ・アーデは冒険者が大嫌いだ。しかし、その嫌悪は自身が冒険者になれずサポーターにならざるを得なかった悔しさや悲しさ、嫉妬などに起因しており、冒険者への羨望や憧憬の裏返しでもある。

 小人族という種族と性別的身体条件と自身のスキルなどから、ダンビラを担いでチャンバラは出来ない。しかし、あのクロスボウを使えばドンパチは出来る。

 エミールが証明したのだ。あのクロスボウを使えば、リリルカも戦えると。アスラーグが言っていたのだ。恩恵に頼らない強さもあると。

 

 冒険者のように、自分も戦うことが出来ると。

 

 使い勝手が厳しい? 扱いが難しい? だからなんだっ! それくらい根性と技術で補ってみせるっ!

 リリルカはマジだった。

 アスラーグから諸島帝国製のクロスボウを贈られた日の夜、安宿の部屋で1人クロスボウを構えて、ガンマンごっこするくらいに。

 

 なお、クロスボウの新調に合わせ、装備も変更になった。

 リリルカ・アーデと言えば、タイトな白いローブコートだが、そのローブコートの上にハーネスと装具ベルトを着け、右腰にクロスボウを、左腰に弾薬パウチ、後ろ腰に汎用トラッカーナイフを下げおり、弾薬パウチにはボーンチャームが飾られている。

 

 得物と装備を一新したリリルカを見て、エミールは頷く。

「これでアーデ嬢もモンスターを狩れるな」

 

 エミールの何気ない言葉に、リリルカは目頭が熱くなった。

 ※   ※   ※

 

 というわけで。

 アスラーグがおらず稼げる中層に進出を控えている今、ダンジョン潜りはもっぱらリリルカの射撃訓練(と小銭稼ぎ)が中心となっていた。

 

 15階層。

 頭上に14階層へ通じる大穴がぽっかりと開く空間。そのごつごつとした岩肌の影に身を潜め、リリルカは精緻な機構を持つクロスボウを構えていた。

 

 小柄なリリルカは両手で銃把を握り、眼下の通路へクロスボウを向けている。

 その隣に座って岩にもたれかかりながら、エミールが言った。

「腕だけで抑え込もうとするな。足腰でしっかり体幹を支え、体全体を使って反動を制御しろ。もしくは反動を計算に入れて狙いをつけろ」

 

「はいっ!」

 リリルカは岩陰からクロスボウを両手で構え持ち、水晶レンズの照準器を覗き込む。20メートルほど先の二足歩行一角兎(アルミラージ)達へ狙いを定める。

 

「呼吸と心臓の鼓動で人間の身体は完全に制止することができない。が、深呼吸してゆっくり息を吐いている間は、体の揺れが鎮まる。自分に最適な射撃の“間”を見極めろ」

 エミールの指示通り、リリルカは深呼吸し――――引き金を搾るように引いた。

 

 弦が開放され、弓が展張。発射の強烈な反動でクロスボウが暴れる。巨大な運動エネルギーを与えられた矢弾が猛々しく駆けていく。

 風切り音を曳いて疾駆した矢弾は、狙っていた胴体の中心ではなく、アルミラージの右肩口に当たり、肩の付け根から右腕を千切り飛ばした。狙いは外れたものの、肉体損傷の凄まじさと出血で被弾したアルミラージが死亡。

 

「命中」とエミールが淡白に着弾評価を口にする。

 

 やったっ!

 リリルカが喜ぶ中、クロスボウが組み込まれた半自動機構を駆動させた。ガシャリと弓部分が180度と回転しつつ弦が引かれ、ボルトトラックから次弾が装填される。

 

 仲間の唐突な、それも無残な死を前にし、他の一角兎達が慌てふためいている。

 

「まだこちらに気付いてないな。続けて狙え。選定は任せる」

 エミールが淡白に告げ、

「はいっ!」

 リリルカは再びクロスボウを構えた。照準器の先でアルミラージ達が怒り狂っている。仲間を無惨に殺され、激怒している。愛らしい一角兎達が手斧を握りしめて怒号を上げている。

 

 だが、まだこちらの場所に気付いていない。リリルカは再び狙いを定め、引き金を引く。

 放たれた矢弾は鋭い風切り音を引きながら疾走。狙ったアルミラージの腹を貫通し、硬い地面に突き刺さる。

 

 悲鳴を上げて倒れるアルミラージ。他のアルミラージ達がリリルカの狙撃場所に気付き、怒号を上げながら駆けてくる。兎特有の俊敏さは20メートルなど瞬く間に詰めてくるだろう。

 

 迫りくるモンスター達と自身へ向けられる熱い殺意に、リリルカの心胆が竦み上る。だが、

「慌てるな。もう一匹仕留めるくらいの余裕があるぞ。狙え」

 エミールは淡々と言った。

 

「は、はいっ!」

 リリルカはクロスボウを構え、迫りくるアルミラージ達へ狙いを定める。が、心臓の鼓動が早く大きく、呼吸が浅く早くなっているせいか、体の震えが大きくなって上手く狙えない。

 

 アルミラージ達が迫る。

 

 相対距離15M。

 

 14M。

 

 13M。

 

 12M。

 

 11M。

 

 10M。

 

 9M。

 

 8M。

 

 口から洩れる唾液や疾駆で揺れる体毛まではっきりと見え、殺意に染まった紅眼と視線が交差した。

 リリルカは恐怖に負け、照準が甘いまま引き金を引く。が、狼狽えた心が乗り移ったように、矢弾は至近距離にもかかわらず外れてしまう。

 

 手斧を振り上げたアルミラージ達が迫り、「ひっ」リリルカが思わず悲鳴を漏らした刹那。

 

 瞬きした後には、肉薄していたアルミラージが切り捨てられ、その死骸達の真ん中でエミールが鮪切包丁モドキを振るい、血脂を払っていた。

 

 唖然としているリリルカの許へ歩み寄り、エミールは無情動に告げる。

「呼吸と心臓の鼓動は精神状態の影響が反映され易い。射撃の精度に大きな狂いをもたらす。射手は脅威に晒された時こそ、心身に冷静さが求められる。よく覚えておくように」

 

「はい、エミール様……申し訳ありません……」

 しょんぼりと俯くリリルカに、エミールが小さな頭を掴んで揺さぶる。

 

「わわわっ!? なななんですかなんですかっ!?」

「そう気を落とすな。こればかりは慣れるしかない。射手は恩恵のステータスではなく、放った矢弾の数と踏んだ場数、重ねた失敗の数で成長する」

 エミールは片刃直刀を収めながら続ける。

「さっさと魔石を回収しよう。アーデ嬢が仕留めたモンスターの魔石をな」

 

「―――はいっ!」

 リリルカはあっという間に立ち直り、クロスボウを右腰に下げ、後ろ腰からトラッカーナイフを抜いた。

 

       ★

 

「良い射手は良い観察者でなければならない」

 エミールはサンドウィッチを齧りながら言った。

「獲物だけでなく、周囲もよく観察しろ。最良の射点はどこか。最善の射線はどこか。狙うべき部位はどこか。獲物や味方の動きを観察して予測しろ。慣れれば、未来位置を予測できる」

 

「難しいです」とリリルカもサンドウィッチをハムハムと食べながら応じる。

 

「戦場を俯瞰的に観察することはサポーターの経験を活かせると思う。サポーターは戦闘時に後方で控える。つまり戦場を外から眺められるからな」

「サポーターの経験を……」

 エミールの指摘に、リリルカはサンドウィッチを握ったまま考え込む。

 

「アーデ嬢。道具も知識も使い方次第だ。頭を使え。知恵を絞れ。知識と経験を活かし、常に考えろ。恩恵は肉体を強化するが、人間を賢くしない」

 サンドウィッチの残りを口に押し込み、エミールは水筒を傾けて胃袋に流し込む。

「本格的に射手として活躍したいなら、いろいろ学びを修める必要があるけどな」

 

「? なんで射撃に学問が要るんですか?」

 目を瞬かせるリリルカへ、エミールはしみじみと答える。

「射撃は学問だからだ、アーデ嬢」

 

「? ? ?」

 リリルカは小首を傾げるばかり。

 

         ★

 

 夕刻時。エミールとリリルカは“狩り”を終えてダンジョンから出た。

 

 リリルカ・アーデは目端が利く。周りもよく見える。

 

 だから、気付いている。

 エミール達と一緒にダンジョンへ潜るようになって以来、長年くすぶっている低位冒険者や鬱屈を溜め込んでいる同業者(サポーター)の向けてくるギラギラした目に。

 

 妬み。嫉み。僻み。害意を含んだ悋気。エミール達から厚遇されるリリルカへ反感と敵意を剥きだしていた。

 特に、新調した(高価な)クロスボウ一式を下げるようになってから、自身へ向けられる悪意的な眼差しはかなり強い。

 

 リリルカは周囲の熱い眼差しから顔を隠すように、フードの端を引っ張る。彼らのネガティブな心情は理解できる。が、だからといって、この居場所を譲ってやる気などさらさら無い。

 冒険者業界の底辺は弱肉強食。サポーターとて強くあらねばならないのだ。

 

「ま、良くある話だな」とエミール。

 

 これまでの荒事商売でも、エミール達のおこぼれに与ろうとすり寄ってくる、“寄生”目的の手合いはいくらでもいた。上前を掠め取ろうとするハイエナ野郎も珍しくなかった。闇討ちして稼ぎと装備とアスラーグの身体を総取りしようというバカ共もいた(そいつらは虫のエサになったが)。

 

「……ふむ。これは白兵戦の訓練も要るかな」

 ぽつりと口にしたエミールの言葉に、リリルカは困惑を覚える。

「白兵戦? 剣とかの扱いですか? でも、リリは非力な小人族ですし、恩恵も戦闘向きではありません。だからこそサポーターになったんです」

 

「何もチャンバラだけが白兵戦の技じゃないさ。それにな、アーデ嬢。君の恩恵スキルは極めて強力だぞ」

 エミールはにやりと口端を吊り上げる。

「たとえば、そのバッグパック一杯に岩を詰めて高所から投げつけてみろ。当たれば死ぬか大怪我だ」

 

「ええ……」

 薄ら恐ろしい喩えを聞かされ、リリルカが軽く引く。

 

 が、エミールは気にもしない。

「身体的に劣るなら頭を使えばいい。さっきも言ったが、恩恵は人間を賢くしない。知恵の戦いに恩恵は一切反映されない。つまりは同じリングで戦える。賢いアーデ嬢なら良い勝負が出来るはずだ」

 

 エミールはリリルカの小さな頭をわしわしと荒く撫でる。

「ちょっ!? やめてくださいっ! 女の子の髪をぐしゃぐしゃにするとか、許されざる蛮行ですよっ!」

 抗議しながらも、リリルカの表情は明るかった。

 

       ★

 

 エミールと別れた後、リリルカは寝床へ向かう。

 これまでリリルカはドヤ街の安宿を日ごと渡り歩いていた。そうしないとカヌゥのような意地汚いファミリアのクズ共に寝床を襲われ、稼ぎや所持品を強奪されるからだ。

 しかし、先頃のローグタウンでの一件以来、リリルカは“信用できる宿”を定宿にしていた。

 

 リリルカはダイダロス通りの一角へ向かっていく。

 七年前の大抗争で都市内難民となった後、再起できなかった連中が吹き溜まった区画で、貧乏女神ぺニアの縄張りでもあるこの区画は、オラリオでも独特な雰囲気があった。

 たとえば、『Skul Will Come Again』などの新しき言葉の落書きが目立つ。

 

 定宿へ向け、リリルカは尾行や待ち伏せを警戒しながら、迷宮染みたダイダロス通りを歩いていく。ちらちらとこちらを窺う目線や視線からは『隙があれば襲っちまえ』なんて獰猛な気配が伝わってくる。

 

 その一方で、道々には盗品を商う露店や得体のしれない料理を出す屋台も並んでおり、穏やかな活気と賑わいに満ちていた。

 

『おでん』なる極東の煮込み料理を出す屋台の脇を通った時、

「ソーマんトコのチビちゃん。今日も無事に帰ってこられたようだね」

 蓮っ葉な老婆がリリルカへ声を掛けてきた。

 

 貧乏女神ぺニアだ。

「丁度良い。ほれ、お布施していきな」

 

 この蓮っ葉婆は安宿を渡り歩いてこの区画を訪ねたリリルカに声を掛け、ソーマ・ファミリア所属のサポーターと分かると、ぬけぬけとお布施を強請ってきた。以来、顔を合わす度にお布施を強請られている。

 

「ペニア様。何度も言ってますけど、私は一応、ソーマ・ファミリアなんですけど。余所の神様にお布施したら不味いって分かってますよね?」

 リリルカの苦情もどこ吹く風。ペニアはずいっと手を出す。

「文句があるならソーマんトコに帰りな、おチビちゃん。郷に入ればなんちゃらだ。それともこのババアの神威(貧乏ビーム)を食らいたいかい?」

 女神ペニアが司りしは”貧窮”。スラムの住人達に敬われつつも畏れられる理由で、ペニアに眷属が居ない理由。

 

「それだけはホントに勘弁してください」

 リリルカは小さく溜息を吐き、懐から100ヴァリスほど取り出してペニアに渡す。

 

「敬虔なおチビちゃんに幸運があらんことを」

 おざなりな祝詞を口にしつつ、ペニアは受け取った銭をそのまま屋台のオヤジへ渡す。

「オヤジ、この銭でもう一杯」

 

 やれやれ、とリリルカは小さく頭を振り、定宿へ向かった。

 

 リリルカは知らない。

 なんだかんだで、この蓮っ葉婆にお布施をしているからこそ、追剥に遭わないことを。

 

 リリルカは知らない。

 装具に付けられたボーンチャームがこの区画にあるイカレたエルフ娘と鳥面大男の店の商品で、周囲が同店の客と見做して襲わないことを。

 

 リリルカは知らない。

 ローグタウンの一件を逆恨みしたカヌゥ達が自身を探してこの区画に入り、半殺しにされて身包みを剥がされたことを。

 

 ともかくリリルカは区画内を進み、定宿へ入った。

 

 ホテル『ドレーパーズ』

 正面玄関ホールは辛うじて掃除されているが、ホール先の階段から実態――薄汚れた安宿の本性が発揮される。

 

 廊下の壁や天井は漆喰が長年の経年劣化その他でエグい色味に化けており、ところどころ剥げて煉瓦が見え隠れしている。廊下の隅は埃や汚れが堆積固着しており、目地みたくなっていた。

 

 ウナギの寝床みたいな各部屋は大概がボロく、うらぶれている。壁や床も変色していて歩く度にギシギシと軋む。

 なお、いくつかの部屋には天井を通る梁にロープの擦過跡があったり、壁や床にヤッパで斬られたような跡や血痕の染みがあったりするが、気にしてはいけない。

 

 宿泊客というか事実上の”住人”達はチンピラ紛いな冒険者崩れや病み疲れた安淫売、体がボロボロのヤク中にアル中が主で、些細なことで揉め事を起こしては刃傷沙汰に至ったりする。

 

 まさしく場末に相応しい場末の安宿だ。

 それでもまあ、部屋に沐浴用浴室がある安宿は界隈でここくらい。宿泊費を払っている間は部屋に泥棒が入らない宿もここくらい。

 

 借りた部屋に入り、リリルカはドアに鍵と錠を掛けてホッと一息吐く。

 大きな大きなバックパックを降ろし、装備一式を外し、ローブコートを脱ぎ、ブーツも脱ぎ捨て、ベッドへ飛び込む。

 硬いし、シーツも毛布も消毒洗剤の臭いがキツい。まあ、ノミやダニやシラミに塗れた物よりはマシだが。

 

 10分ほどベッドに寝転がってボーッと過ごした後、リリルカは再起動。替えの下着とタオルを持って沐浴用浴室へ。

 ぬるい水に浸かりつつ、乙女の柔肌と髪をしっかり洗い、すっきりしてから脱いだ下着その他を洗って浴室に干した後、リリルカは下着姿のままクロスボウの手入れを始める。

 

『命を預ける道具だ。常に万全の状態を維持しろ』とはエミールの教え。もう一つの教え『目隠しした状態でも分解と組み立てが出来るようになれ』はまだ無理。

 

 リリルカは手入れを終えたクロスボウを構え、「ばんっ!」と小声で呟いた。その顔は明るい。

 

 

 

 ~~オマケ~~~

 

 

 

 ここ数日、アスラーグはキャミソールとホットパンツという簡素な格好で床に座り、時折、手にしたクリップボードにペンを走らせていた。

 周囲の床には大量の書類やファイル、メモ書きが無秩序に散乱している。掲示板代わりにしている壁にも大量のレジュメをピン止めされていた。別の壁に貼られた大きな街区地図や地下水路地図、ダンジョンの各階層地図は山ほど書き込みが加えられている。

 

 そんな部屋の中で分析と解析と思考と思索を重ねるアスラーグは、冒険者というより研究者そのもので、レイピアを振るうより魔法をぶっ放すよりよほど堂に入っていた。まあ、ギラギラと貪婪な光を放つ青紫色の瞳は魔女染みていたけれども。

 

「進捗は?」

 ダンジョンから帰宅したエミールが問うと、アスラーグは書類から顔を上げずに、

「フェルズとの会見は」

 言った。

「貴方一人で行きなさい」

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