虚無を歩く者がオラリオに現れたようです 作:リバークラスト
継ぎ接ぎマスク男の放った爆裂ボルトがエミールの背後にあった岩を捉え、爆発。飛礫の散弾が迫る。
エミールは
「そーぉくると思ったぜっ!」
が、その先には全身甲冑男が操る食人花の群れ。蛇モドキ共がエミールを包み囲み、そのまま押し潰さんと包囲を一気に縮める。
「捕らえたぜ!!」
包囲は高密度で脱出を許す隙間はない。食人花を剣戟や爆発物で払えば、その一動作の隙をついて継ぎ接ぎマスク男が仕留めに掛かろう。ならば――
「Go hayes」
エミールは食人花の一体に
「は?」
唖然とする全身甲冑男へ肉薄。折り畳み式小剣を袈裟に振るう。
「くっ」咄嗟に反応して袈裟切りを防ぐも、体勢を崩す全身甲冑男。“狙い通り”に崩したところへ、エミールは左の掌底打を甲冑男の胸元へ打ち込み、同時に虚無の技を放つ。
「Hara Karghris」
「ぎぃにゃぁぁあああああああああああああああああああああっ!?」
甲冑内へ直接、破壊的衝撃波を叩きこまれ、全身甲冑男は吹き飛んでいった。
「見事っ! だが――獲ったっ!」
継ぎ接ぎマスク男がエミールを間合いに捉えていた。エミールはどうあがいても一手間に合わない。
しかし、この戦場は先に戦った時と違い、一対一の決闘ではなく乱戦。
「おらぁあああああっ!」「うぉおおおおおおっ!」
凶狼ベートとオリヴァス・アクトもまた激しい機動格闘戦を行っており、ここに二組の戦いが交錯する。
「な――」
「邪魔だボケがあっ!!」
ベートは突然の横入りに困惑している継ぎ接ぎマスク男を、容赦なく全力で蹴り飛ばした。
「ぉおっ!?」
「邪魔をするなっ!!」
エミールは混乱気味のオリヴァス・アクトを思いっきり殴り飛ばした。
そこへ、レフィーヤが魔法を編み上げる。
自身の扱う広域攻撃魔法ではなく、”九魔姫”が使う広域殲滅魔法を。
他者の魔法を使うためのレア魔法『エルフ・リング』を踏まえるために長々文詠唱となってしまう。しかし、”九魔姫”の広域殲滅魔法はデメリットを補って余りある。
「我が名はアールヴ……レア・ラーヴァテインッ!!」
神々から“千の妖精”と二つ名を授かった天才少女が、食糧庫内に炎獄を生み出した。
★
幾本もの炎柱が暴れ回り、凶悪な炎熱嵐が吹き荒れる。
食人花や巨人花が瞬く間に食らい尽くされ、タナトス・ファミリアの骸が灰に還っていく。炎熱に焼かれた壁や天井から瓦礫が剥離崩落し始める。凄まじい熱気は効力圏外でも肌に痛みを覚えるほどだ。
カタストロフィ的光景を前に、アスフィが慄然と呟いた。
「凄い……」
「クソが。巻き込まれるところだったぞ」
防御陣へ戻ってきたベートが、少しばかり焦げたジャケットを弄りながら舌打ち。
「す、すいま」慌てて詫びようとするレフィーヤへ、
「だが……よくやった、ノロマ」
ベートはそっぽを向いて素っ気なく告げる。
予期せぬ褒め言葉を受けてレフィーヤが茫然とする中、ティオナが油断なく尋ねた。
「仕留めた?」
「……分からねえ」
ベートも油断なく炎獄を睨む。周囲に紅色髑髏の姿はない。オリヴァス・アクト他2人の怪人も姿が見えない。だが、予感はある。あの業火の中にあっても奴らなら死んでいない、と。
そして、食らうものを失くした魔力の炎が消散していく。
がごん、と豪快な破砕音が響き、誰もが身を固くすると、
「はた迷惑な魔法を撃ちやがって……」
煤塗れの紅色髑髏が瓦礫の中から姿を現し、続いて――
「こんなバカな……彼女に祝福された私が……っ!」
オリヴァス・アクトは健在だった。
左腕が焼失し、左顔や左半身に酷い熱傷痕が刻まれていた。どうやら損傷が激しすぎて肉体再生が機能不全に陥っているらしい。だが、確かに生きている。
「斯くも歳若い少女がこのような大魔法の使い手だったとは……」
焼け焦げた革コートを脱ぎ捨てる継ぎ接ぎマスク男。
首から下げたゴルゲットや全身に巻き付けたボーンチャームが露わになっているが、オリヴァス・アクトと違い、目立った外傷はない。
そして、
「ふっざけんんなあああああああああああああああっ!」
血と熱傷痕だらけのヒューマン初老男が怒号を上げていた。
全身甲冑は腰回りと手足の部分しか残っておらず、素肌を晒す胸部は焼け焦げ、鎖骨部分が大きく歪み、数本の肋骨が肌を突き破って露出している。ツタ状の痣が走る精悍な顔立ちも火傷と骨折で酷く損壊している。顔や上半身だけでなく腰や手足の甲冑の隙間からダバダバと血が流れ落ちていく。
常人なら死んでいるべき重傷。しかし、ヒューマン男は平然と憤懣をぶつけるように地団太を踏んでいた。
「オラスキル王朝時代の一点物がパーだっ! どうしてくれるんだっ! 二度と手に入らねえんだぞっ!!」
イカレてる。
戯言を繰り返してきたこの男が恐ろしい狂人であることに、冒険者達はようやく気付く。致命的な重傷を負っているにもかかわらず、甲冑を破壊されたことに激怒している。イカレてるとしか言いようがない。
「腐れ刻印持ちはともかく……おいぃ、そこのぉっ! 雌ガキエルフぇお前ぇっ!!」
「ひっ!?」
初老の狂人に第二関節から先がない右手人差し指を向けられ、レフィーヤが思わず後ずさり、フィルヴィスが庇うように前へ出た。
「雌エルフ雌エルフ雌エルフ……雌エルフっ!! あの色黒雌エルフにこの間の雌エルフっ! 今度は雌ガキエルフッ!! どいつもこいつも雌エルフは俺を舐め腐りやがってっ!!」
意味不明の恨み言を並べ、
「グリム、ヴァスコ。撤退だ……私は彼女のためにこんなところで」
ふらふらと歩み寄ってきたオリヴァス・アクトへ、腰のパウチから取り出した複数本の薬剤瓶を突き刺した。
「ぐあああっ!? な、何を―――」
「うるせえ、混ざり物がっ!」
初老の狂人は驚愕するオリヴァス・アクトの口へさらに薬剤瓶を押し込んだ。
「化物は化物らしく化物になりやがれっ!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
悲鳴を上げて崩れ落ちたオリヴァス・アクトが変化し始める。全身の皮膚が裂け、食人花の触手みたいな蔓が体を覆い、体躯を膨張させ、肥大化させていく。
そのおぞましい光景に冒険者達が恐れ慄く中、オリヴァス・アクトだったものが身を起こす。
さながらトロールの如き巨躯は異様なほど筋肉が発達していた。両腕の長さが左右非対称で右腕は破城鎚のように太く長く、短い左腕は鱗に覆われている。極太の首に座る頭にはわずかな白髪が残っており、その顔はもはや人間というより地獄の悪鬼だ。
階層主との戦闘経験がある者達は直感的に悟る。
巨鬼と化したオリヴァス・アクトがどれほど危険な怪物に成り果てたかを。
「勝手な真似を……っ!」
隣で目を覆うグリムという継ぎ接ぎマスクを無視し、
「征けオリヴァス・アクトッ!」
ヴァスコと呼ばれた狂人が凶相を湛えて叫ぶ。
「皆殺しだっ!!」
惨劇の幕が開く。
★
巨鬼と化したオリヴァス・アクトは正しく怪物だった。
「! こいつは――っ!?」
凶狼ベート・ローガの全力回し蹴りを叩きこまれても身じろぎ一つせず、
「かったいっ!?」
大切断ティオナ・ヒリュテの剛剣を浴びせても斬り裂けない。
エミールも巨鬼オリヴァス・アクトの危険性を感じ取ってベート達との共闘を試みるが、
「貴様の相手はこちらだろうっ!」
横合いから継ぎ接ぎマスク男グリムが襲いかかり、足止めされる。
怪獣染みた雄叫びを上げながら、巨鬼は右の巨拳でティオナを殴り飛ばし、
「ぎゃんっ!?」
「! アホゾネ」
気が逸れたベートを短い左腕の鱗状体皮の斉射で射抜いた。
「ぐぁあああっ!?」
最大の障害たるレベル5冒険者2人を排除し、巨鬼は防御陣形を組んでいた冒険者達へ襲い掛かる。
最初の犠牲者は勇敢にも正面から立ち向かった女ドワーフのエリリー。右の巨拳を浴びて全身を破砕骨折し、壁に叩きつけられた。半ば潰れた彼女の骸は目を閉じていなかった。
次の犠牲者は獣人男性のホセ。巨鬼の進撃を阻もうと足の腱を狙い、横合いから双剣を振るうも、逆に双剣が折れる始末。唖然としたところへ右の打ち下ろしを浴び、上半身が千切れ飛んだ。彼の頭蓋は原形を留めていない。
2人の犠牲で稼がれた時間を用い、フィルヴィスの魔法障壁を展開。巨鬼の進撃をなんとか留める。
その間隙を突き、アスフィが爆炸薬を投げつけ、レフィーヤと小人族魔法使いメリルが攻撃魔法を、犬人娘ルルネが魔剣で火炎を放つ。彼女達の援護の下、前衛組が決死の吶喊を試みた。
しかし……
魔法も爆炸薬も魔剣の炎も、巨鬼を傷つけるどころか怯ませることすら敵わない。そして、前衛組は巨鬼の反撃に晒された。
ゴメスは巨拳のアッパーカットに捉えられた。彼の肉塊と肉片が食糧庫内にばら撒かれる。
ポットとポックの小人族姉弟は鱗弾の弾幕に呑まれた。“勇者”に憧れていた小人族の少年と弟想いの姉は揃って命を失い、並んで骸を晒す。
鱗弾に腹を貫かれた獣人女性タバサがこぼれそうなハラワタを押さえながら、泣き叫ぶ。
仲間を庇った荷物持ちのドドンは巨拳がかすめた衝撃で腰を砕かれ、激痛にもがく。
巨拳で砕かれた岩床の飛礫を浴び、血達磨になったエルフ女性スィーシアをエルフ青年セインが引きずって後退する。
一方的に蹂躙される絶望的状況に思考が追いつかず、次々と仲間が死傷していく惨劇的光景に思考が痺れ、アスフィは指示も命令も出せない。
そんなアスフィを嘲笑うように巨鬼が迫り、その拳を振り下ろ
「させっかクソがあっ!!」
血塗れのベートが側背から飛び込む。所有している魔剣が壊れるほど魔力を吸わせた
魔力による特性強化を相乗した一撃は巨鬼の顔面を陥没させ、右目を圧潰、前歯もまとめてへし折り、顎の上下を割り砕く。
そして、血塗れのティオナが大双刃をガリガリと引きずりながら、ゆらりと現れる。
巨拳を浴びたティオナは傍目にも瀕死状態だった。
殴り飛ばされる際に大双刃を盾にしたものの、レベル5冒険者の超人的肉体は酷く傷ついていた。
左腕は歪み曲がり、折れた橈骨が肌から飛び出している。体内を突き抜けた衝撃により、左肋骨のいくつかが折れ、肺や臓器を傷つけていた。微細血管が破裂した左目は真っ赤に染まり、血の涙が流れ続けている。破けた肺から血が逆流、咳き込むと同時に鼻腔と口から鮮血が溢れ出た。
「ティオナさんっ!?」
レフィーヤが悲鳴を上げる中、
「やっ……た、なぁあ~……ああっ!」
瀕死のティオナ・ヒュリテが猛る。
スキル『狂化招乱』と『大熱闘』が発動。全ステータス値が爆発的に向上し、レベル上限に達した。本来なら意識を保つことも不可能な重傷にもかかわらず、ティオナの生命活動はスキルによって保持され、それどころか戦闘可能な状態に持ち直す。
「いっくぞおおおおおおおおおおおおっ!!」
まるでネコ科の肉食獣のように、顔面が破壊された巨鬼へ飛び掛かり、全身のバネを捩じりながら大双刃を振り下ろす。
本能的な行動だろう。巨鬼オリヴァス・アクトはティオナの一撃を受け止めようと右腕を掲げ、
どがん。
それは斬撃というより、大双刃の接触点を爆心地にした破壊現象だった。
弾けるように千切れ飛ぶ巨鬼の右腕。衝撃でのけ反る怪物へ、ティオナが更なる一撃を見舞う。
大叫喚を上げながら、巨鬼オリヴァス・アクトは左腕の鱗弾で迎撃。
ティオナは小麦色の肢体を猫のように捻って鱗弾の弾幕を潜り抜け、
「くっらえええええええええええっ!!!」
破滅の一撃がオリヴァス・アクトの胴体へ叩き込んだ。
食糧庫が震えるほどの破壊音がつんざき、巨鬼の胴体が爆ぜ砕ける様は戦神の鎚が振るわれたが如し。
巨鬼オリヴァス・アクトの上半身が千切れ飛び、血肉をまき散らしながら大主柱へ激突した。
圧倒的攻撃に誰もが唖然茫然。
「でたらめだ」「なんとまぁ……」
エミールとグリムすら思わず戦いを止めて感嘆を漏らし、
「――はあ?」
ヴァスコは目を点にしていた。
★
レヴィスが剣姫アイズと戦いながら食糧庫内へ登場した時、食糧庫内は惨憺たる有様だった。
食糧庫内は高熱で焼けたらしく煤だらけ。食人花も巨人花もタナトス・ファミリアの妄信者達も文字通り全滅。オリヴァスの姿はなく、大主柱の許には見覚えのない巨人の残骸が転がっている。狂人共の一人はズタボロで呆けており、もう一人は件の
そして、侵入者らしい冒険者達は少なくない死傷者を出しながらも、未だ戦意に満ちた目でこちらを睨んでいる。
「どういう状況だこれは」
もっともな疑問であった。
「おお、ミズ・レヴィス。無事で何より」
「なんというか、侵入者と戦闘があってな。双方に多くの犠牲を出している」
「オリヴァスはどこだ? やられたのか?」
舌打ちし、レヴィスが問えば、グリムが今にも息絶えそうな巨人の化物を指さした。
「あれがミスタ・アクトだ」
「は?」レヴィスは眼を瞬かせる。何がどうしてオリヴァスが巨人の化物になったのか、全く想像できない。
「ヴァスコが――」とグリムが説明しようとするも、レヴィスは狂人の名前を出された時点で聞く気が失せた。
「聞きたくない。黙っていろ」
レヴィスはちらりとアイズを窺う。
アイズの方も冒険者達と合流し、簡潔な説明を受けて……困惑し、混乱していた。
「レベル6、か。アリアと戦うには力が足りない」
レヴィスは大主柱の許へ向かい、「レ……ヴぃ、すぅ」と助けを求める巨人の胸元に容赦なく手刀を突き立て、魔石を抉り取る。
灰となって崩壊していく巨人の骸を歯牙にもかけず、レヴィスは取り出した魔石を嚥下。
「……まだ足りんか」
再び舌打ちし、グリムへ告げる。忌々しげにヴァスコを睨みながら。
「撤退する。死にたくなければ、あの呆けているバカを連れてこい」
「良いのかね? アリアを確保しなくて」
「今は無理だ。力が足りん」
グリムの問いへ蹴り飛ばすように応じ、レヴィスは大主柱にはめ込まれた“種”を引っこ抜いた。
「ここでの茶番は終いだ」
瞬間、大主柱に亀裂が入り、食糧庫全体の崩壊が始まる。
「! 皆、撤退をっ! 早く外へっ!」
「ア、アスフィッ! “皆”はっ?」ルルネが泣き顔で言った。
キークス、エリリー、ゴメス、ホセ、ポットとポック。6人の亡骸。
「……負傷者だけで手いっぱいですっ! 彼らは……連れて帰れませんっ! ルルネッ! 行きなさいっ! 早くっ!!」
ルルネが涙をこぼしながら駆けだしたことを確認し、
「ごめんなさい……」
アスフィは連れて帰れない団員達へ深く詫びながら、出口へ向かって駆けだした。ロキ・ファミリアの面々も脱出を始める。ベートがすっごい不満顔で重傷のティオナ(こっちもすっごい不満顔)を背負っていく。レフィーヤとフィルヴィスも出口を目指してひた走る。
崩落が激しくなり、冒険者達の撤退が進む中――復讐狂いがグリムへ襲い掛かった。
天井や壁から岩石や瓦礫が降り注ぐ中で、激しい剣戟が重ねられ、崩落の粉塵に閃光と火花が混じる。
「この状況でも、かっ! 貴様もよくよくネジが外れているなっ!
冷笑するグリムに対し、エミールは無言で剣を振るい続ける。
怨敵の抹殺を諦めない。報復の完遂を図り、復讐の刃を収めない。
殺す。必ず殺す。絶対に殺す。
巨鬼を豪快に倒され、悄然としていたヴァスコが八つ当たり気味に戦いへ加わった。
「俺を無視するんじゃねえっ!!」
が、重傷のためか明らかに動きが鈍い。
「よせ、ヴァスコッ! お前は先に退けっ!!」
グリムが忠告をするが、間に合わない。
エミールはヴァスコの剣を掻い潜り、足元を薙ぐように剣を振り抜く。
『飢血』による一撃は、ヴァスコの両膝から先を吹き飛ばすように、破砕した。
「ひっぎぃいゃあああああああああああああああっ!?」
両足を失って転げ回るヴァスコ。
その首を刈り取らんと迫るエミール。
「言わんこっちゃないっ!」
グリムは毒づき、意を決する。マスクから覗く双眸が一瞬で漆黒に、瞳孔が白く染まり、絶叫。
音圧衝撃波が轟き、天井や壁の崩落が加速し、巨岩が雨霰と降り注ぐ。
さしものエミールとて退かざるを得なかった。
グリムはヴァスコを肩に担ぎ、闇の奥へ消えていく。
「決着は持ち越しだな、
エミールは憎々しげに舌打ちし、踵を返した。
★
グリム。ヴァスコ。
いずれも覚えがある。復讐の旅を始める前に目を通した機密資料にあった名前だ。
特に、ヴァスコはアスラーグとも関わりがある。
帰還したら、色々話し合う必要がありそうだ。
エミールは肩に担いだ麻袋を揺らしながら食糧庫通路を出る。
出入り口傍で冒険者達が負傷者達の手当てを行い、休息を採っていた。エミールの姿を見るや、誰も彼もが武器を手に身構え、強い警戒心を露わにする。もっとも、レベル5以上の者達以外は窮鼠のような有様だったが。
複数の切っ先を向けられながらも、エミールは特に反応を返さない。
「テメェ、何モンだ?」
狼人青年がいつでも強襲できるよう体勢を保ちながら問う。
「あいつらの仲間じゃないんでしょ? 教えてよ」
アマゾネスの乙女が大双刃の切っ先を向けながら尋ねる。
「少しでも何か知っているなら、教えて欲しい」
剣姫も油断なくこちらを見据えている。なぜか道に迷った幼子のような雰囲気があった。
エミールは無言のまま、冒険者達を刺激しないようゆっくりと肩に担いでいた麻袋を”万能者”の許へ投げた。
がしゃん、と音を立てて袋から溢れたそれらは、食糧庫内で戦死した冒険者達の遺品。
食糧庫は崩落して完全に埋没しており、亡骸を迎えに行くことはできない。ゆえに、遺された者達にとってエミールが渡した形見の品が持つ意味はとても大きい。
「これは……」
困惑する”万能者”へ、
紅色髑髏は無機質に告げた。
「お前達の忘れ物だ」
「!――感謝します。心から」
”万能者”は今にも泣き出しそうな顔で一礼する。元王女による最敬礼にヘルメス・ファミリアの面々も続き、丁寧に頭を下げる。
毒気を抜かれたロキ・ファミリアの面々が武器を下げ、殺気を解く。
その瞬間、エミールは
何の痕跡も残さず、まるで幽霊のように。
Tips
巨鬼オリヴァス・アクト。
変身した姿は、FallOutシリーズのスーパーミュータント・ベヒモス。
Dishonoredはモンスターがいないから……同じ販売元のベセスダ作品を……
ヘルメス・ファミリア。
デリラ信奉者の介在により、原作より戦闘条件が厳しいため、死傷者も原作より多め。
キークス、エリリー、ホセ、ポットとポックの死は原作通り。
ゴメスの死、タバサ、ドドン、セインの負傷は本作の追加。
レヴィス。
原作より苦労人。