TS轟ちゃんは付き合いたい   作:神咲胡桃

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男の娘と受験

住んでた街では割と有名な不良グループを潰してからというもの、ボクの日常は平穏そのものだった。

 

トーカも無事雄英の推薦に合格。これで後は、ボクが雄英の受験に合格するのみとなった。

 

そして今日、ボクはその雄英にいた。

 

「ウフフ。こんなにおーきいなんて、さすが雄英だね」

 

周囲には色んな制服の中学生がたくさんいる。さすがは倍率300倍というべきか。

 

とはいえ、ここまで雄英に拘る必要もあるのだろうか。確かに雄英のネームバリューは凄まじいものがあるにしても、士傑高校でもそこまで問題ないとは思うんだけどなぁ。

 

やっぱりあれか。オールマイトの母校というのも大きいのだろうか。

 

まあボクはトーカと一緒ならどこでもいいんだけど……ん?

 

「ごめんね勝手に。でも、いきなりこけちゃったら、縁起悪いもんね?」

「え、え、え、ええ……!?」

 

眼の前で緑髪のもじゃもじゃ君と、もちもちしてそうな女の子が話してた。

 

もじゃもじゃ君のテンパりが可哀そうなくらい半端ない。きっと女子と話したことないんだろう。

 

ウフフ。だったら僕も気をつけなくちゃ。綺麗で可愛く美しくが信条のボクが話しかけたら気絶しちゃうかも。ボク見た目は女の子だから。

 

 

 

 

 

 

筆記試験が終わった。特筆することは特になかった。強いて言うなら、まあそれなりの難しさだったよ。

 

そして、今は実技入試の説明の真っ最中。

 

雄英に勤めているプロヒーローの一人、プレゼントマイクの説明によると、1~3Pのロボットがいるから、とにかく破壊すればいいらしい。一応、他人の妨害は禁止。

 

 

……いやまあ、それは良いんだけどさ。これ平等とは思えないよね。

 

戦闘向きじゃない個性の人はこの時点で脱落がほぼ決定してる。洗脳系の個性なら、他の人を洗脳して戦わせる方法もあるけど、それだと多分操られた人にポイントが入る。

 

ボクと同じ思考に辿りついたのか、周囲の一部の受験生は苦い顔をしていた。

 

あれかな。ヒーローなら戦えて当然ってやつかな。オールマイト含め、ビルボードランキングの上位は大体雄英出身だし、何より戦闘での活躍が目立つからなぁ。

 

なにも、戦うだけがヒーローじゃないのに……。

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

ま、ボクとしては脱落者が多ければ、トーカと一緒にいられる可能性が増えるから構わないけどね。むしろドンドン落ちてくれ。

 

ウフフ。ごめんね? 憐れんではあげるけど、ボクだって知らない人間より知ってる人間と一緒にいたのさ。

 

 

……ところで質問したメガネの人、お邪魔虫である0Pの説明がなかったからって、恥ずべき痴態って言うほどかな?

 

 

 

 

 

 

だだっ広い敷地内をバスで移動する。

 

思ったけど、これ場所によっては使われない日の方が多いよね。何ならソーラーパネルつけて自家発電でもすればいいのに。

 

だけどそんなことを考えていたのも最初だけ。

 

思ったよりも移動に時間がかかったのと……バスの揺れが気持ちよくて……ねむ……ZZZ。

 

 

 

 

 

 

「――――ほら、起きて。着いたよ」

「……うにゃ?」

 

揺さぶられる感覚に目を覚ますと、耳からなんか伸びてる女の人がボクを揺らしてた。

 

辺りを見回すと、ボクとボクを揺らしてたお姉さん以外、バスから人が消えてた。

 

「……夢か」

「いや、夢じゃないから。もう試験会場ついてるんだけど」

 

夢じゃないんだ。

 

あれ。もしかしなくても、ボク寝てた……?

 

「…………もしかして、試験終わった?」

「いや、まだだけど多分もうすぐだから。早く起きた方が良いよ」

 

そんにゃ……かなり危なかったのか。

 

ほっといたらライバルが一人減る。実際、このお姉さん以外誰もボクを起こそうとしなかった。なのにわざわざ起こしてくれるなんて……。

 

よし。この優しいお姉さんは優しい人と憶えよう。

 

「ふぁ……ありがとう。お姉さん」

「べ、別に礼を言われることじゃない」

 

ウフフ。恥ずかしがり屋さんなのかな? 顔を真っ赤にしてる優しい人も可愛いね。……まあ、試験になったら容赦なくやらせてもらうけど。

 

「って、こんな呑気に話してる場合じゃないって! 早く準備しないと、試験が始まっt――――」

 

 

 

「ハイスタートォ!」

 

 

 

優しい人が焦ったように言うと、外から大音量の声が聞こえてきた。

 

うにゅ~……寝起きには効果抜群~、ってあれ? なんで誰も動かないんだろ?

 

「どうしたぁ!? 実践じゃカウントなんざねえんだよ! 走れ走れぇ! 賽は投げられてんぞ!」

 

その言葉にハッとして走り出した受験者たち。

 

突発的なことに対応できなかったのか。

 

「……呆けてる場合じゃない!? 早く行かないと!」

 

そういえば、優しい人はバスに乗ってたせいで送れてるんだっけ。

 

このまま見捨てるのも、さすがにな~……よし。

 

「くそっ! 明らかに出遅れた!」

「待って、優しい人」

「アンタも早く行きなさいよ。ってか、優しい人って私の事?」

 

ここで「アンタのせいで遅れたんだ!」って言わないところに、優しい人の性格が分かるよね。なら、なおさらお返ししてあげよう。

 

「ウフフ。ボクのせいで遅れちゃったみたいだからね。起こしてくれたお礼に、サービスしてあげる」

「は? ……ってちょっと!」

 

困惑する優しい人の手を引いてバスの外に出る。

 

既に会場の入口はもぬけの殻。すでにポイント差も開いてるだろうけど、まだ試験は始まったばっかりだ。

 

「ちょっとごめんね?」

「なぁ!? な、何して……!」

 

優しい人をお姫様抱っこして、個性を発動。すると、ボクの足元に()()()()()()()()()()が現れた。

 

「ちょっと揺れるから、しっかり捕まっててね」

 

ボクたちを飛ばすように暴風が荒れ吹き、()()()()()()()

 

「こ、これ! 空飛んでるの!?」

「ウフフ。そうだよ。……うん。思った通り、奥の方はまだたくさん残ってるね」

「ま、まさか。あそこに降りるの!?」

「そのまさかだよ。でも、あれらを倒せないと、挽回は厳しいんじゃないかなぁ?」

「……分かった。あそこに降ろして!」

「ウフフ。りょーかーい」

 

入口付近でロボットと戦ってる他の受験者を尻目に、奥の方にいるロボットの群れの中心に、音もなく降り立つ。

 

次の瞬間、ロボットたちがボクたちに気付いた。

 

一番近くにいるロボットが腕の機関銃を向けてくるけど、個性を発動。今度は()()()()()()が地面に浮かび上がると、()()()()()()()()()()()()()機関銃は使われる前にスクラップになった。

 

「さっきのも、今のも、アンタの個性?」

「ウフフ。そうだよ。さ、ここからは受験者同士、個人戦ってことで。ボクは奥の方で戦うから。じゃーねー、優しい人ー。運があったらまた会おうねー!」

「あ、うん……うん!? まさか、このロボット全部あたしが相手しないといけないの!?」

 

優しい人の悲痛な叫びが聞こえて来るけど、たぶん大丈夫だと思う。

 

運んでいる間に、優しい人の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あの程度のロボットなら、個性次第でどうにかなる。まあ、言うてこれ試験だし、死にはしないよ。

 

 

 

「ウフフ。さて、ボクも始めようか。……お願いね、《賢者の石(ワタシ)》」

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

「……ふぅ。これくらいか」

 

 

 

「終了~!」

 

 

 

「相変わらずうるさいなぁ、うるさい人」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

入試を終え、雄英の会議室では審査係の教員が、今年の合格者について話し合っていた。

 

「実技総合成績が出ました」

 

大画面に上位成績者の名前がずらりと映し出される。

 

「救助ポイント0で1位とはなぁ!」

「後半、他が鈍って行く中、派手な個性で敵を寄せつけ迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

「対照的に敵ポイント0点で9位、か」

「アレに立ち向かった奴は過去にも居るが、まさかブッ飛ばしちゃうのは久しぶりだな。()()()()()()!」

「一人は9位の子。そしてもう一人が……」

 

教員たちの目が、一人の名前に向けられる。

 

「狂四季月撫。筆記は1位と同率。実技成績は1位と1ポイント差で2位」

「しかも、スタートが他の受験者よりも遅れたにも関わらずか」

 

教員の一人が成績を読み上げるが、他のヒーローが気になるのはそこではない。

 

「なあ、こいつの願書、男って書いてるよな?」

「……ええ。そうね」

「でもどう見ても……」

 

 

『女にしか見えない』

 

 

「まるっきり女装だろ、こいつ」

「女として、負けた気分が……」

「ま、まあ、これはおそらく、何かしらの事情があるのかもしれない」

「だが、こいつの志望理由」

 

 

志望動機――――『トーカが雄英を選んだから。ボクは多分合格してるから、トーカと一緒にしてね』

 

 

「……明らかに舐め腐ってるような動機だな」

「トーカってのは誰だよ?」

「多分、推薦入学者の轟冬夏じゃないかしら。確か同じ中学校の筈よ」

 

成績は優秀だが、ホントに入学させても良いものか。

 

教員たちが頭を捻っていると、ネズミのような生物が立ち上がり話し始めた。

 

「たとえこの子の性格が難ありだとしても、そこは我々が導けばいい。それに、思春期の生徒が高校を選ぶ理由なんて、言わないだけでこんなものだろう?」

「それでこの成績だされちゃ、どう扱えばいいか分かりづらいですがね」

「たしかにイレイザー・ヘッドの言う通りでもある。でも、この子は現に、試験を優秀な成績で突破している。雄英が受け入れるに値する理由だ」

 

 

この一声によって、狂四季月撫の雄英高校への入学が決まった。

 

 

 

 

 




狂四季 月撫

個性『???』

・凝山中学校出身。
・元々普通に生を受けた男の子だったが、別世界から転生させられた男に憑依されかける。しかし、類まれなる精神力によって、逆に男の人格を喰ったことで男の記憶だけが残った。その記憶でオタクジャンルの一つを知り、晴れて”男の娘”になった。ちなみに、性格は元からのもの。
・轟冬夏とは互いに「トーカ」、「ルナ」と呼び合い、よく一緒にいる。
・基本的に他人をトーカか、それ以外で見ており、接し方にだいぶ差がある。とはいえ、気に入った人物や興味が湧いた人物は覚える。
・半ばトーカ至上主義。
・月撫がトーカと仲良くなったことを知り、さらにその好意も見抜いた結果、両親はトーカに合鍵を渡し、趣味と実益を兼ねた仕事で家を空けるようになった。孫が早くできないかなと思ってる。

TS轟ちゃんの名前は焦凍のままがいい?

  • 冬夏で良い
  • 焦凍が良い
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