TS轟ちゃんは付き合いたい   作:神咲胡桃

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今更ですが、ルナのコスチュームは、蒼き鋼のアルペジオのハルナや戦姫絶唱シンフォギアのキャロルの服装の様な物をイメージして貰えれば。

体を覆うようなコートと、魔女のような大きいとんがり帽子が、ルナのコスチュームです。


男の娘と戦闘訓練

モニタールーム。

 

つい先ほど決着の着いた轟・障子 VS 尾白・葉隠の試合を見ていた生徒たちはざわついていた。

 

「まじかよ……」

「屋内ならではの攻撃方法。それに建物への被害もほとんど出していませんね」

「……ギリッ」

 

所々出て来る感嘆の言葉のほとんどが、冬夏に対するものだった。

 

 

試合開始後、障子の複製腕によって核の場所を察知した二人は、同時にビルを登って行く。

 

もちろん、尾白たちが何もしないわけもなく、冬夏たちの前に立ちはだかった。

 

冬夏は尾白を抑え、透明化の個性で姿が見えない葉隠は索敵能力の高い障子が請け負う形になった。

 

冬夏と尾白が戦ったのは、狭い通路。

 

武術の心得を持っている尾白は接近すれば、冬夏では不利だと考えたらしい。尻尾の個性を生かし高速機動を可能とすること、そして閉鎖空間であればなおさらだ。

 

しかし、閉鎖空間で戦うことが得意なのは、冬夏も同じだった。

 

尻尾を使い三次元的な移動をする尾白に対し、冬夏は周辺の通路の壁や天井、床を凍らせた。

 

そして次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()、尾白が吹き飛ばされた。

 

半冷半燃の個性で氷を生み出す場合、必ず地面と身体の接地面から地面を伝っていく必要がある。この制限をどうにかしようと試行錯誤した過程で見つけたのは、既に生み出した氷から新たに氷を形成すること。隙も少なく、氷の動きから攻撃を読まれにくい。デメリットは先に氷の足簿を形成することだが、ほとんど問題はない。

 

何処から攻撃が来るか分からない中で、尾白の集中力が分散し、結果として不用意に跳んだところを叩き落され、確保テープを巻かれた。

 

葉隠も障子の索敵能力で居場所を見抜かれ、確保テープを巻かれたことで、轟・障子ペアが勝利となった。

 

その後の講評タイムでは、またもや八百万がオールマイトの見せ場を取ってしまった結果となった。

 

ちなみにMVPは冬夏である。

 

 

 

 

そして残りの試合も終わり、残るはルナ一人となった。

 

「さあ、これでみんなの試合も終わったところで、狂四季少女の訓練だが、エキシビション・マッチと行こう! 狂四季少女一人に対し、二人ペアでの戦闘訓練だ!」

 

オールマイトの言葉に、A組の生徒は、みんな首を傾げた。

 

何故ルナが一人に対し、相手は二人なのか。それならばどこかのペアに入れて、3対2でも良かったのではないか。そもそも何故ルナなのか。

 

その疑問が、どうにも手を挙げにくい空気を形成し、中々手が上がらないかと思われたが……

 

「私がやります」

「俺がやる」

 

そんな空気を破ったのが、二人。轟冬夏と爆豪勝己だった。

 

「よし! それでは二人にお願いしよう!」

 

そしてくじ引きの結果、ルナがヴィラン側、そして轟・爆豪ペアがヒーロー側に決まった。

 

「ウフフ。それじゃ、よろしくね~」

 

準備のため、ルナがビルに向かう。それを見た轟と爆豪もビルの近くに向かおうとするとオールマイトから引き止められた。

 

「おっと、申し訳ないが、二人にはここで作戦会議をしてもらいたい」

「あん? どういう意味だ?」

「まあまあ、君たちが狂四季少女に対して、どのような作戦を立てるのか。他の人たちからしても、参考になるだろうからね!」

 

「HAHAHAHA!」と笑うオールマイトだったが、生徒たちの疑問がさらに加速する。

 

しかし、どうでもいいと言わんばかりに、爆豪は冬夏に言い放った。

 

「とりあえず、アイツは俺がぶっ潰す! お前は手ぇ出すな」

『(知ってた!!)』

 

クラスの心の言葉が一致するも、意外なことに冬夏はそれに言葉を返した。

 

「それはダメ」

「ああん?」

「ルナと戦うなら、2対1にするべき。でないと勝ちの目がない」

「んだと……? そんなの知るか。俺があいつをぶっ潰す。んでもって、お前もデクも! 俺がぶっ潰す!」

「……はぁ。分かった」

 

言っても聞きそうにない爆豪に折れた冬夏に、周囲から同情の視線が向けられる。

 

「それで、アイツの個性は何だ。お前、知ってんだろ」

「……もちろん知ってる。良い? ルナの個性は――――」

 

 

 

 

 

 

作戦会議を終え、二人はビルに向かう。

 

そんな中で、モニタールームではオールマイトに対する質問の声が上がっていた。

 

「オールマイト! 質問があります!」

「ふむ、何かね。飯田少年」

「なぜ、狂四季くん……さんの訓練は、このような形になったのでしょうか!」

「それにエキシビション・マッチ、というのが気になります。ただの訓練では、そんな言い方にはならないと思いますが」

「そうだよな。俺なんか、オールマイトが戦うのかって思ったぜ」

 

飯田の質問に、八百万、上鳴が続く。

 

「ふむ。では、みんなの疑問に答えよう。まず、君たちは仮免というのを知っているかな?」

「仮免?」

「緊急時における個性の限定使用を認める許可証ですわね。ヒーロー公安委員会が運営している試験を合格することで、発行されます。言ったように、緊急事態が起きた際は、プロヒーローと同等の立場で個性を使用することが出来ます」

「う、うむ。よく勉強している、ようだね。八百万少女」

「恐れ入りますわ」

「でもよー、その仮免? が何だっていうんだ?」

 

またもや八百万に説明の場を奪われ、タジタジとなるオールマイト。

 

しかし直ぐに気を取り直し、今度こそはと多少早口で説明する。

 

「八百万少女の言った通り、仮免を持てば、それこそプロヒーローの資格を持たずとも、個性を用いてヴィランを捕まえることは出来る。しかし、それは逆に、プロヒーローと同じくらいの責任が伴うことでもある」

 

オールマイトの真剣な口調に、話を聞いている全員が耳を傾ける。

 

「仮免は個性を使うための許可証ではなく、個性で人を助けるための許可証であることを、覚えておいてほしい」

 

そこで一旦言葉を切り、続けて話し出す。

 

「……話が脱線したね。もうすぐ始まるし、手短に話そう。狂四季少女は、すでに仮免を取得しているんだ」

『ええーーーーっ!?!?』

 

オールマイトの言葉に、全員が驚愕する。

 

「当時は中学生から仮免試験を受けることが出来た。ヒーロー飽和社会とはいえ、万が一の時に人を助けることが出来る個性が使えないというのは、良くないからね」

 

もちろん、もしもの時は使うことになるだろうが、

 

『公共の場で資格なしに個性を使っていはいけない』

 

法律として世間に認知されているこれを思い出して、使用することを躊躇う人は多くいる。

 

故の仮免。

 

「当たり前だが、中学生で仮免を取得したものはほとんどいない。大体の中学生は仮免の事を知らないか、中学生で無理だと諦めるか、受けても落ちるからだ。しかし、齢13歳で狂四季少女は合格するという快挙を成し遂げた。もっとも、それが報道されることはなかったがね」

「それは、なぜでしょうか?」

「簡単さ。世間から彼女を守るためさ。規則で中学生以上とは言いつつも、実際に中学生が個性を使用できるとすれば、何かしらのバッシング等が起きる可能性もあるからね」

 

未成年による個性の無断使用、そしてそれによる学校でのいじめ、未成年ヴィランの増加などが問題となっているのだ。

 

そんな中で、中学生が緊急時とはいえ個性を使用できるとすれば、大体の事は口八丁で誤魔化せてしまうし、もしものことがあれば、公安委員会には非難の嵐だ。

 

規則自体を変えればいいのだが、オールマイトが言ったように、『中学生が受けても合格しない』という考えが既に根付いており、それ故に改定自体が後回しにされ、ルナが合格するという事態が起きた。

 

その後は、高校生以上と改められたものの、既に取得しているルナには関係のないことであった。

 

「そして非公式ではあるが、狂四季少女は仮免によって、すでに数人のヴィランを確保、事件を解決している。つまり、仮免を持っている彼女と君たちでは、既に大きな実力差が生まれているんだ」

 

もはや何も言えなくなっている生徒たちからモニターに視線を移し、指示を出すためのマイクを口元に近づける。

 

「よく見てろよ、有精卵ども。今の君たちと、狂四季少女の差ってやつを。……それじゃあ、戦闘訓練――」

「……あれ? 核はどこに……」

 

 

 

「スタート!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイトの声と同時に動き出したのは、爆豪と冬夏だった。

 

「何処に居やがる、女装野郎!」

 

爆豪が先頭を走り、その少し後ろを冬夏が追う。

 

「(ルナが何処で仕掛けて来るか……いや、考えても仕方ないか)」

 

過去に、訓練と称してルナと手合わせをしたことのある冬夏は、ルナの行動を読むことを止め、何が来ても対応できるように集中する。

 

それはルナの恐ろしさを知っている冬夏だからこその行動。

 

しかし、ルナの事をほとんど知らない爆豪からすれば、そんな考えに到ることはなく、

 

「隠れてねえで、さっさと出てこ――っ!?」

 

爆豪が叫びながら走っていると、唐突に踏み出した右足を沈み込む感覚が襲い、前のめりの態勢になる。

 

慌てて足元を見ると、床の右足が踏みしめている部分だけが、長方形に不自然に沈んでいた。

 

「爆豪! 前に飛んで!」

「ッ! 分かって、らぁ!」

 

冬夏の声が聞こえてきたと同時に、爆豪が爆破で強引に前へ飛ぶ。

 

次の瞬間、爆豪が居た場所で、ゴオォン! という音が鳴り響いた。

 

爆豪が振り向くと、爆豪が居たあたりの左右の壁の一部が、まるで切り取られたかのようなブロックとして突き出ていた。

 

前に飛ばなかったら、確実に潰されていただろう。

 

それ以前に、冬夏の声がなければ気づけなかった。

 

つまり、助けられたのだ、自分は。

 

「くそが!」

「大丈夫?」

 

ブロックの下を潜ってきた冬夏が、爆豪に声を掛ける。

 

「うるせぇ! 見下してんじゃねえぞ!」

「別にそう言うつもりはないんだけど……気を付けていこうか」

「ちっ!(……これがあの女装野郎の個性か!)」

 

舌打ちを返した爆豪は、悪趣味なトラップを見て、冬夏が言ったルナの個性を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルナの個性は――――”錬金術”」

「ああ? 錬金術だぁ?」

「そう。漫画とかで良く出て来るような、ああいう奴だと思ってくれればいい」

「何にもねえ所からいろんなものを作ったり、辺りを変形させたり、そういう奴か」

「ルナが言うには、材料となるものと高い情報処理能力が求められるらしいけど。だけどルナは、他の個性が出来ることを大体出来る。ルナとはそれなりの間一緒にいたけど、知らないことをしてきてもおかしくない。気を付けて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び走り通路を抜けると、そこは開けた場所だった。

 

「ウフフ。ようこそ」

「やっとお出ましかよ」

「……ルナ」

 

ビルとしては珍しく2階まで吹き抜けとなっており、その2回部分の手すりにルナは座っていた。

 

「久しぶりに、トーカと手合せが出来そうで何よりだよ。トーカがどれだけ強くなったか、ボクに見せて?」

「勝つ気で行くから」

「ウフフ。それは楽しみだ「俺を無視してんじゃねぇ!」――おっと」

 

痺れを切らした爆豪が、ルナが座っている辺りを爆破するも、ひらりと躱され2階へと姿が消える。

 

「待ちやがれぇ!」

 

逃がさないとばかりに爆破を用いて飛び上がり、2階へと乗り込もうとする爆豪。

 

「なッ!?」

「待っててあげたよ?」

 

しかし、乗り込んだ爆豪の目の前には、手に黄色の魔法字を浮かばせているルナが居た。

 

爆豪が誘われたと気づいた時には、すでに遅かった。

 

2階は1階のような開けた場所はなく、通路と部屋ばかり。そしてさっきのように、正面の壁の一部がコンクリの柱として爆豪に迫る。

 

「じゃあね」

「舐めんなぁ!」

 

迫る柱を、爆豪は爆発で体を浮かせることで回避、そのまま伸びる柱の上に着地する。

 

「死ねや!」

「ウフフ。君にボクは殺せないよ」

「ほざけやぁ!」

 

叫びながら爆豪はルナに向かって飛び掛かり、爆破しようと腕を伸ばすがその腕を掴まれ、逆に投げ飛ばされてしまう。

 

「てめぇ……!」

()()()()()()()()()()……だったかな?」

 

それは一番最初の試合、緑谷・麗日ペアとの試合で、緑谷から一本背負いを決められた時、彼が語った爆豪の癖。

 

爆豪は気を付けていたつもりだったが、癖というのは身体に染みついているから癖なのである。

 

「……ぶっっっ殺すっ!!」

「やってみなよ。君じゃボクに勝てな――」

 

話してる途中で、ルナがバックステップで下がる。

 

次の瞬間、立っていた場所が凍りついた。

 

「だから一人で行かないように言ったのに……」

 

霜が付いた手すりに立っていたのは、白い息を吐く冬夏。

 

どうやら階段を作って来たらしい。

 

「ウフフ」

「ルナ……」

 

一瞬の視線の交差。直後に、伸びる氷の道。

 

それをルナは床を引き上げることで、強引にせき止める。

 

氷はその壁をも呑み込もうとするが、一瞬の間にルナは一階に飛び降りる。

 

「逃がすかよ!」

「わぉ」

 

空中に逃れたルナに、今度は爆豪が接近する。

 

「空中じゃ身動き取れねえだろ!」

「案外、そうでもないんだなぁ」

 

ルナの両手に緑色の魔法陣が浮かび上がる。突風が吹き荒れ、二人を引き離した。

 

爆豪は爆破で体勢を立て直し、ルナは音もなく着地する。

 

「ウフフ。さすが、戦闘センスは中々だね」

「余裕ぶっこいてんのも今の内だ」

「……? そういえば、トーカは……ああ、核の方に行ったのか」

 

2階にいたはずの冬夏が降りてこないことに疑問を持ったルナだが、すぐにその理由を察する。

 

爆豪が空中に居るルナに接近する前に、通信機で冬夏に核を探しに行くように伝えていたのだ。

 

 

『おい、お前は核を探しに行け!』

『一人でルナに勝てるわけ……!』

『別に女装野郎を倒す必要もねえんだ。核さえ見つけりゃ、俺たちの勝ちだ! 俺があいつを倒す方が早いがな!』

『……分かった』

 

 

この通信の後、冬夏は核を探しにいった。

 

そして爆豪がルナを足止めする。

 

確かに2対1において効果的な作戦。

 

爆豪はルナを倒すことに固執しているが、それはそれとして、勝利するための布石も打った。何気に、緑谷に敗北したことが影響を与えていたのだ。

 

「てめぇは俺が倒す!」

「ウフフ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、冬夏と爆豪は負けた。

 

爆豪は、ルナの個性で空気中の水蒸気から作られた水を頭からぶっかけられ、さらには壁と床から伸びたコンクリに手足を拘束された。

 

冬夏は、探せるところを探し回ったにも関わらず、核を見つけられず、タイムアップとなった。

 

故にモニタールームに戻った爆豪は、冬夏に迫った。

 

「どういうことだ! なんで核が見つけられなかった!」

「……探せるところは探した」

「まあまあ、落ち着きたまえ、爆豪少年。轟少女が見つけられなかったのは、仕方ないとも言える」

 

オールマイトが宥める中、二人は最後の言葉が引っかかった。

 

「仕方ないというのは?」

「実はだね……」

「そもそも、()()()()()()()()()()()()()()

「なんだとっ!?」

「ルナ……どういうこと」

 

したり顔で話すルナに、爆豪は訝しみ、冬夏も眉を微かに顰める。

 

「準備時間の間に、核を隣のビルに移動させてたの。だからあのビルを探しても、見つかるはずないよ」

「おい、そんなの反則だろ!」

「ルールじゃ、そんなの言われてないしねぇ」

 

悪びれることもなく言うルナに、その場にいる全員が引く。

 

というより、言ってないとはいえ、核を他のビルに移動させるのはさすがにアレなので、オールマイトが注意しておくべきなのだが、肝心のオールマイトが気づいたのが訓練がスタートしてからだったのだ。

 

そして、仮免所有者のルナの戦い方を見ておけと言われたA組一同は

 

『(これを参考にさせられても……)』

 

そう思うしかなかった。

 

「ウフフ。ヴィラン何でもありだからね。計画通り」

 

悪びれる様子もなくそう話したルナの笑顔は、爆豪に負けず劣らずの、如何にもヴィランが浮かべそうな笑顔だった。

 

 

 




個性:錬金術
漫画やアニメなどの作品でよく見かけるアレ。他の個性が出来るようなことが、大体できる。
個性の使用時には魔法陣が浮かぶ。
ただし、使用するには材料があることと、高い情報処理能力が必要。さらにその使用内容によって、脳への負荷が増減する。
もし脳のスペックが低いと、オーバーヒートを起こし暴走、もしくは使用者の頭が弾け飛ぶ。


仮免については、独自設定が入ってます
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