スカウト(という名の劇物混合)   作:ひろぽんは栄養剤

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スカウト(という名の劇物混合)

 ──トレセン学園でトレーナーになってからの日々。

 

 ウマ娘たちのトレーニングを見守りながら、まだ見ぬ輝かしい未来に思いを馳せる時間は穏やかなもので……。

 

 いずれは自分も誰かの担当になって、その成長を後押ししたい──と思っていたのだが……。

 

 

 

「うおりゃああああああ────っ!!!!! どけどけどけえええ────!!!!」

 私の言葉に、前を歩くウマ娘達が慌てて道を開ける。

 レーダーが!! 反応している!!!! 

 

「はぁっ……はぁっ……。クソッ……どこだ!?」

 

 チクショウ、見つからねぇ!!! 私のレーダーが示しているのは、間違いなくここのはずなのに──! 

 

「──ッッッ!!」

 

 レーダー受信……レーダー受信……周囲に……。

 

「あん? 何やってんだあんた?」

 

 ウマ娘の反応アリッ!!!!! 

 

 ─────────────────────────────────────────

 

「どこだ……ウマ娘っていうのは確か、紫色で手足が七対ずつある伝説の生き物だったはず……」

 言いつつきょろきょろと当たりを見回すと。

「──おっ!!」

 まるでアダマンタイト製かのような艶やかな銀髪! そこにちょこんと居座る帽子は、まるで生まれた時から被っていたかのようにフィットしている!!!! あれだ……あれはまさしく!!! 

「もしかして君、ウマ娘だな!!!」

 彼女は一瞬目を丸くしたかと思うと、ニヤリと微笑んで。

「ああ、その通りだ。だがこのゴルシちゃんは突然変異種の完全受注生産でな? 紫でも手足が七対でもないんだよ。悪ぃな」

「あ? 何言ってるんだ? その耳に制服、君はウマ娘だろう。まったく、意味のわからないことを言うもんじゃない!」

 ゴルシちゃん……そう名乗った彼女は少し不満そうな、でも少し期待しているような目でこちらを見つめている。

「そんなことでは、ウマ娘目当てのトレーナーに捕まってしまうぞ! 例えば……この私のようなヤツになあ!!!」

「ひっ……!」

「ここで会ったが100万年! 野良ウマ娘捕獲すんぞ、ドララァァア!!!!」

「やっ……やめてくださいっ!! 近寄らないでっ!!」

 急に口調が変わり、しおらしくなった気がするが、私は気にしない。肩を抱き、彼女の目を覗き込みながら私の思いの丈をぶつけるのだ。

「私に君を育てさせてくれ!!」

「やっ、やだっ! 離してくださいっ!!」

「君なら!! きっと!!!」

 

「──そこの貴方……何をしていますの? 随分と距離が近いようですが、ゴールドシップさんに何を……」

 

 突然、背後から少女(ウマ娘)の声が聞こえた。

「うあぁぁんマックイーン!!! たすけてくれっ!!」

 私の腕を振りほどき、マックイーン……と呼んだウマ娘に駆け寄るゴールドシップ。

「あの男……このゴルシちゃんを無理やり手篭めにしようとしやがったんだ……! いくらこのゴルシちゃんが木星から舞い降りた超生命体の生き残りのいとこの姪の腹違いの兄と同じアパートだからって……うわぁぁああん!!」

 マックイーンの背中に顔を埋め、泣きじゃくるゴールドシップ。

 声が曇っていない。あれは嘘泣きだな。だが、しかし。

「後半はどうせいつもの冗談として、無理やり手篭めに……というのは?」

 ゴールドシップの泣き声と言葉を信じてしまっているのか、敵意を剥き出しにした目でこちらを睨むマックイーン。

「違う、私はただウマ娘を探していただけだ。私が担当するウマ娘をな。無理やり手篭めになどとは失礼な」

「……と、言ってますが。それならちょうど良かったでは無いですか。貴方、レースに出たいと言っていましたわよね」

「いや、こいつはダメだ。このゴルシちゃんの研ぎ澄まされし嗅覚がよ、なんかヤベー匂いを感じんてんだよ」

「貴方からも十分にヤベー匂い、感じますわよ?」

「失礼な! ゴルシちゃんはなぁ、もっと普通のヤツがいいんだよ。なんつーかこう、そうだな、暇そうなヤツがさ。こんな人生エンジョイしてそうな、自分の好き勝手やりたい放題に生きてるようなやつとは、あたしは絶対にウマが合わねぇ!!」

「とっっっても合いそうですけど?」

 私に向けていた敵意は一変し、呆れたような目でマックイーンは呟く。

 これは予期せぬ味方が見つかったのではないだろうか? 

「それに、出たいのでしょう? レース。ウマ娘が正式なレースに出るには、トレーナーの存在が必要不可欠ですわよ」

「……それは、そうだけどよ? でもこいつ突然『宝探し行こうぜ』とか、『100年後ヒマ? ヒマなら宇宙行こうぜ?』とか言ってきそうじゃん。どう思うよ」

「とってもお似合いですわね」

 そうだ! もっと言ってやるんだマックイーン!! 

 私は二人のやり取りを静かに見つめる。ここで口を出すのは賢い行いではないのだ。

「いやぁゴルシちゃんもよ? 最初は良さそうかなーって思ったんだよ。正直ノリはいいしさ、面白そうだったからな。でも……なんというか掴みどころがないというか、これは掴みたくねぇっていうか……。多分こいつ、なかなか担当させてくれるウマ娘が見つからなかったクチだぜ?」

「ふん……的確に私の過去を看破するとは! やるではないかゴールドシップよ!! それでこそ我が担当ウマ娘!!」

 会話には積極的に口を挟むことが、人生を明るくする秘訣だ。

「まだなってねぇだろ!!」

 目を剥き、こちらを睨みつけるゴールドシップ。だが、私は負けない! 

「まだということは、いつかはなってくれるってことか?」

「あぁん……? おめーポジティブだなぁ。なぁマック、こいつに担当させても大丈夫だと……ってもういねぇ! あたしが断ったら自分に絡まれそうだと思って逃げやがったな……? あいつ逃げウマに転向した方がいいんじゃねぇのか」

 呆然としたゴールドシップと、それを見つめる私。

 数瞬、間が開き。

 そして彼女は観念したように大きくため息をついた。

「あーもう! ちょっと待ってろ!!」

 そう言うと、大きく両手を掲げて何かを呟き始めるゴールドシップ。

「天にまします我らの父よ、願わくば御名を崇めさせたまえ。荘厳なる八百万の神よ、我に力を貸したまえ。輝かしき栄光の三女神よ。我に青三因子を与えたまえ。あとそうだな、隠し味にピーナッツバター……それから……」

 彼女の祈りはそれから二、三分ほど続き、そして。

「なぁ……どーしてもあたしを担当したいのか?」

 諦めたような目で、こちらを見つめるのだった。

「どーしても、だ」

「あたしじゃなきゃ嫌なのか?」

「嫌だな。それはもう、ミシシッピアカウミガメの甲羅を触れない一日の次くらいには嫌だ」

「それは確かに嫌だな。あたしでも憂鬱んなる」

 私の言葉が響いたのか、彼女はもう一度大きなため息をついてから。

「しょーがねぇ。乗りかかった船ってヤツだ。乗ってやるよ! このゴルシちゃんを載せてどこまで行けるだろうな?」

「安心しろ、俺の船はサランラップで包み込んで完全防水にしてある。沈むことは無い。日本海でもオホーツク海でもバミューダ海域でも、どこでも連れてってやるさ」

 

 そう言って私ははにかみ、ゆっくりと右手を差し出した。

 ゴールドシップもそれに応えるように左手を差し出し、そして……。

 

「「ジャンケンポンっっっ!!!!」」

 

「よし! 私の勝ちだな!!」

「ああっ、くそうっ!! 何が望みだ……! いいか、この耳当ては自由にできても、心まで自由になるとは思うなよ……!!」

「おいおい、そんな怯えるなって、別に獲って食ったりしないからさぁ」

 

「ゴルシには、ちょ──っとばかし大冒険に付き合って欲しいんだよ。というわけで、出発進行ーッ!!」

「おお? どこ行くんだよ! 待てよトレーナー!!!」

 

 そして、数時間後──。

 

「ピーカン! 花丸! カンカン照り! UMA探しにはピッタリの陽気だな!」

「いやいやいや、どっちかってーと宝探しだろ?」

 

「んじゃトレーナーとの」

「ゴルシちゃんとの」

 

「「ワクワク☆ドキドキ!?」」

 

「UMA探しツアー!!」

「お宝探しツアー!!」

 

「「開催だぃーっ!!!」」

 

「ああん!? こんな日にゃぁ、お宝探しに決まってんだろ! ばあちゃんの遺言で、晴れた日には宝探し、雨の日は自分探しをするようにきつく言われてんだよ!」

「何を言ってる! 私がジャンケンに勝ったんだ、私がやりたいことが優先だ!!! おばあさんの遺言なんぞ知るか!! じゃんけんの方が強制力は上だっ!!」

「ああん? トレーナーってのは自分のしたいことを担当ウマ娘に強制すんのかよ!! お前っ! 神にでもなったつもりかよ!!!」

「それも私の義務なのだのよ!! いいか、完璧な管理者というものがお前には必要でだな──」

 

 続く……?




やりたかったのは、ゴールドシップを超える奇人がトレーナーだったら、みたいな話。因みにゲーム版。いい感じの評価なら続き書きます笑
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