個性「律者」のプロヒーロー   作:siera

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遅くなりました。書いてなかったと言う訳ではなく、単純にありふれ×崩壊3rdのストーリーが次々と出てきてこちらに対応できなかっただけです。

これからはもう少しノートにストーリー書きだしておこうと思います……。


17話

夏――

太陽が煌々と煌めき、猛暑が地表を襲う季節。私の一番嫌いな季節である……。"薪炎の律者"の能力があり、熱に大きな耐性を持てる私だが、それでも夏の熱さはどこか違う。炎の「痛みを伴う熱さ」とは違い、夏は「不快感を伴う熱さ」という感じだろうか。

自分で言う事ではないが、私には弱点というモノは多く無い。雷に耐性があるヴィランが相手の場合はそれ以外で戦える。近距離特化のヴィランならば遠距離から対処、相手が遠距離ならさらにその射程外から……。

 

とまあ、こんな風に私が対処できる手が多い。ただ…このような自然現象だけは、どうしても対処できないのだ。

薪炎の律者になっても、熱耐性がある筈なのに、暑く感じてしまう。昔から…転生前から暑さにはすこぶる弱かったが、まさか転生しても暑がりは治らないとは……、そんな私の今の状況はというと……。

 

「あぁ~~~……」

 

キンキンに冷やしたタオルを顔にかぶせ、足元の氷の浮いた桶に足を入れ、扇風機を回してソファにぐったりしていた。

こんな姿、本家の芽衣さんが見たらどんな顔するのだろうか。完全なるイメ損である、芽衣ファンの皆様ごめんなさい。

時期は8月。お天道様がウキウキと輝き、我々生き物を襲う一番嫌いな時期である。

 

「……動きたくない」

「あらあら、だらしないわねぇ」

 

テレサは腰に手を当てて少し呆れた声で私に語り掛ける。だらしないと言われてもしょうがないじゃないか、私だって()()なのだから。完璧人間なわけもなく、大変な事は大変な時はある。

 

「暑いのが苦手なのは知っているけど、もう少し№1らしい立ち振る舞いはしたらどう?」

「そんな常に№1モードでいたら落ち着けないのだけど」

「それはそうだけど……せめて事務所内は立ち振る舞いを整えて欲しいって相談よ」

「……仕方ないわ」

 

私は仕方なく自身の姿を入れ替え、"氷の律者"リタへと変わる。変わった理由はもちろん冷気で涼みたいというのが一つ。もう一つはそう、リタに切り替わると気持ちが切り替わったわけではないが、常に淑女の様に振舞う様に自然と行動するようになる。

つまりは、ソファに座り、顔にタオルを当てて足を冷やしていただらしなくみえた姿が、背筋を伸ばし、周囲を冷気で冷やしながら美麗な立ち振る舞いを見せるメイドへと変わるのだ。これで、多少私の威厳が保たれるというモノ。…まあ、そこまで自身の威厳など気にしたことないが。

 

「これ良いでしょう。まだ多少倦怠感はありますが、許容範囲内ですね」

「相変わらず便利ねぇ貴方」

「それでテレサ様、御用は何でございましょうか。こちらに入らっしゃったという事は、何かお話があるのでしょう?」

 

そう、テレサがここにくることは滅多に無い。彼女は一応私の事務所に所属してはいるが、元々は公安所属のヒーロー。向こうから請け負う仕事が基本多いのだ。

というよりかは、公安は少数のヒーローの育成し、その少数のヒーローが公安として働き始めると、そこ後滅多な事が起こらない限り、人数を増やそうとしない。公安……良くないイメージが多い人は多いと思うが、政府の指示の元法律や倫理のギリギリを突いた内容の依頼もあるはず、彼女が言うには殺しはしてないと言うが……実際は――

 

「今回は公安の仕事、というより…根津校長からの"お願い"といった感じね」

「根津様から、ですか?それも気になりますが、テレサ様、根津様と交流がお有りだったのですね」

「(彼を"様"呼び…すごい違和感があるわね…(汗))確かに雄英出身じゃないけど、彼とは個人的にね。それに以前のヴィラン連合襲撃の際に何度か顔を合わせてたから」

「そうなのですか。それで、ご用件は何でございましょう」

 

テレサの話を聞くと、雄英生徒の彼らは今林間合宿が近く、そこで行うトレーニング「個性強化訓練」というモノの内容の案を出してほしいそう。何故私なのかというと、以前個性の幅について教師としてA組、その後B組に教えたこともあって、私に聞きておきたいとブラド先生と相澤先生からのご使命だそうだ。

何故テレサがそんな連絡の橋渡しをしているのか気になったが、あえて聞かない事にしよう。

 

個性――

 

個性因子と呼ばれる細胞が起因し起こる超能力の如き力の総称。超常の力を扱う個性も、肉体の細胞によって行われる肉体行動。つまり、個性は筋肉等と同じく鍛えることができ、強くなれるのだ。

私も幼少期から限界ギリギリまで個性を扱い、個性因子を強引に酷使して強く頑丈にしてきた……はず。なぜ自身が無いのかというと……。

 

「私も個性は伸ばしたと思いますが……本当に伸びているかまでは、保証出来かねますが」

 

律者は元々の能力の底が知れず、幼少期から雷並の電圧を扱えたり、大地が溶けるほどの熱量も扱えた。強引に扱ってきたのは、何をどれほどまでできるを知るという理由と、制御の方法を身に着ける為である。

実は個性を伸ばそうと思って訓練をしたことは一度も無かった。幼少期に暴走に似ていた個性の制御の為に細かい操作を行う訓練と、それぞれの能力の汎用性の確認を行う訓練といったモノなら教えられるのだが……。

 

「あら?そうだとしても、№1の訓練方法なら聞いておいて損は無いと思うわよ?」

「……今日はやけに"№1"という言葉をお使いになられるのですね、テレサ様」

「……。」

 

今日のテレサは何か怪しい。自分についてやけに気にしている雰囲気と言動、いつもおせっかいと言われそうな言葉が多かったりはしていたが…明らかに今日のテレサは不審なところが多い。

 

「……雄英に言った時、根津校長とリカバリーガールの話を偶然聞いてしまったの」

「オールマイトの現状を……この前の襲撃以降、彼の変身は一日1時間もできれば良いぐらいにまで、衰えてしまったらしいわ」

 

過去のオールフォーワンとのし烈な戦いによって受けた後遺症のせいで、3時間程だった活動限界がさらに縮まったのは事実。だがそれほどまでに限界を迎えているとまでは流石の私も知らなかった。

 

「それでね、ふと考えてしまったのよ……。彼が居なくなったらどうなるのかって思ってしまって」

 

おそらく彼女には見えてしまったのだ、オールマイトという大きすぎた支柱が崩れた後の世界を。そう、私という存在が生まれる前からこの安定した世界を創りあげ支えてきた巨大な柱はもうヒビだらけなのだ。

 

大きな世界の台座という重すぎるモノを1柱で支えていたオールマイトという石像は、すでに壊れかけ。身体全身に大きなヒビが入り、あらゆるパーツが壊れて塵となっている。

だが、彼はそれでも支えているのだ。既に崩れていても可笑しくない足を、無理して堪え、人を支えている。

 

「(おそらくテレサ様は不安な心に苛まれ、私を同じようにしたくてあのような言動をしているのでしょうね。彼……オールマイトの様に。ですが――)」

「(――私は……"あのような"存在になど、なりたくはありません)」

 

私は人を救う事は美徳だとは思っている。だが……彼の様な存在のその後は――

 

「ごめんなさいね、貴方に変な心配させたわ」

「……私は彼の様な存在にはなれません。ですが――」

「――私は私のやり方で、支えていきますよ」

「……っ、そうね。貴方は貴方らしくいなきゃね!ホント、ごめんなさい。変な心配して」

 

テレサの顔が少し赤くなり、私の返答に微笑み返す。その表情の奥には、まだ心配が見え隠れしているが、先ほどよりかは小さくなったのだろう。さて、と手を叩いてテレサは書類を準備し始めた。そんな時――

 

「……先生、少し時間大丈夫ですか?」

 

扉がノックされ、その後ろから少女の声が聞こえてくる。私は中に入る事を許すと、おそるおそる扉が開いた。そこに居たのは、深い青の髪色をした雄英の制服を着た少女。その顔は少し不安そうで、気弱な性格が感じ取れる。

彼女はゼーレ。雄英高校の上級生、つまるところ緑谷達の先輩にあたる子である。そんな子が何故この事務所に居るのか、それはもちろんこの事務所のインター生として私が呼んでいるからである。

 

おそらく忘れている人もいるだろうが、私は転生前に女神様へのお願いとして一緒に生活したいキャラを選び、その人達と共に生活できるようにしてもらった。その一人に選んでいたのがゼーレ、彼女である。

 

「律者さん~、雄英から封筒が届いてました」

「ありがとうございますゼーレ。そういえば、今は夏休みなのでしたよね?孤児院に行ってると聞いておりましたが」

「(わぁ…!きょ、今日はリタさんの姿してる…!)あ、はい。孤児院の皆には前にあって色々お話してきました。わ、私がヒーローになるために頑張ってるって」

「えっと、それで……孤児院の皆にお話しする事もおわったので、こっちに戻ってきました。あはは……」

「話す話題無くて逃げてきたんですね……」「話す事が無くて逃げてきたのね……」

「アハハ…。はいぃ……」

 

彼女は悲しくもこちらの世界でも孤児院育ち。出自は不明、孤児院の管理人に聞いた話だと、彼女は赤子の頃、この孤児院の扉前で籠の中に入れられた状態で置かれていたそうだ。役所にも届け出もない、身元不明の孤児…それが彼女だった。

ちなみに彼女をヒーローの道に連れてきたのも、私と同じくテレサだったりする。私と違うのは、公安からの招待ではなくテレサ個人の誘いだった点。この孤児院の管理人とは、シスター時代に顔見知りだったそうだ。

 

「まあ貴方の事なのでとやかくは言いませんよ。封筒、頂きますね」

「あ、はい!これです」

 

そういいゼーレからもらった封筒を開くと、中から出てくるのは生徒の個性に関する詳細な情報が纏められた分厚い書類。もしやと思いめくり進めると、そこには「1-A組」だけでなく「1-B組」の情報も書かれていた。

 

「あらタイミングいいわね」

「何ですそれ?」

「個性強化用の訓練内容決める為の書類ですよ」

「個性…強化……うぅ」

 

彼女も雄英に通っているのでもちろん1度は個性強化合宿に参加している。その時の事でも思い出したのか彼女の顔が少し青くなり、頬に汗が垂れていく。……一体何をさせられたというのか。

 

「それが個性リストよ。本来なら公開できる範囲が限られているけど……貴方は雄英の教師、事細かく情報を得られるわ」

「成程、道理で一人ずつ事細かな詳細が記載されてるわけなのですね。…成程、これを見たうえで何を強化すべきか上げていきましょうか」

 

まずは……「蛙吹梅雨」か。

 

彼女の個性『蛙』――

 

「蛙っぽいこと」なら大体再現可能な個性。水中での自在な活動が可能、最大20mまで伸びる舌で対象を絡め取ったり、壁に両手足を張り付かせて昇降したり、高く跳躍したり、弱い毒液を分泌したりできる。また、物を飲み込んで収納し出し入れ自由な胃を持つ……と。

 

「彼女に関しては『身体強化』でしょうね。個性を伸ばすというより、個性で使う肉体の強化優先で良さそうです」

「確かに。動物系の能力持ちの育成はそういうのになるわね」

「お次は…「耳郎響香」。おや、名前の順に並んでいるわけではないのですね。彼女に関しては、ピンジャックそのモノを鍛える方針確定でしょう」

「轟君はどうするのかしら。彼、氷も強力だけど、あのエンデヴァーの子と言わんばかりの強力な炎もか持っているわ」

「それでしたら、彼には炎と氷の同時使用を課題にしてみてはいかがでしょうか」

 

こんな感じで、一人一人個性強化すべき点を挙げ、まとめ上げていく。コレ本来なら相澤先生あたりが見て行うモノのはずだろうに、何故担任ではない私にまで手が回るのだろうか。それこそ療養してるオールマイトにでも、アドバイス聞くなり出来たと思うのだが。

 

A組・B組両方の書類を纏め終えるころには、すっかり夕方。今日は久しぶりのデスクワークだけで一日が終わってしまった様だ。とりあえず、パソコンのExcelに纏め終えたデータを根津校長の方へメールと共に送信しておく。なぜ校長かと言われるだろうが、単純に相澤先生の連絡先聞いていなかったから。

 

パタリとパソコンを閉じ、背伸びをして体を整える芽衣。暑さも落ち着いてきた為、元の芽衣の姿に戻っている。暗くなっていく外の景色を見せる窓に反射する、私の姿。そっと窓に近づき、手を当てる。

町を見ているわけではない、窓に反射している…彼女を見ている。窓に映っている…暗い表情をした、雷電芽衣(わたし)ではない、雷の律者(彼女)を――

 

反射する姿と、今の姿が違う。これは、私の律者としての姿だろう。私はこの世界へ生まれてくる前に、律者の力を持ちたいと願い、それは叶った。だが…私は律者であって、雷電芽衣であって、■■■■■(わたし)でもある。

この状況は、雷電芽衣がかつて体験したアレに似ているのだろう。雷電芽衣と、その中に眠るコンケストジェム内の律者という構図に。私であってワタシでないモノになり果てているこの姿。真実をしったら、周囲はどのような反応をするのだろうか。

 

ガラスに映る雷の律者(彼女)の表情は暗く悲しみに包まれている。人を助け、ヒーローとして賞賛を受けているこの憧憬は…彼女にとって眩しすぎるのだろうか。かつて一人の少女の事を願い、自ら手放した…彼女にとっては。

 

「いい顔はできない…かしらね。貴方が抱いた暗く硬い決意とはまるで真逆。そう…今の私は、貴方が救うために離れた…彼女に似てきているのだから」

 

『自問自答とは、面白い趣味を持っている様だね』

 

部屋の中から響く声。木霊し、ノイズ交じりのその声は…彼女にとってあまりに不快で、悍ましいモノだった。その声を聴いた瞬間、芽衣の身体に雷電が迸り、その瞳孔は縦へと裂けた。ゆっくりと後ろを振り返る…そこに居たのは、白いスーツに身を飾り、顔に形容しがたき異形の怪物を模した仮面を身に着けた男がソファに座っていた。

その体はノイズが走り、肉体が歪んでいる。おそらく遠隔からの通話か、それに近しい個性を用いた接触だろう。だがそれに気づいていてもなお、彼女はその虚像へ刃を振りぬいた。

 

『ハハハ、無駄だと分かっていながらも刃を振るわずには居られない……君は本当に素晴らしい』

 

虚しく胴をすり抜ける雷光の軌跡、彼女がここまで冷静さを忘れどす黒き感情を隠すことなく噴き出している様子は大変珍しい光景だろう。その様子を、まるで動物園の動物が芸を披露したかのような、嬉嬉とした声色で煽る幻影。

 

「貴様……貴様ァ‼」

『おぉ、怖い怖い。遠隔通信だというのにこの気迫!まさに№1、まさに鬼神……!私も目の前にホンモノが居るかと錯覚して、手が震えてしまうよ……!』

「戯言を……!」

 

刀を握る手にさらに力が加わっていく。拳から漏れ出す強烈な雷は、周囲のモノを浮かせ、脆い電球はその圧に耐えられずひび割れていく。これほどまでの迫力をその目で見ているというのに、幻影は嬉しそうな声色を隠そうとせず話続ける。

 

『それにしても久しぶり、7年ぶりといった所かな?』

「貴方、生きていたのね……‼」

『あぁピンピンしているとも。でも"あの時"受けた傷は痛かった……あと数分逃げるのが遅れ、治療が間に合わなかったら…私はここに居なかっただろうね』

「……何が目的」

『只の挨拶だとも、こうやって動けるようになったのはつい最近だからね』

 

軽く笑いながら、片手に持っているワイングラスを回す仮面の幻影。完全に仮面で顔を隠していながらも、口元にグラスを近づけワインを口にしている所をみると、この仮面も映像で作られたモノだろう。

 

『あの時は君のせいで酷い目に会った…だけど、7年の月日をもってようやく再始動できる。それを君に伝えたくてね』

「わざわざそれを伝える為に来たというの……‼‼」

『あぁ。ヒーローとして活動する君を嘲るには、こういう事をするのが一番だろう?』

『じゃあ、僕はこの辺で失礼するよ。あ、そうそう――』

 

 

――君の力、素晴らしい天啓だったよ

 

 

その一言を最後に幻影は途切れた。芽衣の電圧にホログラムの如き幻影が耐えられず、ブツリと掻き消えたのだ。

その一瞬、彼女はあの幻影へ何十もの刃を振るっていた。虚空に亀裂が走り、ヒビ割れ砕け散る。あの男が消えた瞬間、芽衣の纏っていた強力な電圧はプツリと途切れたのか、電磁力で宙に浮かんでいたモノが耳障りな音を奏でながら床へ落ちていく。

 

「ハァ…ハァ……‼‼」

 

呼吸が荒くなっていく芽衣。顔からあふれ出す汗、怒りを孕んだ悍ましき瞳孔、過去に葬ったハズの亡霊から届いたその言葉は、彼女の精神を惑わせた。

 

それは思い出したくもない残酷な記憶――

 

彼女にとって忘れられない、光無き悪夢――

 

忘れてはいけない、背負い込む事になった地獄の物語――

 

そして……悲しき"約束"を交わした瞬間――

 

『ねぇねぇ!大人になったらどんなヒーローになるの?』『あなたの事、ずっと応援しているわ!』『もしよければ、俺とコンビ組まねぇか?』『私達の初陣、頑張りましょう!』『おねぇちゃん達、頑張ってね!』『始めまして、皆様……』『これ、どう報告すればいいの?』『思い出を忘れてしまったら、それは――』『彼には良い出会いがあったようで、本当に良かった……』『嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌…嫌嫌嫌嫌嫌‼‼‼』『お姉ちゃんなら、絶対できるよ!』『ふざけるなぁ‼‼‼‼‼‼』『私達は……信じてる……わ』『結局……泣かせられ無かったわね』『最高だ!さぁ、さらにその先を私に……‼‼』『あああああああああああああああああ‼‼‼』『お前、何したかわかってるのか!?』『おねぇ……ちゃ…』『頑丈な体は、私の願いを叶えてくれる良い媒体だ!さぁ、君も此方へ……‼‼』『約束……してくれる?』『お前に何が分かるッ……⁉⁉』『早くここから逃げて‼‼』『俺達は、貴方達を信じてる!』『"ヒーローを"じゃない、"君らを"信頼してるんだ』『ごめんなさい…ごめんなさい……』『私達が遅れたせいで……』『君が一人で戦いぬいたのか……?』『どう?決意は固まった?』『私は――』『さぁ、舞台は整った!盤上へ上がるといい!』『ヒーローって……カッコイイんだよ?』『困った人を助ける、それが出来る人って――』『信頼、できるよ。貴女なら』『さぁ、私を新たな世界へ……!』『正義を着飾る事は、恐ろしき醜悪を背負うという事と同義なのだよ』『これ……忘れないで』『この世界の基盤は、正さなければ!』『えぇ……忘れないわ……』

 

 

『人々を……救ってあげて……ね』

 

 

 

 

 

 

「っ‼‼‼‼」

 

脳裏にフラッシュバックする記憶をかき消すように、刀を床に突き刺す。地面は砕け、握る手からは赤き血が垂れ、稲妻に掻き消えていく。

 

「……貴方だけは、忘れないわ」

「必ずあなたは……貴方だけは……この手で……‼‼」

 

床に落ちた写真立て。そこに飾られているのは事務所をバックに写真を撮った事務所のメンバーと芽衣、ブローニャ、テレサの映る記念写真。だが、壊れた写真立ての裏から、もう一枚写真が隠されていた。

何十にも折りたたまれ、わざと隠したようなその写真は、幼き頃の芽衣と彼女に肩を組む一人の青年とピースサインを送る少女。その背後には、満面の笑みでカメラに向けてそれぞれの表情を見せる、病衣を着た少年少女と何人かの白衣を着た男性とナースが映っていた。

これだけを見ればただの記念にとった写真程度にしか見れないだろう。だか、その写真は一目見ただけで他とは違い異質で、恐ろしい姿をしている。幾つものシミに、焼け焦げた痕――

 

――仲睦まじいその写真は、大量の血痕で穢れきっていた。

                    …背後に書かれた文章は、悲しき過去を呼び覚ます

 

 

 

 

 

Love the life you live.

     Live the life you love.」

自分の生きる人生を愛せ。

          自分の愛する人生を生きろ。

 

 

 

 








『……このような事をして、よろしかったのですか?』

『別にいいさ、彼女は私が目指す先へと導くカンデラになる。光を灯すランタンの調子は確かめておかないといけないだろう』

『そうですか…そういえば、先ほど"あの方"から連絡が届いておりましたよ』

『彼からとは珍しい。なんの要件かな』

『「君の"お友達"に"ピクニック"のお誘い」…だそうです』

『フッ彼も懲りないな。誰が行くかは君達で決めてくれて構わない、判断は一任するよ』

『かしこまりました』










『……さぁ、また巡り合おうじゃないか、愛しき君』
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