アメリカや祖国の小説は、所々遠まわしのジョークは掛かれているけど、文面自体はかなりストレートに書かれているので、日本の皆様が慣れていて楽しめるであろう、日本式で書くように頑張っています!
なので…誤字や誤植などがあれば遠慮なく報告をくれると嬉しいです :D
あと、お気に入り登録が気づいたら450を超えていて驚きました。崩壊3rdという日本ではまだマイナーな部類の近哲でありながら、読んでいただいてありがとうございます!
これから先も「個性「律者」のプロヒーロー」をよろしくお願いします!
――私が林間合宿の襲撃を聞いたのは、かのヴィラン連合「開闢行動隊」が爆豪を連れて撤退してから警察が到着1時間後の事であった。何故私が林間合宿の場所に向かうことが出来るのか。それは、現地到着した警官の一人が以前エンデヴァーと共に確保・鎮圧したブースト剤、兵装をトラックに乗せ売買しようとしたヴィラン達を引き渡した時に知り合った警官だったのだ。
その後のステイン騒動でも軽く話し合う程には交流を深めていた警官でもあり、ヒーロー活動用の連絡先を渡してた為、すぐに連絡を入れられるヒーローという事で、私に電話からの連絡が届いたのだ。その連絡は私の身体を無意識のうちに走らせ、気づいたら急ぎ現場へと向かっていた。
とは言え、その時は横浜からの要請による出撃を行い無事依頼を完了させ自身の事務所に帰還しようとしていた頃。林間合宿場所からの距離は現在地からざっと計算して、私が全速力で向かっても数十分はかかる距離。車や列車を用いていたら5時間以上はかかるだろう。なので、現地にいる例の警官を目印のピンとし、空の律者の空間転移を行い電話を受けてから数分ほどで合流することが出来るだろう。
空間転移とは名乗っているが、実態はワープや瞬間移動とは違い虚数空間の中を移動している。ただ虚数空間は現実世界とは剥離した異空間、現実の1mが何十、何百mと変わる異空間、その中を自身の全速力で移動し林間合宿の座標であろう場所で再度現実に通じる虚数を開き出れば、実質長距離転移という仕掛けだ。時間の流れも違うので、向こうの一分は虚数世界で10分程。アニメや漫画だと向こうの1日がこっちの1時間とかそこまで都合よくはない。だがこれ以上欲するのは我儘だろう、なにせこっちの10分が現実の"1分"というのは十分この世界の中で規格外の能力なのだから。
「それにしても……」
だが、
『――それと、爆豪を連れ去った主犯であるコンプレス、その近くに一人の少女がいた。』
『……少女?』
『ああ。小学生、それも低学年ぐらいだろうの少女。顔に虹を基調とした片目だけ空いた仮面を身に着けベレー帽をかぶる水色髪の少女だ』
『……そんな幼い子もヴィランとして行動していたのね』
『ひどい話だ……操られているのか、そう育てられたのかはわからないが、明らかに生徒達に殺意を持って攻撃してきていたのは事実らしい』
『……その少女の能力は?』
『正直わからない、だが絵具が関係しているのは確からしい。最後、ヴィラン達の撤退の殿を務め、騎兵と夫人と呼べる形をした異形を操っていた。それは最後絵具となって崩れ、ゲート周辺を渦巻き守っていたそうだ』
絵具を操る小学生程の幼い少女、ベレー帽をかぶった水色の髪、虹色の仮面……おそらくこの3つの言葉を聞いて何かをすぐに連想できてしまうのは、この世界でただ一人だろう。だが、とある過去が芽衣の思考を惑わせ、真実が虚偽かの判断をかき混ぜる。それは実体験の出来事、本来彼女が思いもしなかった出会いの中。決して起こり得ない事実が起こり得たのか心の奥底は揺れ動きざわつきが一層強くなる。
「まさか……有り得ない」
芽衣は知っているはずだ、そんな再開が起こり得るハズが無いのを。彼女は可愛らしく強い女の子、人の事を思い、優しくたくましく行動できる英雄に――ヒーローに値する子だ。そして、そんな彼女が闇へと堕ちることなどありえないはずなのだ。
「確かめないと……真実を!」
雷光が強まり速度が上がる、虚数空間を赤い閃光が奔る。彼女は急ぎ現場へと向かう。彼女の脳裏に浮かび上がり、重くのしかかる起こり得てはいけない事象を確かめなければならないのだ。この騒動の中心点が、
林間合宿 現場上空――
虚数空間を走りぬき、上空から勢いよく飛び出た律者。真下は幾つもの赤い光の点滅が輝いている。救急、警察、消防、かなりの数が集まり事態収拾の為に行動している。森の様子はひどい有様、中心部分の樹々から広がるように青い炎が広がり全て燃やすべく未だ炎が燻っていた。消防が必死に水をかけ消火すべく勤しんでいるが、炎は落ち着くことが無く苦戦を強いられていた。
下に降り、事細かい情報を聞き出す。幸い確保に成功したヴィラン達は既に拘束し連行済み、生徒達や対応していたイレイザーヘッド達ヒーローも病院へと搬送されており、死亡者は出ていないとの事で少し安堵の息が漏れた。
だが、決して軽視できるものではなく、何名もの重体者に負傷者多数…そして連れ去られた生徒「爆豪」と、生徒の指導の為に共に行動していたプッシーキャッツの一人である「ラグドール」の2名が行方不明――
この報告を聞き、芽衣は感じてしまった。これは完全なるヴィラン連合の完全勝利なのだという事実を。
彼らにとって負けた人間は捨てて当然の駒の一部であり、部品でしかない。そんなヴィランが3名捕らえた程度では成果にはならない。主犯もいない先兵の完璧な奇襲攻撃を許したゆえに、生徒・ヒーローの大半が負傷、そのうち2名が行方不明……これが完全なる私達の敗北と言わず何と言えるだろうか。
「……確かに、当事者の中で一番"彼"が辛く受け止めてしまったのでしょうね」
芽衣が呟いた"彼"とは、緑谷の事―――
彼が親友と呼ぶ仲の爆豪の誘拐を眼前で行われ、助ける為に動こうにも動けなかった。眼下の友人すら助けられないという事実に彼の強すぎる正義感が自身をさらに追い詰めてしまった。
彼はヴィラン連合に完全に逃げられてしまった後、その場で強く……
本当にヒーローとしての根底がオールマイトと同じ少年だ。彼の憧れというヒーロー像が自身を傷つけ、さらに追い込んでいることに気付いてほしいと切に願ってしまう。いや、今は彼の事を思う事よりやることがある。彼は病院の医者に頼るしかないのだから。
その後は連絡をくれた警官との合流が出来たのち、あらかたな状況と検証場所を聞き出しすぐその現場へ向かう。警官に連れてこられた場所、そこは最後ヴィラン達が一同に集まり撤退場所とした広間。小さい開けた空間の様になっており、此処だけ樹々が生えてい。そんな場所には、そこら中で戦いの痕である氷結の痕跡や、斬痕、沈みくぼんだ大地の穴に燃焼痕など……そこかしこに激しい戦闘痕が残っていた。そんな中、闇夜の森の中でひときは目立つ
円を描く鮮やかなパステルカラーの絵具痕。中心だけ綺麗に地面の色が残っている異様な景色はまるで一枚の創りかけの芸術なのではと思うような美しい色合い。それを見た私の心境は…ただ、ただ深い悲しみがあふれて止まらなくなる。なぜなら…この優しい色の絵具は
「こんな綺麗な現場だというのに、この場所がヴィランが襲った犯罪の現場なんだというのだから、なんか異様な感じですね」
「……。」
「……?律者さん?…っ!律者さん!?な、なぜ泣いているんですか!?」
「……なんで、なんでこうなったの……ねぇ」
「だって貴方は、あの時――」
闇夜の森の中で一雫の涙が枯れた大地に流れ落ちる。彼女の脳裏の中は純粋で、可愛らしくて、柔らかく、美しいほど白い一人の少女の姿が記憶の奥底から流れてきて止まる事が無い。
『ありがとう、ヒーローのおねえちゃん!大切に使って、綺麗な絵を描くね!』
『ヒーローのおねぇちゃん……えっと、お名前…教えて?おねえちゃんの絵を描きたいから、お名前…教えて欲しいの』
『芽衣…芽衣。うん、覚えた。ありがとう、芽衣おねえちゃん』
『じゃあ私のお名前も教えてあげる、私は……―――』
「あなたはあの時………
「どうして……どうして生きてるの? ねぇ――」
同時刻 都内のとあるバー店内――
某所のビル地下にひっそり存在しているとあるバー、そこに集まる物々しい人間達。そう、ここがヴィラン連合の仮の拠点であり、集合場所なのだ。
オレンジ色の明かりが店内を照らすバー、その入り口付近に一人の少年が椅子の背もたれに腕を縛り付けられた状態で寝かされている。
その少年の前方では、少年を法を流し目で見ながら各自休息を取っているヴィラン連合の面々が座っていた。
その中に件の少女がカウンター席にちょこんと座り、カウンターで一人一人に飲み物を提供していた黒霧からグラスに注がれたミルクを受け取り、両手でグラスを押さえながらコクコクと小さく喉を鳴らしながら飲んでいた。
ここだけ見れば只の少女の様にしか見えない。だが、彼女は正しくヴィランとして行動したれっきとした犯罪者の一人として行動していた。そして他のヴィラン達は初めて見る少女の仮面を取った素顔に注目する。
目立った傷も無い白い肌、幼い少年少女特有の柔らかくシルクの様な肌質、光を失った暗く深い青の瞳……一つの点を除き、どれだけみても只の少女にしか見えない。彼女があの時マグネとスピナーを救出し、出口に近づけない様に牽制した事実に未だに驚愕するだろう。
「そういえば貴方にはお礼言ってなかったわよね?あの時はありがとう、お嬢ちゃん♪」
「ん……どうイタしましテ?」「なんでそこで疑問形何です?」
「えっと、私ガ助ケたんじゃなくて…私の描いた絵が、助けてくれたカラ」
「……そういう所はしっかり子供っぽいのな」
自分の個性だというのに、自分が助けたという実感がなく自分が関わった者が助けたから私にお礼の言うのは変じゃないかと考えている少女。子供特有の感性は残ってるので、普段殺し、奪い、争う事ばっかのヴィラン達は少女との付き合い方に多少ギクシャクしながらも、優しく接する。そんな光景を見て、ひとりの少年は唾を吐き、精一杯の悪態をつく。
「ケッ!ヴィランが仲良しこよしとかしてんじゃねぇよ、クソが」
「あら?起きたのね」
「この状況でも変わらぬ姿勢、確かにこりゃこちら側だな」
一切の敵意を無くすことなく拘束されている中眼前のヴィラン達に食って掛かろうとする爆豪、彼の罵詈雑言を軽く流しながら各自今後の行動はどうするのか頭で考察していた。一方ミルクを飲んでいた少女は爆豪の罵詈雑言に驚き小さく「ピィ……!」と声を漏らしながら近くにいたトガヒミコとマグネの後ろに隠れて爆豪の方をチラチラとみつつ怯えていた。
「ちょっとアンタ!こんな可愛らしい小さな子が入るというのに、そんな叫ぶんじゃないわよ!」
「そうです!この子が可哀そうです!」
「知るかボケが!テメェらクソヴィランの事情なんか知るわけねぇだろうが!こんな所にガキなんか連れてくる方が悪いんだろうが!!」
なんとも無益な言い争い、ただただ店の中がうるさくなるだけの言い争いに荼毘は自前のヘッドホンを身に着け軽く休息を取り、死柄木は気にする素振りもなくカウンター席の机でトランプタワーを積み上げている。
そんな「まるで自分がこうなって当然の存在だ」と態度で見せられているかの様に感じとった爆豪の情緒はさらに爆発、爆豪の怒りの感情はヒートアップし臨界点をとうに超え、罵詈雑言の激しさが自己最高記録を優に記録していた。そんなヒーローにすら見えない少年に対していちいち応答を返すトガやマグネ達。その様子を遠くで見ていたコンプレスは肩をすくめ、カウンターでグラスを綺麗にしながら流し聞きする黒霧に話しかける。
「本当にこの少年はこちら側にいるべき人材って感じだな。改めてヒーロー側に居るのが不思議なもんだねぇ」
「彼は口調は悪くとも、あのオールマイトに感化されたヒーローの卵として育てられた人種です。だからこそ彼が一番良いと判断したわけですが」
「ま、たしかにあの作戦をするにはこれ以上ない人材だな。こちらに引き入れてもよし、無理でもそれはそれで……まったく良い舞台装置を見つけたもんだねぇオタク」
「なにゴチャゴチャいってやがる!さっさと開放しやがれクソが!!解放すればテメェらクソヴィラン共をぶっ殺してやるからよ!!」
「ねぇ、本当にこの子ヒーロー志望なの?」「どう見てもヒーロー目指す性格してねぇだろコイツ」
「んだとテメェ‼‼‼ぶっ殺すぞ‼‼‼」「……怖イ」
すでに5分以上続いている爆豪の罵詈雑言に対しての応対を一切気にする素振りすら見せず、死柄木は古いブラウン管テレビの"誰か"と会話している。モニターの画面には「SOUND ONLY」とノイズ交じりの文面が映し出されているだけで、画面の向こうの人物は誰かわからない。だが、その声は聴いた者を深く深く薄暗く湿った悪意という泥の中に引きずり込める、そんな誘惑すら感じてしまうような感覚がある人物であった。
『よくやった弔、これでこの先の計画が大きく進むことが出来る』
「あんたの助言通り進めただけだ、これからだろ?先生」
『……ああ。この先の対応によって、君が強く忌み嫌うこのヒーロー社会、その基盤が大きく揺らぐだろう。期待しているよ』
「……ところで先生、あのガキは結局何なんだ?」
そう言いうるさい爆豪の口を無理矢理体育祭時にも身に付けさせられていた拘束具で塞ごうとするマグネとスピナーとトガ、その後ろで3人のワチャワチャとした喧騒を、いつの間にか取り出していた白いキャンバスの前に座り、場面を切り取る様にせっせと描き始める少女を指さす。
始めて出会ったのは荼毘・トガが合流した翌日の事。死柄木が先生と呼ぶ人物から、連絡が有ったのが始まりだった…――
―――…コンコンとバーの扉がノックされる。今日は"先生"から来客が来るといわれていた。今の時間は昨日聞かされていた時間の10分前、まず時間より前にやってきたのは死柄木にとって高評価。以前の荼毘やトガは時間丁度にやってきて、そもそも嫌いな人種の子供と礼儀知らずだったのもあるが、ヴィランとは言え礼節がある人物はやはりそれなりに評価高いのが通常なのだ。ヴィランは悪ではあるが、人外ではない。人が持つ一部が欠落した"欠陥者"ではあるが、人を辞めた化け物ではないのだから。
「来たようですね」
「……入れ」
死柄木が声をかけ、ゆっくりと扉が動き出す。今日来る予定の人物は2人、一人は今回の作戦に参加する人物、もう一人はその付き添いと言っていた。なんでも先生――オールフォーワン――があの憎きオールマイトに重症を負った際、その手助けをした命の恩人から紹介された人物だそうだ。
なんでもその人物は、先生が大怪我を負い生死の境をさまよっていた時の頃、ドクターの治療も進まずにギリギリ命をつなぎとめていた時にその人物が接触してきて、ドクターに治癒系の個性を持つ者を「
そのおかげで先生は命の危機から脱出し、機械ありきではあるが生きてヴィランとして行動できるようになった。それ以来その人物と交友は深まり、今や共にヴィランとして手を取り合う"親友"だという。正直そんな人物の話一度も聞いた事は無かったが、その頃の事やその親友の事を喋っていた昨日の先生が、やけに楽しそうだったのを死柄木は鮮明に覚えている。その人物から紹介し「
第一印象はゲームに出てくるような教会で祈ってそうなシスター。白い花をあしらった純白のシスターヴェールを優しく頭にかぶせ、所々の際どさはあるものの、全体的な印象に清らかさと聖女と呼んでしまいそうな程の神々しさを感じさせる修道服とドレスを掛け合わせたような美しい服。各所に散りばめられた十字架のデザインはまさに自身が清らかな者だというのを証明させているかの様、胸の中央部分に飾られた蟲の物であろう翅のモニュメントは、彼女の麗しい姿を表現している。
そのあまりにも美しい光景に黒霧はほんの一瞬ではあるが、彼女の存在感に目を奪われ、それ以外のモノ全てが視界に入らなかった。
だが…その一瞬の観察は、彼女の奥底にある我々ヴィラン同等の暗く強い闇を抱え、それを正真正銘の善意という名の虚像の光で覆い隠しているのを直感的に悟った。あれは
この一瞬で黒霧の脳は、目の前の存在に対して警戒しろと騒いで止まらなかった。あの女性は何処かタガが外れている、彼女に警戒を緩めてしまえばたちまち取り込まれるのではないか……かってな妄想が脳内で何十とシミュレートされ、この場の最善手が何かと模索する。そんなヴィラン連合の面々より先に行動を映したのは、その聖女であった。
「どうか、警戒しないで『ください』」
聖女から放たれる美しい一言、それは先ほどまで何かすれば襲うべきだと考えていた者の精神を一瞬でなだめ、「彼女は私達の敵ではない」・「ヒーローとは違うから安心できる」という深層心理をその声で植え付けた。黒霧は、自身の警戒心が全面的に出ている体の霧のざわめきが急激にシュンと止まり、夜間に揺らめく優しい焚火の煙に似たどこか心落ち着く揺らめきへと戻る。それそこが、黒霧が今冷静な状況に戻ったという心の心象を表現していた。
一方、警戒もせず彼女の言葉に心ひとつ動くことの無かった死柄木は聖女自身よりその足元に立っている小さい子供の存在に目が行っていた。黒いベレー帽に水色の青空の様な優しい髪、水色のリボンと三枚花弁の花のブローチが際立つドレス風のワンピースに身を着飾った同じく仮面をつけた少女。聖女とは対照的に左目が欠け、虹色の絵具が飛び散ったようなデザインが右側に目立つ仮面。聖女の裏でゆっくりこちらを観察するようにのぞき込んでいる少女が死柄木に気付くと、すぐに聖女の後ろから現れて、死柄木に向け軽くお辞儀をした。死柄木は礼儀はわきまえているガキだなと受け取っていたが、この少女はもしやというこの先の展開が何となく想像でき、あの時に似た苛立ちがほんの少し湧き出てきていた。
「初めまして、ですね。私の事は聞いていると思うけど、一応自己紹介を私の名は…そう、「ミツヴァ」とでも呼んで「ください」。一応これがあなた達が名乗っている"ヴィラン名"と思ってくれて、いい」
「あ、ああそうですか。ご丁寧にどうも、私が黒霧…死柄木弔のお目付け役であり、「あの方」との連絡係です。そちらに座っているのが死柄弔、私達ヴィラン連合のボスです。あと二人、荼毘とトガヒミコと名乗る二人もいるのですが…生憎彼は今外に出ていまして、紹介はまた後日にでも」
「おい…まさかとは思うがお前がお目付け役ってヤツで、その足元のガキが例の仲間だとか言わねぇよな」
「意外と察しがいいのね。そう、彼女が今回貴方達と共に行動する仲間の内の一人になる」
「おいおい冗談も大概にしとけヨなァ……只でさえ昨日もガキが来てイライラしてるのに、今度はそれよりも小せぇガキが仲間?お前ここはガキ預かる場所じゃねぇんだぞ……」「まあまあ、落ち着いてください死柄木 弔」
また昨日の様な言い争いが勃発し始める前に何とか黒霧が抑え込むことができた。その光景を見てミツヴァは「あら、仲が良いのね」とどこか他人げに話している。その後、黒霧ではなく今来訪してきた彼女"ミツヴァ"が話を進めることになったが、今回の作戦に参加するのは足元の少女が参加するのは確定事項、ミツヴァは先生の"親友"の指示で別に行動することがあるため今回は不参加であるとの事。だが、ヴィラン連合として行動しないわけではなく、一応自身の仕事が片付き次第ヴィラン連合としてこちらに舞い戻り、共に行動ようになるかもしれないとの事であった。彼女達二人以外にもあと数人仲間として合流させる予定もあると、先生から聞かされていると語りだした。死柄木も珍しく黙ってミツヴァの言葉に耳を傾けていたが、やはりとある一文が引っ掛かりすぐに聞き返す。
「おいお前、このガキが本当に俺達の約に立つって言ってんのか?政治もしらねぇガキだぞ?」
「大丈夫。彼女はやると決めた時の強い覚悟と心がある、貴方が嫌な思いをすることは無いわ……」
「死柄木弔…彼女達はあの方が直々に仲間に入れるんだと声を出した希少な存在です。あの方の言葉であれば、その言葉に偽りはありえない」
「……チッ、まあいいか。でも、今回の作戦終えた後で少しでも邪魔だと思ったら、すぐ殺すからな」
「……
「うん。頑張ってくるね、アp……ミツヴァお母さん」
「……。」
何処か含みのある言い方に疑問を抱きつつも、眼前で絵を描き続ける少女を仲間に引き入れ、その後開闢行動隊として雄英の林間合宿襲撃に組み込んだ。結果として戦果は大成功――彼女のおかげで作戦は上手く行き、情報伝達も順調、動きもしっかりこなし、戦闘能力もかなり高い。一連の事は黒霧やマグネ、コンプレスからの報告で死柄木自身が実際に目撃したわけではないが、彼女の存在が想定時間より早く任務を終わらせられるという想定外の大手柄を可能にしたのは、言葉だけで実感できた。
「まさか本当に役立つとはな…ゲームの隠しキャラみたいな存在だな、アレは」
「ヒーロー二人に対しほぼ完封での封じ込め、連絡手段も豊富かつ、能力のバリエーションが幅広い。彼女の「個性」はこれから先も、必ず役に立つはずです」
「ふっ、それは楽しみだね……彼女がどんな活躍するのか、今度は俺の前で見せて欲しいもんだ」
顔に張り付けた青白い手の隙間から不気味な笑みを露わにする死柄木、眼前ではいつの間にか拘束が終了し、煩わしかった罵詈雑言がピタリと止まり、それでも鬱陶しかったのかマグネに気絶させられた爆豪。それを放置して、完成していた少女の絵をのぞき込みそれぞれ感嘆の声を賛美を少女に向けている。こんなほのぼのとした光景なのに、その正体はヴィランなのだ。それを証明するかのように、少女の絵には悪魔の顔をした赤い皮膚の天使が鎖で縛り上げられ、その周りの柔らかい人肌の光輪を頭に浮かべ満面の笑みで笑いながら周囲の悪魔を槍で串刺しにする返り血を浴びた天使の絵が見える。
縛られた悪魔は爆豪に似ており、笑う天使たちはこの場にいるヴィラン達にそっくり。彼女が直感的に感じ取り、イメージした光景は全てこのように絵画で表現される。この恐ろしいほど猟奇的な絵が、先ほどのマグネ達を見て感じ取ったインスピレーション、その先である。そんな絵を笑いながら、上手いや面白いと声をかけ、少しきょとんとした表情を見せながら頭を撫でられる少女。死柄木の目はその少女の姿を……血濡れた異形の怪物に見せていた。
「そういえば貴方…名前は?」
「名前?」
「本名も知りたいけど、今聞いてるのはヴィラン名よ。私は「マグネ」って呼ばれてるわ」
「俺は「スピナー」だ!」「私は本名のまま「トガヒミコ」って名乗ってるです♪」
「名前……ヴィラン名?そんなの、無イ……。あ、けど、いつもこう名乗ってル」
「へぇ。是非教えて欲しいわ♪」「あ、聞きたい聞きたいデスゥ~!」
「そういエば、お名前言ってなかっタね。私の名前、は――」
この同時期、森の中にて現場検証を行っていた芽衣も同時期に同じ名前を口にした。それは因果か、はたまた過去の因縁故か。シンクロしたその名前は、律者と少女の口から零れ出るのと同時、空の彼方で一粒の青い流星が流れ落ちた。
グレーシュ、『群星』を司るこの世界で生まれた
暗闇が支配するとある場所。個室というには明らか広い玉座であろうその部屋の奥、レッドカーペットが続く部屋の最奥に鎮座する巨大な玉座、その玉座に鎮座する広いスーツに身を包んだ誰か。その顔は暗闇で見えていないが、体格から察して男性だろう。彼は片手にワインを携え、優雅に中の鮮やかなワインをゆっくりと回しながら、カーテンの隙間から見える三日月と流星を眺め堪能している。そんな男が座る肘掛けの横では、青白いホログラムが投影され、顔が潰れ一部が欠損した何者かが映し出され笑みを笑みを浮かべていた。彼の名はオールフォーワン、かつてかつて裏から日本を支配し『悪の帝王』と呼ばれ、世界を混沌に陥れようとした男であり、オールマイトにその野望を打ち崩され、再起する為に暗躍するヴィランの一人だ。
『いやぁ、君から彼女の力は聞いていたけど、まさかこれほどとはね。流石のドクターも唇を嚙み悔しがっていたよ、何故あれほどの逸材を手にできなかったのか!?あの個性が欲しい‼‼とね』
「そうか。でも残念、アレは僕が拾い上げたんだ、いくら君でも渡すわけにはいかないね」
『わかっているさ。僕もドクターも理想の為なら手段を択ばない、だけどその手段を択ばなかったが故に自身の身を亡ぼすような事はしたくないさ』
「君の夢の為ならどんな手でもという思考は嫌いではないさ。けど、だからといって僕達に敵対する事は止めておいた方が良い。夢は夢でも夢想で終わらせたくはないだろう?お互いに」
『たしかに。僕の夢、君の夢、弔の夢、悪の夢……それを終わらせるのは今じゃない。それに、台無しにするなら…この僕の手で行うさ』
「台無しにするのはいいが、僕の邪魔にならないようにしてくれると嬉しいね、我が友よ」
『ああもちろんだとも僕の親友。さて、雑談はこれぐらいにしておこう。弔の件、しっかりお願いするよ?それじゃ』
「ああ、それじゃあ」
不気味な声色の羅列と応酬が止まり、オールフォーワンを映していたホログラムがブツリと切れる。一通りの話が済み、男は小さくフフッと笑みを口から零し、身に着けていた仮面をずらしてグラスのワインを口にした。
そんな男にいつの間にか玉座の隣で静かに佇んでいる女性が話しかける。口元に幾つかのパイプが繋がっており、そパイプは背中に背負っている小さい機械に繋がっている。そして服装は何故かメイド服。
口元のマスクはスチームパンクを匂わせるデザインであるが、来ている服装はコスプレで使われてそうなショートスカートの可愛らしいメイド服。髪色もピンク色でまさしくコスプレした女性としか見えないが、彼女の立ち振る舞いにはどこか、気高き何かを感じさせていた。
「あら、お話はもう終わりなの?彼との会話、とっても面白いのに……」
「すまないが、まだ君を紹介するわけにはいかないのでね。今はまだ、片隅で見ているだけで我慢して欲しい」
「もぉ、しょうがないわねぇ…でも、いつか必ず紹介してよね。教・主・様?」
「ああ、いずれ紹介する時が来るだろう。その時は、彼女にも合わせてあげよう…君が気に入るであろう有名な"彼女"を、ね」
「?よくわからないけど、楽しみにしているわ♪」
男の名は――「オットー・アポカリプス」
この個性あふれる世界が生まれる前から、「異能」を持ち世界を旅し立ち上げたヨーロッパに本部を抱える大企業「個性研究特務機関 天命」の創設者であり、大主教と呼ばれる男。
そして……雷電芽衣が己が手で刃に掛け、殺したはずの、仮面纏いし亡霊である――
雷電芽衣とオットー・アポカリプス、この二人の邂逅がこの個性あふれた世界を大きく揺るがし、壊す「あの事件」を引き起こすのだ。
その事件が始まりに通ずる時、様々な謎が解明される事があるのかもしれない……。「個性」という概念の真相、発現者が多発したきっかけ、そして……
雷電芽衣が、この世界に
補足3rd
・謎の聖女「ミツヴァ」
ミツヴァとはヘブライ語の「mitzvah」の発音をカナ表記したもの
その意味は、ヘブライ語の 「mitzwah」に由来するユダヤ教ラビによるとある
mitzvah――
これが有する意味、それは――
――『戒律』