個性「律者」のプロヒーロー   作:siera

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終焉の律者「……言いたい事はある?」

作者「申し訳ありませんでした……」

終焉の律者「約3か月間投稿無し……何してたの」

作者「仕事が忙しくて……」

終焉の律者「この話自体は2か月前に書き終えてなかった?」

作者「それは……はい」

終焉の律者「なんで出さなかったの?」

作者「レイブンとしてルビコン行ってました♪テヘペロ ――」



手記はここで終わっている。その後、作者の姿を見た者はいなかったという―――






終焉の律者「私自身は出てこないけど、いよいよ本格的に連合vsヒーローが始まろうとしてるよ!芽衣先輩たちの活躍、是非みてね~!」


21話

 深夜の林間合宿の現場検証を終える。現場検証の際無意識に流れてしまった涙の件は「生徒達の怖さを思うと自然と涙が出てしまった」と苦しい嘘を吐いたが、現場にいた警察官はそれで納得してくれたので大丈夫だろう。その後一通り現場の検証を進め、相手の個性の詳細を考察し、後日報告する連絡をした後帰路に就いた。現場から自宅へと向かう芽衣の足取りは、人生で2番目に重く辛いものであった。

 

後日、私はオールマイトと共に生徒達が入院している病院へと赴いた。理由としてはお見舞いや様子の確認の意図ももちろんあるが、一番の理由として生徒達の記憶を確認する為。

入院している生徒達のほとんどが手術や治療による苦痛からの解放と、死の間際から解放された事実による安心感もあり、ほとんどの生徒達が落ち着きを取り戻していた。

なので、事情聴取は早い方が良いとオールマイトと警察に告げ、連れ去られた爆豪君に関する情報やヴィラン連合の特徴など、些細な事でも情報をかき集めようとしている。

 

「……大体の生徒が大丈夫そうで良かった。この生徒達は強くなるぞ」

「後遺症もあるような生徒も居ない様だというのも嬉しい事です。…一人を除いて」

 

そういいながら通りかかった病室のドアの上窓を覗く。窓の先に見えるのは感情が無い虚ろな目で天井を眺め続ける緑髪の一人の生徒がいた。

 

「ああ…そうだな(緑谷少年……)」

 

他の生徒に比べ怪我が酷かった緑谷君、オールマイトの個性を100%フルに使っても倒れなかったヴィランとの戦闘、既にボロボロで砕けだ骨と弾けるように切れた筋肉を無理矢理動かし、再度大けがした腕で100%を振るったらしく。その自殺行為ともとれる個性の過剰酷使はしっかりと本人に"治せない"傷を残した。

度重なる筋繊維と骨の破裂の如き裂傷は着実と腕その物を壊していた為、これ以上の無茶は二度と腕が使えなくなる可能性が出てきた。ドクターの話によると、2~3回同じ事が起きれば腕が壊死し、一生使えない腐肉と同意義の存在へと変わり果ててしまうそう。

 

本人はまだベッドの為腕の件はまだ説明してないらしいが、彼ならその意味と重大性はすぐ理解することだろう。先ほどちらりと緑谷君が寝ている病室のドアの上窓を覗いてみた所、虚ろな目で天井をずっと眺め、まるで抜け殻の様であった。

彼の場合他の生徒と違い、精神的傷と肉体的傷の影響で気絶と悶絶を繰り返しているようで、現在は鎮痛剤で無理矢理痛みをごまかしている様だ。

 

その様子をみてトゥルーフォームのオールマイトはオロオロとまるで自身の身内に見せるような感情を表現しており、表情をフルに生かし自分の不甲斐なさを出していた。聞くところによると彼は生徒達がヴィランと交戦中半身浴に興じていたらしく、昨日の雄英教師の会議で酷く自身を攻めていたそうだ。

……仕方がない事だというのに、自身を深く気づ付けるオールマイトの様子をみると、本当に緑谷君と親子なのではと疑いそうになる。

 

「ほら、行きますよオールマイト。次は八百万さんの所へ行くのでしょう」

「……あぁ、緑谷少年」

「はぁ~…オールマイト」

「あ、ああすまない芽衣君。……行こうか」

 

本当に大丈夫なのかと心配になるオールマイトの態度、個性を譲渡した存在とは言えここまでよくここまで入れ込めるものだと思ってしまうのは私だけだろうか。……いや、昔の自分も自分が助けられたかもしれない他者の不幸を「私はもっとできたんじゃ」と自身を傷つけたりもした自身が言えたことでは無い、のかも。

同じ境遇、同じ精神性なんだろう。緑谷君も、オールマイトも……私も。他者の不幸は自身の責任に変わり勝手に背に重しを増やす。自分の限界という事実から逃げ、それでも他者を守るという仁義一つを貫き通す為に自分から国を背負いこんだオールマイト。

 

あぁ、いま思えば自分をその域に片足を入れているんだ。ただ、二人とは違い、「助けられなかったモノは必ずいる」「世界は常に残酷さがあって回っている」……その事実を知っている。知っているが故に私は片足だけで済んでいる、理想に憑りつかれそうになっているのを"現実主義"の思考という名の歪んだ鎖が私を先に行かせないよう縛り押さえているのだ。

 

あらためてヒーローとは残酷なモノ、理想論を現実にできるという甘すぎる蜜に民衆を浸らせ、成長を停滞させている。だがその停滞を起こさなければ個性社会の基盤はすぐに崩れる。それを終わらせないが為に立ち上がる№1ヒーローの支柱……私はまた勝手な妄想で自身を追い込んでいた。だけど、この妄想はおそらく政府の人間にも一度は想像したことがあるだろう。現実味を帯びた虚像は、すべからく真実に近いモノだから。

 

「さあ八百万少女の病室だ。…芽衣君?どうかしたのかね」

「…いえ、行きましょう」

 

……相変わらずこの悪い癖は抜けないモノだ。これ以上の未知なる未来の景色をイメージするのは止めよう、今は目の前の事を一つづつ済まさなければいけない。未来の出来事ばかりに不安を覚えている余裕はないのだから。

オールマイトの声に答えながら、ゆっくりと病室のドアをノックする。少しして薄く掠れた声で「どうぞ」と返答が帰ってくる。扉を開けた奥、窓際のベッドの背もたれに身体を預けながら応答していた八百万さんの姿があった。額と喉に巻きつけられた包帯が少女の痛い痛しい姿を創り上げていた。容体の方は無事回復してきているようでもうすぐ退院できるそうだ。近くに置かれていた椅子を借り、ちょうど合流した警察官の塚内さんも合流し、彼女はあの森での出来事を覚えているモノ全て語ってくれた。

 

彼女はあの晩、肝試しの為に森の中を歩いていた際、突如木の裏から攻撃を受けたらしい。そのヴィランは脳無だったといい、八百万さんはその攻撃で頭と喉、そして腕に大けがを受けてしまった。幸いにも肝試しの係で近くに待機していた泡瀬が助けに入り、逃げる事に成功したが…それでも似通った身長差と怪我による行動の制限もあってすぐに追いかけられ、追い詰められた。もうダメかと諦めかけた瞬間、突如脳無の動きが急停止し、先ほどまでの攻撃的な行動を翻し、彼女達に背を向けどこかへ去っていったらしい。その後の事は重症の為に気絶してしまい、記憶は無く目が覚めたら病院だったらしい。

 

「脳無を操る…死柄木があの場に居たのか?」

「いいえ。おそらくあの開闢行動隊のリーダー格で指示していた男、荼毘が操っていた可能性の方が高いでしょうね」

「荼毘…警察が調べても素性・経歴すべてが分からなかった唯一詳細不明のヴィラン。何者なんだ…」

「……それと、じつは皆様の捜索の役に立つある情報があるのですが」

「「役立つ情報?」」

 

そういい、八百万さんは手元で自身の個性「創造」を使いとある物を創り出した。それは少し型は古いが警察や探偵がよく手元に持っている携帯型の探知デバイス。記録したGPS信号を映し出し、その場所を示す機械だ。

 

「実は泡瀬さんに協力をお願いし、私が創り出した発信機をヴィランの身体に取り付けてもらいました」

「あの怪我の中、そんな事を……!」

「ヴィランの腰付近に溶接してもらった発信機の信号をこれで追えると思います。外されている可能性もありますが、捜査にお役立てください」

 

八百万さんはそういい私にそのデバイスを渡してくれた。慣れた手つきで装置を起動する。GPSの信号を受信し機械の画面に赤い信号を映し出した。デバイスの画面の端の端に赤い点滅する信号をしっかりキャッチしている。このあたりと言う訳ではないが、この信号はしっかりGPS信号を捉えている。

最初の頃、自身の個性の万能性を心の弱さと咄嗟の判断が出せない弱さ故に相澤先生からも心配されていたのだが、今の彼女はどうだろう。自身の身の危険を顧みず、自身にできることを、今できる手の全てを考え行動に移している。自身の命を顧みない行動だったのはまだ生徒ゆえ少し思う所はあるが、素晴らしい成長だといえるだろう。

 

「この前相澤君が君のことを「咄嗟の判断力に掛ける」と評していたが、素晴らしい成長ぶりだ!ありがとう八百万少女!」

「級友の危機に…このような形でしか協力できず、悔しいです」

「その気持ちがヒーローたりうる証ね、後は私達に任せなさい」

 

私は優しく八百万さんの肩に手を当てる。彼女は小さく「はい…」と答えていたが、その言葉からは悔しさがにじみ出ていた。自身が出来た唯一の事がこれしか無いと思っているのだが、その行動が私達警察やヒーローの助けになっているのかまだ理解しきれていない様子。緑谷君といい、A組のヒーロー科志望は優秀過ぎて怖いくらいだ。ただまあ、それ以上に厄介事に巻き込まれるタイプでもあるのだが、まったく…昔のヒーロー漫画のヒーローのような子達だ。

 

八百万さんをベットに寝かせしっかり休むように告げた後、私とオールマイトは病室を後にした。出る途中で私だけが気づいた()()の"走り去る足音"の事を話すことなく。

その後の行動は迅速だった。警察に八百万さんのデバイスを渡し、私がそのデバイスを完全に複製する。そして多数のヒーロー事務所への連絡し、連携できる事務所を各方面から招集をかけた。もちろん外部に漏れぬよう非公式で。この現代社会、何処から漏れるかわからない情報を完全に秘匿した理由として、"識の律者"をフルに使って各ヒーロー、事務所の秘書や重役に声を掛けた。自身の個性をフル活用し、精神世界内で人形・分体を複数創り出し、自身が知るヒーローの元へ飛んで、飛んで、飛び回った。

 

私への負担が大きいからとオールマイトと警察の塚内さんは心配していたが、このレベルの負担は以前に経験積み、半日休めば大丈夫。明日の夜には行動を開始できる予定だ。警察各員も秘密裏に武装や人員を集め……次の日の夜、作戦会議が開かれた。

 

シンリンカムイ、エッジショット、エンデヴァー、ベストジーニスト、ギャングオルカ、有名ヒーロー達に若手実力派ヒーロー、地方マイナーなヒーローなど功績、名声問わず集まってくれた。もちろん私の事務所からもシスターTeRiRi、バニータンク、Bronyaももちろん参加している。

 

そんなヒーロー達の中心にいるのが、マッスルフォームで今まで以上に画風が変わり気迫が違うオールマイト、最初から100%の雷の律者形態で武装の確認を行う私、雷電芽衣こと律者が佇んでいた。……いままであったどの作戦会議よりも緊張感と重い空気を感じさせる待機室。まるで戦争でもするのだろうかと思う程に重苦しい空気の中、会議が始まろうとしている。

 

「…何故この俺が雄英の尻ぬぐいを…こちらも忙しいのだが」

「まぁそう言わずに、OBでしょう」

「雄英からは今ヒーローを呼べない。対局を見てくれエンデヴァー」

「今回の事件はヒーロー社会崩壊の切っ掛けにもなり得る。総力をもって解決にあたらねば」

「私は以前爆豪の素行を矯正すべく事務所に招いた。あれ程に意固地な男はそうそういまい、今頃暴れていよう。事態は急を要する」

「ホホゥ、貴様が変えられなかったのか」「ああ…毛先までプライドガチガチの男だった」

「(ヒーロ素質じゃなくて矯正を目的…)大変だったでしょうね…」

「貴方は特別講習で雄英に行ったことがありましたね、どうでした?№1から見て」

「……プライドだけで構成された爆弾みたいな子だから、直すなんて考えは初見で捨て去ったわ」

「やはり貴方でも手が焼けますか…」

 

だからこそ彼が今回狙われたのは明白、だが……あの感じを知っているのなら、体育祭を見ていてヴィランに誘い込むなんて難しいと分かっているはずなのに、あんな悪態をさらけ出す子ではあるが、根本は立派なヒーローとしての独自の正義感をもった少年だ。そんな少年の心を歪ませる力…個性を向こうは持っている?いや、だとすればここ数日拠点で動きが無いのはおかしいか。

 

「何にしろ、プライドと意地で構成されたあの子はそう簡単に手に負えるモノでは無い筈です。何をしようとしたのか、それは捕まえれば全てわかるハズです」

「Bronyaさんの言う通りですよ!それに、オールマイトに律者さんも居るんですから、成功は確実ですよ!」

「流石に楽観しすぎだMt.レディ……」

「そうです、シンリンカムイさんを見習ってください」「私そこまでですか!?」

 

周りの声が耳に入らない。静寂の中、私の思考は遥か彼方に離れ、周囲の人や物の姿すら脳は情報として取り入れず、全神経を思考に注いでしまっている。私は"あの子"が何故生きていて、どうしてヴィラン連合と共に動いているのか、問いたださなければならない。何故なのか、どうしてヴィランなんかに…と毎日考えてしまっている。

睡眠時も、自らの精神世界…仙境にて瞑想の様に瞳を閉じ、過去の出来事を振り返り、現在起こった出来事の解明を続けていた。答えなど得るハズの無い、無意味な事だと分かりながらも、やらずにはいられなかった。この行動こそが、自身を冷静にさせる一つの手段となってしまっていたからだ。

 

深い思慮を巡らせている中、突如、私の肩から感じる優しい温もりが私を思考の海から引き揚げた。静かに瞳を開き温もりが伝わる肩をみつめると、優しく微笑みながら肩に手を乗せているブローニャの姿。彼女は他社の感情をくみ取るのが私以上に上手い彼女は、私がまた一人で悩み過ぎていると知り、声はかけずと安心を与える為に自身の存在をこの手で伝えようとしてくれている。

その優しさに答えるように、肩に当てだれた手の上から私も手を添える。それが彼女への返答、「ありがとう」と「大丈夫」の意を込めた合図だ。深い思考から戻り、眼前のヒーロー達の姿は先ほどまでとは違い、しっかりと頼れる仲間がいる事実を私の目は心に伝えてきた。

 

「…皆さん爆豪さんの為に集まっています。彼を救いたいと思うのは皆同じです」

「……わかっているわ。……えぇ、わかってる」

 

「今回はスピード勝負だ!(ヴィラン)に何もさせるな!!」

「先ほど行われた会見、ヴィランを欺くよう校長にのみ協力要請しておいた!さも難航中かの様に装ってもらっている!」

「あの発言を受け、その日のうちに突入されるとは思うまい!意趣返ししてやれ!さぁ、反撃の時だ!」

 

流れを覆せ‼‼ヒーロー‼‼‼

 

オールマイトと律者、二班に分かれ爆豪救出&ヴィラン連合一斉確保の2大作戦が始まろうとしていた。敵の本拠地であろうビルにはオールマイト、エンデヴァー、律者分体「ワタリガラス」。もう一つの拠点に律者本体である雷電芽衣とベストジーニスト、分体「キアナ」が向かう。狙うはヴィラン連合死柄木弔含む構成員全員の逮捕、そして雄英生「爆豪勝己」の救助。

警察も現時点対応できる人員全てを動員し、各地のヒーローも招集。二人のナンバーワンヒーローの元へ集う。そして……二班共に目標前に立ち、中に居るであろう巨悪が待つ建物を№1達は睨みつけた。

 

「今度こそ刑務所に送り出してやるぞ、死柄木弔……そして、オールフォーワン‼‼‼」

「貴方達が知っている事実…すべてを教えてもらうわ、ヴィラン連合……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ヴィラン連合も、黙って動かずにいるわけでは当然無い。

雄英による会見を流し、完璧でいられなかったことに対して非難される雄英を見せつけ、いかにヒーローという概念が世間を汚し、歪なルールで縛りつけ、世の中を掃きだめへと変えたと爆豪に向かい吐き捨てる。ヒーロー社会は本当に正義なのか、それを人間一人一人に考える為だと語り、対等の立場にあると教える為に爆豪の拘束を外した。

 

だが、死柄木の問いへの返答は否定の爆破をもって返した。ヴィランの言い論などどうでもいい、世間の歪さなんてどうでもいい。「自分はヒーローに憧れた」その事実だけは絶対に曲げられない。なぜなら彼は、ヒーローが勝つ姿に……オールマイト(№1)に憧れたのだから。

 

交渉は決裂……かと思われたが、意外にも死柄木は冷静なまま。初めて邂逅した時の子供のような癇癪を起し感情をむき出しにしてきた人物と同一人物なのか疑いたくなるほどの変化。彼は静かに爆豪によって吹き飛ばされたマスクを身に着け、戦闘態勢をとるマグネ達を押さえた。そして……彼は一つのモニターに向かい口を動かす。

 

「―――手を出すなよ……おまえら。こいつは……大切なコマだ」

「……はぁ。出来れば少し耳を傾けて欲しかったな……君とは、分かり合えると思ってたんだが……」

「分かり合うだァ?ハッ!!ねぇわ!」

「仕方がない、ヒーロー達も調査を進めていると言っていた…悠長に説得してられない」

 

先生 力を貸せ……

 

『……良い、良い判断だよ死柄木弔』

ジジッ……はい、はい。畏まりました、オールフォーワン」

「あぁ!?先生ぇ……?てめぇがボスじゃねぇのかよ…!白けんなぁ……!」

 

モニター奥の人物は、嬉しそうな感情を隠すことなく、高揚した声で死柄木に答える。その声は実に暗く低く、そして悍ましい。爆豪はモニター奥の謎の人物に対しての潜在的な未知への不安と恐怖が心の奥底から這い上がってくるのを感じる。

だが、それを感ずかれればその隙を取られるのは目に見えている。衰えることの無い罵詈雑言と唯我独尊な態度を崩すことなく、悟らせないようにし、この場からの脱出案を模索している。

 

「黒霧、コンプレス、また眠らせておけ」

「まったく、ここまで人の話を聞かないとは……ある意味で関心するぜ」

「聞いてほしけりゃ土下座して死ね!(最大火力でぶっ飛ばしてぇが…ワープ野郎が邪魔過ぎる…考えろ…!どうにか隙作って後ろのドアから……)」

 

〖……戦わないで「ください」〗

「っ!?なっ……なんだ、これ……」

 

突如聞こえてきた甘く麗しい一声――

その声は爆豪から"抗う意志"を大きく削り、まるで足の感覚が無くなったかのように片膝から力が一瞬に消え、ヴィランの前に方膝を突かせた。自身の身体だというのにまるで制御が効かない現状に焦りが増す爆豪、すぐに起き上がりたいが……その()()()()が脳に起きない。身体から一切の"抵抗感"があふれ出てくることが無かったのだ。

 

「(なんだ……身体が言う事聞かねぇ……逃げてぇのに……身体が逃げようとしねぇ……)」

「すいませんね爆豪君。あのお方に頼まれ、先ほどバー裏の倉庫に()()()をお送りしていたのですよ」

「(黒靄のヤロウのせいか……!あの方…だれか連れてきやがった…のか)」

「驚いた…私の〈戒律〉への抵抗がここまで強いなんて珍しい子ね」

 

バーカウンター裏の倉庫へ通じる扉から聞こえてくる一人の女性の声。ギィとゆっくり開かれていく扉からは、聖女の白い花をあしらった純白のシスターヴェールを優しく頭にかぶせた聖女かぶれの仮面の女が立っていた。

 

「(こいつの……個性か)」

「なんだ、お前が来たのかミツヴァ。しばらく来ねぇとか言ってたくせに」

「仕事の開いた合間に来ているだけだよ。まだ完全に終わってないから、合流はその後に」

「……そうかよ」

 

爆豪を他所に話し合うミツヴァと死柄木。その姿をみて怒りの感情は湧いて出てくるのだが、その感情を糧とした抵抗へとは繋がらない。体が、脳が、自身が抵抗というモノを落としたのかと思う程何もできない。その歯がゆさから、表情から悔しさが現れ、汗が流れてくる。

 

「それで……こいつは今どんな状況だ」

「一時的に私の個性で動けないだけ、この程度の〈戒律〉であればしばらくすれば勝手に解除される。その前に――」

 

そういいながらミツヴァは何処からか一枚の羽根を取り出した。その羽は黒と赤のグラデーションが目立ち、羽根の周囲には赤いオーラが漂っている。その羽根を見た瞬間、爆豪の脳は一気に身体全体へ警鐘を鳴らしはじめる。「アレはマズい。あれだけは回避すべきだ」と。

 

「これで彼の意識を書き換える。ある二つの能力が備わっている物よ」

「なんだか知らないが、使えるんだろうな」

「わからない。私の〈戒律〉への抵抗力があるこの子なら……すぐに終わる保証はないわ。それに、完全に書き換えられない可能性もある」

「何が言いたい」

「良くて「完全服従」、上手く行けば「身体の意志ぐらいは操れる」。悪ければ「抵抗されて無意味」という事になるわね」

「……時間は」

「"彼"が言うには10分経たないと意味が無いらしいよ」

「……そうか、じゃあ始めろ」

 

死柄木の指示に答えるように爆豪の元へと近づくミツヴァ。ヴィランが来るというのに身体は一切いう事を聞かないこの状況に、あれほど虚勢を張っていた爆豪からも余裕そうな表情が掻き消えた。

 

「くそ……がぁ……!」

「怖がらないで、抵抗しないで……すぐに、終わるから」

 

時間が無い。10分以内に脱出するか、助けが来なければ完全に理解しきれていないが、自身の身に何かが起こる。抵抗力を失った身体、何もできない現状、少しでもこの状況を打破する一手が無いか、小さく薄い糸がどこかに無いか、探すしかない。

ミツヴァの手にある羽根が光り始める……爆豪は覚悟を決めるしかなかった。どんな状況でも抗う覚悟を――

 

「(何ができる……今この場で……なにが…できる)が……あぁ……‼」

「では……"調整"をはじめましょう」




次回 ヴィラン連合vsヒーロー 開戦 ―――
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