それは、新宿の微小特異点に向かう前の事··········
「藤丸君、いきなりだが微小特異点だ。」
「ホントいきなりですね。場所は?」
「場所は日本国、神奈川県の横浜市です。」
「いいよねぇ横浜。海もあり、山もあり、観光名所も名物も山盛りだ。」
「スタメンはどうしましょう先輩。」
「うーんそうだなぁ··········」
「主殿!ここは我にお任せを!」
一番最初に名乗りを上げたのは、
「この牛若丸、必ずや主殿のご期待に応えさせていただきます!」
「牛若!でも、どうしたの急に。」
「現代戦であれ、街中での戦闘であれば、我が八艘飛びの出番かと!」
「なるほど。確かに、牛若丸さんなら適役かもしれないですね。」
「じゃあ、最初は牛若丸。最低5人は欲しいなぁ··········」
「マスター、私も同行させてくれ。」
「アタランテ・オルタさん!」
「近代武器には疎いが、近接ならば得意だ。」
「··········付箋貼った横浜市のパンフレット持ってても説得力ないけど。」
「い、いや違う!決して、決っしてこのフルーツクレープが食べたいとかではない!」
「じゃあ、2人目決定だね。」
続いての3・4・5人目は、
「横浜か··········。日本には少しばかり因縁めいたものがあるが、それもいいだろう。頼めるかマスター。」
キャスター、諸葛孔明。
「マスター。此度は少しばかり衛生の悪い場所のようですね。ならば、私自身が消毒に行くべきです。」
バーサーカー、ナイチンゲール。
「マスター、少しばかり面白い事になりそうだ。私も行くとしよう。なに、戦闘ではあまり活躍できないが、それも一興だ。」
ルーラー、シャーロック・ホームズ。
「それでは、レイシフト開始します!」
「市街地での戦闘はなるべく控えるように!今回は民間人も巻き込まれる可能性がある!」
「了解!」
『レイシフト 開始します』
「転移、成功。」
『敵影反応、無しです。』
「見事にバラけたものだな。私とマスター、後の者は横浜市内にいるようだ。この様子なら、魔力を感知して集合できるだろう。」
『先輩、孔明さん、注意して下さい。現在この特異点にはカルデアのサーヴァント以外のサーヴァント反応が確認できます。数にしておよそ3基!』
「了解、マシュ。まずは合流を急ごう。」
街中を歩くが、思った以上に入り組んでいる。
「マスター、あそこの喫茶店に入ろう。」
「そうだね。少し、疲れたし。」
喫茶うずまき。なんでもコーヒーに相当の自信があるようで、表には今日のオススメコーヒーなどが掲示されている。
カランカラン
「いらっしゃいませ〜」
初老の男性と若い女性店員の2人だけのようだ。
「先生、どうします?奢りますよ。」
「じゃあ、ブレンドコーヒー1つ。」
「あとダージリンティー1つ。」
「かしこまりました。」
見れば見るほどモダンというか、お洒落というか、時代を感じる内装だ。
カランカラン
「おや、先客がいたようだね。」
「いらっしゃいませ、探偵社の皆さん!」
「マスター、僕ショートケーキ!あとミルクティー、砂糖多めでね!」
「乱歩さん!声が大きいですよ!」
「やめろ敦。乱歩さんは止まらない。」
「全く、騒がしいねェ。」
「探偵社?」
「何かの探偵のようだな。いや、ウチにも1人いるが。」
「マスター、あちらの方々は?」
「この店の常連客でございます。3階の探偵社の方々でして、ここのところ新人の方が入られたとか。」
探偵社、とは珍しいネーミングだ。パンチが効いてるが、胡散臭さも感じられる。事実、社員(?)はみな私服。
包帯を巻いたコートの紳士。
白髪の若い青年。
眼鏡をかけた金髪の男。
見た目は子供、探偵服のような格好の少年。
蝶の髪飾りが美しい女性。
寡黙な和服の少女。
怪しさの源泉かけ流しだ。
「おまたせしました。コーヒーとダージリンティーでございます。」
「ありがとうございます。」
孔明の頼んだコーヒーは香りが立っていて、こちらが飲みたくなるような物だった。勿論、ダージリンも甘みと香りが調和していて、最高だった。
「なかなか、いい店を見つけたな。藤丸。」
「いやいや、先生のお陰ですよ。」
優雅な一時を過ごしていた··········はずだった。
次の瞬間、上の階から銃撃音が鳴り響く。
「!!!!???」
「なんだなんだ!??」
『英霊ではありません!通常のテロ組織です!』
「通常のテロ組織って何!?」
慌てて体を隠そうとするが、店長も店員も誰も反応しない。それどころか、またかという感じでため息をついている。
「だだだ大丈夫なんですかコレ!?」
近くにいた探偵社員らしき金髪のメガネ男に尋ねる。
「あいえ、ご心配なく。よくある事ですので。」
「よくある事!?」
「今度のお詫びの品を配るのは国木田くんの番だよ!前回はアタシだったからね!」
「兎も角、急ぎ戻りましょう。お騒がせしました。店長。」
「いえいえ、私達も慣れっこですから。」
まるで通常の会話のように話している。むしろこちらがおかしいかのように。
「すみません、驚かれましたよね。」
白髪の青年に手を差し伸べられる。
「僕もまだ入社したばかりですが、ここではよくある事ですから。」
「テロ組織からの襲撃がですか··········」
「あはは··········しばらく待機していれば終わります。」
「お客様、もう一杯飲んでいかれては如何ですか。お代は頂きませんので。」
「あ、じゃあ··········」
銃撃音が鳴り響く中、コーヒーに喉を唸らせるのであった。