Fate/loneliness 2 -survival plans- 作:からすまそういち
この小説は那須きのこ原作「Fate/stay night」シリーズ及びその派生作品「Fate/Grand order」
の二次創作です。
この作品を読む前に、前作「Fate/loneliness -little summoners-」を読むことをお勧めします。
また、今作は前作とは違い、登場サーヴァントの名前・クラスは最後まで明かされることがありません。それを読者に推理してもらうためのお話となっています。
もし全サーヴァントの真名・クラスが分かった方はコメントしてもらえると有難いです。
注意:執筆者はFateシリーズにわかです。原作の設定世界観及び雰囲気を壊す可能性があり、尚且つこの作品は作者にとって都合のいい概念、所謂メアリー・スーが登場しました。なんでも許せる方のみの閲覧を推奨します。(尚この物語は2019年に構想された話です)
原案 からすまそういち
執筆 からすまそういち
編集 御今士郎
登場人物
カトル・コレサドル
シャルル・レ・モーガン
キアヌ・セルフル
カカ・コーニャ
ケンネル・フェルナンデス
クリス・コープ
章
始まりの詩
一日目
二日目
三日目
四日目
五日目
六日目
七日目
八日目
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始まりの詩
――さて、では私は、今この文章を読んでいる君の名を当ててみせようか。
君の名はシャルル・レ・モーガンだ。
――私は聖杯戦争を利用してサーヴァント、メアリー・スーを召喚した。
彼女は完璧だった。私が持つ演算装置の権限の殆どを彼女に譲渡した。
――世界が変わった。
――この書物の最後のページに招待状を挟んでおいた。彼女が開催する次の聖杯戦争への招待状だ。君にはこれをもって新たな聖杯戦争に参加し、彼女の目論見を止めてもらいたい。
あとは君に任せる――
シャルル・レ・モーガンは顔を上げた。
彼は現在二十七歳。日本で現代魔術を教える高校教師である。
現在シャルルがいる世界は科学の代わりに魔術が発展しており、何にしても魔術が使われる。聖杯戦争が世間に浸透しており、一家に一騎はサーヴァントがいるような世界である。
聖杯戦争はまるでスポーツのように扱われ、世界大会も開催されている。
「アーチャー!」
「はっ、マスター。ここに」
シャルルの横でかしづくアーチャー。その者は甲冑に身を包んでいた。明智光秀ではない、左右で腕の長さが違う鎧武者。
「アーチャー、聖杯戦争に行く。やっと目的がはっきりした」
「ええ、畏まりました。我々を、取り戻しに行きましょう」
シャルルの手には切符が握られていた。
それは新たな聖杯戦争への招待状。
今、ここから始まる――
一日目
私、シャルル・レ・モーガンはしがない高校教師である。
何故かは分からないが、若い頃から日本に興味を持っており、教師をしながら日本の魔術を勉強していると、冬木市という場所で行われた聖杯戦争に辿りついた。
しかしその聖杯戦争は自身が知る聖杯戦争と異なっており、疑問に思った私は聖杯戦争について深く調べることにした。
そして、私は間宮詩の残した聖杯戦争の記録を見つける。それが始まりだった。
その記録により記憶を取り戻した私は、今度開催される聖杯戦争世界大会決勝に参加することになった(そのためのチケットは記録に同封されていた)。
世界大会決勝の開催地は名も知れぬ無人島だった。
季節は夏。私とアーチャーは台風によって便が一日ずれたために出発が遅れ、飛行機の後は近くの港から船に乗って無人島に着いた。
参加者の中で一番遅かった。そこで私は七人の男女と出会う。
一人。
眼鏡をかけたやせぎすで背の高い男だった。
二人。
やせぎすの彼の後ろで空を仰ぎながらぶつぶつと独り言を呟く奇怪な老人。
三人。
前髪で目の辺りが隠れた黒い長髪の女性で、か細い声や纏う雰囲気からはとても陰気な印象を受けた。
四人。
長髪の女性と親しげに話している女性だった。男性に引けを取らない均整の取れた体躯は、アスリートのそれを想起させた。
五人。
仏頂面で人づきあいが悪そうな雰囲気を放っている男。
六人。
修道女の衣服を身に纏い、優しそうな微笑みを浮かべる老婆。
七人。
立っているだけで絵になるような、凛とした雰囲気の青年。
彼らは昨日から島に到着しており、全員揃わないと決勝戦が始まらないため、わざわざ港まで来て私を待ってくれていたようだ。
私は一言謝ると彼らにホテルまで案内してもらった。ルールの説明があるらしい。
ホテルは横長で面積の広いホテルだった。コンクリート製の二階建てで高さはそんなにないが横幅と奥行きが長く、雰囲気は違うが形式で考えれば日本旅館に近い。
ホテルのロビーに入った私達は、どこからか響くアナウンスを聞くことになった。
「皆様初めまして。
この度、聖杯戦争決勝戦の監督役を務めさせて頂きます間宮詩と申します。
無事、参加者が揃いましたので、今回の決勝戦のルールを御説明致します。
質問や再度の説明は受け付けておりませんので、よくご了承の上、しっかりとお聞きください。
まず、基本的なルールについてはここまで勝ち上がってきた皆様ならもう既にお分かりのことでしょう。
各マスターは己のサーヴァントを使役し、対戦相手のサーヴァントを倒せば勝利。マスターはサーヴァントの補助に努める。
ですが、決勝戦はマスターにも戦っていただきます。
それも今までとは違い、リーグ戦でもトーナメント戦でもありません。
サヴァイヴァル。乱戦。皆様には自身で対戦相手を選んでいただきます。
勝利条件といたしましては、最後に残った一組が勝者となります。この勝者が現れるまで、皆さんはこの島から出ることはできません。
ちなみに、戦闘ができる時間帯には限りがございます。
夜の間にのみ参加者は他の参加者と戦う権利があります。
具体的には午後十時~午前六時までの間です。
この時間帯以外に他の参加者に攻撃的行動を行った場合、失格となります。
なお、この夜時間の間は各個室の鍵が施錠されます。夜時間の間に部屋から出ることも戻ることも許可いたしません。
また、マスターが自室にいる状態でサーヴァントが外に出ることは出来ません。外に出る場合は必ずご一緒に行動してください。
もし無理に入退室が行われようとされた場合、失格となりますのでお気を付けください。他者の個室についても同様です。
決勝戦を辞退されたい方はお手持ちの令呪端末を破棄してください。
決勝戦終了後、新しい端末をお渡しします。
なお端末が各個室のキーとなっておりますので破棄する場合はよくお考え下さい。ロビーにベッドは用意されておりませんので、ソファで一夜を過ごすことになるかと思われます。
決勝戦を辞退しても決勝戦が終了するまでは島から出られませんので、それについてもご了承ください。
最後に、サーヴァントはこの聖杯戦争の間、受肉している状態となっており、霊体にはなれませんのでそれを加味した戦法をとることは出来ません。ご注意ください。
これにて基本的なルールは以上です」
機械的な説明に私は驚いた。自分が知っている間宮詩とは違っていたからだ。例の文献での間宮の訴えも加味すると、こいつがメアリー・スーなのかもしれないと思った。
参加者は各々真剣な面持ちで説明を聞いていた。彼らは私と違ってそれぞれ予選を勝ち抜いてきている。勝敗に対しての気の入れようが違った。
間宮詩は続ける。
「言い忘れていましたが、各戦闘での勝利条件は、対戦相手の生命活動を停止させることです。さらに、失格された方はその場で処分されますので、くれぐれもそのようなことがないようにお願いいたします」
空気が凍りついた。
「……は?」
やせぎすの男が思わず口を開く。
「今、なんと言った?」
「せ、生命活動を停止させる……そう言いませんでした?」
長髪の女性は怯え気味に問う。
「勝ちたければ殺せということか」
仏頂面の男は冷静な調子だった。
「物騒な話ですね、冗談……ではありませんか?」
老婆は皆に確認した。
「冗談にしては度が過ぎている。おそらく、本当だろう」
凛とした青年は顎に手を当てながら首を横に振った。
「ええ⁉ まじ⁉ 殺し合えっていうの⁉ そんなの聞いてないよ!」
スポーツウーマンは頭を抱えた。
「……」
私は、
私は、ただ、ただただ黙っていた。
聖杯戦争が何たるかを知っている。
故に、
七人のマスターが集まり殺し合う儀式。
それが本来の聖杯戦争。それに近づいただけのこと。
だから私はさほど驚いてもいなかった。言われる前からおそらくそうなんだろうなと感じていた。だから、驚きも焦りも悲しみもなかった。
しかし、
「皆さん、落ち着いてください。私も理解が追いついていませんが、ここでパニックになれば罠にかかります」
今ここにいる彼らは被害者だ。彼らは本当の聖杯戦争を知らない。
自ら進んで死地に赴いた私とは、立場が違うのだ。
「皆さん、聖杯戦争が何かは知っているでしょう。本来スポーツである筈の聖杯戦争が、こんな異常な殺し合いになるとは考えられません。おそらく、聖杯戦争の管理委員会が行ったものではありません。これは、個人またはある思想でまとまった団体が起こしたテロ行為だと考えるのが自然です」
「何の意図があるのかは分からないが……俺もそうだと思う。決勝戦でいきなりこんなことになる筈がない。この開催地も去年までとは違ったものだ。この島に呼ばれた時点で俺達は巻き込まれていたのだろう」
凛とした青年は私に同調してくれた。彼には怯えている様子も動揺もない。
「しかし、テロというには理由が分からない。俺達に殺し合わせて何になる?」
仏頂面の男は問いかけた。
「そうですね……。私達にはお互いを殺す動機なんてありません」
老母が答えて、スポーツウーマンが頷いた。
「そこまでして聖杯が欲しいかというと、そういうわけでもないしね」
全員が戦闘に消極的であることを確認して私は胸を撫で下ろした。よかった。やはりここに集まっているのは皆話が分かりそうだ。
「ばかばかしい。俺はこんなのには付き合ってはいられないな」
やせぎすの男が、自身の令呪端末を振り被って思い切り床に叩きつけた。
叩きつけられた端末は鈍い音と共にバウンドしこちらに滑ってくる。
その画面は酷く割れ、令呪が表示されているか判然とせず、やがて塵のように消えた。
令呪端末とは、本来聖杯戦争で体に刻まれる令呪の代わりになるものだ。画面には令呪が表示されており、使用すると一画減る。
使用感は令呪と大して変わらない。体に刻まれないので令呪端末を誰かに渡すだけでサーヴァントの契約が移動する。とても大切なものだ。
彼はそれを、目の前で叩き割ってみせた。
その後、老紳士を指差して話し始める。
「俺の名前はカカ・コーニャ。そこの老人が俺のサーヴァント。キャスター、エウクレイデスだ。俺は命を賭ける気はない。お前らもそうではないだろう。なら、お前らもさっさとこんなもの捨ててしまえ」
「でも、それがないと部屋にも入れないんですよ……? それに、部屋の中にいないと狙われるかもしれないじゃないですか」
心配そうに話す長髪の女性に対し、カカは強く主張する。
「俺はこのロビーで過ごす。参加資格を無くしたマスターなど殺す価値もない。こいつも戦闘には一切役に立たないキャスターだ。ここまで来たのも偶然でしかない。誰も狙う利がない。逆に、今ここで端末を放棄しない奴らの方がおかしいと俺は思うがな。何故なら、こんなものを持ち続けるということは、するつもりが少しでもあるということだろう? ――殺し合いを」
「……」
カカの語気に押され女性は黙り込んでしまった
「ふん、怯えるが故に手放せなくなるが、それは逆に開催者の思惑の中というものだ。そうやってフラフラとしていると呑まれるぞ」
「悪いが、俺は令呪端末を手放さない。殺し合いなんてするつもりは毛頭ないが、だからといって初手で防御手段を失うわけにはいかない」
仏頂面はしっかりと言い切った。それに青年も賛同する。
「コーニャ、君は思い切りが良すぎる。君の言っていることは正しいが、誰しもが他人を疑わずには生きられない」
「わ、私もちょっと怖くてできないかな……あはは」
「まあ、お前たちはそうやって怯えているがいい。俺にはもう関係ない話だ。だが、これは訊かせてもらう。お前達、そもそも令呪端末を所持しているのか?」
「――え?」
「どういうことですか?」
私は問いかけた。令呪端末なんて、マスターなら全員持っているものだ。
私の問いにカカは答える。
「令呪端末の譲渡にはマスターの承認が必要だ。しかし、みすみす端末を渡すマスターはいない。つまり、令呪端末を持った者こそがマスターということだ。お前達の令呪端末を見せてみろ。もしかすると、既に俺達を謀ろうとしてサーヴァントを紛れ込ませている輩がいるかもしれないしな。端末を見せるだけならできるだろう?」
「……そういうことなら、まあ」
長髪が端末を差し出すように見せた。それに合わせ、エウクレイデスとアーチャー以外の全員が端末を取り出した。
「これで少しは信用してもらえた……かな?」
「どうだかな。サーヴァントを見せないように部屋に待機させて自分だけここにいる時点で怪しいが」
「仕方ないじゃん、それも大会の有利不利に関わってくるんだしさ。まさかこんなことになるとも思ってなかったし……」
「じゃあ私とカカさん以外の方は自室にサーヴァントを待機させているということですか?」
私の問いに皆が頷いた。
「単純に、俺達はトーナメントだと思っていたからな……。できるだけサーヴァントの情報は伏せておく。余計に開示できない状況になったしな」
「なるほど……。言われてみればそうですね」
困った。この聖杯戦争で倒すべきはメアリー・スーだ。彼らではない。
だから彼らとも連携を取りたいが、この状況、それどころではなさそうだ。
「じゃあ、せめて。名前を教えては頂けませんか? お互いを呼びにくいでしょう。私の名前はシャルル・レ・モーガン。こいつは私のアーチャー。真名は出せませんが、アーチャーです」
アーチャーも紹介しながら私は名前を述べた。アーチャーも「ただのアーチャーとお呼びください」と頷いている。
「……私の名前はクリス・コープ」
スポーツウーマンが言う。
「じゃあ、わたしも。渡島切華、と言います……」
手を上げて長髪の女性が言った。
「ケンネル」
仏頂面の男。
「アグネスとお呼びください」
老婆。
「カトル・コレサドルだ」
青年。
「皆さん、ありがとうございます。これからどうなるかは分かりませんが、一緒に頑張っていきましょう」
私はそう締めくくるが、反応を見せる者は少なかった。
空気が重い。
そりゃそうだ。私達は殺し合えと言われているのだから。
皆、相手が敵に見えているに違いない。
「えーっとさ、気分入れ替えて外に出ようよ。折角ビーチがあるんだし。夜になるまでは誰も手出しできないんだから、ね?」
空気に耐えられなくなったのか、クリスがそう提案した。
皆もここで押し黙っているよりかはいいと考えたのか渋々同意して、外に出る。
ホテルの外はすぐにビーチに繋がっている。気分転換にはいいかもしれない。
(さて、これからどうしたものか。とりあえず、バラバラな現状を打開しなければならない。皆にこれは殺し合いじゃなくて協力するものなんだと、どう言えば伝わるだろうか……)
この聖杯戦争で、自分だけが真実を知っている。だから、行動を起こさねばならないことは分かっていた。でも、それが何かがはっきりと見えてこない。
「あの、すみません……」
呼ばれた方に目を向ける。
渡島さんだ。私に何の用だろう。
「なんですか?」
私が問いかけると、渡島は私の右手をとってその上に貝殻を乗せた。
「これ……いりますか?」
上目遣いで問いかける彼女に、私は戸惑いながらも「けっこうです」と答えた。すると、彼女は残念そうに頷き、アーチャーにも同じようにして問いかけた。
「いえ、私も遠慮しておきます」
アーチャーも断ると、彼女はさらに残念そうに項垂れて、貝殻を手に持ってふらふらと去っていく。
「マスター。貰ってあげた方がよかったのでしょうか……」
アーチャーが心配そうにしている。私も少し罪悪感があった。
渡島が去ると、今度はクリスが駆け寄ってきた。
「あの子、皆にああして貝殻を配っているんだけど、貝殻好きなのかな? 可愛い趣味ね!」
「貴女は受け取ったんですか?」
そう訊くと彼女は嬉しそうにもらった貝殻を手に持って頷く。
視界の端でカカが渡島に断りを言っている様子が見えた。
「シャルルさんはさ、泳がないの?」
「いえ、水着持ってきてなくて……」
「私の貸してあげるから! 一緒に泳ご!」
「えっ?」
クリスに手を引かれて思わず振り払う。
「だ、大丈夫です。私は――男なので」
「へ? あっ……ごめんね! そうだったのかー! あっはっは!」
誤魔化すように頭に手を当ててクリスは笑ってみせた。
女に間違われたのは久しぶりだ。歳を取ってから頻度は少なくなったけれど……まだ女っぽいのかなあ?
私は苦笑いしながら、去っていくクリスに手を振った。
――でも、アイスブレイクには丁度よかったと思う。
この調子で皆と仲良くなっていったら、協力してくれるかもしれない。
私はそう思った。
それがただの幻想だと、思い知るまでは。