Fate/loneliness 2 -survival plans- 作:からすまそういち
四日目
「『やっぱり死んでて草』」
ユーは呟いた。
四日目の朝。
ホテルに残っていた一同は、ホテルの前でシャルル・レ・モーガンとアーチャーの死体を発見する。
彼らの死体もこれまでと同様、目を覆いたくなるような死に方だった。
「ユークリッドさん、死者に対して言う言葉使いではありませんよ。彼らは私達を守ったのです」
アグネスはそうユーに諭した。
「『いや守り切れてないし』『不要に死体が増えただけじゃん』『人殺しが二人いるならそいつらで殺し合わせればよかったのにね』」
不満そうに口を尖らせてユーは言う。まるでお面のようだった顔に、表情が付くようになっていた。
「こ、これからどうしよう……。まだ誰が犯人かも分かってないのに」
クリスは両腕を抱えるように押さえた。
「『ま、意思くらいは継いでやろうかの』『とりあえずこれからは不用意に外に出ないことね』」
ユーは踵を返す。
「あ、あの。なんだか、昨日よりも流暢ですね」
「『ん、ヴァージョンスリーだからね』『毎日修正してんのよ』」
渡島の問いに軽く答えてユーはホテルに戻っていった。
ホテルに戻ってロビーの時計を確認する。時刻は六時。
(二人死んで八時から六時になったのか。成程。六人しかいないのね)
ユーは走り出した。マスターの部屋があるエリアに向かう。
そして、亡くなったマスターの部屋に入り、物色し始めた。
「『他人の部屋に入ってはいけないのは夜間だけ』『つまり、今がチャンスなのよさ』」
ケンネルの部屋に這入った時だった。
冷蔵庫から微かに異臭がする。
今のユーには五感も実装されていた。きちんと判別できる。
ユーは恐る恐る冷蔵庫の扉を開けた。
すると、中から出てきたのは男の死体だった。
「『うわぁ』『誰だこいつ』」
その男に見覚えはない。島に来た時からこんな男はいなかった。
しかもその男もまた酷い殺され方をしていた。まず、下半身がない。上半身には獣か何かに食い散らかされたように痛々しく歯形がある。
ユーはその男の写真を録って、他にも何かないか探し始めた。
――昼過ぎになって、ユーが得られた収穫は謎の男の死体だけだった。
(……まあ、進展があるだけマシ、じゃな。さて、ではそろそろ行こうかの)
腰を上げて彼女はホテルを出る。ホテル出てすぐのビーチ、その横に入り江があった。
その入り江の近くに分かりにくいが洞窟があった。ユーはそこへ向かう。
洞窟に入るとすぐに、それはあった。
キャスター、エウクレイデスの上半身だけの死体。
それが洞窟の天井を見つめるかのように横たわっている。
(――おじいちゃん)
それは、ケンネルの部屋で見つけた死体とよく似ていた。
下半身がなく、上半身は獣に食い散らされた痕がある。
「『仇は多分取れないけれど、』『あとは任せて』」
この死体を見つけてから一日が経っている。誰にも言っていなかった。
この死体を見るのは自分だけでいい。そう決めていたから。
「――その方とお知り合いですか?」
洞窟の外。
茂みの中からローブを着た男が現れた。港で会ったマスター達とはどれも違う容貌だった。
右手に長槍も持っている。明らかな得物だった。
「『誰じゃ』」
「警戒しないでください。戦う意志はありません」
男は手に持つ長槍を立て、槍を掌で支えるようにしながら両手を上げた。
「『――お前か』『おじいちゃんを殺ったのは』」
「違います。私ではありません。私は、彼を助けられなかった。彼は私の目の前で、殺されたのです」
「『‼』『ではお前、』『犯人を知っているのか!』」
「ええ、そいつは獣のような男でした。自身の姿を狼に変え襲い掛かり、肉を貪り喰らう――私のマスターもそいつに殺されたのです」
その話を聞いて、ユーはケンネルの部屋にあった男の死体を思い出す。
「『そう、』『だったのか……』」
「何度殺しても奴は復活し、強くなりました。私の力では今の奴に敵いません。私はその場に出くわしても逃げることしかできなかった。だから、せめてこうして遺体に懺悔でもと、通っているのです」
「『疑って、』『ごめん』」
「いえ、救えなかったのは事実なのです。私が、奴を手遅れの状態まで引き上げてしまった。――彼とはお知り合いですか?」
「『……』『親戚みたいなもんだよ』」
「そうでしたか……」
沈黙が流れる。
「『あのさ、』『これからどうするの?』」
「一矢報いよう、とは考えています」
「『じゃあさ、』『協力しようよ』『お互い大切な人、』『殺られてるんだからさ』」
「ええ、こちらこそお願いします」
その言葉を聞いて、ユーは男に近づいて右手を差し出した。
「……」
しかし、男に反応がない。
「『握手』『これで仲間ね』」
「あ、ああ。そうですね」
男は左手を前に出した。
ユーの右手と男の左手がぶつかる。
「『なに』『あんた』『眼、見えないの?』」
「す、すみません。今は白内障を患ってまして……。見えない感覚を忘れてしまっているのです……集中しないと相手の動きが読めなくって」
気恥ずかしそうに手を頭の上に乗せながら男はそう言った。
「『……そう』『ならいいんだけどさ』『とりあえず』『これでお仲間ね』」
ユーは少し訝しげに言いながらも、彼と握手した。