Fate/loneliness 2 -survival plans- 作:からすまそういち
五日目
今日は三人の死体が発見された。
二つは首が切断されている死体。もう一つはクリス・コープの死体だった。
首のない死体の片方は渡島切華だと思われた。首がどこかに行ってしまって確認はできないが、渡島の姿は朝から見えない。死体の様相からしても、渡島で間違いなさそうだった。
問題はもう一つ。もう一つの死体は昨日洞窟で出会ったランサーのだった。彼の首は近くに落ちており、確認もできている。
「『いや、お前も死ぬんかい』」
発見した時、思わずユーは声を漏らした。
ホテルに戻ったユーはソファに座り、手を顎に当てて考える。
(三人も死ぬのか―。これはちょっと予想外だな……)
三つの死体には共通点がある。
まず、死に方。
クリスはカトルと同じく脇腹に刃物を刺されて死んだようだが、あとの二つ。
この二つは綺麗に首が切断されていた。
一流剣士が業物で首を一閃したかのような鮮やかさが見える。断面にズレがない。一発で首を落としきったということだろう。首だけを綺麗に落とすということは常人にはできまい。
そして、場所。
首のない渡島の死体は森の中にあった。木の下でうつ伏せに倒れていた。
しかしもう一つ。
ランサーの死体はクリスの目の前で倒れていた。
クリスと同じ場所で死んだ可能性が高い。
(死体の様相の共通点があるが場所にはない。逆に場所の共通点があって死に方の共通点がない。なるほどね)
ユーは何かに気付いたようだった。
「『なんだかんだ言って皆殺る気マンマンだったってことじゃん。怖いのう』」
「あの、また死体が出たとのことですが……」
アグネスがホテルのロビーに来る。
「『ああ、アグネスさん。今日は三人死んだよ。渡島とクリス。あとは……知らないおっさん』」
「え、ええ? そんなに亡くなられたのですか」
「『そう。あそこの時計を見て』」
ユーはロビーの壁横にかけられている一つの時計を指差した。
「『三時、ってなってるでしょ? あれはこの島にいる残り人数を表しているのよね。昨日は六時だったから、三人死んで三時。今日の朝の段階で三時だった。だから死体を見つけられたってわけ』」
「はあ、そうなのですか」
「『でさ、残りは三人なのよ。そう、俺とあんたともう一人。でもこれじゃあさ、数が合わなくない?』」
「……いえ、数は合ってるはずですが」
「『惚けてんじゃねえよババア。合うわけがねえんだよ。外にはキャスターを殺した化け物がいるんだからさ。ねえ、アグネス。儂が知らないおっさんって言った時、あんたはそれに対しての反応をしてなかったのう? 知らないおっさんだよ? 初日に港で参加者は全員顔を合わせたじゃないか。知らない顔なんて、あり得るのかい?』」
「――! いえ、しかし。あり得ますよ。貴女があり得たのだから。港で会った方達は顔を合わせたとしても、そのサーヴァントの顔までは知りません――」
「『そう、その通り。カマかけてみた。あんたけっこう嘘つくの下手だね。顔に出てるよ。やっぱりあんたは一人だ。既に相方を失っている。そうじゃろう?』」
「――やはり、隠し通せは、できませんでしたか……」
「『ま、でも実は問題はここから。この島に残っているのは三人。相方を失った俺達二人と、これもまた相方のいない敵が一人。聖杯まであと少しってわけだよ。だけど私達が勝つには外にいる獣を倒さなきゃいけない』」
「協力しろ、ということですか?」
「『いや、違う。あんたは信用ならない。ここまで来て裏目を引きたくない。儂が言いたいのはここで儂と決着をつけるか、それとも儂が外の獣を退治してから決着をつけるか。そのどちらがいいか訊きたいだけだよ』」
「正直に言うと、私は戦える人間ではありません。私の勝率が一番高い選択肢は後者でしょう」
「『意外と計算高いね。やっぱりあんたはちょっと怖い。じゃあ、決まり! あんたは今日大人しくする。私が外に出る。そして翌日にタイマンだ。いいね?』」
「……分かりました」
アグネスは静かに頷くと、自室に戻っていった。
(さて、と)
立ち上がり、ユーはロビーに置いてある姿見の前に立つ。
「『か、可愛いぃ~!』」
体を揺らして服を満遍なく身ながらポーズも決めていく。服装はロリータメイド服を意識した。細部までフリフリが付いている。
夜通し頑張って作った服だった。
(顔もイケてる。イケてるのう!)
顔をペタペタと触りながらユーは悦に浸っていた。
その姿はもうただの人形ではなかった。
相変わらず髪のウィッグ感だったり顔ののっぺり感だったり気になるところは少しあるが、最初の人形感マシマシの姿と比べると、かなり等身大の美少女フィギュアに近づいたに違いない。
「『こ、これは売れる! ヒット間違いなし! 俺達のモデリング技術も爆上がりだな! はっはっは!』」
ウインクしながらピースする。表情も完璧。完全に人間の動きをトレースできている。
(残る問題はこの状況だけじゃな……)
本当はこんなところに来るつもりはなかった。
ユーはユーチューバーとして活躍し、スパチャで生計を立てるつもりだった。
そのための売名行為として聖杯戦争に出場し、細々と頑張ってきた。
最初から優勝するつもりなんてない。
二位か三位かそこそこの順位を取って、ヴァーチャル美少女サーヴァントユーチューバー「ユークリッド」としてデビューするつもりだったのだ。
華々しくデビューした後はリスナーから金を巻き上げてウハウハの生活をエンジョイする筈だった。
しかし、
「『デビューまでかなり遠い道のりになってしもうた……』」
ユーは呟く。
カトルとシャルルの顔が頭に浮かんだ。
彼らは気持ちの良い青年だった。
自分とは違って、世の為人の為と行動できる「良い奴」だったに違いない。
――彼らの死に様を思い出す。
(……分かってるよ。次は俺の番ってことだろ?)
拳に力が入る。
(――優勝した方が売名には都合がいいもんね)
「『自分の敵討ちもあるんだ。このままのし上ってスターダム一直線じゃ!』」
天高く指を指して彼女意気揚々とホテルの外に向かった。