Fate/loneliness 2 -survival plans- 作:からすまそういち
六日目
アグネスはホテルの前で上半身と下半身が分断されたユーを発見した。
これもまた死に方だけでみればグロテスクに思えるが、彼女の場合はそうは見えない。
体が人形なので血は流れていないし、割れた断面からは木目が見えるだけだ。
折れた人形が地面に横たわっている。
ただそれだけのように見えた。
それでもアグネスは彼女の前で、胸の前に十字を切り、祈りを捧げた。
終わるとアグネスはロビーに戻る。
ロビーの時計は三時を差していた。
「――え?」
七日目
朝。アグネスがロビーに行くと、ロビーの時計は一時を差していた。
(ユークリッドさんの言う通りならば、聖杯戦争は終わっているはず。なのにまだ終わっていない――?)
アグネスはホテルを出た。そして他の参加者が残っていないか探し始める。
日が落ちてもアグネスは捜索を続けていた。
探している最中、森の抜けたところに草原があると発見する。
その草原で、見合いながら立ち尽くしている二人の男の姿があった。
その男達の姿を見て、アグネスは思わず声をあげる。
「カトルさん⁉」
立ち尽くす男の片方は二日目の夜に死んだはずのカトル・コレサドルだった。
カトルは胸を相手の右腕に貫かれ立往生している。
彼は両手に得物を持っていた。左手は一メートルを超えるくらいの十字架を剣の様に反対に持って握りしめ、右手には草花が編み込まれて造られた棒を持っており、それは相手の左胸を貫通していた。
その棒で心臓を貫かれたであろう男は初めて見る容姿だったが、身長や体格がカトルによく似ている。
しかし、その容貌に現れた獰猛さは彼とは似ても似つかない。凄まじい表情だった。
目は見開き、口は大きく開いて歯が剥き出している。今にも叫び声が聞こえそうだ。
男の印象を一言でいうなら、狼。
荒れ狂う狼だ。狼がカトルの胸を貫いている。そんな風にも見えた。
そんな二人とも、立ったまま亡くなっている。
戦闘中に相打ちになったのかと、アグネスは思った。
「何故カトルさんが……? 私達は死体も、それが消滅するところも見たはず。なのに……」
アグネスは考えたが、答えは出なかった。
サーヴァントの宝具によって死を偽装したか生き返ったか、そんなところだろう。
今からそれを考えたところで答えは出ない。
むしろ今、考えるべきは。
「これで聖杯戦争は終わったはずです。三人が一人になった。
間宮詩さん! 何処かで私達を見ていたのでしょう!
ならばもう聖杯戦争は終わったと分かるはずです!」
空に言い放っても返事はなかった。
ただ、質問に答えるようにカトルと男の死体は光の粒になって消えていく。
(まだ、終わっていない――そういうことなのですか)
アグネスはどうすることもできず立ち尽くしていた。
そして、夜時間が――始まる。
八日目
十二時を過ぎた頃だった。
ホテルに戻ったアグネスは、ロビーでソファに座ってお茶を飲んでいた。
しかし、心中は穏やかではない。
彼女にとって初めての夜時間。
戦う理由は既に失っている。
彼女がこの島にやってきたのはマスターの命令があったからだ。
マスターのために仕方なく戦ってきた。
マスターのために狂ってきた。
彼を失った今、彼女に戦う理由などない。
――ホテルの扉を誰かがノックした。
心臓が震える。
ホテルのドアが、開かれた。
「よう、久し振り」
扉を開けて中に入ってきたのは、知らぬ顔の男だった。
「――初めまして」
アグネスは言った。
「なんだ、えらく他人行儀だな。俺達、
「いえ、貴方とはここが初めてです」
「つれないねェ。俺は嬉しいんだぜ? 最後にこうして対面するのが聖人なんてな。光栄だぜ」
「私は聖人などではありません」
「謙遜するなよ、ニンゲン。折角もらった栄誉じゃねえか。もう少し誇ってもいいんじゃないか?」
「私は、私はただのアグネスです」
「――そうかい。じゃあアグネス。早速殺し合おうや。もう俺達しかいないんだから、なあ?」
「……確かに。話し合いはできないようですね」
アグネスは立ち上がった。
これまでも予選で強敵達を倒してきている。
命懸けは初めてだが、なんとかなるだろう。
「枷」を外せば、こんな自分でも戦えなくはない。
アグネスはそう考えていた。
「はっ」
男の覇気が場を支配する。
彼の手には剣が握られていた。
そして、彼に後光が差す――
「こ、この光⁉ 貴方は、いや、
「気付いたかい?」
「ち、違う。そんなはずはありません。こんなところに降臨なさるはずが――お前は、誰だ!」
「俺か? 俺はただの――巨人だよ」
彼は剣を薙ぐ。
それは無慈悲にアグネスの首を、刈り取った。
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聖杯戦争は終結した。
「やはり、貴方が勝ったようね」
彼女は言った。
「当たり前だろ。俺を誰だと思ってんだ」
彼は答える。
「じゃあ、貴方の仕事は終わり――」
「いや、まだあるんだな、これが」
「?」
「お前は優勝者を欲している。自分の身代わりが欲しいからだ。でも、優勝者には景品が必要だろ?」
「――まさか」
「わざわざ『聖杯戦争』なんてくくりにしてるお前が悪いんだぜ。優勝した俺には聖杯を持つ権利がある。そして――」
彼は右手を前に差し出す。その上に落下するように聖杯が現れた。
「――やめろ!」
「この聖杯を使って、俺は俺の世界を作る。
お前の好きにはさせないぜ。メアリー・スー」
彼は聖杯を掲げ、笑ってみせた。
「あまり俺をナメるなよ。
お前が物語を『終わらせる』っていうんなら、俺が物語を『始める』。
お前が物語を『始める』っていうんなら、俺が物語を『終わらせる』。
ただ、それだけだ。
それが俺ってやつなのさ」
《Fate/loneliness 2 -survival plans-――了》
あとがき
はい、あとがきです。からすまです。
いやー、自分でもびっくりですね。
この話を読んだ方も、驚いたのではないでしょうか。
今回の話を例えるなら、「解決編のないミステリー」ですかね。
そんなことやって大丈夫なのか? やっておいてなんですが、少し心配です。
本当は、初期の構想では解決編もやる予定でした。
しかし、プロットを書く段階でとある事件が起きまして。
死んではいけない人が死んでしまったんですね――
私自身も驚きました。
死ぬ予定ではなかったんです。
本当に。
最初はそのつもりはなかった。
その所為で今回の話から解決編はなくなり、フェイトロンリネスという作品は二部構成から四部構成に膨れ上がることになりました。
今回の話の解決編は第四部でやることになります。
なので、四部が公開されるまでは今回の話で一体何が起こったのか、それが語られることはありません。
各サーヴァントの真名・クラスも伏せましたので(一部を除く)、読者の皆様にはどれがなんというサーヴァントで、どんなクラスなのか推理してもらう形になりました。
多少の知識があれば残りは推理で全員分解けるようになっていますので、挑戦してみてください。その予想をコメントに書いてもらえれば私は嬉しいです。
さて、それに関わることで、実はとあるサーヴァントのクラスが最近まで不明だったんですね。作者の私ですら分かりませんでした。ですが、2021年になってようやくクラスが判明しました。よって今の状況ならちゃんと全員分のクラスを当てることが可能になりました。
さらにヒントを出すのなら、クラス被りがあります。これはただの聖杯戦争ではなく、「勝ち上がってきたサーヴァントが集った」ものなので。そこも考慮してもらうと当てやすいかと思われます。
いよいよ二部が終わり、三部が始まります。三部からは「彼女」が出ますよ!
上手く書けるかは分かりませんが、こうご期待!