当たったお金は全部ウマ娘にぶち込みました。未だにキタサン無凸なんじゃい。
1月第3週。
激闘が繰り広げられた有マ記念から3週間後。
その同じ舞台である中山競バ場で、とある異変が起こっていた。
『さあ最後の直線に入って抜け出したのはサンボーイ。リードが2バ身3バ身4バ身……ま、まだ広がっていく!?』
先頭集団から飛び出した1人のウマ娘が、後続を千切ってグングンと加速していく。
小柄な体躯を目一杯に使って飛ぶように走っていくその姿は、とてもデビュー2戦目とは思えない自信に満ちている。
『先頭は完全にサンボーイ! 2着以下を大きく引き離して、いまゴールイン!』
最後は後方との差を確認してからスピードを緩めるほどの余裕ぶり。
それでも結果は2着と7バ身差の圧勝。
メイクデビューでの大差勝ちから、格上クラス相手でも十分に戦えるだろうと1番人気に支持された。
その結果は期待通り……いや、期待以上。
「ほ、本物だ……」
誰かが溢した言葉は、ざわめきとなってスタンド中を右から左へ伝わっていく。
クラシック第一弾『皐月賞』。
そのレースと同じ舞台、中山2000m。
G3レース『京成杯』での圧勝は、これからの快進撃を予感させる素晴らしいものだった。
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2月3週。
東京競バ場に舞台を移して、そのウマ娘が出走したレースは『共同通信杯』。
距離は1800m。デビューから走ってきた2000mから200m短縮されたレース。
前2走の快勝が評価されて、ここでも1番人気。
『第4コーナーを過ぎて長い直線に入る。
先頭は依然としてコサックステップ、サンボーイは2番手の位置まで上がってきた。しかしここから高低差2m、長さ200mの坂が待ち受ける!』
最後の直線が短い中山競バ場とは大きく異なる長い直線に加えて、名物の『だんだら坂』は初めて府中を経験するウマ娘には難敵となる。
パワーのないウマ娘はここで大きく失速して前に届かないこともしばしば、なのだが──
『コサックステップ頑張った! 先頭は入れ替わり今度はサンボーイ!』
いともアッサリ坂の途中で先頭を逃げていたウマ娘を捉えると、そこから更にグイグイと加速していく。
2着以下を3バ身突き放し、ここでも段違いのレースっぷりを見せつけた。
「サンボーイ、今1着でゴールイン! 長い直線も問題にせず、これで3戦3勝だ!」
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3月2週。
舞台は再び中山競バ場。芝2000m。
今回のレース『弥生賞』は、来月のG1『皐月賞』に向けたトライアルレース。
1月2月はあえて休養や調整に宛て、このトライアルレースから出走してくる有力ウマ娘も少なくない。
ここまで圧巻のレースをしているサンボーイが、他の有力候補たち相手にどう立ち回るのかが注目された。
1番人気に指示されたサンボーイだが、これまでのような絶対的なものではなく、2番人気のウマ娘とはあまり差がなかった。
それも当然、2番人気は去年の12月に行われたジュニア級のG1レース『朝日杯FS』で堂々の優勝を果たした猛者。
むしろ2番人気であることがおかしいくらいの実力を誇るウマ娘だったのだ。
さらに不安材料として、この日の天候は朝から降り続く雨。バ場は不良状態。
サンボーイにとって初めての不良バ場でのレースとなってしまった。
さすがのサンボーイも、これまで通り楽々の快勝というわけにはいかないだろう、というのが大方の見方だった。
だったのだが――
『さあ最後の直線に入って今日も抜け出してきたのはサンボーイ!』
ぬかるんだ足元など知ったこっちゃないと言わんばかりに、今日も好位からアッサリと他のウマ娘を置き去りにしていく。
『サンボーイ、後続を完全に突き放して今、ゴールイン!
圧勝です! 大差勝ちです! これはタイムも素晴らしいものが、うわぁ……』
出たタイムは、とても不良バ場でのレースだったとは思えないようなもの。
前年の良バ場で行われた同レースの記録とわずか0.5秒しか違わない。
誰かが言った。
バ場状態の良し悪し関係なく走り切れるなんて、まるで空を走っているみたいだと。
また、誰かが言った。
小柄な体躯を目いっぱいに使って飛び跳ねるその走り方は、まるで宙に浮いているようだと。
そして翌月。
某人気雑誌に書かれた煽り文句が、サンボーイの二つ名として広く認知されることとなる。
【小天バ】
ちなみに当の本人からは「ちっちゃくないもん!」とたいへん不評であった。
サンボーイ
耳のこと 付け根の裏側をコリコリとマッサージされるのが大好き
尻尾のこと 毎晩、同室の妹とブラッシングし合っている
家族のこと 4姉妹の長女。小さい時はママの膝の上でレースの映像を見るのが好きだった。