TS異世界転生早死師匠ポジRPG   作:クルスロット

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そろそろ夏も終わりですね。


第10話 ハオの日帰り冒険記

 

 「たしかこの辺だったわよね?」

 

 古い記憶、白く輝く画面の中を思い出しながら私は、壁をなぞる。軽く叩いて、響きを確かめる。特に変なところなし。ぺたぺたとそこらを触れてみる。

 ああ、ここね。目当ての場所を見つけた私は、軽く壁を押し込んだ。

 

 「御開帳〜〜。こういうのをズル(チート)っていうのかしら?」

 

 私は、シルヴァとスーに、冒険者初心者講習の受講をするように言いつけたその日、〈ユーフォルビア〉の近郊に広がる森林地帯、その一角にある遺跡にやってきていた。

 ほとんど森に埋もれていて、誰にも見つからず手つかずの、いずれ朽ちていく場所。地上から見えるのは、柱の名残とか建造物の間取りくらい。生活の名残は去って久しい。

 年代は、最初の魔王の頃だったはず。

 ここは、ゲームの序盤では訪れることのできない場所。理由は簡単。序盤だと敵が強く、何より体力が保たないから。

 

 「ま、私は別だけどね」

 

 そう、私なら別だ。私なら一人でもここまで来れるし、立ちふさがる魔物を斬り捨るのも簡単。

 遠い昔には、何かの建造物があった場所の床に隠されていた地下室に入り込んで、崩れかけの通路や太い根に塞がれた通路を抜けるのは、余裕。

 そして、こんな風に、昔々の金持ちが作った隠し通路の中の隠し通路を発見するのだって訳もない。

 執念を感じる作りよね。

 

 「一人で来てよかった。こんなの気持ち悪いもんね」

 

 誰が見てもこんなところに突然来て、こんなことを始めるのはおかしな人のカテゴリーに入る。

 自分でもそう思うから尚更他人ならそう感じるはずだ。

 しかし、一人だとどうしても独り言が多くなってしまう。昔からこうだったかしら。分からない。思い出せない。

 しばらく、1人でいなかったから。こうして単独で、危険に飛び込むのも久しぶり。

 

 「私、寂しがり屋になっちゃったのかしら」

 

 苦笑。元々、私という人間は、そうなのかもしれない。

 前世の記憶がこのゲームしか思い起こせない私は、きっと一人で部屋にいるのが大好きだったんだ。

 画面の奥に広がる世界は、友達で家族、そして、恋人。

 リアルで人と付き合えない昔の自分が招いたこと。

 

 「それでよかったのなら、きっとそれでよかったんだと思うわよ。私」

 

 遠い過去を私は慰める言葉を作ってから新たに開いた、何かの生き物が開けた口のような印象を感じさせる扉の向こうへ踏み込んだ。

 

 「やっぱり暗いわね」

 

 とりあえずの感想はそれ。明かりがない。長い時間など物ともせず生き残った場所は、小さな隙間一つ許していなかった。

 風も光も入り込めない、重く、粘つく闇が通路を満たしている。

 これも序盤で来る意味のない理由の一つ。明かりの一つも持たずに通り抜けるのは難しい。

 火を持てばいいのだけれどこの通路で火を灯すと呼吸分の酸素が無くなってしまう。

 ものの数分で体力が尽きてゲームオーバー……というのが準備をせずにここに入り込んだ者の末路。

 ま、そんなこと知ってるけどね。

 

 「タラララ〜ン」

 

 自前の効果音を口ずさんで、腰のポーチから取り出したのは、円柱型の魔道具。早い話が懐中電灯。魔力を込めると明かりが点く。それだけの機能だけど魔道具ってだけで結構値が張る。

 ゲーム序盤で買うには効率が悪い。これは、冒険者時代に買ったもの。

 暗闇に向け、魔力を流すと明かりが点いて、闇を丸くくり抜いた。外から吹き込んだ風が埃を舞い上げている様子が照らされている。

 うん、昨日試した通り問題なしね。

 その先には、通路が続いている。闇が濃すぎて、光を通さないから先の様子は伺えない。

 まるで行き止まりなんてないみたい。

 

 「行きましょうか」

 

 自分を鼓舞して、私は通路を進みだした。

 通路の中は、闇と同じで空気も重い。魔法で呼吸の補助をする。大気を司る月の属性はこういうこともできる。

 硬い壁と床が形作る狭い通路は、足音がよく響く。目的地はこの通路の端にある。もうすこし歩く。

 魔物がいればあっという間に駆けつけてくるだろうからきっとここには、過去に置いていかれた空気くらいしか残っていない。

 なにより今まで私の足跡しかない。薄く積もった埃は、私が通った跡しかない。

 ここには、誰もいない。誰も戻ってこない。

 誰かの為に、扉を閉ざしていたのに。 

 

 「ほんと寂しい場所」

 

 ただただ続く通路を私は、歩いた。時折あるドアの前を通り過ぎていく。

 この中には、目的のものは無くてあるのはトラップだけ。入るだけ時間と命の無駄遣い。触らぬ神にはなんとやら。

 作った人は、ほんと性格悪いわよね。

 とかなんとか考えながら歩き始めて、だいたい5分くらい経った。

 

 「ここでよかったわよね」

 

 記憶を辿って確かめる。ええ、間違いないわ。ここであってる。

 通路の突き当り。右にまだ通路が続いてる。何もないつるっとした壁が私の懐中電灯に照らされている。

 ちなみに右の奥には、罠があって、地下深くに落とされて死ぬ。生き残っても基本登れないので死ぬ。

 

 「えーっと……」

 

 懐中電灯の光を頼りにして、私は、入り口を開けた時と同じように壁を触ってみる。

 ゲームだと調べればいいんだけどそういうわけにもいかない。ここは、地道にやっていこう。ぺたぺたそこらを触れてみる。

 隠されたスイッチを見つけたのは、それを押し込んだ時だった。

 壁の一部がガコンと音をたてて、凹んだ。入り口と同じ仕組み。

 

 「しめしめ」

 

 この奥に、目的のものがある。そう思うと私は、笑みを浮かべてしまった。

 黒く塗りつぶされた部屋に懐中電灯を向けてから、扉の向こうへ私は、躊躇いなく踏み込んだ。

 罠がないのを知っているからこその躊躇いの無さだった。

 隠し扉の先には、部屋がある。棚が並んでいて合間に通路がある。前と左右。やはり闇がある。

 私の探しものは、この棚のどこかで飾られている。深い眠りについている。誰かの手に渡るのを待っている。

 入り口付近を探してみたけどガラクタばかりで、捜し物らしき姿は見当たらない。 

 

 「奥の方も探すしかないか」

 

 魔物を殺して手に入るたぐいであればよかったのに。私の口から愚痴がぽろっと出た。分かってたことだけどこんなに面倒くさいことになると思わなかった。

 とりあえず、左右どちらかの端を目指して、そこから順繰りに見ていこう。

 

 「……なに?」

 

 その時、私の顔を風が撫でた。微風。埃と生臭さを孕んだ風。決して良いとは感じられない風が部屋の奥から流れてきた。

 腰に手をやる。そこには、私の愛剣(ロングソード)がいつも通りにある。

 いえ、あったというべきね。

 

 ――抜刀。反射と魔法。2つの融合が私に、”それ”の迎撃を可能とした。

 

 斬ったものがぼとりと生々しく床を打つ音がした。

 ロングソードを鞘に収め直すのと同時だった。

 からんと自由落下した懐中電灯が床を打つ音が私の耳に届いた。

 そのままコロコロと転がって無作為に光が闇を払っていって、棚の足にぶつかってから懐中電灯は、回転を止めた。

 

 「これは……」

 

 懐中電灯が偶然向いた先、そこには私が今斬り払ったであろうものがあった。

 

 「手……?」

   

 青白く、ぬめった手が懐中電灯に照らされている。ぱっと見、大人の男。それよりも一回りは大きいわね。

 何が居る? 闇の奥に目を凝らす。見えない。闇色が私の視界を遮っている。

 使える魔法がないか考えてみる。

 暗視……できないから懐中電灯を持ってきたのよ。

 電撃で先制、様子見……相手が何か分からないのに、それはちょっと不用意すぎるわね。

 しかし、ここ隠しエリアで敵なんていなかったはず……だけど現実では居るから仕方ないか。

 

 「っと」

 

 なんて思考を巡らせていると追撃が来た。鋭い風切り。さっきより少し素早い。振るうロングソードに、肉を裂く感覚が伝わってくる。懐中電灯の明かりが無ければ、ちょっと不味かった。

 耳を澄まし、音を追って、ロングソードを振る。

 立地最悪。視界最悪。早いところどうにかしたい。ここのどこかに私の捜し物があるのもよくなかった。派手な魔法が使いにくい。壊したら元も子もないからだ。

 ここまで頑張ってやってきたのを無駄にしたくない。

 一日も無駄にしたくないんだから。

 

 「面倒ね」

 

 短く呟く。膠着状態を破る方法を考える。

 伸ばされてくる手? 触手? それは斬れる。刃を触れさせることができれば斬れる。ただ、どこに居るか分からない。前にいるのか。他の通路の、物陰に隠れているかもしれない。

 

 「あ、でもそうよ」

 

 閃いた。触手の猛攻を弾きながら私は、唇の端と端を釣り上げた。これならいけるはず。上手くいく。やってやるわ。

 安全圏からちまちまやってるその顔、拝んでやるんだから。

 空中をうねる蛇が如く向かってきた手を私は、首を傾けて躱す。そして、逃げる前に下からロングソードを突き立てて。

 

 「逃さない」

 

 囁く。どうせ聞こえないだろうけど。手であって、耳はないんだから。

 

 「雷流し(サンダースクリーム)

 

 生み出した雷をロングソードを伝わせて流し込む。ただそれだけだけの魔法。

 だけど、雷に打たれて生きていられる生物は、非常に恵まれた存在だけよ。

 ――貴方は、どうかしら?

 ばちんと鳴る。すぐ傍から肉の焦げる音がする。光の軌跡がすべてを置き去りにして通電する。到達は、すぐ。

 

 「ッーーーーーー!!」

 

 甲高くて、苦しげな生き物の醜い悲鳴が部屋の奥の方から聞こえてきた。

 ロングソードが貫いた手は、重力に引かれて落ちた後、床の上で微細な痙攣を続けている。雷の後遺症。そこにはもう殺意なんて欠片も残っていない。ただ自然な反射のみ。

 後は、音源へ向かうだけ。私の耳と魔法は、悲鳴の持ち主を正確に捉えたから。

 ただ闇一色は、そのままだから懐中電灯を拾い上げる。一歩、二歩。前を照らして、まっすぐ走る。

 戸棚と戸棚の合間を抜けて。

 

 「みーつけたっ」

 

 かくれんぼの鬼役をする子どもみたいな声色が私の口からまろびでた。

 蛙のような見た目をしていた。蛙の手足を人の手に置き換えた、異様な見た目。体は黒ずんでてて、口から舌の代わりに手が伸びている――――。

 

 「面倒くさい面倒くさい。キモい。息するな。早く死んで」

 

 目に毒。あまりの異形さ、醜悪さに反吐が出た。

 もう呪文(テンプレート)は必要ない。

 死ねって思えば電撃が走る。生き物を殺せるくらいの高電圧がビリっと魔物を天国へ直送してくれる。

 

 「今日は野菜中心にしようかな……」

 

 生臭さと焼けた臭いが鼻をくすぐる。いやだいやだと呟いて、奥の方から風が吹いて来るのに気づいた。

 なんとなく、そっちの方に歩いてみる。

 生き物の気配はないからもうさっきのはいないと思う。それからしばらく歩いていると頬を何か冷たいものが濡らした。水? 上に懐中電灯を向けた私は、理解した。

 

 「なるほど。ここから入ってきたのね」

 

 天井に大きく穴が開いてる。経年劣化? それともさっきのが掘り進んできた? どうでもいっか。

 

 「しかし、気持ち悪い魔物だったわね。ああいうの滅びたほうがいいわ。もう二度と出てこないで欲しい」

 

 一通り罵声をぶちまけてすっきりした私は、何気なしにふと照らした棚を見て、思わず目を丸くした。

 懐中電灯の先で照らされているショーケースには、捜し物が飾られていた。

 一目で分かった。これだってピンときた。

 

 「うそ。偶然? 運がいい?」

 

 妙に誘導されていた感じがあるけどまあいいでしょう。気のせいとか本当に運がいいとかかもしれないし。

 今、重要なのは目の前のショーケースの中身だもの。

 ゲームでは、こういう宝箱や隠しアイテム、ドロップアイテムでは、シルヴァ/スー選んだ方の武器が出るようになってた。

 そもそもゲームシステム上、選ぶ必要があるから2人同時に居るっていうパターンが存在しない。

 だからこういう場面では、ゲームの知識が全然通用しない。

 二分の一か、シルヴァとスー両方の武器があるか。そのどっちかだと私は推測していた。

 

 「二分の一ってことかしら?」

 

 他の場所でも二分の一になるのかは分からない。他も回ってみて検証するしかないわね。めちゃくちゃ面倒くさい。

 それは兎も角、ショーケースを開いて、鎮座されている銃を手に取ってみる。

 正直、銃の種類には詳しくない。今も前世もそういうオタクではないから。

 

 「……普通の銃じゃなくて、魔道銃ね」

 

 注ぎ込んだ魔力を弾丸に変換して撃ち出すタイプの銃。

 魔道具の一種、つまり魔道銃。

 普通の弾丸が使えないから装填のための機構が外されてて、代わりに持ち手のグリップに魔力を伝達させる機能がついてる。

 ハンドガンでいいのかしら、これ。マシンガンとかライフルとかでもない。携帯性が高くて、ホルスターがあれば納められるタイプ。

 マットなシルバーで、長い年月放置させれていたとは思えないほど綺麗。装飾はあまりなくて、カクカクしてる。

 機能性とか武器としての面を追求したって感じた。

 綺麗なのは、このショーケースがそういう効果があるんだと思う。持ち出すには大きすぎるから持ち帰らないけど。

 機会があれば持ち帰ってもいいかもしれないわね。いい値段になりそう。

 

 「正直、この手の武器は詳しくないけど、間違いなくシルヴァ向きよね」

 

 スーが好きそうなのじゃないもの。

 ショーケースの周囲を見るとこの銃用のケースがあった。ぴったり収まるから間違いない。

 説明書らしき紙は風化していて読めない。ただ銃の名前が書いてあって、それだけはなんとか読み取れた。

 

 「えーっと……ドミネーター……?」

 

 なんだかかっこいい名前ね。意味は忘れちゃったけど。

 

 「ま、シルヴァが喜びそうだし、ヨシ!」

 

 ケースへ銃をしまい、背負っていたリュックサックに入れると私は、他の棚も調べてみることにした。

 つまらない探索シーンなんてカットカット。

 結論から言うとガラクタとかしかありませんでした。無念。

 戦利品と言っていいのは、シルヴァの銃だけ。スーの武器もあればよかったんだけどね。残念。

 

 「これは、お土産買って帰らないと……」

 

 来た道を戻りながら私は、何をお土産にするか考えることにした。

 

 「お菓子でいいかしら……」

 

 なんて呟いていると棚の下の方、懐中電灯の光にあたって何かがきらりと光った。

 またガラクタ? と思いつつも立ち止まって確かめてみる。好奇心には勝てなかった。

 長方形の金属ケース。両手に収まるくらいの大きさで、埃に塗れてる。

 なにかしら、これ。

 

 「……あら」

 

 首を傾げて、ケースを開けた。その中身は、見覚えのあるものだった。

 そして、それは思わぬ掘り出し物。ここでドロップしたかどうかとか、偶然か必然かとかなんて知ったこっちゃない。

 これは、あの子にぴったりだ。間違いない。

 

 

 +++

 

 

 「たっだいまー!」

 

 「ハオさん、おかえりなさい。荷物持ちますよ」

 

 「ん、ありがと。あ、ちょっと待ってね」

 

 玄関を開けるとリビングからシルヴァが歩いてきた。ご厚意に甘えておこう。ついでに。がさごそリュックサックから例のケースを取り出して、シルヴァに差し出す。

 

 「はい、お土産どーぞ」

 

 「へ? お土産? えっと、ありがとうございます」

 

 「よろしい。他の荷物もお願いね」

 

 不思議そうにケースを見つめるシルヴァを置いて、リビングに行くとスーがソファに寝転がっていた。ちょっと眠そう。

 

 「ん、おかえり」

 

 「ただいま。スー、ご飯は食べた?」

 

 「うん、食べたよ」

 

 「うむ。いっぱい食べた?」

 

 「もち。大きくならなきゃいけないので」

 

 真剣な顔のスーはそんなことを言う。 スーは、こういうところがある。まあ、よく分からないけどとりあえず。

 

 「よろしい。昨日のシチューの残りあったよね。後でちょっともらうね」

 

 腹ペコで背中とお腹がひっつきそうなくらいお腹が空いてる。今日は、携帯食くらいしか食べてないからシチューが楽しみ。

 

 「え、食べてきてないの?」

 

 「急いで帰ってきちゃったから忘れてたんだよね。冷蔵庫の中にある?」

 

 ソファーから起き上がったスーが私を信じられないものでも見るような目で見てくる。そんな驚くことかしら? 

 首をかしげながら冷蔵庫から鍋を取り出して、火にかける。

 パンも温めようかしら……。

 

 「ハオ」

 

 「うお、びっくりした!」

 

 疲れているせいか完全に気配を感知できなかった。一生の不覚。冗談。私、結構疲れてる?

 

 「ちょっとプラスで作ってあげるからお風呂とか入ってきて」

 

 「へ?」

 

 「他にも作ってあげるって言ってるの。どいて。汗臭いよ、ハオ」

 

 や、優しさが沁みる。けどね。

 

 「もっとオブラートに包んで〜〜」

 

 言葉が刺さる〜〜。入れ替わりに鍋の前に立ってくれたスーを嬉しすぎて抱きしめてしまう。あすなろ抱きってやつ。しかしスーは、ちっさいなあ……。

 

 「ハオ、ひっつかないで……!! 汗臭い……!!」

 

 「えー」

 

 「ハオ……!!」

 

 「ごめんごめん。あ、それお土産ね」

 

 「お土産?」

 

 眉を潜めたスーが首に何かがかかっているのに気づいて、目を丸くした後、私とそれを交互に見た。

 

 「月のネックレス。月の属性魔法がエンチャされてて、大気と雷。速さの加護がかかってるわ。スーの戦闘スタイルなら使いこなせばかなり役立つと思うのよね」

 

 それに、と付け加える。真っ赤なうさぎみたいな目を丸くした銀髪のスーに、金の月と魔法銀(ミスリル)製鎖のネックレス。

 

 「うん、やっぱり似合うわね」

 

 私の目に狂いはなかった。最高。マジ完璧。

 

 「じゃ、お風呂入ってくるね。ネックレス、大事にしてよ?」

 

 うん、遠出した甲斐あったわね。あの顔を見れただけで十分すぎる。

 ところで、帰ってきたらお風呂湧いてるの幸せすぎない?

 

 +++

 

 

 「…………何、あの人」

 

 心臓のばくばくが止まらない。目の前でぐつぐつなってるシチューみたいに、胸が弾んで暴れまわってる。全力疾走した後みたい。

 

 「ああ、もう……」

 

 バカみたいに顔が熱い。気のせいよ、あんなの……。大きく深呼吸してから私は、鍋の火を消した。

 まるで私が兄さんを引きずり回して、遊び呆けてたのがなんだか悪いみたいじゃない……! 

 ……ええっと、何作るんだっけ。

 

 「あーもう! 忘れちゃったじゃない、ハオのバカ!」

 

 「呼んだ?」

 

 「うるさい!! さっさとお風呂入って!!」

 




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