流し込んだ魔力を金属の弾丸へ変換して、撃ち出す。
金の魔法、魔力の金属変換を
他にも機能はある。自分の魔法属性を付与したり、出力を上げたりその他色々。
でも今の僕がやることは、銃口を前に向けて、トリガーを弾くだけの基本的な使い方。
「…………」
弾丸の威力に釣り合わない軽いすぎるトリガーは、指を添わせるのに躊躇いを覚えさせる。
恥ずかしいことだけど、一度、暴発させてからは特にそう。
後は、僕の手にはまだ少し大きい。もっと早く大きくなりたい。
ところでハオさん。これをお土産にするのはどうなんだろう。それに、こんな武器、今の僕には早すぎるものだと思ってしまう。
魔法もいまいちな半人前の僕には、高価で、強力で簡単。身の丈にあってない。
だけどそれでもハオさんに貰ったという事実が僕にこれを使いこなしたいと思わせる。
「……集中しろ」
思考がよそに飛んでいた。今に戻す。現実を見る。銃口の先にある的に意識を集中させる――トリガーを弾く。
秋の風の吹く朝を貫く銃声。けたまましい金属の音。それから、拍手が背後から聞こえてきた。
「ナイスショット」
庭の木でゆらゆら揺れる鉄の的。ただ吊り下げている木の幹にも穴が空いている。
新しい傷跡。微かに木から煙があがっている。他にも似たような痕がいっぱい木には刻まれている。ここ最近の練習の結果だ。木には悪いことをしている。
ついつい溜息が出る。ハオさんに貰ってからここ数日練習し続けてるけどいまいちだ。
拍手のした方、ハオさんの方を振り向く。ハオさんは、鎧を着ていて、剣を腰に吊るしてる。ギルド帰りかな。
「6発撃って、命中4発。これなら普通に
「でもかなり命中率あがってるじゃない。練習の成果でてるわよ」
「……そうですかね?」
「そうよ。魔道銃は、扱い難しいしね。単純に私はこういう射程のある武器苦手なだけだけど」
そうハオさんは苦笑いした。
ほんとに苦手なのは、あの的を吊り下げている木にある弾痕のほとんどがハオさんだから僕も謙遜でないのは知ってる。
だから魔道銃に関しては、カイムさんに習ってる。
「集中しなきゃ僕も的に当てられないです。実戦ではまだまだ……」
「あんまり無理しないで。シルヴァが頑張ってるのは分かってる」
「でも……」
「大丈夫大丈夫。今まで通りに頑張ってこ」
微笑むハオさんに言われて、僕は、前向きに考えようと自分に言い聞かせて頷いた。
それでもハオさんのお土産は、このドミネーターは、僕の手に余ると思ってしまう。
あまりに強力で、あまりに高性能。僕は、これの性能を10分の1どころか、もっと使えてない。
とりあえず練習、頑張らなきゃな。うん。
カイムさんは、毎朝撃つだけである程度、習熟できるという。何度もトリガーを引いて、自分の体に覚えさせろとのこと。
まずはあの、50メートル先の的に全弾命中。それができたら応用編の話をしてくれるらしい。
先が長い……。
「それで、どうしたんですか。ハオさん」
「ギルドに依頼を見に行ったらちょっと面白いものを貰っててね。シルヴァに見せようかなって」
スーは朝練だしねーー。とハオさんが言うので思い出す。
そういえばスーも毎朝走ってるんだった。自分がどれだけ銃に夢中なのかを思い知らされた。
そりゃ仕方ないだろ。こんなにかっこいいものをハオさんに送られたんだからどうにか使いこなそうって考える僕は、絶対に悪くない。
自己弁護完了。
「ええと、それで面白いものっていうと?」
「これよこれ」
「『復興チャリティバトルトーナメント』開催は来春……」
……ああ、そっか。気づくと思わず息が詰まった。
あの時の恐怖を僕は、忘れたわけではない。魔王種への憎悪と一緒にずっと憶えている。
「もう1年になるんですね」
「――……そうね。ほんとあっという間……」
ただこの人と居るのが楽しかった。この人がいるから僕は生きているし、生きていられる。
「ほんと、色々とお世話になってばかりです。ありがとうございます、ハオさん」
そう思うと大きく頭を下げていた。こみ上げてきた思いを、感謝を伝えずにはいられなかった。
「急にかしこまらないでよ。もう、恥ずかしいじゃない」
ハオさんが困ったように笑ってる。いつだって綺麗な人。それで高飛車じゃなくて親しみやすくて、面白くて、素敵で強くて……。
ああ、だめだな。僕がどれだけ言葉を尽くしてもこの人のことを言い表せているように思えない。
僕は、どうすればいいんだろう。
どうすればこの思いを、感謝を余さず伝えられるんだろう。
「あ、シルヴァの身長も伸びたわねー」
「え? そ、そうですかね……」
まだスーの方が背が高い。できればスーより高くなりたいから伸びてくれるのはとても嬉しい。だけど……。
「うん。伸びた伸びた。頑張って成長しろよー」
「が、頑張ります……」
ハオさんが頭を撫でるのもこんなに距離が近いのもやっぱり慣れない。
「それで、そのトーナメントに参加するって話です?」
「ええ、シルヴァとスーがね」
「……僕らがです?」
そんな気はしていた。ハオさん自身もこういうものは嫌いじゃなさそうだけど。
「うん。まだ時間あるしね。鍛えて鍛えて、もういっちょ鍛えれば優勝も夢じゃないと思うわ」
「ですかね」
「ですよ」
にやっと笑うハオさんに、これは、今日もきつい一日になりそうだ。そう僕は、予感した。
「今日は、これまでと違うタイプの仕事を貰ってきたわ。
魔物憑きの獣やゴブリンとかスライムみたいな陸の魔物じゃないやつを殺すお仕事」
今までと違うからまた新しい対処方法が必要になる相手……ほら、やっぱりそうだ。でも、僕としては――。
「それは、頑張らないといけないですね」
どんな魔物が相手か気になってしょうがなかった。
「それで、何が相手なんですか?」
しょうがなかったので、声にも出してしまう。ああ、ハオさんが笑ってる。綺麗な人だな……。その笑顔を見るといつもそう思う。
美人は三日で飽きる。なんて誰かが言ってたけど、きっとその人は本当に美しい人にあったことがないだけだ。
「顔にも書いてあるわよ。それ」
「はは、ですよね」
よかった。肝心なところは書いてなかった。
+++
今日の天気は、晴れ。ギルドで依頼を受けた私たちは、〈ユーフォルビア〉の南にある川辺の漁村にやってきていた。
「冒険者の皆さんお越しいただきありがとうございますさめ」
私とシルヴァ、スーは、依頼人である村長の自宅に招かれていた。わざわざ村長自ら村の入口まで出迎えにきてくれてた。随分な歓迎のされようだ。かなり困ってるのだろう。声色が必死。腰も低い。
「遠いところお越し頂いてありがとうございますさめ〜〜」
元々人が良いだけかもしれないかもしれないわね。
「頑張らなきゃな……」
応接間に通される時、シルヴァが張り切ったように呟いていた。
依頼の内容を聞かせた時から深刻な顔をしていたから、やる気になってるんだろう。
肩に力が入りすぎてないといいけど。
ソファに腰を掛けるとメイドさんがティーセットと茶請けを運んできた。
「あら、美味しそう」
「どうぞどうぞ。頂いてくださいさめ。クッキーは私が焼いたんさめ」
「素敵。いただきます」
アーモンドクッキーとチョコチップクッキー。湯気を上げる紅茶もいい匂い。私も頂こうかしら。
「早速で申し訳ないさめがお仕事のお話をさせていただいてもいいさめか……?」
「あっ、はい……」
ティーカップに伸ばしかけた手を引っ込めた。残念……。とりあえず、話をする態勢になる。
「大体のお話は、ギルドの方から聞いています。魔物の討伐で間違いないですか?」
「はい、最近漁に使ってる河に、魔物が出るようになったんですさめ」
村長曰く。
異変が起こったのは、ほんの一週間前。
ほとんど魔物なんて現れない穏やかな川に、魔物が一匹現れた。
現れた魔物は、川を文字通りめちゃくちゃにした。生息する生き物という生き物を食い荒らし、船を沈め、橋を破壊した。
川とともに生きてきた彼らには、かなりの打撃だった
つい半年前に、現れた魔王種の恐怖は、彼らの脳裏にも克明に刻まれていたのもあって、血気盛んな若い村民たちがが退治しようした……。
「お察しの通り。ことごとく返り討ちにあってるさめ。1人は、重症で今も生死の境目を彷徨っていますさめ……」
「ええ、ギルドから危険な相手とは知らされていましたが……結構な強敵になりそうですね。周辺の避難は?」
「もちろん。川辺は立入禁止にしています。まあ、そもそも誰も今の川には近づきたくはありませんが……」
そうでしょうね。内心呟いて私は、深刻な表情を浮かべると頷いた。
深刻なのは被害もあるけど水生の魔物退治は危険。
当たり前だけど人間は、水中で呼吸はできないし、自由自在に動き回るってのも難しい。素人なら余計にそうだ。
ただこの漁村の村民が水中で、そんな一方的に被害を受けているのは、不穏ね。
元々、そんなにも被害を受ける相手が現れる依頼じゃなかったと思うけど。
私が受けることを決めたのは、私とシルヴァ、スーの属性が水中の相手に有効だから。
何が出てくるかは知っている。大きなサメみたいな魔物。攻略方法は、考えている。
なによりこのクエストで得られる経験値の高さを考えて、今やっておいたほうがいいと判断した。
「そうなんですさめ!! 依頼を出して、こんなすぐに冒険者の方を凱旋していただいたギルドには感謝の念が絶えませんさめ……。
あ、もちろん、来ていただいた冒険者の方には、もっともっと感謝してるさめ! 私の自宅を拠点にしていただいて大丈夫さめ。必要なものがあれば言って欲しいさめ! 村人たちにも協力するように言っておくさめ!」
堰を切ったように、とはまさにこのことだと私は思った。目の前で、村長が勢いよく喋りだす。
きっと誰にも言えなかったこと、胸に詰まっていた心配が口から濁流のごとく吐き出されていく。
私は、それに頷く。
別に同情したわけではないわ。ただ、ちょっと聞いてあげでもいいかなと私は思っていた。
立場上、明かせないことがあるのは、少しだけ分かる気がする。明かせないことが多い私みたいだったから。
「――分かりました。ではまずこれから魔物のいる川の方を見てきます」
一通り話して、村長が落ち着いたのを見てから私は、そう切り出した。
「ええ、はい! ではよろしくお願いしますさめ!!」
「紅茶とクッキーありがとうございました。美味しかったです」
「あ、ありがとうございます!! よければお土産にお持ち帰りください!!」
「では、また魔物を討伐でき次第、お願いします」
「もちろんですさめ!!」
村長さんの全力のお辞儀を受けて、応接間から私は出た。後に、シルヴァとスーが続いてくる。
玄関までの長い廊下。村長というだけあってというわけではなく、ここの人たちの体が大きいせいか家も大きい。
廊下を歩いていると後ろで、スーがシルヴァに話しかけるのが聞こえた。
「兄さん」
何故か言葉が弾んでいて、興奮してるように聞こえた。
そんな会話だったかしら? と怪訝に思って、軽く振り返るとスーの頬は紅潮していた。
何か嬉しいことでもあったかな。さっきまで真面目な話しかしてなかったと思うけどれど……。会話の内容を振り返ってみる。
「どうしたんだい、スー」
「
「……可愛いかな?」
可愛いかしら? どうだったかしら。私は、ちょっと分からないかな……。
「ええ、つぶらな瞳がキュートよ。とってもグッド。クッキーを焼いてるところ、見てみたい。きっととってもキュート」
「そ、そうか……」
分からない……。私は、スーの美的感覚に困惑しつつ、通りすがりのメイドさん――身長2メートル近くあって、手足のあるサメっぽい人――に、軽く会釈を返した。
種族、さめんちゅ。非常に温厚で、主食は野菜や海藻、魚類。巨体に見合わぬ少食で、燃費がとてもいい。
水辺に住み、漁や農業をして慎ましく暮らしている。他種族とも友好的。
ただ、見た目のインパクトがすごい。記憶を取り戻してからこういう改めて感じる驚きが多い。
肉食じゃなくてよかったと、私は心底思った。
「ハオさん。水中の相手ですけどどう相手をするんですか?」
村長の屋敷を出てから通りを歩いているとシルヴァにそう質問された。
「そうね。どうするか話してなかったわね」
「相手が何か分かるの、ハオ」
「いえ、村長の話の通り、水生の大きな魔物としか知らないわ。でも、それだけ分かっていればある程度の対策は立てられる」
ただこの村の住人が水中の魔物にこうも手酷く痛めつけられるのは、妙な話。
さめんちゅは、水中で非常に機敏で、そのへんの魔物や生き物に負けない。
それがここまで傷つけられ、畏れてしまった。
「あ、あの冒険者様!」
声。知らない声。聞こえた方を振り向くと先程、村長の屋敷で私達にクッキーや紅茶を運んできてくれたメイドさんが走ってきていた。
「何か御用ですか?」
「えっと、その呼び止めてしまって申し訳ありません。わ、私、冒険者様に伝えておくことがあって……」
「大丈夫です。とりあえず落ち着いて……」
と眼の前で息を整えるメイドさん。女性で、そこそこに歳を重ねている人。何のようでしょう。村長からの言付け? 落とし物?
「すみません。おまたせして……」
「いえ、それでどういった御用でしょう」
「あの……私、これから冒険者様が退治に行かれる魔物に、怪我をさせられたのがうちの子で……それで、気になることを言ってたのを思い出して、それを冒険者様に伝えたくて……」
「気になることですか」
取るに足らないことかもしれない。今、私の胸に引っかかっているこの懸念を解消してくれる何かになるかもしれない。
「えっと、その息子が言っていたんですが――――が見えたそうですさめ」
「――――手が……?」
怪談の類にしか聞こえない話だった。
「そう”手”です。無数の、人の手が川の底から伸びてきて、息子たちを川底に引きずり込もうとしたんですさめ。
息子の体に手の痕が無数にあって、溺れてみた幻覚のようには思えなくて……」
だけど、私は、”手”というものに少しばかり心当たりがある。
思い出したのは、ちょっと前のこと。暗闇に潜んでいた気持ちが悪い大きな蛙もどきの魔物の姿。
その手足、その口から舌の代わりに伸びていた、”手”。
話し終わったメイドさんがお辞儀をしながら去っていくのを見送って、私は、小さく呟いた。
「嫌な予感がする」
これからすぐ後のことか、もう少し未来のことかは分からない。
ただ、そういう暗雲立ち込める未来がすぐ傍まで、忍び寄って来ているようなそういう予感。
一応、ギルドには、D等級からC等級って聞いてたけどほんとかしら。
『半年前現れた魔王種の影響で増え続ける魔物の対処に追われ続けるギルドの等級付、それも特に上位のものは狂いつつある。なんならたまに等級詐欺がある。こないだあった。散々だったよ』
というのをカイムが愚痴ってた。
『今やってる仕事は低等級だろうけど注意しろよ。お前は兎も角、シルヴァとスーにはな』
……分かってるわ。この子たちを失うわけにはいかないから。
「行きましょう、シルヴァ、スー」
兎にも角にも。実物を見てみないことには分からない。今は閉鎖されているという川の方へ私たちは向かった。
村の真ん中の大通りを歩いて抜ける。
大通りであるのに、どこか人通りが少なくて静かな印象――いえ、これがどちらかというと活気がないかしら。
店のほとんどがクローズの看板を出している。開いている店があっても景気は悪そう。店先で定員が暇そうにしているのが見えた。
「……静かですね」
「そうね」
嫌な静けさだった。
村を通り抜けた先にある川辺には、人っ子一人いなかった。あるのは、向こう岸までかけられていた橋の片割れ、桟橋だったものと船の残骸が散らばっているだけ。川の流れは穏やかなもの。
しかし、命の気配を感じない。
まるで死んでしまっているみたい。
めちゃくちゃに食い散らかされた死骸という印象をこの川辺に私は覚えた。
「ここ、嫌な気配がする」
ふとしたスーの呟きは、的を突いていた。
ちゃんと居るみたいね。どうやら空振りじゃないみたいね。
「魔物の気配よ。川に近づかないで。泳ぎ上手なさめんちゅが水中から逃げるしかなかった相手に、川に引きずり込まれたら人なんてひとたまりもないわ」
「じゃあ、どうやって相手するの」
スーの疑問は最も。近づかなければ様子も見れない。だからと背負っていたリュックサックを下ろして、取り出したのは、
「釣るのよ」
釣り竿。ただの釣り竿じゃない。糸は、金の魔法で強化したワイヤーだし、本体自体も金の魔法で
昔、
こんな釣り竿を使うんだから大会の内容は、察して欲しい。
「釣る……?!」
「一応相手は魚みたいだからね。それに、ここの魔物、なんでも食べるみたいじゃない」
「確かにそうみたいですけど大丈夫なんです?」
シルヴァが不安がるのも分かる。私だって前例が無ければ正気を疑うわ。
「昔、頭のおかしい金持ち主催の釣り大会に参加した時、これ使って魔物を釣り上げたんだけどこの通り問題なかったわ」
しばらくぶりに引っ張り出したけど綺麗なものね。やっぱり値段が張るだけあるわよねーー。
「そ、そうなんですか……」
「楽しそう。今もやってないの?」
スーが興味津々に聞いてきた。どうかしら。金持ちの道楽だから続いてるかどうかは微妙だけど。
「今度問い合わせてみるわね」
そういうことにした。
「えっとつまり、ハオさんが釣って……」
「釣って、陸に引きずり出す。後は皆で囲んでタコ殴りよ。シンプルでしょ」
「分かりやすくていいんじゃない? 兄さんにアイディアが無いならこれでいいと思う」
「いや、アイディアはないんだけど……」
と少しの間、口ごもっていたシルヴァが意を決したように言葉を切り出した。
「あの、釣りの方は大丈夫ですか? ハオさん。聞いた感じ、あんまり釣りをしたことあるように見えないんですが……。
今からでも村の人にお願いしてもいいと思います」
「ああ、大丈夫よ。まともに釣る気はないから。私たち魔法使いよ?」
「あっ……」
シルヴァは、察したみたい。ふふ、当たり前じゃない。真面目に釣るなんて馬鹿らしいわ。
食いついたところに電撃かましたらどんな生き物でも大体ノックダウンするわ。しなくても痺れくらいする。
「じゃあ、餌の確保しなきゃね。何が良いかしら」
「それこそ村の人に聞いてみるのがいいんじゃない?」
「そうね。そうしましょう」
スーの言葉に賛同に、頷いて。
「じゃあ、役割分担しましょう。私とスーで、村の人に聞いて回ってくるわ。シルヴァは、川の様子を見ていて」
「分かりました」
「後、もし魔物が出てきても相手はしないで」
「相手がどのレベルの魔物か分からないからですか?」
「……分かっている等級と実際の魔物の等級が食い違うことは、冒険者には、あるにはあることなの」
現実として実際に出会う魔物が等級よりもっと恐ろしく、ずっと強靱なことはある。
特に、今はそう。
「安全を確保したら空に銃を撃ちなさい。すぐ駆けつけるから。分かった?」
「分かり、ました」
緊張したシルヴァに、微笑みかけてから私は、踵を返した。
「何が餌にいいのかしら……」
呟いたのと、同時だった。大きな水しぶきが聞こえた。魚が跳ねた。何かが落ちた。そういう大きな音。鋭い風切りを私は、聴いてからか聴く前か。
「――シルヴァっ!」
振り向いた私が見たのは、無数の手に絡みつかれたシルヴァの姿だった。
――迂闊だった。私は、どうしてこんな簡単なことに気づかなかったの。
あの魔物は、川の生き物を食い尽くした。そして、村人を食えなかった。なら間違いなく今、魔物は、とてもとても空腹なはずだ。
でも私は、陸に上がってくることは考えなかった。
明確な敗因。やばい。まずい。届いて。焦りのまま、私は、シルヴァへ手を伸ばした。
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