TS異世界転生早死師匠ポジRPG   作:クルスロット

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コードギアスのソシャゲ始まりましたね。
C.C.欲しいんですけど中々引けないですね。


第15話 春、快晴、トーナメント日和

 

 「……綺麗だ」

 

 芝生で大の字になった僕は、青空の下、咲き誇った桜の美しさに思わず呟いた。暖かな風に細い枝が膨らみ、なびく。散った花びらが僕の視界を横切って、風に乗り損ねた花弁が1枚、僕の顔に乗っかった。

 

 「僕みたいだな」

 

 独り言。微苦笑。自分にしか聞こえないように呟いて、花びらを摘み上げる。

 

 「いつまで寝転がってるの、シルヴァ」

 

 ――桜よりずっと綺麗なものが僕の鼓膜を揺らした。おっしゃる通り、待たせるなんて失礼だ。

 

 「すみません。すぐ立ちます」

 

 立ち上がって、振り返るとハオさんが居る。エメラルドみたいな大きくて鋭い瞳が僕の挙動を見ている。力みの一つもなくて、ただ吹く風に揺れる髪を片手で抑えているだけの自然体。

 物憂げに見えた。春だからかな。きっとそうだろう。

 桜、春。あれから一年も経つ。あっという間だった。僕は、あの頃より強くなれたと思う。

 だけどもっと強くならなきゃいけない。強くなりたい。

  

 (なによりも綺麗なこの人より強くなりたい)

 

 今朝だけでもう数えるのが面倒なくらい転がされたというのに、願望だけは一人前だなと内心苦笑した。

 何回戦目かの開始の合図。詰められた時、不意を突かれた時の為に、魔法を使っておく。

 

 「氷遊弾(アイス・シューター)

 

 氷の弾丸を5つ浮かべる。数は、意識すればその分現れる。数の指定もかなり慣れた。呪文は、まだ必要。呪文(テンプレート)無しで、使えるのはごく簡単な魔法くらい。

 氷遊弾(アイス・シューター)は、その簡単な魔法に入らない。

 ハオさんとの組み手を初めてから生み出したアレンジ。

 ハオさんについていくために、組み込んだアレンジ。

 そういうのを組み込んだお陰で、呪文無しで使えなくなってしまった。

 一長一短ってところだ。

 僕ができないだけで、できる人は、こんな苦労ないんだろうけど。 

 

 「……行きます」

 

 ドミネーターをハオさんに向けて、トリガーを弾く。

 ドミネーターの銃弾は、魔力を注ぎ続ければ生成され続ける。勿論、トリガーを引けば銃弾が撃てる。それも引き続ければ、一定の間隔で、銃弾は撃ち出される。

 

 『まるでマシンガンね』

 

 なんてハオさんは言ってた。マシンガンというのは、銃の名前らしいというのをその後調べて知った。

 どうやら連射式の銃らしい。ドミネーターよりもっと大きく、ものによれば銃身も長いとか。いつか触ってみたい。銃そのものが高価だからそうそう触れるものではないけど。

 ただ弾丸を作り続けるので、魔力の消費が激しい。

 

 「うん、悪くない」

 

 それは、ありがとうございます。口には出さない。最小限の動きで躱されてるのを見ると素直に受け取れない。しかもゆっくり距離が詰められてくる。

 スーも同じように詰めてくるけどあっちは、豪快だ。あれはあれで圧を感じるけど、こっちはそういうレベルの話じゃない。

 この圧に負けて後ろに下がるのは、悪手。横へ、ハオさんを中心にゆっくり回る。射線を変えて、躱し難くする。

 

 「相変わらず意味がわからない……」

 

 狙っているのは、胴や腰の中間。体の中間点は、体全体を動かすしかずらせない。

 当たってない。当たるラインだった。僕には、そう見えた。

 だけど現実当たってない。ハオさんは、さっきから一歩と前にも後ろにも動いていない。そのままで、視線だけが僕の方を向いている。

 何度見ても意味がわからない。表情が渋くなっているのが自分でも分かる。

 

 「……今日こそ当てる」

 

 以前、カイムさんとやった時のルールと大体同じだ。一撃でも当てればいい。

 だけど、ハオさんが魔法と剣を使わないだけでほとんど本気。それにスーがいない。僕だけでハオさんに当てなきゃいけない。

 

 『半分遊びで、貴方たちに同情マックスだったカイムとは、違うから頑張ってね』

 

 数えるのが馬鹿らしいくらい転がされたある日、ハオさんは、満面の笑みで言った。

 恐ろしい。これが最戦前を生きてきた冒険者の本当の実力、それもほんの一端だと思うと僕は、正直、そう思ってしまう。

 

 「それでもやらなきゃいけないんだ」

 

 僕の中に根付いた恐怖を振り切るために。

 ドミネーターのトリガーを引いたまま、自手を打つ。

 ハオさんとの距離がいつの間にか縮まり始めていた。僕の魔力だって余裕があるわけじゃない。正直、ここまでで何度も転がされてるから限界が近い。

 

 「氷弾(アイスショット)

 

 頭上に氷弾(アイスショット)を3発生成して、角度をつけた。今、銃弾がまっすぐなラインで、正面から圧をかけている。そこに、上から下に圧をかけるように氷弾(アイスショット)を放った。

 合わせて、氷遊弾(アイス・シューター)を打ち上げる。山なりに頭上から叩き落とす。落下軌道をランダムに、避けにくいようにする。

 

 「いけっ……!」

 

 ――やっぱり躱される。当たらない。背景に消えていくか、空中でいつの間にか迎撃されている。

 ただ一発は、仕事をした。

 特別細く。特別早くイメージを伝えた氷弾(アイスショット)がハオさんの胸元で、粉砕された。細かな破片がきらきらと宙に散っていく。

 それだけは、僕にも迎撃されたのが明確に見えた。

 意識が一瞬、そっちに向いた――くらいに思いたい。

 

 「氷縛鎖(アイスチェイン)……!」

 

 ドミネーターの銃口から一つ、ハオさんの背後からもう一つ。

 合計二本。氷で編み上げた鎖が食らいつく蛇が如く襲いかかる。本命だ。

 先程の氷弾(アイスショット)を起点にした魔法の再構築。猛特訓の結果の一つ。

 

 「背中に目でもついてるんですか……!?」

 

 「ふふ、戦場ではどこから敵が襲いかかって来るか分からないのよ」

 

 完全な不意打ちだったのに、ハオさんの手が、背後から放たれた氷縛鎖(アイスチェイン)が握りしめていた。粉砕。さっきの氷弾(アイスショット)の二の舞。

 ちなみに、ドミネーターから放った鎖も掴まれている。

 

 「悪くないと思うわ。私でなければなんとかなったかもね」

 

 魔法を使うよりも、トリガーを弾くよりも早くドミネーターが奪われるのは目に見えていた。

 即座に魔法を解く。ぱっと氷縛鎖(アイスチェイン)が解けて水になる。

 ……そもそも本来ならこの時点で負けだ。掴まれた時点で、ハオさんの電撃が伝ってくる。

 僕に、水の純度を高めた上での魔法攻撃ができればまだなんとかなるかもしれない。

 けど今は、そこまで細やかな調整ができない。これも課題だ。

 

 「ま、今朝は、軽くこのへんにしましょうか。今日はトーナメントの開会式だしね」

 

 ハオさんの言葉を受けて、僕は、大きく息を吐いた。その場とか僕の中の緊張感が霧散する。全身の汗が鬱陶しい。

 軽く、軽くか……。ハオさんのものさしは、どうも僕と縮尺が違うらしい。

 

 「はい、ありがとうございます」

 

 「ええ。結構よかったわ、シルヴァ。これならトーナメントもいいところ行けると思うわ」

 

 いいところ……? どのへんだろ……。四位とか? それはちょっと言いすぎかな。

 

 「出るからには優勝を狙えってことよ」

 

 「な、なるほど……」

 

 ハオさんは、やっぱりハオさんだな……。僕の考えは、ハオさんの目標に掠りもしていなかった。

 

 「できる限り、頑張って見ます」

 

 「そう言うと思った」

 

 予想通りって感じのハオさんが僕の頭に手を伸ばした。くしゃりと撫でられる。柔らかく、少し荒く。細い指先が髪をすいていく。

 ちょっと気恥ずかしくなる。ただ逃げるわけにもいかず、逃げるのも惜しくてされるがまま。

 

 「それでいいわ。貴方のできる限りの成果を私に見せて」

 

 「……はい」

 

 真っ直ぐな視線を受け止めて、僕は、首肯した。

 

 「よろしい! それじゃあシャワー浴びて、朝ごはん食べて、開会式に備えましょう!」

 

 

  +++

 

 

 ダイヤス―ト領主主催のユーフォルビア復興チャリティバトルトーナメントは、街郊外、南西に設えられた簡易コロシアムを使って行われる。

 観客席から見下ろした感じ、大体半径100メートルちょっとって感じ。木と石で作られた立派な闘技場。

 トーナメントの後では、闘技場として運営するために、領主がそこそこ気合を入れて作った。普通なら柵とかで済ますところを魔道具を仕込んで、飛び道具や魔法の被害を防ぐ仕組みとかあるとかパンフレットに書いてあった。

 西区の復興のため、流通や観光を今以上に活発にさせるのが狙いらしい。

 私財を投じた一大事業。この街は嫌いじゃないし、領主も嫌いじゃない。是非成功して欲しいわね。

 

 「もうそろそろね」

 

 そのトーナメントの開会式が終わって、そろそろ第一回戦が始まる。

 観客席も客でいっぱいでざわついてる。ギルドの係員とかが忙しそうに走り回ってる。領主様のところの兵士も警備で目を光らせてる。シルヴァもスーも選手控室に行ってる。

 シルヴァが1回戦、第4試合、スーは、その後の第6試合。当たるなら決勝。

 ちなみに私は、一人観客席で手持ち無沙汰。わりと暇。早く試合始まらないかしら。

 

 「……私も参加すればよかったかも」

 

 会場の熱気が私にそう思わせた。私もあそこで戦いたい〜〜。って気分にさせてくる。

 

 「だめよ。今回は2人の成長を見るんだから……。我慢しなきゃ」

 

 そう自分を言い聞かせる。保護者なんだからこう落ち着いて、あの子たちの成長に注目しなきゃ。対人での修正点とか出てくるだろうし、あの子たちも私やカイム、スルール以外と戦うのは始めてだろうし……。

 

 「今度は、ハラハラしてきた……。大丈夫かしらあの子たち……。控室で他の冒険者に絡まれたりとかしてないかしら……」

 

 冒険者の民度は、お世辞にもよろしくない。今日のトーナメント表を見たけど、高等級の冒険者は、そんなに見当たらなかったから余計に心配。

 上に居るのは、実力と合わせて、人間性をギルドがギルド自身にとって有益だと認めたから。

 下に居るのは、実力が無いからというのと人間性が足りてない。身勝手だとか残忍だとか倫理観がないとか……。ギルド自身に有害なやつら。

 たまーに有害だけど有用性が上回ってるやつとかいるけど例外なので除外します。

 ちなみに、高等級が居ないのは、活発になった魔物の討伐クエストに狩り出されてるから。

 雷の双牙(ライトニングタスク)もそう。だからスルールが来てない。後、カイムも。

 

 「スーもシルヴァもいい子だからなあ……。大丈夫かしら……。心配……」

 

 居ても立っても居られず、私は、立ち上がった。勿論、向かう場所は、控室。今頃心細くなって泣いてるであろう2人を救うのだ。

 私の胸と頭は、そんな決意でいっぱいだった。

 

 「よお」

 

 「きゃっ!」

 

 そんな私の頬に何か冷たいものが押し付けられた。完全に2人のことに囚われて、周りへの意識がおろそかだった。

 背後。ほぼ無意識の迎撃行動。裏拳を放つ。空を切る。大丈夫。勢いのまま、足を振り上げる――。

 

 「あら、カイム」

 

 「随分な挨拶だな、おい」

 

 ぴたりとカイムの顎先につま先を当ててから誰の仕業だったのか気づいた。

 

 「もう、驚かせないでよ」

 

 ほんとにもう子どもみたいなことして……。肩から力が抜ける。溜息が零れる。

 

 「ああ、悪かったよ。だから足をどけてくれ。めっちゃ目立ってる」

 

 「へ?」

 

 周囲を見ると目と口を丸くして、他の観客が私とカイムを見ていた。「あはは」と乾いた笑いが出る。

 

 「ったく……。やけに張り詰めた顔してるからちょっかいかけてみたらこれかよ。今度はどうした」

 

 観客席を飛び越えたカイムは、ごく自然と私の隣に座った。無駄に長い足に通路が塞がれる形になった。答えなきゃ通してくれなさそうな雰囲気。

 

 「スーとシルヴァが心配になったから控室に乗り込もうとしてるだけよ」

 

 「なにがしてるだけだよ。他の奴ら全員ぶちのめしかねない顔してんぞ」

 

 「そんなことないわ」

 

 「そんなことあるから言ってんだよ。変なところで過保護だよな。普段の訓練なりはドン引きするような内容やってるのに」

 

 「あの子たちの限界ラインには合わせてる!」

 

 「はいはい。ほらとりあえず座れ」

 

 ぽんぽんと私が座っていた座面を叩く。

 

 「…………でも」

 

 「今日のトーナメントは、あいつらがどこまでやれるか見るんだったら無事トーナメントに出るってところも含めてだろ。

 冒険者として、降りかかる火の粉は、自分で払えるくらいにならなきゃな」

 

 「ぬう……」

 

 ド正論だった。渋々、私は、元の席に座り直した。

 

 「ほれ、これでも食ってろ」

 

 特大サイズの容器を渡された。中には、ポップコーンがみっちり詰まってる。甘く香ばしいいい匂い。おとなしく受け取って、一つ摘む。さくりと歯が噛み潰す。温かい。美味しい。

 

 「……ちゃんとキャラメル味なのがむかつく」

 

 「そりゃ俺もキャラメル味が好きだからな」

 

 「ていうか貴方、パーティはどうしたのよ」

 

 「スルールに任せたというかスルールに見てこいって言われたんだよ」

 

 「むう……」

 

 スルールめ……。今度会ったらただじゃおかない。ポップコーン美味しい。

 

 「ところで飲み物は?」

 

 「図々しいな……。ほら」

 

 「ありがと。ジンジャエールか。いいじゃん」

 

 よく冷えてて、爽やか。ちょっと辛口。嫌いじゃない。結構好き。ストローでずずっと啜る。

 

 「あいつら以外に注目してるやつとかいるのか?」

 

 「いない。トーナメント表見たけどぱっとしないじゃない。あの子たち以外」

 

 アウトオブ眼中。これ死語じゃない?

 

 「聞いたのが間違いだったな……」

 

 やれやれと呆れた風にカイムが首を振る。もう、何よ。憶えてもしょうがないじゃない。

 

 「まあ俺も知ってる名前とか有名な名前はなかったさ」

 

 「ならどうせ有象無象よ。あの子たちの踏み台にしかならないわ」

 

 「大した自信だ。確かにあいつらは、たった一年でバカみたいに成長した。恐ろしく、羨ましいほどの成長速度だ」

 

 丁度今、一回戦第一試合が始まろうとしていた。

 

 「だけど才能ってのは色んな所に転がってるもんだ」

 

 入場してきたのは、シルヴァとスー2人と大体同年代っぽい男の子。対して、その子よりかなり年上に見える大柄な男の冒険者。

 互いに得物は、サイズ違えど剣。私と同じ刃渡りをしたロングソードに、長大なクレイモア。

 

 「どっちが勝つと思うよ」

 

 「……愚問よ」

 

 楽しげに聞いてくるカイムに、私は、子供っぽいと思いながらも唇を尖らせてしまう――試合開始の合図が聞こえた。終了の合図もほんのすぐ後だった。

 

 「あっちの子に決まってるじゃない」

 

 観客の盛り上がりに、笑顔で手を振り、応える男の子。その背景で、男の冒険者は、倒れ込んで動かない。多分気絶してる。

 無造作に振られた剣を、躱して、隙だらけの体を叩く。それだけ。

 正に瞬殺だった。

 

 「あれに勝てると思うか?」

 

 真面目な表情のカイムの問に、私は、すかさず答えた。

 

 「勝てるわよ」

 

 当たり前じゃない。まったく。本当に、まったく……。

 

 (……私、知らないんだけどあんなの!!)

 

 このトーナメント、あの子たちの今のステータスなら余裕なんじゃないの!? 当てにならないじゃない、原作知識……。

 でも、それでも。

 

 「勝てるわ、あの子たちなら」

 

 「ああ、是非勝ってもらいたいもんだ。俺の小遣いのためにな」

 

 「賭け事なんて不健全よ!」

 

 ぽりぽりとポップコーンを貪るカイムがとんでもないことを言い出した。なにやってんのよ、ほんと。

 

 「合法だからいいんだよ。それにほら、無名だからアイツらのオッズすごいんだぜ?」

 

 「……どれくらい……?」

 

 「これくらい」

 

 こ、これは…………心は揺れてないです。ほんとだよ?

 




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