「ね、ハオさん」
「? なに、アーシェ。
「ああ、いえ。ちょっとした感想なんだけどね」
「なによもったいぶって。さっさと言って。
「では、お言葉に甘えて……」
こほんと咳払いしたアーシェが言う。
「控えめに言って化け物だよね」
どんがらがんと私の
「
「他に言葉を探したんだけど端的に表すならもうこれしかないかなって。よっと」
あははと笑うアーシェが私の焼き残した〈ハンド〉の、黒焦げになった手を斬り落とした。その後、トドメとざくざく突き刺す。ほとんど炭化していたから崩れ落ちるが正しい。もちろん、私のおかげです。
「まあ、否定はできないかも……しれないわね。私、できるタイプだから」
自分でもやればできる子どころかパッと見、化け物よねっていう自覚はある。でも私思うのよね。
「すごい肯定的。でも私たちが助かってるのは、ハオさんのおかげだしねー。ありがとうございます」
――化け物じみててよかったって。化け物だからこうしてお礼ももらえてる。
「どういたしまして」
肩をすくめて、ちょっと困った顔をしてしまう。感謝されたんだから素直に喜びたいものよね。
「でもそろそろ限界かも」
正直なところ、魔力の底が見えてきた。
はっきり言うと防衛ラインは、ズタズタだった。冒険者のほとんどが大なり小なり負傷していて、かなりの数が撤退。それができず、物言わない肉塊に成り果てた。
〈ハンド〉の数も最初より減ったようには見える。何体も焼いて、焦がして、バラして、殺した。冒険者と同じくらいの死体が転がってる。
しかし〈ハンド〉は、私たちに迫ってくる。ゆっくりと確実に。私の魔法を受けながら。
それでも私は、何度も何度も魔法を放つ。
ここが最終ライン。これ以上は、進ませられないから。
「最期まで付き合うよ、ハオさん」
「縁起でもないこと言わないの。絶対に死なない。死なせない」
死なせない。今この場で、私の目の前でこれ以上死なせてたまるものですか。
そう思うと私よりずっと前で頑張っているシルヴァとスーのことが心配でたまらなくなる。
原作とか推しとかそういうのをさておいて、あの子たちが大怪我をして苦しんでいるところが脳裏に過ると胸を掻き毟りたくなるような焦燥感を覚えてしまう。
妄想。妄想よ。絶対に、大丈夫。
「カイムッ……!!」
早くどうにか見つけなさいよ! やけくそとばかりに頑張っているであろう彼の名前を呼んだ。
『――呼んだか?』
「カイム!!」
一瞬幻聴かと思ったけどそうじゃない。私の指輪から声がした。
『わざわざ通信してきたってことは……!!』
「まだ核は見つけられてない。色々と想定外、妨害とかにあって情けないことに状況は芳しくない』
「でも、それを伝えるための通信じゃない、わよね?」
『ああ、もちろん』
頷くカイムの顔が見ずとも頭の中に浮かんできた。意思の力に満ちた瞳は、諦めていない。
『作戦を伝える。これが今できる精一杯だ。それで、なんだが……』
ほんの少しの躊躇いを含んだ声の後、カイムが続ける。なんとなく私は察していた。
『……了承してもらうことがある。シルヴァとスーのことだ』
やっぱり。
『これから伝える作戦の考案者があいつで、これから一番危険な目にあうのは、あいつだ。スーにも付き合ってもらう。だから……』
「いいわ」
「いいのか?」
「いいの」
……よくはない。
「シルヴァもスーも自分の意思でそこにいる。なら問題ないし、私の了承なんていらないわよ」
なによりあの子たちこそがこの困窮した現状をひっくり返せる要素なんだから。
主人公という存在には、強烈な力があって、なによりあの子たちの努力と才能はそれができるレベルにあると思う。
賭けたい。そして、助けになりたい。
『なるほどな。確かに、それはそうだな。じゃあ、一つ頼まれてくれ』
「作戦のこと?」
そうだ、と通信機の向こうでカイムが頷いた。
『お前に一つ、やってもらいたいことがある』
「…………正気?」
カイムの言う作戦に、私は、冷や汗を浮かべた。ああ、これはシルヴァとカイム二人の合作なんだというのに、遅まきながら気づいた。
『できるだろう? 昔、飛竜を落とした時もできたんだからなこれくらい簡単だろ』
無理して明るくしなくてもいいのに。私はつい苦笑いしてしまう。
「……そうね。やってみせましょう」
覚悟を決めた私は、承諾した。
『助かる。そう言ってくれないと自爆特攻することになってた』
「ふざけないでよ。そっちもちゃんとやりなさいね」
『言われなくとも。合図、見逃すなよ』
「はいはい」
『じゃあ、二人に代――「大丈夫。代わらなくていい」――いいのか?』
「聞きたいけど、今はやめておく。ちゃんと帰ってきてから聞くことにする」
声を聞いたら行かせたくなくなっちゃうかもしれない。
『分かった。……じゃあまた後でな』
「ええ、またね」
その言葉を最後に、通信が切れた。カイムの声は聞こえない。
「恋人?」
「違うわよ」
からかうようなアーシェの質問に即答した。ちがう。あいつと私はそういう関係じゃない。
「共犯者ってところかしら」
魔王種を皆殺しにすると私たちは、いつかの青い春の日、誓いあった。
+++
『俺たちの役割は、シルヴァを魔王種のところに届けることだ。それがこの作戦の第一フェーズだ』
手が空を貫いて、前から迫ってくる。見慣れた光景。死を引き連れた〈ハンドレス〉の手。地面の下からか、はたまた頭上を覆う枝葉の中からか。今のように直接幹から伸びるてくることもある。
『だから全員で絶対に守り抜くぞ』
手が空中で爆散した。粉々になった肉片が僕の頬を微かに打つ。体液の蒸発する異臭が鼻を突く。
左を見れば、レントが手を突き出している。それからすぐに離れて、〈ハンド〉を引き付けていく。爆裂が何度も赤く、黒く炸裂した。炎の匂いが異臭を攫っていった。
「シルヴァ、速度上げられるか? いや、上げろ」
カイムさんの声が後ろから聞こえる。あの飄々としたカイムさんが切羽詰まった様子が隠しきれていない。想像できてしまう。きっとこうなっているという妄想が脳裏を過る――だめだ。振り返ってはいけない。そこにあるであろう恐ろしい光景から遠ざかるため、僕は自分に無理を強いる。
「
前に氷のラインを引く。進行方向をエミュレートして、木々の合間を縫うように僕の体が加速した。
ところが、その道を塞ぐように〈ハンド〉が現れる。〈ハンドレス〉もまた手を伸ばし、絡め取ろうとしてきた。
「ッ!!」
跳躍。傍の木を蹴りつけて、回避。着地地点に氷のラインを。再度加速――した直後。手の一本が丁度、僕の首が通るであろう地点に現れた。
避けられない。直感と理性が同時に叫んだ。
「兄さん、」脇から手が差し込まれて、「ちょっと揺れるよ」僕の視界がぶれた。
急激な加速。さっきまでの僕がまるで赤ん坊のはいはいに思えてくるような加速。三半規管がぐわんと揺れて、胃の中身をぶちまけそうになるくらいだった。
木の枝を蹴り、幹を蹴り、〈ハンドレス〉の手を踏んで、潰し、〈ハンド〉の頭を砕いてと空中を歩くようにスーの体は縦横無尽と、しかし確実に前に進む。
「す、スー……助かったよ」
「ん。危なかった」
小脇に抱える感じで運ばれるのは毎度のこと非情に情けないし、自分の弱さが嫌になるけど今はそんな場合じゃない。
鋭い風切りが聞こえる。木々が、手が猛スピードで脇を通り過ぎていく。横合いに視線を向けると爆裂の魔法で加速して追いついてきたレントの姿がある。背後にもちらりとカイムさんが見えた。みんな無事らしい。
それを確認してから今度は、上を見上げてみた。そこには、当然のように在る〈ハンドレス〉の異様が木々の隙間に見えた。
……巨大すぎて、近づいているのかどうかがわからない。スケールが狂っている。
いや、悲観視するな。
「スー。そのまま進んでくれ」
「まっすぐ?」
「ああ、できる限りまっすぐ」
「りょ」
……まだ早くなるのか。こんな状況でも浮かんでくる非力な自分への失望。カット。カットカット。やめ。やめだやめ。終わってからだ。現在に集中する。
「兄さん」
「どうかしたか? スー」
「急に自分の頭を殴打するのやめて。怖いわ」
「……ごめん」
今度は、挙動不審だった。気をつけよ――っ!! 視界の外から手が伸ばされた。〈ハンド〉はもう振り切っていて、ついてこれていない。つまり〈ハンドレス〉だ。
「ぼーーっとしてるな!!」
突っ込んできたレントの爆裂が手を薙ぎ払う――しかし。僕たちは、足を止めざるえなかった。太い枝の上に足を下ろす。近くで同じようにレントやカイムさんが足を止めていた。
「私でどうにかできた」
「はっ。そうかよ」
「二人ともそのへんでな……」
頬を膨らませたスーの睨みをレントが煽るから、とりあえず僕は仲裁した。
「そういう場合じゃない、だろ」
なにより今は目の前の障害をどうにかしないと進めない。
ありたいていに言って、壁がある。〈ハンド〉が組み合わさり、周囲の木々と〈ハンドレス〉の手まで繋がって壁になっている。正直なところ気色が悪い。
道理で〈ハンド〉が追ってこないはずだ……。ここに集まってるんだから。納得だった。なによりここを塞ぐ理由も分かった。
「……兄さん」
「ああ、この向こうに〈ハンドレス〉がいる」
「なるほど。これを超えなきゃ〈ハンドレス〉の顔は拝めないってことか。どうする? 穴でも開けるか?」
「飛び越えるのは……」見上げて、「難しそうだな」
生い茂る枝葉の中を抜ける気にはならない。あそこにもきっと〈ハンドレス〉の手が潜んでいるだろう。
後は、この壁の途切れ目を……。いや、無意味だ。きっとこの壁は僕たちに合わせて移動する。堂々巡りだ。
「……悠長に考えている時間もないぞ」
カイムさんに言われて気づく。……しまった。集中しすぎていた。
「多いな」
レントの呟きに頷く。がさがさと草花を踏み荒らす音がいくつも迫ってくる。距離も近い。途中から振り切ったと思ったのも僕たちがここで必ず立ち止まると分かっていたからか。油断していた。
「死んでから反省会をするつもりはない。レント、付き合え」
「はいはいっと」
「2人とも何を……? まさか!!」
地上に降りていく2人を見て、すぐに理解した。
「そういうことだ」
2人で壁をこじ開けて、進めとカイムさんは言外に言っていた。とても合理的だ。この場を切り抜けて、先に進むには誰かが足止めをする必要がある。
「だけど、それは……!」
〈ハンド〉の群れと〈ハンド〉の壁の2つを相手にすることになる。
「自殺行為だ!」
2人とも分かっていることは承知でも言わずにいはいられなかった。
「しょうがないだろう? ご指名なんだ」
追いかけた先で、レントが指す方を僕は見た。男の顔がついた〈ハンド〉がいる。他の〈ハンド〉と代わり映えはしない。ただその男の目には、何かの感情が浮かんでいた。なによりレントを見ているように感じる。
「紹介するぜ。クソ親父だ」
「彼が……」
普通の男性に見えた。どこにでもいるような普通の人。それでもレントが彼を見る目に映る感情には、憎しみよりも哀しさのほうが強かった。
「兄貴と母親は殺せた。後は、こいつだけなんだよ。早く楽にしてやりたい。もう見ていられないんだ。だからさ」
レントは、にやっとまるで言ってみたかったとばかりに言う。
「俺を置いて先にいけ」
「レント……君なあ……。そんな無理矢理その場の空気を軽くするような……」
「じゃあ俺も行っていいか?」
「カイムさんが誘ったんだろ!?」
「カイムさん!」
茶化すカイムさんに、少し声を荒げてしまった。そんなふざけてる場合じゃないでしょう。
「シルヴァ。保証はしないが死ぬつもりはない。遊んでる場合でもないからお前はさっさといってやることやれ」
「そんな……」
「兄さん行くよ」
「カイムさん! レント! スー、離してくれ!」
離れる間もなく、またしてもスーに抱えられて運ばれる。力で逆らっても無意味だから声をかける。首を振って、スーは僕を離さない。
軽くレントが手を振る。シルヴァさんが僕に一瞥する。距離がぐんぐんと離れて、2人は、〈ハンド〉の群れに消えていった。
また、僕はレントを置いていくのか……!!
「カイムの言う通りだよ」
「分かってるよ! 分かってるけど……!」
分かっていた。分かっている。それでも……! ああ糞! やるせなさが募るけど……。
「ごめん。スー」
「いいよ、兄さん」
「ああもう謝ってばかりだ。情けない……」
「兄さんはいつもそんなのだからいいよ」
「いつも!?」
いつもってなんだ!? 僕はいつも情けないのか……!? 愕然とする僕を尻目に、スーはくすっと笑う。
「冗談」
「冗談って……。……はは、スーありがとう。肩の力が抜けた」
「それはよかった。兄さん。壁だよ。どうする?」
言われて見るともう壁も目の前。〈ハンド〉が蠢き、その手と目がこちらに向けられている。気色が悪い。
「ぶちぬこう。厚さが分からないけどそれしかない。スーの魔法……螺旋だったね。あれに僕も合わせる」
「そんなことできるの?」
「できると思う。視た限り僕もやれなくはない」
「流石、私の兄さんね」
誇らしげなスーに、少しばかり僕もむず痒くなる。けど褒められて悪い気はしない。
「一気に接近して、同時に放つよ」
時間をかけると捕まってしまうからだ。
「りょ」
「じゃあタイミングは……」
壁まで距離はない。簡潔で、分かりやすく……。
「3.2.1.でどう? 私が声に出す」
「分かった。それでいこう」
「じゃあ、兄さん――合わせてよ」
瞬間、急加速。一歩の踏み出しで、大地が大きくえぐれた。ぼんっと大気を破砕する衝撃音。体に伝わり、骨がきしむ。
「3!」
ごうごうと風の音。さっきの樹上での移動はトップスピードじゃなかったのを実感する。
「2!」
距離はほとんどない。魔力を練る。螺旋の仕組みは分かってる。スーの癖も理解できている。妹のことだ。大体分かる。だから合わせられるように準備する。
火の属性の破壊を、水の属性の流れに乗せて、廻転を描く――故に螺旋。
「1!」
魔力がほとばしる。合わせる。スーの突き出した手に、〈ハンド〉が反応する。遅い。魔法は既に起動している。
突き出した手を中心に、破壊がぐるぐると廻転する。魔法の予備運動。ここから更に速度を上げて――!
「「
〈ハンド〉の壁をものの一瞬で採掘して、向こう側の景色を覗かせた。道ができた。通れる! 今だ! と思った時には、僕たちは〈ハンドレス〉の前に居た。
〈ハンドレス〉がいる。巨躯が、そこに在る。スケールが狂うほどに巨大な姿を僕たちに晒している。
視られている。見られている。観られている。覧られている。幹に、びっしりと張り付けられた目が僕らを見ていた。まぶたがある。まばたきがある。色んな形で、色んな色がある。ああ、あれはきっと誰かの目だ。
前見た時、遠目に見た時はなかった。僕らは今、敵対者として認識されつつある。
手が向けられる。無数の手。上部に茂る枝葉の中、幹から生えた新たな手、地面を割いて現れる手。明確な攻撃の意思があった。
すぐに来る。確信だった。
「スー!」
「兄さん、どれくらいかかるの?」
抱えられたままスーに訊かれる。距離は大丈夫。条件もいい。前に撃ち込んだ弾丸を再度起動させる時間とそれを核に向かわせる時間……計算できた。
「あまりかけない……つもりだ。核を見つけ出し次第、マーキングする。それからハオさんに合図する」
びりびりと肌に伝わる威圧。その影響なのかどうにも体が重く感じる。唇もそれのせいで重い。
「分かった。じゃあ、それまで暴れる。すごく、全力で。どうなってもいいくらいに。色々口から出そうになるかもしれないけど堪えてね」
「……お手柔らかに頼むよ」
「ん」
瞬間、足元の地面が大きくめくれあがった。無数の手が死神の鎌のように来る。
ただ不意打ちを食らうスーではない。既にそこから離れている。前髪も、横も襟も乱れに乱れる。
手が追いすがる。〈ハンドレス〉のテリトリー。足元だ。逃げ場はそうない。隙間に体をねじ込み、逃れようとするしかない。
そんな最中、僕は目をつむった。視覚情報をカット。魔法で、余計な情報を切り取る。普段は絶対にやらない使い方。必要だと思ったから
耳を塞ぐ。魔法で音の流れを制御する。
それから、僕は、魔力の流れに没入した。
閉じた視界にまず広がったのは、鮮やかな魔力の流れ。〈ハンドレス〉の巨大な魔力が僕の目を焼き切るばかりの輝きを放つ。それは、〈ハンドレス〉の形と同じだった。当たり前だ。魔王種は、魔力によって構成されている生命体。人と違って、生命機能として切り分けられてない。
その内側で僕が最初にやるのは、僕自身の過去を見つけること。
――検索開始/............弾丸確認。
これは容易い。自分の魔力は一目瞭然。髪や爪、皮膚とは違って、魔力はもっと深いところから現れる。だから魔法使いなら分かって当然だ。
弾丸の形が、〈ハンドレス〉の中に食い込んでいるのが見えた。
レントと脱出する時に放ったものだ。まだちゃんと残っていた。微かな安堵。
次にやるのは……頬が熱い。連鎖するように体の至る所が熱を持っているのに気づく。液体が伝う感覚。熱の後にやってくる痛み――カット。この苦痛を僕から切り離す。今、必要ないからだ。痛がるのは、後でいい。
次にやることのは、魔法の遠隔起動。
――自分の魔力を呼び起こす。遠隔魔法起動/.....................失敗。
集中しろ。体の感覚をカットする。スーにしがみついていられるだけの力を残す。集中しろ。集中しろ。集中しろ。
遠隔魔法起動/.....................失敗。
どうして? なぜ動かない? どうして動かない? わからない。混乱するな。僕、だめだ。落ち着け。早鐘を打つ心臓に耳を向けるな。カット――。
「兄さん」
……………呼気が荒い、スーの声。カットしたはずの聴覚に声が届いた。
「私がいる。私を信じて。周りのことは気にしないで」
……そうだね。最初から信じてる。違うんだ。スーを信じていないわけじゃない。
「だから焦らないで。ハオに届けるんでしょ」
――――遠隔魔法起動/.......................................成功。
「……できた」
「ほんと兄さんは、ハオにゾッコンなんだから」
呆れ半分笑い半分の声が遠のいた。再起動した弾丸が〈ハンドレス〉の中を疾走するのが見える。これに〈ハンドレス〉が反応した。露骨に魔力が集中していく場所が生まれる。〈ハンドレス〉の防衛機構が起動したんだ。
場所は、〈ハンドレス〉の巨体の、奥深く。中心に近く、地面より遠く。天に近い場所。
間違いない。見つけた。見つけたぞ。あれが、あれこそが
「〈ハンドレス〉の核だ」
終わらせる。僕は、核へ弾丸を走らせた。魔力の流れに乗っかるだけでいい。それで僕の弾丸は、自然と核に届く。だから後は、
「頼みました、ハオさん」
『――任せて』
首元で揺れる指輪から声が返ってきた。そして、
『――――征け、雷公鞭《レイ・ル・ザン》』
決着は明日になります。