TS異世界転生早死師匠ポジRPG   作:クルスロット

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第5話 魔法使いの授業

 

 「というわけで、これからの魔法の話をします!」

 

 「はい! ハオさん!」

 

 ギルドから帰宅した私たちは、リビングに居た。やることは言ったとおり。昼間私が転がっていたソファから元気のいい返事がした。

 うんうん、シルヴァ。いい返事ね。素晴らしいわ。

 

 「……その格好なんです?」

 

 「ちょっときつくないか? なあ、フォン」

 

 「いえいえ、よくお似合いだと思いますよ」

 

 「黙りなさい、カイム! というか何勝手に来てるのよ!」

 

 やじを飛ばしてきた赤ら顔のカイムに、ばちんと電撃を飛ばすもカイムの片手から放たれた水に軽く掻き消された。分かっていたことだけど……む、むかつく……。酒を呑んでてもしっかり対処してくる……。

 

 「人んちのリビングで、優雅にワイン飲んでるんじゃないわよ!」

 

 「敵情視察? ギルドでの飲食代分見せてもらおうと思ってな」

 

 「こ、こいつ……。フォンもフォンよ! なに一緒に来てるのよ! この飲んだくれどうにかして!!」

 

 「どうにかと申されましても……。まあ、いいじゃないですか。後で、新居祝いのワインあげますから」

 

 カイムの向かいで、これまた上品にグラスを傾けるのは、フォン。鳶色の瞳が穏やかな色を浮かべて笑ってる。笑ってる場合じゃないが!!

 

 「そういう話――「チーズもつけます。ここの特産品みたいですが美味しいですよ」……承認します」

 

 こほんと咳払い。仕切り直し。チーズがつくなら、許します。

 

 「いい目のつけどころよ、スー。よくぞ聞いてくれました」

 

 今のやり取りから話進めるんですね……。とかいうシルヴァの言葉は、スルーします。

 

 「座学ですからね座学らしい格好をしないと」

 

 The・女教師。前世の記憶から考えるに、女教師は、黒のスーツと揃いのタイトスカートが基本よ。つまりこれは正装。間違いないわ。

 

 「……そうなの? 兄さん」

 

 「僕が通っていた塾は、そうではなかったけど……。都ではそうなのかも……しれないな……」

 

 「兄さん、苦しいわ」

 

 「そう言うな……」

 

 「……というわけで!」

 

 私の教師性が揺らぐ前に、黒板(家の中に放置されていたの)を指し棒でぺしぺしする。視線が集まってきたのに、満足した私は言葉を続けた。

 

 「では、魔法の話です。魔法を使ったことは?」

 

 スーは、首を横に振った。シルヴァは、逆に首を縦に振る。

 

 「え? そうなの? ずるいわ、兄さん。そんな楽しそうなこと独り占めにしてたなんて」

 

 「お前が勉強を嫌がったからだろ……」

 

 「だって普通の勉強は楽しくないもの。魔法の勉強をしているなら早く言ってほしかったわ」

 

 すねて、頬を膨らませるスーと困り顔のシルヴァは、見ていて面白いわね。

 

 「シルヴァ、なにかご両親は神様を信仰してたりする?」

 

 「一応、天秤神様を。正式な洗礼とかはしていませんが僕らも同じく」

 

 「じゃあ、問題ないわね」

 

 「神様がなにか関係あるの?」

 

 「良い質問ね、スー」

 

 兄さんに聞いたんだけど……。という呟きは聞き流します。折角なので説明したいんです。教師スタイルなので!

 黒板にチョークを走らせながら口を開く。これ結構難しいわね。

 

 「天秤神ニュートラルが貴方たちのご両親の信仰していたものね。

 この国で一番信者の多い神様。魔術とか商売とか法の神様。信仰して得られるものは少ないけどマイナスもないわ」

 

 描いたのは、簡単な天秤の絵。その両隣に、足が三本の鳥と双頭の蛇をさくっと書いてみる。うん、悪くない。

 

 「左の鳥が光神ロウ。人を治療する術、癒術を使うには、ロウを信仰する必要がある。

 右の蛇は、闇神カオス。人を呪う術、呪術を使うには、カオスを。

 そして、この2つの洗礼を受けて信仰する限り、魔術を使うことはできないわ」

 

 「闇神カオス……聞いたことないですね」

 

 「まあ、あんまりメジャーではないわね。一応、光の対にはなってるけどそうそう街中では見かけないわ。それに頭が2つの蛇をタトゥーとかアクセサリーにしている人にあったら気をつけなさい」

 

 「なぜ? なにか問題でもあるの?」

 

 不思議そうに私を見上げるスーに、頷いて答える。

 

 「カオスを信仰している人間は、基本裏の人間よ。ロウは、あらゆる善行を司っている。その対極のカオスは、あらゆる悪徳を司っていて、肯定しているわ。つまり悪い人が集まる宗教ってこと。

 なんにせよ、できる限り関わらないようにしなさい」

 

 脳裏をよぎる苦い思い出。関わっていいことなかったもの。

 

 「はい。魔法の話に戻りますね。魔法はざっくり5つの属性に分かれます」

 

 ぱっと黒板を綺麗にして、新たに私は、箇条書きする。

 

 

 ・月 私はこれ。

    今黒板を綺麗にしたのもカイムに放った電撃もこれの応用ね。

  星、大気、雷を司る。

 ・火 

  熱、破壊、火を司る。

 ・水 カイムはここよ。憶えておいて。

  再生、流れ、水を司る。

 ・木 ここもカイムは使えるわ。

    二重属性よ。憶えておいて。大事なことなので二回言いました。

  成長、命、植物を司る。

 ・金

  金属、強靱、大地を司る。

 

 

 「属性が司る力を操るのが魔法というものの大まかな概要ね」

 

 「俺の魔法をネタバレ……まあ、いいか……」

 

 テーブルの利用代よ。今どき何でもお金かかるんだから。

 

 「とまあこんな感じ。シルヴァは、使ったことあるのよね?」

 

 「はい、母さんと同じ水が使えました」

 

 ふむふむ、水ね。悪くないわ。便利だからね。旅に、水の魔法使いは必須と言われる世の中よ。

 

 「よし、じゃあ実際に何が使えるか見てみましょう。じゃーん、魔力測定器〜〜」

 

 とテーブルの上に置いておいた魔力測定器を手で示す。魔力測定器は、水晶型で、中を無色透明な液体が満たしている。

 

 「これに手をかざして、中の液体が何色に変わるかで、使える魔法が分かるの。複数使えるなら複数色が現れるわ」

 

 こんな風にね。と黒板に書き加える。

 

 魔力反応色一覧

  ・月 = 白

  ・火 = 赤

  ・水 = 青

  ・木 = 緑

  ・金 = 金

 

 ちゃんとノートに書いてるシルヴァは偉いわねえ。私は、スーみたいにほえーって顔で見てた気がするわ。シルヴァに百点。

 

 「じゃあ実際に――「私やる」――よし、スー。お願い」

 

 わくわくとした様子のスーが水晶に手をかざすと水晶に満たされていた液体が鮮やかな赤と青に変化した。

 

 「火と水? どうなの? 珍しい?」

 

 「いい組み合わせだ。応用性もあるし出力を上げていけばいい火力にもなる。後、2つ属性を持っているのは、それなりの珍しさだ。うちのエルフくらいになると3つ持ってる。あれはもう神がかってるぞ」

 

 「へえ、エルフ。今度会わせてよ」

 

 「いいぜ。今度連れてってやる」

 

 「カ・イ・ム〜〜」

 

 「へいへい。おとなしく呑んでますよ」

 

 いや、ボトルほんと開けちゃってるじゃない! 飲みすぎでしょ!?

 

 「私の分呑まないでよ!」

 

 「へいへい」

 

 「分かりましたでしょ!」

 

 くっ……酔っ払いめ……!! あ、カナッペ食べたい。私の分も残しておきなさいよ。と強く念じた視線をカイムに向けておく。

 

 「とりあえず、そういうことよ。じゃ、シルヴァも」

 

 「分かりました」

 

 スーと入れ替わりで、シルヴァが水晶に手をかざすと無色に戻っていた液体がまたしても青と赤に染まった。スーとシルヴァ、二人とも同じ色か。兄妹ってのはあるわね。

 

 「双子だからですかね?」

 

 「あら、双子なの?」

 

 確かによく似てると思ってたけど……思い出した。ゲームでは、選んだ後、双子の片方が隣で死んでるのよ。胸糞悪いわね。

 

 「僕が先に生まれたので、兄ということになってます」

 

 「身長は、私の方が高いけどね」

 

 「それは……そのうち追い抜く」

 

 意地悪なスーに、渋い顔をしながらもシルヴァが言い返した。うーん微笑ましい。推せる。

 

 「そうね。魔法の形質は、基本血から由来するわ。だから双子で同じなのは、十分ありえる。というより個体として近似になればなるほど同じ属性になるはずよ」

 

 「勉強になります」

 

 「そうなのね」

 

 「そうなんだな。知ってたか? フォン」

 

 「いえ、癒術師には、不要な知識ですからねえ」

 

 「というわけで、本題に移ります」

 

 四者四様な反応を見てから私は、黒板をくるんと回転させた。事前に書いておいた本題がどんっと現れる。ふ、完璧ね。流石私。

 

 「魔法を使ってみましょう」

 

 黒板裏に書いておいたのは、基本魔法の一覧。各5属性の基本魔法は、教科書に載せられるように呪文(テンプレート)化されている。2人がどの属性でもいいように、まとめて書いておいた。

 

 「あれ、かなり頑張って作ってますね」

 

 「凝り性だかんなあいつ」

 

 「酔っぱらいどもは黙ってなさい」

 

 テーブルから茶々を入れてきてうるさい酔っぱらいに釘を刺しておいてから二人に視線を戻す。

 シルヴァは、やっぱりノートに鉛筆を走らせてる。眼鏡の向こうの眼が真剣に、黒板を見ている。スーは、へえって顔をしてた。まあ、気持ちは分かる。

 

 「じゃあ、シルヴァ。使ったことある魔法は、一覧にある?」

 

 「えーっと……〈クリエイト・ウォータ〉を」

 

 「それじゃ、このコップに一杯頼むよ」

 

 「シルヴァ、どう?」

 

 「大丈夫です」

 

 カイムからコップを奪い取って、シルヴァに差し出す。少し緊張している様子で受け取った。

 

 「いつでもいいわよ」

 

 「それじゃあ……」吸って吐いて深呼吸した後「〈クリエイト・ウォータ〉」

 

 シルヴァの指先が一瞬、青く瞬いた。水の魔力反応色。コップの底から水が湧き出て、めいいっぱい満たした。その傍からカイムが一口飲んで、笑顔を浮かべた。

 

 「うん、美味い。お見事」

 

 「ありがとうございます」

 

 「私が先生なんだが……!」

 

 「いや、そういうわけじゃ……」

 

 「大丈夫。シルヴァには怒ってない。よくできました!」

 

 よしよしぽんぽんと頭を撫でる。さらさらだな〜〜。触っていて心地いいからついつい長めに撫でてしまう。

 

 「…………」

 

 スーの視線が痛い。ごめんて。別にお兄ちゃんとるわけじゃないって。すすっとシルヴァの頭から手を引いた。いや、分かるよ。お姉様が許嫁と一緒に歩いてるの見ると無性に腹立たしかったもの。

 

 「それじゃあ次は、私のにお願いします。水が欲しくなってしまいました」

 

 「フォン〜〜……」

 

 カイムと入れ替わりに、フォンがコップを差し出してきた。私、頭痛がしてきた。コップは必要だったけどさ……。

 

 「まあ、いいでしょう。スーは、初めてだったわね」

 

 「……やり方は?」

 

 「魔法は、ざっくり言ってイメージよ。さっきのシルヴァのを思い出しなさい。コップに水を満たすの。それを頭の中で思い描けたら唱えなさい」

 

 「〈クリエイト・ウォータ〉」

 

 「え?」

 

 早くない? なんて思ってたらスーのかざした掌から水が吹き出した。鉄砲水と言い表すのが正解ね。コップが水に呑み込まれて、フォンに、そのままぶち当たった。

 もちろん、まともに浴びたフォンは吹っ飛ぶ。ありゃーー……リビングがびちゃびちゃだ。絨毯後で干さなきゃ。

 

 「こういう失敗かぁ。テーブル巻き込まなかったのは、偉いわよ、スー」

 

 「勢い出しすぎた。次はいける」

 

 うんうん、めげないのはいいわね。

 

 「のんきにしてる場合ですか?! フォンさん、大丈夫です!?」

 

 「とっと……ああ、大丈夫ですよ。ぐしょ濡れですけどね」

 

 「結構勢いよく吹き飛びましたけど?!」

 

 「これでも一応冒険者ですから受け身の一つくらいはとれますよ。酔いも冷めましたし、まあいいでしょう」

 

 「そ、そうなんですね……!」

 

 癒術師でも基本体は鍛えるし、避けることを覚えるから当然といえば当然ね。後衛だから安全っていうのは、幻想よ。

 

 「次は、庭でやりましょうか」

 

 「大丈夫。次は、コップに入れられるわ」

 

 「外に行くわよ」

 

 ――これが私の杞憂で済まなかったってことだけは言っておくわね。

 

 「すっかり酔いが冷めちまったな……」

 

 きめてた髪型もどこかしんなりと元気が無くなったカイムがぼやいた。

 スーの魔法が成功することはなかった。水の量のコントロールがまったく効いていないスーは、何度もカイムを吹き飛ばした。

 数えるのに両手が足りなくなった時、私たちは、家の中で休憩することにした。

 

 「治癒ついでに私がアルコールを分解しましたからね」

 

 そりゃナイスだよ、フォン。

 

 「呑み直すかぁ」

 

 「スー」

 

 「……なに?」

 

 ソファで足をぶらつかせるスーは、拗ねたように唇を尖らせて、冷やしたオレンジジュースを啜ってる。

 

 「魔法の練習、カイムを吹き飛ばすなら何度でもやっていいわ」

 

 「それなら楽しそうね」

 

 つまらなそうなスーの顔に、笑みが浮かぶ。

 休憩にしたのは、スーの集中力があっという間に無くなったから。どうやら興味あること楽しいことには集中力が向くタイプみたい。

 とてもわかる。お勉強ってなると面倒くさいわよね。心の底から理解できるわ……。内心で私は、うんうんと頷いた。

 

 「控えとくか……」

 

 それでいいの。放っておけばずっと呑んでるんだから、全く。水でも飲んでなさい。

 

 「さて、どうしましょうか……」

 

 まあ、目下の問題は、スーの魔法と。

 

 「君の体力か」

 

 「……面目ないです」

 

 ついでにやったシルヴァの体力テストが散々だったのも休憩にした理由の一つ。

 反復横跳びとか50m走。腕立て伏せとか腹筋とかの軽い運動をやらせてみたんだけどこれがまあ、貧弱。びっくりね。

 

 「鍛え方が足りないわ、兄さん。しょうがないわね」

 

 「くっ……なにも言い返せないこの貧弱さが憎らしいよ……」

 

 ちなみに、スーは、シルヴァの倍動いたけど元気も元気。これがもやしっ子とお転婆娘の差か……。

 

 「じゃあ、そこを改善させましょうか。カイム」

 

 「うん? なんだよ。酒は呑んでないぞ」

 

 「それは偉いわね。いやちょっとシルヴァと走ってきてくれない?」

 

 体力つけるにはやっぱり走り込みだと思うの私。実家でも走らされたし。多分そう。ゲーム的にも体力トレーニングでは、走る一択だったわ。

 

 「え? なんで?」

 

 「そりゃ協力トレーニングが最も効率がいいからよ。とりあえず今走れそうな人とシルヴァを走らせようと思うの」

 

 「なんだろうな。微妙に理解できない」

 

 「そのままの意味よ」

 

 「そ、そうか……。

 まあ、いいや。たださ、俺がふっかけた目標を目指してるやつを俺が育てるのは意味わかんねえだろ。塩送ってんじゃん」

 

 「いいじゃない。ちょっと走るくらいよ。それくらい教えただけで負けるようになるの?」

 

 「……いや、ならないけどさ」

 

 「じゃ、決まり。晩御飯、作ってあげるからそれまで走って来てね」

 

 「…………」

 

 なにかもごもごとするカイム。うーんはっきりしないわね。

 

 「いいじゃないですか。食前に運動して、お腹を減らしてきたら一層、夕食が美味しくなると思いますよ」

 

 「子どもを言いくるめるみたいな言い回しするなよ……」

 

 がりがりと頭の後ろの方を掻いて、「しゃーないと」呟いたカイムは、椅子から立ち上がると外を親指で指した。流石、フォン。助かる。

 

 「シルヴァ、走る準備して外に出てこい」

 

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