TS異世界転生早死師匠ポジRPG   作:クルスロット

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今月からマーベル映画が毎月あるって聞いてびっくりしてます。
恐ろしいですね。


第8話 初めてのハンティングクエスト

 

 「というわけで、初めての討伐任務です! はい、拍手!」

 

 「ぱちぱち〜〜」

 

 「は、はい」

 

 乾いた拍手が空と人っ子一人居ない平原に響く。ついでに鳥の声、風の音が賑やかしとばかりに通り過ぎた。

 現在地は、私たちの住んでいる〈ユーフォルビア〉近辺の馬車で30分ほどにある依頼主の村で簡単な挨拶をしてから徒歩5分のところ。

 広い平原と直ぐ側には広大な森林が広がっている。

 言った通り。今日は、シルヴァとスー、二人の初めての討伐任務。ギルドの雑用みたいな仕事と訓練、勉強ばかりだった二人には、とても刺激的な話。

 それもあって、シルヴァは、拍手をする手が震えるほどに緊張しているし、スーは、引き絞った弓矢みたいで、手を離せば獲物目掛けてすっ飛んでいきそう。

 

 「危険な仕事なので、緊張感をもっていきましょう。持ちすぎると動きが鈍っちゃうので気をつけてね」

 

 「は、はい!」

 

 「うん、肩から力抜いてね。歯からも力抜こうね」

 

 「ぱちぱち〜〜」

 

 「上の空だね。森じゃなくてこっち見てね。後、拍手はもういいよ」

 

 いや、本当にどうしよう。シンプルどうしよう。こんなに制御不能になるとは思わなかった。ある意味緊張してるってことかしら? とりあえず制御の効くシルヴァをいつも通りにしておこう。

 

 「じゃ、今日何を討伐しにいくかを説明してもらおうか。シルヴァ、お願い」 

 

 「え? あ、はい。えーっと……なんでしたっけ」

 

 「あれほどした予習復習も緊張には勝てなかったか……」

 

 「すみません、ハオさん……」

 

 「しゃーない。切り替えていこう」

 

 頭を落として、しょげるシルヴァ。

 やっぱり、初めてならこういうもんなのかな。自分の時どうだったかな……。まあ、よしとしましょう。これは、要改善としてメモしておいて、今後の課題ね。

 

 「ぱちぱち〜〜」

 

 「拍手リピートする機械になっちゃった?」

 

 「ぱちぱち〜〜」

 

 目、怖。くわってなってる。ガンギマリじゃん。大きな目がぽろんって出てきそう。わあおっきなルビ〜〜にはならないんだよね。グロだわ。ワクワクしすぎてこんな顔になってる人はじめてみた。

 

 「あ、もう行ける感じ?」

 

 「いや、まだだよ」

 

 「ぱちぱち〜〜」

 

 「怖いから拍手止めて……!?」

 

 早く行かせろってこと? いや、私負けない。ちゃんと先生するわ。拍手を両側から挟んで、拍手を無理矢理止める。無駄に抵抗が強いわね。

 シルヴァは、体力がついてそう簡単にはへばらなくなったし、スーは、前よりずっと動けるように何って、魔法もまともになった。

 いくら半年前より随分と成長しているとしても、これだけは妥協できない。

 

 「まず最初に言っておきます――ゴブリンは、最弱の分類ですが決して簡単な魔物ではありません」

 

 「……それは、そうですね」

 

 お、シルヴァの正気が戻った。くいっとずらした眼鏡を直してる。得意な話になって、思考が切り替わったのかしら? チャンスよ、私。

 

 「じゃあシルヴァ、ゴブリンの特徴、注意点を今回の仕事と合わせて説明お願い」

 

 「分かりました」

 

 「手早くお願いね、兄さん」

 

 「今日だけは返すぞ。しょうがない妹だ……」

 

 こほんと軽く咳払いをして、シルヴァは、私たちの左手数百メートルに広がる森を指差した。

 

 「あの森の中にある廃村に巣を張ったゴブリンの討伐が今回の討伐の基本的な内容です」

 

 「全殺し」

 

 「うん、合ってるけどまだだよ?」

 

 うちの妹怖いなーって顔のシルヴァは、冷や汗を浮かべながらも言葉を続ける。偉いぞ〜〜。

 

 「……ゴブリンは、群れるタイプの魔物です。そして、上下関係があり、非常に社会的な魔物です。さらに、魔物の特性として、群れの規模に応じて様々な種類のゴブリンが現れます。

 腕力に特化したホブゴブリン、機動力のゴブリンライダー、魔法を使うシャーマンゴブリン。統率者のキングゴブリン。ここまで出てくると準魔王種級の驚異として認定されるとのことです」

 

 よく勉強しているわ。読んだ本を頭に入れられていて、簡潔に話せてる。うちの弟子の加点ポイントが多すぎる。

 

 「色々伝承レベルのゴブリンやちょっと謎の多いゴブリンが居るみたいですが、今回のゴブリンは、群れとしてレベルが低いみたいですから除外しておきます。

 理由としては、近くの村で、作物や家畜に被害が出たのを切っ掛けにした依頼の発生ですからホブがいる可能性も低いです。もし、中以上の群れなら依頼者の村が消えています。

 結論、レベルが低く、冒険者の中で言う弱いゴブリンの群れ、つまり発生間もない群れだと思います」

 

 えーっと……。とシルヴァは、何か思い出すように目を泳がせた後、言葉を続けた。

 

 「あと、依頼主の村人からの目撃証言などから森中の廃村がゴブリンたちの巣になっていると思われます」

 

 「よし、合格。シルヴァよく勉強できてるわね」

 

 「ありがとうございます!」

 

 「流石ね、兄さん」

 

 「スーも少しは説明できるように勉強しような」

 

 「……兄さんの言葉が鋭くなるばかりなのハオの責任よ。責任とって」

 

 「どういう責任転嫁よ。とりあえず、シルヴァの説明してくれた通りです。正直、今の貴方たちが力を合わせれば問題ないと思う」

 

 だけど、と前置いて。

 

 「死神っていうのは、油断してるとやってくるものよ。気合入れていきましょう!」

 

 

 +++

 

 

 「……なんでゴブリンいないのよ」

 

 不満げなスーが転がっていたゴブリンの頭を蹴り飛ばした。斬り落とされて時間が経っているからか首の断面から血は、溢れない。

 スーの言う通りだ。僕は、足元に転がっていた両手足を失ったゴブリンを跨いで、廃村を見回した。

 森をくり抜いたようにある廃村は、周囲を高くて厚い柵で囲まれている。

 しかし、整備をする人がいないのもあり、朽ちて、見る影もない。

 家屋も元の形がぎりぎり分かるくらいから屋根を失い雨ざらし、大黒柱がばきりと折れて、横倒しになったものと皆が皆、落ち葉や雑草に塗れていて、自然に帰るところだ。

 その上や間に、ゴブリンだったものが無数に散らばってる。どれも無残にばらばらになっていたり、真っ二つだったり猟奇的に殺されていた。

 

 「他の冒険者と依頼がかぶった? ブッキング?」

 

 それはないと思う。こんな依頼でかぶるのもそうだし、切り口も荒くて、なにより殺し方があまりに雑だ……と思う。

 

 「こんな状況でほっておくような冒険者だとしたら遭遇したくないな……」

 

 ……ちょっと冷静になってきたな。緊張で胃が痛くない。いつもの調子が取り戻せてきたみたいだ。

 

 「そうね。他の魔物の仕業だと思うわ。人里近くだし、死体の放置なんてしないわ。血の匂いに惹かれた獣が食べたりして、魔物になったりするし。他の魔物がやってきたりもする。

 今回の任務だって、最後は、死体を処分するまでが仕事よ」

 

 つい独り言ちたのに、一緒に歩いていたハオさんから出た言葉に僕は、頷く。この人の言うことだ。間違いない。

 

 「……だったら」

 

 廃村の中をくまなく探索したほうがいいんじゃ――と言おうとしたところ。

 

 「ぎゃー!!!!」

 

 酷い叫び声を上げながらスーが走ってきた。尋常ではない表情をしている。敵? いやでも、敵だとしたらスーがこんな顔するか?

 なんて思っていたらザーッと音と砂煙を上げて、スーが停止した。よくもまあ前衛の人間は、こんな大斧を背負ってここまで俊敏に動けるものだ。

 

 「兄さん!! 変態だわ!!」

 

 「? いや、そんなの……――」

 

 迫真の声と鋭い指差しに、僕は視線を引かれて、驚愕した。

 

 「あ、あれは……!」

 

 僕は、知っている。あれの名前を、あの特徴的なマスクと真っ赤に汚れた燕尾服、同じく血塗れの斧を両手に持った下半身が丸出しのゴブリンの名を知っている!

 

 「連続殺()鬼マスクドゴブリン!! こんなところでレアゴブリンの一角に遭遇できるなんて……」

 

 「え? ええ……?」

 

 「ご存じないのですか!?」

 

 「え? あ、いや……ごめんなさい……」

 

 「いえ、誰もがなんでも知っているわけじゃないですからね……。仕方ありません」

 

 うんうんと僕は、頷いた。誰もが何もかもを知っていれば本なんて作られるわけがない。

 

 「最近熱心に読んでた本ってそういう……。あーそれじゃあ説明してもらえる?」

 

 「はい。あれは、ゴブリンの中でも非常に珍しいレアゴブリンに分類されてます。

 その中でもあれは、同族を殺す連続殺鬼鬼マスクドゴブリンです。同族の皮で作ったマスクを身に着けてるのが特徴です。

 ゴブリンは、何故か同族を殺すレアタイプが居るみたいで、世の中には、ゴブリンコレクターという人たちが居て、情報などを収集しているみたいです。ハンターの人たちは、そういうのをまとめて本にしてるんです」

 

 「非常に感銘を受けました……。一つの魔物の種類にそんなに執着ができる人たちの存在とその一つの魔物の奥深さ。実に面白いです」

 

 「そっか……」

 

 「そうなんです……!!」

 

 「それはそうとして……「キモいわ!! 死ね!!」……その珍しいゴブリンがもうぐしゃぐしゃね」

 

 「へ?」

 

 言われて、ハオさんの視線の先を見ると僕は、思わず固まった。余所見をしているうちにスーが連続殺鬼鬼マスクドゴブリンをミンチにしていた。

 

 「あ!! あー!!!! スー、ストップだ!! やめてくれ、ストップ! それ以上ぐしゃぐしゃにされると貴重な資料がぁ!! か、価値が!!」

 

 「悪は、滅びた……」

 

 スッキリした顔のスーの足元には、そのへんの死体よりずっと酷い状態になったゴブリンが転がっていた。血溜まりが広がっていく。僕は、膝をついて嘆いた。

 

 「こんなの、あんまりだ……」

 

 「そ、そうね……。まあ、とりあえずこれの下手人は、始末したわ」

 

 悲しい。僕は、悲しみにくれていた。

 

 「まだよ、ハオ」

 

 「えーー……嘘でしょ……」

 

 ――いや、でも僕の冒険はこれからだ。これからまた色んな魔物に会う。

 

 「そうだ。僕の冒険は、始まったばかりだ」

 

 崩れた家屋の物陰、井戸の底、死体の合間、奥の奥から魔物たちは、レアゴブリンたちが現れた。

 骨だけのスケルトンゴブリンは、片手の剣を引き摺って、土に線を引く。

 何故かかぼちゃを被ったゴブリンハロウィンは、両手にナイフを持って、かぼちゃに空けた覗き穴から僕たちを伺っている。

 地面につくほど髪が長い、白装束の井戸ゴブリンは、長い髪で顔を隠していて、ただ立っている。不気味だ。 

 その手足や口に血と何かの破片が付着している。多分、ゴブリンたちを皆殺しにしたのは、このレアゴブリンだと思う。

 どうしてそんなことをするのかというのは、ゴブリンコレクターの間でも長い間議論されていて、答えは出ていない。

 ある人は、増えすぎたゴブリンの自浄作用だといい。ある人は、レアゴブリンは、ゴブリンしか食べられないのだという。僕としては、どの意見も可能性としてあると思う。つまり、判断がついてない。

 これから考えればいいと思う。

 

 「はは、本で見たやつばっかだ」

 

 嬉しい。とても嬉しい。舌なめずりしてしまいそうになる。誤魔化すために、冷気で曇った眼鏡を服の裾で拭う。

 

 「スー。僕がやるから手を出さないでくれ」

 

 「……私の方に来たらぶった斬るからね」

 

 じっと油断なくレアゴブリンたちを睨みつけるスーに、頷く。それでいいよ。一匹たりともあげないさ。

 

 「ハオさん、構いませんか?」

 

 「いいわよ。元々、貴方たちの力試しに来たんだから」

 

 腕を組んだハオさんは、後ろに下がった。許可も出た。後は、僕の自由だ。息を吸って吐く。習得した呪文(テンプレート)を思い浮かべる。

 

 「やろう」

 

 杖の先を僕は、レアゴブリンたちへ向けた。するとレアゴブリンたちは、即座におどろおどろしい声を上げ、襲いかかってきた。

 

 

 +++

 

 

 2人とも属性が2つある。水と火――なんだけどどうにも2人ともその複合術、つまりは、氷の術が得意みたい。

 

 「氷弾(アイスショット)

 

 シルヴァの呪文を合図に、生成された氷の弾丸が先陣を切ったスケルトンゴブリンの頭を砕かんばかりに強烈に叩いた。その呪文を反復させる。新たに生み出された氷の弾丸がゴブリンへと向かう。

 そこそこね。もうちょっと反復の速度を上げて、弾幕の密度を上げたほうがいい。今のシルヴァは、接近されれば抵抗の一つも取れないんだから。

 

 「氷遊弾(アイス・シューター)✕5」

 

 唱えたそばから氷の弾丸が5つ、シルヴァを守るように、彼の周囲に浮かび上がった。

 それでいいよ、シルヴァ。こっちは一人なのに、敵が多いんだから手数は多いほうがいい。

 

 「ガァ!!」

 

 凝りもせず奇声を上げたスケルトンゴブリンが半壊した頭部から破片を散らしながら、シルヴァに突進してくる。フェイントも無くて、知性を欠片も感じさせない。

 避ける? 撃つ? どうするの? 嘘、こんなハラハラするものなの?

 え、やばいわね。し、シルヴァ! ほら!体が動きそうになるのを堪えて、どうにか私は見守る。

 

 「氷結路(アイスバーン)

 

 新たな呪文だ。あれは、確かスーが高速移動に使ってた魔法。その辺りで、私は、シルヴァがやろうとしていることを理解できた。

 杖先が地面を凍らせていく。急速に、まっすぐ。その先には、猛烈な勢いのスカルゴブリンが踏み出した足裏。

 

 「ガ――!??!」

 

 スケルトンゴブリンがシルヴァの思惑通りつるんと滑った。そこまでは読めてたけど、次手には関心したわ。

 勢いよく転んだスカルゴブリンが路面から生えた先の鋭い氷の槍に串刺しにされた。もがいているけど氷の槍に貫かれた上、凍りついていって徐々に動けなくなってきている。

 

 「――氷弾(アイスショット)

 

 止めとばかりに放った氷の弾丸がスケルトンゴブリンの頭を粉々にした。お見事。音無く拍手をする。うん、順調ね。

 

 「……しまった。つい、頭を砕いてしまった」

 

 やってしまったとシルヴァは、渋面を浮かべた。

 コレクションにでもする気だったのかしら……。部屋に、ゴブリンの頭蓋骨が飾られてるのは、悪趣味だし、ちょっと動き出さないか怖いからやめてほしい。

 

 「キィ!!」

 

 不意を突くように、ゴブリンハロウィンがスカルゴブリンを飛び越えて、襲いかかってくる。

 だけどまあ、私もそこからの流れは見えていた。

 事前に置いた5つの氷遊弾(アイス・シューター)がゴブリンハロウィンへと殺到する。

 ダン! ダン! ダン! ダン! ダン! ダン!とものの見事に、()つ命中。元の方向へとゴブリンハロウィンが弾き飛ばされた。

 

 「……おっと」

 

 今のは、すごかった。新たに生成された6つ目の氷の弾丸がゴブリンハロウィンの腹を撃ち抜いていた。西部劇のガンマンの早撃ちを彷彿させた。

 こんなことができるようになってたのねえ……。子どもの成長って早い。

 さて、後1体ね。でも一番不気味なのが残ったわね。

 白装束の、長い黒髪の井戸ゴブリン。通称、貞子。……貞子? これはシルヴァに聞かなかった。だけど知ってる。

 原作知識かな。だって、私は、今の今までゴブリンなんて弱い魔物興味がなかった。

 だから、知った/思い出したのは今だ。

 

 「ちょっとやばいかも」

 

 井戸ゴブリンは、人の怨念とゴブリンの怨念が合体した魔物で、呪術を使うゴブリン。

 呪術とは、闇神カオスの信仰者のみが許された忌まわしき術。

 生物の精神に働き、あらゆる意思を無視し、肉体を蝕み、尊厳を陵辱する悪辣なる術。

 邪悪にして、醜悪。ある国では、使い手であるだけで即処刑されるほど危険視されている。 

 

 「いない」

 

 さっきまで後方に佇んでいた井戸ゴブリンがいない。おかしい。視界に入れていたのにいつの間にかいなくなってる。 

 反射的にロングソードを抜いていた。抜刀したロングソードは、雷の軌跡を私の思い通りに描く。

 結果、数本の黒髪が空中を舞った。斬り損ねたのを手応えのなさとシルヴァの背後に立つ井戸ゴブリンの姿が私に教えた。

 

 「シルヴァ!!」

 

 「兄さん、背中がお留守よ。しょうがないんだから」

 

 血に濡れた斧を蹴り上げてから肩で担ぐとスーは、得意げにどやっとした。

 

 「いや、僕だって井戸ゴブリンの背中を常に狙う性質くらい……いいや、助かったよ」

 

 それにシルヴァは、なにかと言い返そうとして、諦めると疲れたようにその場に座り込んだ。そこは減点。

 足を氷に覆われた井戸ゴブリンが唐竹割りにされ、中身を地面にぼろぼろと零していた。温かさを冷気が急速に奪っていくのが見えた。

 

 「……なぁんだ」

 

 心配無用ね。と私は、肩を竦めて……。

 

 「2人ともお疲れのところだけどお代わりよ」

 

 「うわ」

 

 「こ、これは!!」

 

 廃村に差す影は、私たちを影で塗りつぶしてしまうほどに大きい。

 スケルトンゴブリンに似た容姿だ。でも大きい。3メートルはある。腕も多い。左右4本ずつ。これは、別の種類ね。

 

 「ヘカトンケイルゴブリン! めちゃくちゃ珍しいやつですよこれ!!」

 

 「土臭くて、虫塗れで、キモい。早く殺そうよ」

 

 この反応は、予想できたわね。つい半笑いを浮かべてしまう。

 

 「いや、様子を見よう。攻撃パターンを見極めて……」

 

 「じゃあ、殺してくるね」

 

 「スー! だめだ!! 様子を見てくれ!! 頼む!! ああああ、そんな無理矢理!? 入らないところに入れちゃだめだ!! もっと優しく! 優しく殺してあげて!! 飾るから! 部屋に飾るから!!」

 

 「絶対嫌」

 

 「ああああああああああああああああ!?!?!?!?!」

 

 「ガアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 無残に破壊されるヘカトンケイルゴブリンとそれを止めるすべの無いシルヴァの絶叫が夕焼けに木霊した。

 まあ、うちにあんなの飾られても困るしね。うん、しょうがない。これに関しては、私は、スーを全力で応援することにした。

 

 「あんまりだぁ……。あんまりだよぉ……」

 

 数分後、ばらばらになったヘカトンケイルゴブリンとその死骸の前でおんおんと泣き声を上げるシルヴァを見て、スーは、冷たい視線を向けていた。

 

 「本当にしょうがない兄さん。昆虫標本で満足しておけばいいのに」

 

 「――……まだだ。僕の冒険は、始まったばかり……!!」

 

 立ち上がるシルヴァの声は、涙声。けど強い決意を感じさせた。

 

 「次こそは、絶対……!!」

 

 「育て方間違えたかしら……」

 

 シルヴァの今後がとても不安になった私であった。

 




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