「おらぁ!」
小型アラガミ“オウガテイル”に神器を叩きつける。
今日はゴッドイーターとしての初仕事だ。ベテランの指導のもと、俺たち新人ゴッドイーターはアラガミを狩る。
「いいぞオルガ! 君は筋がいい! 華麗に戦えている!」
俺とコウタの初任務に同行したベテランは二人だ。フードを被ったバスター使い『ソーマ・シックザール』と赤いサングラス男『エリック・デア=フォーゲルファイデ』。
「へっ、当たり前だ。こんなもんじゃねえぞ!」
辺りを見渡すが、立っているオウガテイルは一体もいない。全て倒したのだ。掲げた神器を振り下ろす先が見つけられず、仕方なくその場でそっと下ろす。
「これで終わりだな」
「そうだね、ソーマ。今日も華麗な勝利だ!」
ははは、とエリックは笑う。上から迫る陰に彼は気付かない。
「エリックさんッ! 上!」
コウタが叫ぶ。瓦礫の山をよじ登ってオウガテイルが回り込んできていたのだ。エリックが見上げると同時に、オウガテイルは大口を開けて飛び下りる。
「うわああぁッ!」
「何やってんだあぁッ!」
窮地のエリックを救うべく地面を蹴る。ぎりぎり間に合って、オウガテイルの下からエリックを突き飛ばす。
ぐちゃり、と肉が噛み千切られた。俺の上半身が喰われている。
「チッ!」
ソーマが神器を一薙ぎする。俺を喰っていたオウガテイルは吹き飛んで動かなくなる。そして俺も動けない。
「……オルガ?」
「俺の身代わりになって……くそっ、こんなの華麗じゃない!」
コウタが俺の亡骸を揺すった。何の反応もないのを見て拳を固く握る。
「人が……こんな簡単に……」
「この職場じゃ日常茶飯事だ。覚悟がないなら辞めちまえ」
「ソーマ! 友を亡くした新人にかける言葉か、それは!」
「……フン」
ソーマが背を向けて歩きはじめる。エリックもコウタもそれぞれの思いを胸に彼を追った。その背後で俺はゆらりと立ち上がる。
「何だ……!?」
気配を感じ取ったのかソーマが勢いよく振り向いた。確実に死んでいたはずなのに起き上がった俺を見て、表情が驚愕に凍る。
「無事だったのか、オルガ!」
駆け寄ろうとしたコウタを手で制す。神器を俺に向けて、険しい表情で問う。
「お前は一体……?」
「俺は……鉄華団団長……オルガ・イツカだぞ……!」
「は?」
「守んのは俺の仕事だ。こんくれえなんてこたあねえ……!」
血の混じった唾を吐く。俺はオウガテイルに喰い殺されたが、『いつもみたいに』生き返った。俺はこの世界でも止まらない。
まだ少し痛む身体をぽきぽきと鳴らしながら、俺は落とした神器を拾い上げる。
「さあ帰ろうぜ。俺たちの
「命令は三つだ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。運が良ければ不意をついてぶっ殺せ」
リンドウの指示を新人二人は聞いている。どちらも緊張しているようだ。
「おっと、これじゃ四つか」
「了解」
「分かった……です」
「堅苦しいな。力抜いていこうぜルーキー」
二人の肩をリンドウは叩く。きぃぃっ、と甲高い叫び声が聞こえて全員がそちらを向いた。
“ザイゴート”だ。飛行タイプの小型アラガミ。今回のターゲットでもある。リンドウが神器を構え、新人二人もそれに続く。
「遠距離攻撃に気を付けろ!」
リンドウが神器を振ってふわふわと浮くザイゴートを叩き落とす。地面に落ちたそれを三日月が潰す。
ユウも新型の特性をさっそく発揮している。剣形態から銃形態へと変形させた神器をザイゴートに向け、アサルトの連射で撃ち落としていく。ザイゴートはたちまちその数を減らしていった。
残り数体となった、その時。
「ガァァアアッ!」
咆哮が響く。猿のようなそのアラガミは“コンゴウ”だ。コンゴウは聴覚に優れている。戦闘音を聞きつけてやってきたのだろう。
「チッ、中型が来たか」
リンドウが毒づく。初仕事の新人には荷が重いだろう。ここは撤退するべきだと考え、ポーチからスタングレネードを取り出す。轟音と閃光をまともに喰らえば、たとえアラガミであろうとしばらくは動けない。
ピンを抜いて放り投げた。同時にコンゴウが身体を丸める。タイミングをしくじったと気付くがもう遅い。
「うわあっ!」
ボールのように回るコンゴウはスタングレネードを受けて昏倒する。しかし回転は止まらない。気絶したままごろごろと転がってきてユウを轢いた。
吹き飛び、壁に背中をぶつけたユウはぐったりとして動かない。
「ユウ! くそっ、撤退するぞ!」
「……」
「ミカヅキ! 指示を聞け!」
三日月の脳裏に浮かんでいたのはかつて死んでいった仲間たちだった。ビスケット、シノ、明弘――俺が死んだとき、アトラを残して逝くのはすごく『寂しい』と思った。あいつらもそうだったのだろうか。
だとしたら、この世界の仲間にそんな思いはさせない。
三日月は神器を握りしめる。かつてバルバトスが握っていたものと似ている、十字にブレードが交差した『バスターブレード』。
「ふっ!」
鋭く呼気を吐きながら、コンゴウの側頭部に神器を叩きつけた。