転生チートオリ主が超技術でVtuberを現実に降誕させる組織のボスになるお話   作:水風浪漫

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・転生のくだりを書きたかっただけなので、全く重要ではありません。
・読むのが面倒であれば、あとがきに目を通して頂ければ必要な情報をまとめています。


0.運命のサイコロ プロローグ

 どこまでも続く青い空。透き通るような清い風……ここはいったいどこだろう?

 

「ようなではなく、物理的に透き通っているんですよ」

 

 空耳だろう。周囲を見回しても誰もいない。唯一怪しいのは、草原のド真ん中に極めて不自然に突き立っているモニターだけだ。

 ……十中八九あれからだろなぁ。なんか真っ白な髪で頭上に天使の輪っかを浮かべたお姉さんが映っているし、画面の向こうから手招きしてるし。

 何もかも訳が分からない状況だけど、他に何もやりようがないので歩み寄ってみる。まさにニッコリ、の擬音がぴったりな朗らかな笑みを浮かべた女性が軽く頷いた。

 

「はじめまして滝口さん」

「あ、どうも」

「この度はご愁傷様でした。おそらく、突然のことに混乱があると思いますが、ひとまず私の話を聞いてもらってよろしいでしょうか?」

「あ、はい。……え、ご愁傷様?」

 

 ご愁傷様って、誰か亡くなったときに言う言葉だよね? ……えぇ? はい?

 混乱続きでポカンと固まってしまった私を見かねたのか、「あぁやっぱり…」と頭を振ったお姉さんがずいっと身を乗り出した。画面の向こうでだけど。

 

「落ち着いて聞いてくださいね。あなたは、亡くなったんです。交通事故にあったことは覚えていますか?」

「交通事故?」

 

 そんなまさか。免許取得以来、無事故無違反で模範的ゴールドドライバーの名を欲しいままにしていた私が事故なんて。

 と覚えている最後の記憶を掘り起こそうと意識を集中させていると、ぐわんと脳の揺れる感覚と共に急激な記憶のフラッシュバックが起きた。

 久しぶりに会った友達との飲み会の帰り道、交差点で信号待ちをしていた私たちの後ろからけたたましいクラクションが聞こえてきて、何かが私を吹き飛ばして―――

 

「思い出しましたか?」

「あぁ……はい。思い出しました。私はたぶん、後ろから突っ込んできた車にはねられて、それで、えっと」

「はい。亡くなりました。」

「……そうですか」

 

 なんだろう、自分の状態への理解と不思議な実感が追いついてくると、途端に体が重くなったような気がする。

 そっか、死んでしまったのか。たくさん苦労はあるけどまだまだ人生これからだって、そんなことを喋っていたばかりだったのに。

 

「あなたは神さまなんでしょうか?」

「そうですね。厳密には更に上の存在がいるので滝口さんの想像しているものと同一かは分かりませんが、現代日本人が想像するところの神と大きな違いは無いと思います。

 少し具体的に説明すると、私はとある上位神に仕えている位階としては中くらいの神です。上位神の要求に従って死者の魂の転生を差配する部下がいまして、その内の地球担当の中の、日本組の本州東側の担当のうちの一人なんです」

「えっと、なんというか思った以上に神様って沢山いるんですね」

 

 というかそんな細かく区分けされていることに驚きだ。死者の出身地で分けるんだろうか、それとも最期にいた場所だろうか。気になりはするが、それは今聞くことではない。

 

「神には違いないんですけど、神内では日本の会社でいうところの平社員なんです。なのであまり緊張しなくて大丈夫ですからね? リラックスリラ~ックス」

「あ、ありがとうございます。えっと、それで一つ聞きたいことがありまして。もし知っていたらなんですけど、私と一緒にいた友人の中狩はどうなったんでしょうか、あいつは無事なんでしょうか?」

 

 私の質問を聞いた女神様は一度頷いてから「残念ではありますが」と言葉をつづけた。

 

「中狩さんは貴方よりもわずかに早くお亡くなりになり、つい先ほど一足先に次の人生に旅立たれていきました。あの方も同じようにあなたの無事を心配していましたよ。良いご友人だったのですね」

「そうですか、あいつも……元気でしたか?」

「心の内は本人だけが知るところですけれど、少なくともここを去る時の顔は悪いものではなかったですよ」

「ありがとうございます、安心しました。」

 

 もし次の人生で出会えてもお互い何も覚えていないだろうから、最期にもう一度言葉を交わしたかったけど、一人ひとり此処に呼ばれるのなら元より無理な話か。

 寂しいけれど、納得して旅立って行けたのならそれで良いと思う。きっと今の私と同じように、あいつも自分の死を受け入れることが出来ていたのだろう。

 この場所の力か、それとも死者の魂が元からそういうものなのかは定かではないが、私は不思議と自分の人生が終わったことを、これまで積み重ねてきた人生をもう歩めないことを静かに受け入れていた。感情を超越する実感というか、もう決して引き返すことは出来ないという直感があった。

 家族に会えないことはそれでも少し……いや、とても寂しくてたまらないけど。父と母のことは、兄弟を信じて任せるしかない。

 

 ―――先に逝ってしまってごめんなさい。どうか、健やかに、幸福に過ごしてくれますように。

 

 十数秒、心の中で無言の祈りを捧げてから、改めて女神様に感謝を伝える。

 

「ありがとうございます。神さま」

「どういたしまして。できるだけ未練を解消するのも、魂を迎えいれる神の役目の一つですからね」

「もう大丈夫です。私はこれからどうすればいいのか教えてください」

「いいんですか? もう少しくらい余裕はありますから、急がなくてもいいんですよ?」

「いえ、大丈夫です。確かに家族のことは気になりますけど、時間をかけるとどんどん先に進むのが辛くなりそうですから」

 

 なのでもう行きます、そう伝えると女神様は大らかに首肯した。そして画面の向こうでなにやら操作をし始めた。

 ……なんか空中投影されたキーボードを目にもとまらぬ速さでタイピングしてる。視線もめっちゃ高速移動してるし、なんだかSF作品で艦艇の操縦室にいるキャラみたいな目と手の動きだ。

 そのまま一分ほど待っていると、ガシャンという音と共に足元の地面が開き、そこから見慣れた機械がせりあがってきた。

 

「なぜここにきてノートパソコン」

「時代と個人に合わせて、その人が一番操作しやすいカタチの道具が出てくるようになってるんですよ」

「なるほど?」

 

 しかしこれで何をしろと言うのだろう。そう思っているとひとりでにPCが起動して画面が立ち上がった。

 まるでアンケートのように質問文とその横にYES or NOのチェックボックスと100面ダイスボタンが並んでいる。

 

「えっと、記憶を継承するか? 知識を継承するか? 世界ダイス、能力値ダイス……?」

 

 こ、これはいったい……? 何が起きているというのだ……!?

 

「これが“転生の儀”です」

「てんせーのぎ」

「全ての生きとし生ける魂は死した後、記憶、知識の継承を選択し、次なる生誕の場所と人生の能力点を“運命のサイコロ”によって決定するのです」

 

 うっそだろオイ!? ここまできてアナログゲームみたいなシステムが出てくるの!?

 なんとなく、女神様が創る光の階段を昇っていく―――そんな私の想像していた美しく荘厳な展開はいずこ?

 

「世界の数は細かな分岐世界を含めると数十億! 記憶や知識を持ち越すことはそれ自体が能力の持ち越しと見なされるので、能力値ダイスの結果から大幅な減算が行われます。具体的にはマイナス50点」

「能力が点数扱い……つまり、次の人生では高い能力をもった人間になれない?」

「必ずしもそうではありません。持ち越した経験を元に次の人生の全て……文字通り日常生活から社会生活、誕生から死までの“全て”を一つの事柄に注ぎ込めば、能力点の一極集中によってその分野では世界有数の存在になることも可能です。

 まぁ、その分野の専門家と呼ばれるような人でも、普通に生きていて点数を使い切るほどの人生を送る人なんて普通はいません。それに実際にそんなことが出来る人は環境と人に恵まれた上で、更に限られた人だけです」

 

 そして大体の人はその過程で人格面に多かれ少なかれ問題を抱えます。そうなると次の時は問答無用で記憶知識は漂白されちゃいます。

 

 そんなおっそろしい説明をしながら女神様は「でも」と続けた。

 

「能力値ダイスでクリティカル値100を出すことで、追加ダイスを振ることが出来ます。一回出せばノーリスクで知識か記憶のいずれかを引き継げるでしょう。二回出せば両方をそのままに、ノーリスクどころか平均以上の能力点を持って転生できますよ」

「なるほどです……つまり先に能力ダイスを振ってから、その結果をもとに継承するかどうかを決めればいい」

「その通り。中には離別の哀しみを引き継がないために、初めから記憶の継承はしないと決めてる人も多いですよ」

 

 そんな人は確かに多いだろう。両親家族、配偶者、子供、孫、二度と会えない人を永遠に思い続けることになるのは辛いことだろう。時間がいくらか忘れさせてくれるかもしれないが、郷愁の念がなくなるのかは疑わしい。

 私はどうしようか。幸いにして結婚はしていないし、恋人もいなかったので思うのは家族だけでいい。家族のことを忘れて次の世界に旅立つか、記憶したまま思い出を抱えて生きていくか……。

 

「……とりあえず、最初のダイスを振らないことには始まらない、か」

「賽を振りますか」

「はい」

「貴方の世界には『神は賽を振らない』という言葉がありますね。恐らく記憶を継承した誰かが残した言葉でしょう、あれは事実です。私たちは、いつかどこかで生まれたときからその力の全てが決定しています。私たちに変化をもたらせるのは、もっと上の上に座す、神の中で最初に生まれた最高神さまだけ。

 ですが、あなた達は違います。現世を生きて世界を巡るあなた達の魂は千変万化、無限の可能性を秘めています。無力ながら、その一投があなたにとって良いものになることを祈っています」

「ありがとう」

 

 意を決して賽を振る。といってもやるのはまるで日常のワンシーン、マウスを握ってカーソルをボタンに合わせ、人差し指を軽く押し込むだけだ。

 カランカランとサイコロが転がる電子音が流れた後、確定した結果が表示された。 

 

 その数は【100】

 赤色に染まった数字がボタンの横に輝くように表示されていた。

 

「っ……」

「おーめでとうっ! ございまーす!!」

 ジャランジャランジャラン! 突然の音にびっくりして顔を上げると、女神様がモニターむこうで商店街の福引で見るようなでかいベルを両手に振り回していた。一瞬前の女神然とした慈愛の笑みとは打って変わって、見ているだけでこっちも元気になりそうな元気溌剌な笑顔を振りまいている。

 

「いや~出しましたねクリティカル!」

「期待はしてましたけど、まさか本当に出せるとは思ってませんでした!」

「人生で一番重要なサイコロと言っても過言じゃないですからね。ここで出すのは持ってる証拠ですよ。さて、どうします? ど

「流石にそれは、連続クリティカルは私も今まで数十万人しか見たことありませんよ?」

っちを引き継ぎますか?」

「いや、それはとりあえず追加ダイスも振ってからにします。もしかしたらまた100が出るかもしれませんし」

 それは多いのだろうか少ないのだろうか。女神様の勤続期間が分からないので何とも言えないが、確率は10,000分の1、もう既に一回出した私にとっては100分の1、十分もしかしたらを期待しても良い確率だ。

 

 カーソルをボタンに合わせて、カチっとな。

 からんころん。表示された数字は赤色だった。

 

「出ました……出ましたよ神さま!」

「す、凄いです! まさか本当に成し遂げるなんて!」

「これ三連も期待して良いんでしょうか!?」

「いやそれは流石に、私も今まで数万人しか見たことないですし……」

「でも私、今ならなんだかいけそうな気がするんです!」

 

 やれる、やれるぞ私。これまでの人生の中での運の絶頂期が来てる気がする! もう人生終わってるけど!

 

「や、やりますよ!」

「はい!」

 

 手が震えてくる。動作としては単純なのに、手のひらに軽く汗さえかいてしまっている。

 慎重にカーソルを合わせて、ワンクリック。現れた数字は―――100

 

「うわぁぁぁぁぁ!?」

「うひゃぁぁぁぁぁ!」

 

 ガランガランガラン!! 画面の向こうでは、もはや椅子から立ち上がった女神様がベルを振り回して乱舞している。

 

「凄いなんてもんじゃない幸運ですよ滝口さん! これはもう次の人生の分まで使い切ってるのでは……?」

「え゛っ、そんなことあるんですか?」

「あっすいません、言葉の綾です。確かに個人によって運の良い悪いはありますが、ことこの“転生の儀”に限っては誰が投げてもその可能性は平等です」

 

 よかった……これで来世が不幸に満ちていたりしたら、そんなん個人の能力なんて関係なくなっちゃいそうだからね。

 いやしかし、まさかこの局面でこれ程の運を掴み取れるなんて想像もしていなかった。このラッキーで手に入れた能力点を来世でどう活かせるだろう。

 それ以前に記憶と知識の継承を選ばないといけないし、ページをスクロールしていて見つけたページの最期にあった能力点を消費して行使できる“自由記入欄”も気になっている。

 

「あのう、神さま」

「これはもしかすると四連も……ん、なんでしょう?」

「ページの最期にある“自由記入欄”って、どんなことが出来るか教えてもらえますか?」

「あぁ、それはですね。文字通り自由な要望を好きなように書いてもらう場所です。

 ほら、例えばせっかく沢山手に入れた能力点を外見に使用して来世は美形になりたい、とか。絶対に女性に生まれたい、とか。他には……珍しいところでは竜になりたいなんて書いた人もいましたね。

 ほとんどの能力点を使ってしまったので、あまり強い竜にはなれなかったんじゃないかと思いますけど……ち、忠告はしたんですよ?」

 

 なるほど、これを使わなければ性別もランダムになってしまうのか。他にも病気になりにくい体、なんてのもできそうだし聞いてよかった。私は■性だったんだから、来世でも同じ性別になりたい。そうでなくては記憶を引き継いだとき大変だろうから。

 

「あっ」

 

 今、自然と記憶を残す方向で考えてたな。……やっぱりそうするしかないよね。記憶を失うってことは、人としては一から新しい人生を歩むっていうことだ。

 叶わない帰郷の思いを抱えながら生きていくのは辛いときもあるかもしれないけど、同一性を失ってしまったら、それはもう私じゃないと思う。それはきっと、その時の私は気が付かないだろうけど何よりも寂しいことだ。

 

 うん、記憶は保持しよう。知識は、ってこれ記憶だけ受け継いだらどうなるんだろう? 人格は完成してるアホの子が生まれるんだろうか? うーん怖い。まぁ両方継承すれば何の心配もいらないよね?

 

 さてと、記憶と知識のことを決めたところで意識を本筋に戻すとしよう。

 

「四回目ですね」

「私にとっても滅多にない四連続、期待してますよ~」

「期待はありがたいですけど、さすがにそこまでは―――」

 

 100

 

「あ」

「おお~!」

 

 ……続けてもう一回。カチっとな。

 

 1・0・0

 

 ……カチっ。100

 

「もしかして私ってすごいやつだったのかもしれない」

「……これもしかして壊れてるんじゃありません? ちょっと一回私の方で試してみてもいいですか?」

「いいですけど……」

 

 女神様が操作しているのかカーソルがひとりでに動いてダイスを振った。

 結果は、当然のようにイチ・ゼロ・ゼロ。

 

「これやっぱり壊れちゃってますよ!! 不正? ですよこんなの!」

「うえぇ!? ま、まさかこれまでのダイスはノーカンってことですか!?」

「そ、そこは……私の裁量で一回目までは保証してみせるので、日を改めてから二回目をやりなおすってことに……」

 

 女神様の非常な宣告に一瞬で血の気が引く。

 そんな! 儀式が壊れてるなんて私のせいじゃないじゃんか! ここまで来てぬか喜びだなんて絶対っにイヤだ! 女神さまじゃなくて悪魔なの!?

 何か、何か説得方法はない!? って、ダイスが壊れてるかどうかは、実際まだ確定したわけじゃない! ダイスを回し続けて100以外の数字が出れば、それが壊れてないことの証明になるはず!

 

 画面の向こうでなにやらごそごそし始めた女神様の姿に戦々恐々としながら、私は慌てて再度マウスを握りしめた。迅速にカーソルを合わせて、クリック!

 

 82

 

「あ」

「あ」

「……」

「な、なんですかその目は、まるで『神さまが疑わなかったらもう一度100が出せたのに』とでも言いたげな目は!」

「……やだなぁ、そんなこと思ってませんよ」

「本当ですか? 本当ですね!?」

「本当です」

 

 ごめんなさい嘘です。ホントは少し思いました。でも、こういうのは現世にあった同じようなものでもクリックするタイミングの極僅かな差で結果が変わるものだから、私がそのまま押していてももう一度100が出せたとは限らない。当然出ない可能性の方が高かっただろう。

 

「本当に七連続クリティカルが出せたのに、なんて少しも、まったく思っていませんよ」

「それは思っている人のセリフでは? 私は詳しいんです……!」

 

 一体どこから仕入れた知識なんですか‥‥…。

 しばらくじーっと画面越しの女神様と無言で見つめ合っていると、女神様が咳払いと共にふいと視線を外した。勝った。

 

「ま、まぁ。滝口さんが振って100が出たとは限りませんし、82も十分高い数値ですからね!」

「そうですよね」

「つまり滝口さんの合計は682点です! 私の担当史上最高値です! おめでとうございます!」

「ありがとうございます」

「……」

「……」

「……じ、自由記入欄のお願い。簡単な奴なら1つだけオマケしちゃうかも~、なんて」

「本当ですか! ありがとうございます!!」

「どういたしまして!!」

 

 女神様はやけっぱちな焦点の合わない笑顔で笑っていた。少なくとも私にはそう見えた。そんな女神様と一緒になって私も笑った。

 

 

 

「そろそろ書き終わった頃ですかね?」

「あ、神さま。つい今しがた終わったところです。これでどうでしょうか?」

「どれどれ?」

 

 あの後、ひとしきり笑い終えた私と女神様はいそいそと儀式を進めた。

 転生先の世界を決める世界ダイスを振ったり、私が考えたお願いで消費する能力点を確認したり。考えては終生し、書き込んでは削除して、そんなことを繰り返しているうちに、空は夕暮れ色に染まり始めていた。

 

 最終的に決まった内容はこんな感じだ。

 

 

初期能力点:682

転生先:6757(ポケモン系世界)

記憶の継承:行う(-50)

知識の継承:行う(-50)

自由記入欄:

 性別は■性(-10)

 健康で頑強、病気にかからない体(女神様プレゼンツ)

 生前の私を元に美化した容姿(-50)

 ものづくりの才能(-30)

 絵の才能(-30)

 読心を除いた便利な超能力(-70)

 ほんの少しの幸運上昇(-10)

 

残り能力点:382

 

 

 実は一番点数が必要だった肉体に関するお願いを女神様が無償にしてくれて嬉しかった。

 「サービスサービス!」なんて茶化していたけど、これは実質クリティカルを出す以上の見返りだった。

 

 外見はあまりに変化が大きいと違和感に苦しむかもしてない、という自己分析に基づくものだ。でも美形になれるならなりたいからこんな内容になった。

 

 絵とものづくりの才能は、生前の消費者側だったサブカルオタの羨望である。絵師さんたちの綺麗だったり、格好良かったり、可愛かったりする上手なイラストを見ては憧れていた。自分でも何度もチャレンジしていたけど中々上手に描けなかったから、反則技に思えるけど才能を金(違うけど)で買ったのだ。来世では最終的にフィギュアを自作するのが目標である……!

 

 超能力はロマンだ。ポケモン系の世界ならサイキッカーはそれなりに存在するから自分もなってみたかった。ただし、人の心が読める能力は私自身の人生を壊しかねない予感でオミットだ。

 幸運については少しだけ上げてもらった。もっとたくさん点数を支払えば、それこそ百発百中で宝くじが当たるくらいにもできるらしいけど、“特別な幸運”を自分が持っていると覚えていたら、自力で成し遂げた色々なことに対しても「これも運が良かっただけだから」なんて自己否定に陥っている姿が容易に想像できたから、女神様と相談してほんの僅かな上昇に止めてもらった。転んで怪我する筈だった段差に躓かなくなるくらいの幸運らしい

 

 他にもそれなりに様々なお願いを考えたけれど、最後の最後に思い切って削除した。

 異性にモテやすいとか、相手に親しみの感情を抱かれやすい、とか。影響が自分以外にも及びそうだった内容は全カット。だってそれって人の心を自分の都合の良いように弄っているってことだし、幸運と同じように私自身が何も信じられなくなっている未来が見えるのだ。

 完全記憶能力とか、自身の性能を跳ね上げてハイスペックにする項目を削除したのも近い理由だ。

 

 ありのままの自分に少しだけの不必要な欲張り。

 きっとそれが来世でも私が私として楽しく生きていくための秘訣だ。

 

「はい、確認しました。何も問題はありません」

「ありがとうございます。残った点数はこのまま来世に持ち込むって認識で合ってますか?」

「はい。残りの382点は次の人生で少しずつ自動的に消費されていくことになります。ただし、何もかもに点数消費が伴う訳じゃなくて、点数消費のない技術の習得や成長もたくさんありますから、こんなに点数があると次にここに来るときもいっぱい残ってる可能性も大いにありますね」

「次の時に再利用は出来ないそうですけど、それはそれで良いと思ってるんです。自分には大きな伸びしろが眠っているって、それを知っているだけでとっても大きな贈り物(ギフト)ですからね」

「違いありません」

 

 ふふっ、と女神様がほほ笑んだ。

 そして一振りの杖を取り出して画面越しに私に向けて振り払った。モニター越しに飛来した煌めく光の粒が私の視線の先で大きな架け橋となっていく。

 宙の途中で途切れた先は光に満ちたトンネルが広がっていて先を見通せない。でもとても暖かな風を感じた。

 

 私は女神様に頭を下げてその橋を渡って行った。

 

 さて、どんな世界が―――人生が私を待っているのだろう!

 




ズル無し振り直し無しの一発勝負。
主人公の性別は【1D2】(1で男性、2で女性)

結果【2】→女性

情報まとめ
・主人公は交通事故で命を落としたが、なんだかんだ受け入れている。
・来世では「病気知らずの健康で頑強な体」「美形」「ものづくり、絵の才能」「読心以外の便利な超能力」「ほんの少しの幸運上昇」を約束されている。
・今回は無性だったが、ラストにサイコロで決まったので次話からの性別は女性である。

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