転生チートオリ主が超技術でVtuberを現実に降誕させる組織のボスになるお話 作:水風浪漫
・まだ世界観説明的な内容が多めです。
「可愛い可愛いデュランちゃん~ママとお散歩行きましょうね~」
眠気の抜けない薄ぼんやりとした視界。デュランというのは今世での私の名前だった。
なんだか頭がふわふわしている。
昼寝する前はただの幼児だったのに、今の私には“前の私”のことが鮮明に思い出せるようになっていた。
そのことに全く違和感なんかは生じてなくて、だけど急に色々なことを考えられるようになって不思議な感じ。これが叡智の目覚めか……。
私は何歳なのかなとか? たしか1歳だったかなとか。そんな取り留めもないことを思い出しながら、とりあえず私は目の前に浮かぶ手を取った。がしっとな。
「あいっ! いきまちゅ!」
「うふふ、よく言えました~」
最近やっと一人で歩けるようになった私にとって、お母さんとのお散歩は何より重要なことなのだ。
濡れたタオルで顔を拭かれて、寝ぐせのついた髪を梳かしてもらい、ピンクと黄色の縞々の可愛い服にフォームチェンジ。着替え終わった頃には眠気もすっかり吹き飛んだ。
手を引かれて外に出ると
買い物かばんを携えたお母さんと手をつないで島の市場までのんびりトコトコ。左手に望む雄大な大海原を眺めつつ、今の私について再確認していこうと思う。
私の名前はデュラン・ウォーターホール。デュランが名前で、ウォーターホールが苗字。滝口から滝になっちゃったけど、名前の類似は女神様の優しさなのかな?
お母さんの名前は分からない。今までの私はお母さんは“お母さん”としか認識してなかったからね……。
そんな私は、転生の儀という名のダイス転がしを経て記憶と知識をそのままに生まれ変わった“前世の記憶を持つ女の子”である。
一歳になって、ついに一人で歩けるようになった私は外出時のベビーカーから解放され行動の自由を手に入れた。それからあまり時間を置かずに喋れるようになったのだが、封じられていた記憶と知識の影響が及んだのか、最初からそれなりに流暢な言葉を喋っていたようだ。初っ端から文章で喋る子とか天才にしか見えないな?
そのことでお母さんとお父さんにめちゃくちゃ褒められたのを覚えている。
「パパとママだいちゅき! せかいいち!」で褒められて有頂天になってた記憶とか、今の私からすると顔を背けたいくらい恥ずかしい記憶なんだけど! ……すべては継承の代価ってことで、この羞恥心は呑み込もう。そうしよう。
話を戻して。
その他に分かっている情報といえば此処がどこかの島だということ。港に住んでるだけってのも考えられるけど、度々お父さんが“本土”に出張に行っているからたぶん島で間違いない。
それに加えて、島で見かけるポケモンを根拠に推察するに場所はカントー地方あたり。それ以外には……近々お祭りがあるということくらい?
正直、情報らしい情報は全然ない。一歳の子供に教えることなんて基本的な単語とか、この世界だったらポケモンの名前くらいだからね。島の名前くらい話題に上がってもいいと思うけど、もしかしたら私が覚えてないだけかも。
お母さんが商店街で買い物をしている途中、退屈だった私は八百屋さんのヤドンの背中に乗って遊んでいた。このヤドンは結構大きくて、よく小さな子供を背中にのせて遊んでくれる皆のアイドルなのだ。
性格は穏やかだし、動きものろいので怪我をすることもない。それどころか走って一人でどこかに行こうとする子を見つけたら微弱な“ねんりき”で引き留めてくれる。そんな長年の積み重ねの信頼があるから、親たちは八百屋のヤドンとなら遊ぶのを許してくれるという訳だ。
家族以外のポケモンと触れ合う機会が少ない子供にとって、八百屋のヤドンこと
そんなヤドンに跨ってポケモンライドを楽しんでいると、ふとある事が気になった。
私の顔の横でふるふる揺れているそれに目を向けて、試しにぺろっと舐めてみる。
「! ふへへへへ……!」
ヤドンの尻尾は甘かった。砂糖とは違う
記憶を取り戻した私がここはポケモン世界なんだと改めて実感した、ある意味忘れがたいなエピソードである。
なお、その後で一部始終を見ていたお母さんに叱られた模様。
いくら甘くても尻尾には土埃もついているのだ……
△▽△▽△▽△▽△▽
健やかに伸びやかに。豊かな自然に囲まれた穏やかな村ですくすく育ち、私は早くも3歳になりました。
そんな私は今、お父さんが出張帰りにカントー本土で買ってきた地球儀を前に首を傾げている。
地球儀を回しながら頭をひねる姿は、両親からすればそれだけで聡明さの片鱗の発露に見えるらしい。小声で褒めそやす姿には、確かな親バカという名の愛情が感じられる。……気恥ずかしいから止めてほしいんだけど。
「ここがカントーで、こっちがジョウト!」
指を置きながら地方の場所を確かめる。まるで巨大な日本列島を思わせる形で分布しているカントー、ジョウト、ホウエン、シンオウの4地方。そして、前世では対応地方がなかった列島の隙間を埋めるようにして存在する未知の地名。
ゲーム本編に登場したイッシュ、カロス、アローラ、ガラル。そして外伝作品の舞台であるオーレ、フィオレ、アルミア、オブリビア、フェルム、レンティルといった地方の数々。
地名を読み上げながら、いくつものゲーム画面が脳裏を過ぎる。私は外伝はあんまり遊んだことはないけど、本編に登場した地方に限って言えば町の名前だって素で
いつか実際に足を運んでみたいな~。そんな風にまだ見ぬ街に思いを馳せていると、後ろから現れたお父さんがひょいと私を持ち上げた。脇の下に手を差しこまれた体勢で、そのままぼすんとお父さんの胡坐の上へ。
「なーデュラン、地球儀って面白いだろ?」
かいぐりかいぐり、乱暴に私の頭を撫でるお父さんはかなり上機嫌だった。
そうか父よ、自分が買ってきたお土産に私が夢中なのがそんなに嬉しいか。今にも鼻唄を歌いだしそうな姿には娘としても喜んだ甲斐があるというもの。
だけどそうやってパワフルに撫でるのは止めてほしい。お父さんにとっては弱い力でも、私にとっては強すぎるのだ。あと頬ずりも今はお酒臭いから止めてほしい、子供の鼻は敏感なんだ。たぶん、知らないけど。
視界が揺れて定まらない。もうっ、と両手を使ってお父さんの手を払いのけて平穏を取り戻す。半目でにらみつける私にも気が付いていないのか、お父さんは目を凝らして小さな地球を見つめていた。
「お、あった! ここ!」
指さす先には、地方と比べるとまるで点のように小さな島々の連なり―――カントー地方南方に位置する“オレンジ諸島”。
そして、その小ささ故にお父さんの指の下に隠れてしまっている、諸島の中心にあるその島は、
「んー? これがアーシア島?」
私が暮らす故郷《ふるさと》である。
はい、というわけで。お父さんエピソードを挟みまして、私の故郷“アーシア島”です。
一歳でお祭りに初参加した際に村長さんが観光客に向けて「アーシア島にようこそ」と言っていたのを聞いて、私はこの島の名前を知った。
そして、その後に行われた祭りの儀式の内容……「巫女がポケモントレーナーの一人を“操り人”に任命する」「操り人は三つの島にある三つの宝玉を本島に持ち帰ってきて台座に納める」という祭事の説明を聞いて私はようやくティン! と来た。
ここ映画に登場した島だ!
劇場版2作目“ルギア爆誕”。
フルーラという巫女役の可愛い女の子にサトシが“操り人”に任命されて、なんやかんやあった末に悪役コレクターに捕まっていたファイアー、サンダー、フリーザーを開放し、なんやかんやでルギアの背に載って三鳥の怒りを鎮めるお話だ(超要約)。
まさか映画の舞台になった場所に生まれるとは、と当時は結構驚いた。
でもまぁ、私の知る限りじゃ近所にフルーラなんて子はいないし。当然サトシのサの字もなければ、儀式に参加して実際に伝説の三鳥と会った人もいないので、特に私の生活に何か影響するのかといえば全く何の影響もない。
そもそも女神様にはポケモン系の世界ですよ、としか教えられていないのだからアニメ主人公のサトシも、ゲーム主人公のレッドもこの世界に生まれないことは十分に考えられる。なので無暗矢鱈と気にしたところで仕方がないのだ。
私が今やるべきは、そんな何の益も生み出さないようなことではなくて……もっと私の人生を左右するような。中学生が授業中に妄想するような、劇的で鮮烈で熱烈な、スリルと危険に満ちた状況を乗り越える素晴らしいアイデアを捻り出すことなのだ。
―――ギャオォォォオオッ!!
そう……この怒れるラプラスを治める方法を、お願いだから誰か教えて下さい。
△▽△▽△▽△▽△▽
三歳になった私は、お父さんの“ニョロボン”かお母さんの“ベロリンガ”がいるときなら野生ポケモンが出てこない場所に一人で出かけることを認められていた。
単独外出が可能になった私が最初に挑んだことは、当然ポケモンを手に入れることだった。もちろん無許可である。そんなのお母さんが許してくれるわけないからね。
10歳からポケモン所持が認められるというルールの存在は会話やTV番組なんかで聞き及んでいたが、それでも私は自分のポケモンが欲しかった。あと7年なんて待ってられっかよぉ……。
私の相棒、私のパートナー、私の初めての―――ポケモン。
それでもお母さんに叱られるから、心配させちゃうから、と溢れんばかりの思いを抑え込み続けていたところに、監視を逃れて自由に動き回れるチャンスが転がり込んできたのなら……この思いを閉じ込めておくには、私は余りに力不足だった……っ。
嘘ですごめんなさい、すぐに計画を立てて実行に移しました。反省はしている、でも後悔はしてない。
行ってきます! と元気に家を飛び出すと同時に、お手伝いでコツコツ貯めた10円硬貨が入った財布を握り締めて一路フレンドリィショップへ。
モンスターボールを買う幼児に怪訝な様子の店員のお兄さんを「はじめてのおつかいなの!」と騙くらかし、大人に見つからないように遮蔽物に身を隠しながら村を出る。
向かう先は野生のポケモンが生息している近場の森だ。道中にポケモンを持っていない人は決して入らないで下さい! という看板が立っていたけれど、お母さんのベロリンガが一緒なので何の問題もない。無いったらない(強弁)。
……無事に誰にも見つかることなく森の入り口に到着した。遠くから生き物の騒めきが聞こえてくるだけで人の気配はなく、作戦は万事順調に思われた。
このまま森へ入り、最初に見つけたポケモンを問答無用に捕獲する計画だ。
手持ちポケモンはいないけど、いざとなったらベロリンガが戦ってくれるだろうから大丈夫という、今振り返ると無謀すぎる楽観的予測。けれどそんな私にも一度失敗してダメだったら、その時はおとなしく引き返そうという最低限の理性は残っていた。
大きく深呼吸をして、万が一逃げるときのために軽めのストレッチも欠かさない。「よし!」と膝を叩いて気合を充填、いざ森の中へ! ―――というところでベロリンガに捕まった。
「べぇろ!」
「ここにきて!? ここまで黙って着いて来てたじゃん!」
「んべぇろ」
「は~な~して~!」
その大きなベロから逃れようともがいてもベロリンガは全くの知らんぷり。私をがっちり捕まえたまま、来た道を引き返していく。
あ~あ……たぶんお母さんの差し金だ。前々から言い含められていたんだろう。家族の一員でもベロリンガはお母さんのポケモンだ。ちょっとしたことなら私の言うことも聞いてくれても、やっぱりお母さんの指示が最優先。
「デュランが危ないことをしないようにしっかり見張ってね」とか言われたら、私が何をしたところでそれを違えることはない。
つまりこの作戦、始まった時点で失敗は確約されていたのだ……。
私はそのままベロに巻かれて村を抜けて家まで連れ戻された。道行く人にがっつり目撃されており、家に着く頃にはお母さんに一部始終が伝わっているという始末。
田舎とは言え噂の伝達速度が速すぎる……! 言い訳をひねり出す暇もなかった。
「デュ~ラ~ンちゃ~ん~~~!!?」
「ごめんなさい~!」
はじめての“かみなり”はお母さんのげんこつの味でした。
これを反面教師にして、皆も家族に心配をかけるのはやめようね!
地の文の改行は多い方と少ない方、どちらが読みやすいですか?
-
多い方(一段落が短い)が良い
-
どちらかと言うと多い方が良い
-
少ない方(一段落が長い)が良い
-
どちらかと言うと少ない方が良い