転生チートオリ主が超技術でVtuberを現実に降誕させる組織のボスになるお話   作:水風浪漫

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・年齢の齟齬を修正しました。
・アニメで別地方のキャラ同士が当然のように会話できている点をふまえて設定を変更しました。
 言語2種類 → 言語1種類、文字2種類


3.自己申告エスパーガール

 あくる日の早朝。朝食の後、私はラプラスとニョロボンを庭へ連れ出していた。

 木の枝で地面に描いた簡易的なバトルフィールドに両者を立たせて、私自身はラプラスの背後に陣取り、そして意気揚々と指示を飛ばした。

 

「ラプラス! “みずでっぽう”!」

 

 ぺっと吐き捨てられる水。相対するニョロボンが一応の構えをとってくれている一方、ラプラスはふてぶてしく大口を開けて欠伸までしていた。

 

 

 昨日、家に連れて帰ったラプラスは約束を守って暴れたり攻撃を加えたりすることもなく、先住の二匹と一緒にお母さんが用意したポケモンフーズを頬張っていた。

 ラプラスの今後についてお父さんに相談してみたところ、漁業組合にラプラスの群れの情報を回してもらえるように頼んでくれるらしい。これで群れが見つかったらそこまでこの子を連れて行ってもらって、この子の家族がいる群れだったら迷子問題は解決だ。

 もし見つからなかったら、その時はまたどうするか相談して決めるということになった。それまでの一時的な処置として、昨日のうちにラプラスは我が家のモンスターボールに入れられた。……そのボールもしかして私から没収したやつでは?

 

 そして、ポケモンセンターでの検査でも健康状態に問題は見つからず、晴れてラプラスは我が家の居候となったのである。

 (うち)に来たラプラスは両親の前では殊勝な態度をとっていて、一切威嚇することもなくモンスターボールにも無抵抗で収まっていた。

 

 だが私は知っている、こいつが皆の目を盗んでベロリンガの皿からフーズを掠め取っていたことを。そしてお風呂上がりの私に水を浴びせようとしてきたことを……夜風に当たりながら寝ていた私の顔の上にヒレを載せて息するのを繰り返し邪魔してきたことを!

 

 猫かぶってる上に私のことだけ舐めてんだよなあ!

 

 そういう訳で、居候という自分の立場を理解させるためにも早朝からポケモンバトルと洒落込んだのである。……が、冒頭の通りこのラプラス、案の定というか予想通りというか私の言うことを聞く気がない。

 

「せいっ」

 

 後ろから甲羅を叩いたら、予想以上に固くてこっちの掌が痛くなった。手を擦っている私の姿を見てラプラスはけらけら笑った。こいつぅ!

 

 いらっと来るけど、それで単純な暴力に走ったり敵前逃亡するほど私は浅慮じゃない。一度室内に戻ってから大きな缶を携えて再度外へ。水色の星マークが描かれているそれは、いつもなら3時のおやつと夕飯のデザートにしか貰えない水ポケモン用のポケモンフーズ(おやつ用)である。

 すぐに目をキラめかせた水ポケモン二体を横目に、缶はベロリンガに渡して守らせる。

 

「さぁ! 私の言うことを聞いたらおやつをあげるぞ!」

 

 しつけの基本は飴と鞭! ポケモンの立ち位置は犬猫とは全然違うけど、それでも基本的なことは変わらないはず。チラつかせたフーズを飴に居候と家人の立場の違いを思い知らせるのだ。

 

「さぁ、今度こそ“みずでっぽう”だ!」

「……ら「ニョロ!」ぁん!?」

 

 バッシャァァ! とニョロボンが手から勢い良く水を放つ。放出された水流はそれなりの威力で庭の岩に激突して辺り一面に飛び散った。

 私もベロリンガも、それどころかラプラスまで呆気に取られているのを他所(よそ)に、何故か得意げなニョロボンは私の前に来て胸を張った。

 

「えぇ~」

 

 分かるじゃん? ラプラスに対しての話だって普通分かるじゃん?

 そうは言っても眼前のニョロボンはどうだ! と言わんばかりの笑顔でこちらに掌を差し出している。

 

「しょうがないなぁ」

 

 小さくため息を吐きながらその白い掌の上におやつを載せてあげる。ラプラスを名指しして指示を飛ばさなかったのは私だしね。何よりこんな笑顔を向けられてしまっては「ラプラスだけだからキミはダメ」と却下するのは躊躇われてしまった。

 

 ただし今回だけね、とおやつを堪能しているニョロボンにはちゃんと言い聞かせておく。

 そしてそんなニョロボンを羨ましそうに見つめているラプラスの目の前に、改めておやつをチラつかせて指示を出す。

 

「ラプラス“みずでっぽう”!」

「らああぁん!」

 

 ふっ、現金な奴め。気合の入った声と共に頭を振りかぶるラプラスの姿に内心ガッツポーズを決める。やはり私の考えは間違っていなかった。

 烈気十分、首を振り下ろすと同時にラプラスの口から放たれた水弾は、その勢いを衰えさせることなく岩に炸裂―――することはなく、緩やかな放物線を描いて1mほど飛んだところで落下して地面を濡らした。お風呂場のシャワーの方がまだ威力がありそう……。

 

「……」

「……」

 

 そっかぁ。そういえば昨日もニョロボンに“たいあたり”的なことしかしてなかったもんね……。

 

 ちら、とラプラスに視線をやってみると、こちらを振り向いていた顔と一瞬目が合ったかと思ったら即座に顔を逸らされた。体が小刻みに震えているし、心なしか水色の顔も少し赤らんでいるような気がする。

 

「ん、約束だし。はいあげる!」

 

 口元におやつを差し出してやる。が、頭で払う様にして叩き落された。

 なんだなんだ、要らないの? 最初は目を輝かせていたことを思うに、技を上手く撃てなかったプライドから拒んでるんだろうな。まあ、そんなことは私には関係ない! 本人が納得していなかろうと、約束は約束なのだから、私の意地で以って食べてもらう。

 新しいおやつを取り出して、力強く結ばれたラプラスの口に押し付ける。顔を反らして避けようとするけど、首が長くないので手を伸ばせば追いつける。むーっと小さい子供のくせにしかめ面を浮かべて拒む拒む、また拒む。わざわざ私が食べさせてあげるってまで言ってんのに何拒んでんだこの、この!

 

 そんな攻防が繰り返され、いい加減埒が明かないのでベロリンガにお願いして体をくすぐってもらった。すると最初はどうにか堪えていたものの次第に口元が歪み始め、ついに我慢できずに笑ってしまった隙を突いて口の中におやつを放り込んだ。

 抗議するような目でこちらを見て来たが、フフフ、おやつ自体は美味しかろう。どれ、と試しにもう一つ目の前に掲げてみたら今度は間髪入れず食いついた。

 

「ふっふっふ……これで理解したでしょ! 私はこの家の一人娘で、キミは居候! 以後私に生意気な態度はとらないように!」

 

 そして居候は私の言うことに従う様に! と続けたら、暫く無反応に見つめられた後、頭から水弾を浴びせかけられた。許すまじ!!

 

 

 

 幼少期の生活は、しかもそれがド田舎でとなればかなり暇である。

 前世の同じ歳の頃はこんなに暇を持て余していなかったと思うのだけど、アーシア島には幼稚園もなければ保育園もないので、近所の子供と遊ばないのであれば一人で過ごすしか選択肢はないのだ。

 

 せめて類似する施設があれば、万が一の確率で私が最低限つきあえるレベルの精神年齢の相手に出会えたかもしれないのだが……。自ら探しに行ってみようにも四歳の体ではさほど長い距離は移動できないし、何よりお母さんにそんな遠くまで行くのは許されていないのだ。

 

 本を読み、テレビを見て、家のポケモンと戯れて、たまにラプラスも引き連れて釣りに行く。ほぼこの四つの行動を繰り返すだけの私の日常、代わり映えのしない日々。

 四歳も半年が過ぎたこの頃、私デュランはいよいよ完全に日々の活動をローテーションで回すだけの人間機械と化していた。

 

 あぁ~、サブカルチャーが! オタクの魂が全力で没頭できるような漫画やアニメやゲームが絶対的に不足してるんだ~~!

 前世のネット掲示板でのアニメ実況や課金して回すソシャゲガチャに一喜一憂する快感が恋しいんじゃ~~!! 

 悲しいかなクレジットカードどころか、携帯電話すらお父さんのアンテナ付きしか見たことないこんな世の中じゃ……私の欲望は一生満たされねぇ!!

 

 私は床で寝ているラプラス以外誰もいない家のソファに寝転がりながら、買い物に出かけた両親の帰りを待っていた。テレビをつけてもニュースしかやっておらず、スマホやPCがなければ暇つぶしも出来ない。現代(未来)に毒された私の魂は電子の海での“なみのり”に飢えているのだ……!

 

 そういえば話は変わるけど、件の居候ラプラスは半年経っても元居た群れが見つからず、季節が変わってラプラスの群れが別の海域に移動してしまったことを契機に正式に我が家の第三のポケモンとなった。

 本人はやはりまだ群れに戻りたい気持ちはあったようだけど、話し合い(ポケモンって明らかに人間の言葉理解できてるっぽい場面多いよね?)を通して、群れ探しはまた来年に賭けるということに相成った。

 それ以来、何だかんだ立場を弁えていたラプラスに対して、居候と家人という関係性を楯にあれやこれやと威張っていた私の黄金の日々は瓦解し、今となってはお風呂上がりでホカホカな私に水鉄砲(微弱)を浴びせかけてくるラプラスと裸のまま取っ組み合いをする程にまで落ちぶれてしまった……。

 こいつ、居候じゃなくなった次の日から私の布団に水かけやがったからな……あれは絶対、私じゃない! こちとら転生者だぞ! おねしょなんかするか!! 

 

 そんなラプラスだが、正式に家族の一員になっても私以外に対する態度は変わらないままで、お母さんとお父さん相手には素直な良い子を貫き通している。

 ニョロボンとベロリンガに対してもこの数年の間に上下関係が確立したようで、二匹のご飯を掠め取るような真似はしなくなったし、なぜ私にだけこんな態度なのかコレガワカラナイ。

 

 しかし現状、これと先にした説明*1を結合してみると残念な現実が見えてくるのだ。今現在、私と完全に対等な付き合いができる相手がこの生意気な子ラプラスしかいないという、そんな残念な事実が。どうしてこうなった……。

 しかも川の流れが緩いところで試しにラプラスに跨って釣りをしていたら、気が付いたら近所で「ラプラスの子」だの「ラプラスの嬢ちゃん」だの呼ばれるようになっていた。

 それ認識のメインがラプラスになってませんかね!? そうですよね、“人間”なんて“ラプラス”に比べたら珍しくもなんともない……誰がオマケだ!

 

 確かに私は近所で仲良くしている子供はいませんよ? でもそれは精神年齢の差という壁があるからであって、決して私の人間性やら性格やらに問題があるわけではなくて……つまり全て環境が悪い。

 そうだ、何もかも私をこんなド田舎に押し込めている環境が悪いのだ……! ひいては未だ普及しないネット環境が悪いのだ! パソコンさえ普及すれば、こんな私だって無限に広がる電子の海に漕ぎ出していけるのに。

 

 いつかパソコンが普及した暁には、前世の経験と知識を活かして何か凄いことしてやる。youtube的な動画サイトを立ち上げて覇権を握り、広告収入だけで巨万の富を築き上げてやる。具体的な方法は知らないけど。

 そう言えば、もうあれから何年も過ぎてしまったし、実生活で何も実感してないから忘れがちだけど、私って実は凄い潜在能力が秘められてるんだよね……。病気に罹ることも無ければ、将来は確実に美人になれるし、他にも何かしら超能力とかもあったような……あっ! そうじゃん、前世では微妙だった絵の才能さえ今の私は持っているはずだ。

 

 おぉ……よくよく考えたら脳が柔らかい今のうちにやることなんて幾らでもあるじゃんか。

 え? 超能力はともかくとして、どうして絵のことまで忘れていたのかって? 覚醒した当初はリアルポケモンのことで頭が一杯だったからね、仕方ないね。

 その後はボッチの洗礼を受けて心に傷を負い、孤高の美少女釣りガールとして生きていたからさ。図鑑や伝記が楽しくて読書はしたけど“絵を描く”行為に触れる機会は地味に殆どなかったのだ。

 

 しかし、気が付いたからにはこれは最高の道標になる。

 私には画家として生きたいとか大それた夢はないけど、今からコツコツ練習を重ねれば前世レベルにインターネットが発達した頃には、雲の上の存在だった神絵師の一人として、イラストを公開しては無数のユーザー達から()()()()されるような存在にだってなれるのかもしれない。

 

 美少女で、絵が描けて、しかも超能力者? 中々そんな人いないと思いますねえ!

 

 超能力だって、まだ何もそれらしい不思議体験はしてないけど、私の内側にはサイキックパワーが眠っているはずなのだ。読心術以外のどんな能力を持っているのか……気にならないわけがない。

 でも超能力を目覚めさせるって、つまり何をやったらいいんだろう? シンプルに瞑想とかだろうか、それともスプーン曲げの練習をしてみるとか? あっ、八百(やお)ヤドンに軽く“ねんりき”をかけてもらったら何か分かるかもしれない。早速明日にでも試してみよう。

 

 なんか考えてたら楽しくなってきた……!

 絵の勉強と超能力の練習は基本として、いっそのこと将来、この世界を存分に楽しむために語学の習得も考えて良いかも。

 

 この世界は奇怪なことに、喋り言葉は全世界共通なのにも関わらず、文字は複数種類存在する。

 カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ地方では日本語と同じ文字(以後「カントー語」と呼称)がそのまま用いられているが、イッシュ地方ではイッシュ文字を用いるようにアローラ地方、ガラル地方など、地域によっては異なる文字を使用していることもある。

 

 言葉は脳が柔らかい幼少期の方が習得しやすいと言うし良い考えな気がする。読み言葉は共通なので言語ごとの対応表は普及しているけど、自由に書けて読める方が旅行とか楽しめそう。

 それにしても……世界中の人と不自由なく会話できるなんて最高の世界だな! 想像は追いつかないけど、何だか人生をかなりの場面で気楽に楽しめるようになる気がする。旅行に出かけても自由に旅が出来て、現地で知り合った人と一緒にお酒を飲みながら会話に花を咲かせる、みたいな───素晴らしい!

 

 うっかり忘れないようにと、私はチラシの裏に計画を書き記しておくのだった。

 

 

 バラ色の未来計画を両親に告げてから早半年、晴れて五歳となった私の生活は大きく変貌を遂げていた。

 絵の練習がしたいというお願いは、元画家のお爺さんが毎週開催している老人会の集まりに参加させてもらえることとなり、文字学習についてはアーシア島に専門で教えられるような人物がいないという如何(いかん)ともし難い問題に直面し、とりあえずはお父さんが本土で教材を買ってきてくれるということになった。

 そして超能力関係についてなのだが……うん、まあ想像通り、いや想像以上にこれが特に大変だった。

 

 二人とも娘が唐突にいくつもの習い事をしたいなんて言い出したから面食らっているのは仕方がないけれど、それ以上にいざ両親に伝える段階になって一番大変だったのは超能力に関してだ。(ヤドンの“ねんりき”では何の成果も出なかった)

 

「わ、私ってたぶん超能力使えると思うから、何かこうサイキッカーの人、とかに、エスパー、的なのを教えてもらいたい、です……」

 

 

 と、尻すぼみにしどろもどろになりながらお願いした私を見るときの二人の目。さっきまでは真剣な顔で話を聞いてくれていたのに、一気に微笑ましいものを見るような視線になるんだもんなぁ。

 

 冷静になって考えたら、「私、超能力者なの! だから超能力の訓練したいの!」なんて完全に夢見る子供の発言そのものじゃん……! いざ話すときどれだけ私が恥ずかしかったことか!

 「僕も挑戦した時期があったなぁ」とか「誰もが一度は通る道よね~」とか、お父さんもお母さんも止めてくれ~!! 違うんだよ! 私には本当に超能力の才能があるんだよ!

 

 思わずそう叫んでしまったら、より一層二人の視線の微笑ましさ度が増してしまった。う゛う゛あぁぅぅ……!!

 けれど哀しいかなどうしようもない、反論すればするだけ墓穴を掘るだけだ。二人から見える今の私は、まさに変身ヒーローや魔法少女に憧れる子供そのものだろうから。

 

 しかし、私が真っ赤になってもう恥ずかしさで泣きそうになるのを堪えていると、お父さんの口から予想もしていなかった提案がされた。お父さんは「そうだ」と指を立てて、

 

「お父さんの高校の友達にサイキッカーがいたから、今度の休みに会いに行ってみようか! デュランも随分しっかりしてきたし、いい機会だから家族旅行に行こう!」

 

 と少し得意げに言った。まさかお父さんの知り合いに超能力者がいるとは想像もしていなかったし、話が旅行に広がるとも思っていなかったけれど、お母さんは突然の家族旅行の提案にかなり喜んでいた。

 

 その後、とんとん拍子で旅行の日取りが決められていき、相談から2か月が経った頃、私はついに生まれて初めてアーシア島から離れることとなったのだった。

 

 行先は―――大都会、ヤマブキシティ。

 

*1
友達ゼロ人




平均7000文字と5000文字だと“読んだ感”に結構差がありますよね。
まぁこの話は6000文字強しかないんですけど。

名前が薄い主人公の歳:三歳、四歳、五歳

地の文の改行は多い方と少ない方、どちらが読みやすいですか?

  • 多い方(一段落が短い)が良い
  • どちらかと言うと多い方が良い
  • 少ない方(一段落が長い)が良い
  • どちらかと言うと少ない方が良い
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