転生チートオリ主が超技術でVtuberを現実に降誕させる組織のボスになるお話   作:水風浪漫

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中々書き進まなくて時間がかかったのもありますが、絵を描くのが楽しくなってそっちで遊んでました。
これからも更新したり、少し更新したり、バランスはぶっこわれてます。


6.テカテカする赤い石

 今夜は、返したくない*1 ───ではなく、トーマさんの不穏な発言は、話を聞いてみればそれほど深刻な内容ではなかった。専門用語混じりにされた説明を要約すると「潜在能力ヤバそうだから、少し時間をとって話し合いましょう」とのこと。

 現時点でトーマさんが読み取れたことはその一点のみだそうで、もし帰宅してから予期しないタイミングで力が覚醒して私が暴走させてしまった場合どんな事態になるか予想できないらしい。なので今後の安全のために、暴走を抑え込める人員がいるヤマブキにいるうちに人為的に目覚めさせておかない? と言うのが彼の提案だった。

 いきなり表面化したリスクに当初は渋い顔で話を聞いていたお父さんも、トーマさんが言葉を尽くして説明を続けるうちに徐々に落ち着きを取り戻していたよう見える。

 

 しかし、本当に熟練サイキッカーのトーマさんが危惧するほどの力が私ごときに備わっているのだろうか? 至極真面目な表情を見れば嘘ではないことは分かるのだけど、自分のことなのに欠片も実感が湧かない。ぐっぱぐっぱと手を開閉させながら、大人たちの話し合いが終わるのをを待つ。

 話が纏まったところによれば、これからトーマさんと彼の弟子二人を加えて私の能力を呼び起こすことになったらしい。一体どんな方法なんだ、危険はないのかとお父さんが尋ねていたが、トーマさんは頭の上に手を乗せて意識を集中させることで、相手の精神の奥底に眠る力を開放する技を扱えるのだと言う。トーマさんは最長老様だった……?

 

 二人のお弟子さん達は私の覚醒の余波を抑え込むための保険だと言っていたが、師匠の贔屓目を抜きにしても二人は彼が知る中でも選りすぐりの能力者とのことだ。しかも一人は私とあまり歳の変わらない子供なのに、既にジムでは他者に指導する立場らしい。流石、十歳で成人する文化の世界は違えや。

 

 本来ならジムバトル用の部屋なんだけど、と通された部屋はここまで目にして来た打ちっぱなしのコンクリ壁の無骨な広間から一変して、高台に設けられたバトルステージと観客席、ステージを囲むようにレプリカのビル群が配置され、それらを下方から光源が照らすことで煌びやかな都会の夜を再現した空間だった。

 私たちは関係者通用口を通ってきたが、ステージ外には正式なチャレンジャー達が通るのであろうビルの屋上を(かたど)った複数のバトルコートが見えた。ジムリーダー用のコートと比べると僅かに小ぶりである。

 トーマさんはジムリーダーだけど、私用で部外者にジム施設を使わせて良いのだろうか? まぁこれだけ堂々としているのだから問題ないのだろうが……。

 お弟子さん達がまだ来ていないので、本来なら中々目にすることの無い場所で家族三人、記念撮影なんてしちゃったりしながら待っていると、階下で大きな音を立てて扉が開かれた。

 

 コート端から眼下を覗いてみると、正面扉から入って来る黒髪と金髪の人影が見えた。

 彼女らは小走りで床端まで進むと、あと一歩踏み出したら床下へ落下してしまう、というところで地面を蹴った。まるで力を込めていた様には見えなかったのに、彼女らは宙を舞う羽毛の如き軽やかさで空を翔ける。それを幾度か繰り返して一般人には到底不可能な道筋を経由して、二人は私たちの前に着地した。

 

「遅れてすみませ~ん!」

「す、すみません」

 

 目の前にした彼女たちは、何ともまぁ……非常に見目麗しい容姿をしていた。特に黒髪の私と歳が近しい子なんて、将来とんでもない美女になること間違いなしの美少女である。芸能人でもこれほど高レベルな人はいるかどうか……。

 もう一方の金髪の方は何と言ったらいいか……ダイナマイトなボディが素晴らしい子だ。かなり身長が高いけど、歳はたぶん高校生くらいだろうか? この世界は年齢以上に若々しい人が多いので確かなことは言えないけれど、大きく外れてはいないだろう。胸元の開いたシャツから覗く双丘の存在感は凄まじく、意識せずとも自然に目を奪われてしまう……が、お父さんは自重してくれ……! お母さんが凄まじい目で睨んでるから……!

 

「紹介します、弟子のケイとナツメです。二人とも、こちらは私の友人のマサオミとその奥様のアニエスさん、ご息女のデュランちゃんだ」

「初めまして! ケイって言います! トーマ先生の下で修業しています! 将来は超能力を活かして悪い人をバンバン捕まえる警察官になるのが夢です!」

「ナツメ、です。よ、よろしくお願いします……」

「アニエスです、娘をどうぞよろしくお願いします。それにしてもさっきの見ていたけど、本当に空を飛んでいるみたいで凄かったわ~!」

「え、そうですかね!? えへへへへ……」

「バカ、お客さんの前でそのだらしない顔を見せるな」

「あいたっ!?」

 

 ぱん、とトーマさんに頭を叩かれると、ケイさんは慌てて姿勢を正して表情を引き締めた。ふにゃふにゃしてた顔を急に凛とさせるものだから、その姿がまさにネットスラングの「キリッ」の表現がピッタリな姿だったので、私は思わず小さく吹き出してしまった。

 

「あ、笑ったなぁ~?」

「へ? あ、ご、ごめんなさい」

「あはははは、良いの良いの! あなたがデュランちゃんね? 緊張してるかもしれないけど、私達がしっかりサポートするから大船に乗った気でいてね!」

「よ、よろしくお願いします」

「よろしくお願いされました!」

 

 ケイさんはどーん、と力強く胸を叩いて見せる。その顔は一片の曇りもない自信に満ちていて、それだけで多少の不安なんか吹っ飛ばして安心させてくれる朗らかさで一杯だった。

 タイミングを逃したお父さんが挨拶をするのを横目で見ながら、私はいつの間にか私たちから距離を取っていた黒髪の女の子に注意を向けていた。

 

 ナツメ、って言ってたよね。

 ヤマブキシティで、サイキッカーで、黒髪美女のナツメちゃん……ま、間違いない。(たぶん)本物だ……!

 

「えっと、あの、ナツメちゃ……ナツメさんもよろしくお願いします」

「え、あ、が、頑張ります……」

「あ、ありがとうございます」

「……」

「……」

 

 ち、沈黙が痛い……! くそっ、私は精神年齢アラサーなんだぞ。本物の“ナツメ”とは言えこんな小さな子との会話に詰まるなんて、そんな情けない話があって良いわけないっ。

 

「えっとナツメさんは───」

「あ、あのっ」

「な、何ですか?」

「えっと、その、け、敬語……」

「けいご?」

「慣れないから、やめてほしい……です」

「あっ、分かりまし……分かった。これでいい?」

「あ、ありがとうございます」

「……」

「……」

 

 だから痛いってばぁ! か、会話が続かない。何故だ、昨日はハナコちゃんと普通に喋れてたじゃん! どうしてナツメさん、じゃなくてナツメちゃん相手だとこうも話せないんだ? 前世から続くミーハー気質のせいで緊張してるのか? それともまさかハナコちゃんの陽キャな雰囲気に引っ張られてただけで、これが私本来のコミュ力だとでも言うの? くッ……。

 

「あの、それならナツメちゃんも……ナツメちゃんのが歳上だし」

「わ、わかっ……わかった」

「あ、ありがとう」

「うん……」

 

 ど、どうすれば良い? お互いに言葉が出ずに無言で見つめ合ってるだけになってしまった。私の方が少し身長が低いのでナツメちゃんを見上げる形。ナツメちゃんはちらちらと時々視線を泳がせながら、口を一の字に結んでいる。

 互いに身動きが取れず場が硬直してどれくらい経っただろう。体感二、三分が経過した辺りで、近づいて来ていたケイさんが突然ナツメちゃんを抱き上げた。膝の裏と背中に手を差し込むスタイル、所謂お姫様だっこである。驚きで目を見開いているナツメちゃんを他所にケイさんは勢いよく頬ずりをし始めた。

 

「うんうん! 仲良くなれたみたいで非常に良し!」

「お、下ろして! ケイ! 下ろしてってば!」

 

 ナツメちゃんは必死に押しのけようとしているが、流石に体格が違いすぎて全く通じていない。

 それにしても、現時点ではともかくとして、将来は切れ長な瞳でスレンダークール美女になるナツメちゃんとダイナマイトボデー*2で天真爛漫なケイさん、なんとも対照的な二人である。今はちんちくりんな私もいつかはケイさんのようなメリハリのある体に成長すると運命づけられているのだから、全くもって将来が楽しみである。

 うりうり、と撫でまわされるナツメちゃんを眺めて勝手に一人でほんわか和んでいると不意に私の肩に手が乗せられる。振り向けばお父さんが立っていた。

 

「それじゃあ、頼むぞトーマ」

「任せてくれ。せっかく家族でヤマブキに来てくれたんだ、あまり時間を使いたくないし、早いところ始めてしまおう」

「よ、よろしくお願いします!」

 

 トーマさんは頷きを返すと、未だにじゃれているナツメちゃんとケイさんに指示を飛ばし始めた。お父さんとお母さんは万が一のためにバトル用の防護フィールドを挟んだ観客席へ移動し、私の正面に立つトーマさんから数メートルの距離をとって、左右から私を挟む形でナツメちゃんとケイさんが位置に着く。そして三人とも腰に下げていたモンスターボールを手に取った。

 

「出てこいヤドキング!」

「ケーシィ、お手伝いよろしくね」

「カモーン! ライチュウ!」

 

 鮮やかなエフェクトを伴って飛び出してきたのは、実際に見たことは無いけどアーシア島にも生息していると聞くヤドキング、寝てるのか起きてるのか分からない糸目のケーシィ、そして普通ならアローラ地方以外では滅多に目にすることがないアローラ地方のライチュウだった。カントーのライチュウより丸みを帯びた尻尾をサーフボードのようにして空に浮かんでいる。

 くりくりのお目々とまあるい体、自分の尻尾の上にぽてっ、と座っている姿は超絶プリティーでもうたまらない……え、というか何故こんなところにアロライが……!?

 

「あ、アローラライチュウ……!」

「おお! デュランちゃん知ってるんだ! 初めて見る人はみんな知らなくてビックリするのに。小さいのに凄いね~」

「へ? い、いえっ、前にテレビで見たことがあって、それを覚えてただけなので」

「いやいや、大したもんだよ。俺も最初は分からなくてポケモン協会の知り合いに問い合わせて初めて知ったくらいなんだから。流石、高校三年間ほとんど学年主席だったマサオミの娘さんだ」

 

 ふぁ!? お父さんそんな頭良かったの!? アローラライチュウに出会えたことよりそっちの方が驚きである。家では親バカで、しばしば天然発言をして私たちを笑わせているお父さんが……普段の振る舞いと頭の良さは別ということか。

 サーフテールでぷかぷか浮かぶライチュウに目を奪われつつ、しかし和やかな雑談もそこそこにトーマさんは手際よくと準備を進めていく。

 ヤドキングに“ひかりのかべ”と“しんぴのまもり”を、ナツメちゃんに命じてケーシィに“リフレクター”を各々の前に張らせ、ケイさんのライチュウには体力と引き替えに三体分の“みがわり”を発動させて、続く“ねがいごと”で失った体力を回復させる。

 「これだけやれば万が一、力を暴走させてしまっても安全に対応できる」とはケイさんの談。お母さんたちは最先端科学技術による遮断フィールドで守られているからその点は心配いらないが、超能力について無知な私から見ても、私に対するこれらの準備は些か大げさな気がしなくもない。それともこう言うことをする時はいつも同じ感じなんだろうか?

 

 そうこうしている内に他の細かい準備も終わったようで、トーマさんが私の眼前に跪いた。下準備が終わるまでの一部始終をぽかーんと眺めていた私も何も分からないまま()()()()気を引き締め直す。

 

「それじゃあ始めるよ」

「は、はい」

「大丈夫、何も難しいことはいらないから。デュランちゃんはただ目を瞑って、自分の体の内側に意識を集中させるだけでいい」

 

 片手の掌を私の頭にすっぽりと被せるとトーマさんは動きを止め、さっき私の眼を覗き込んだ時と同じ、何処か遠くを見つめる視線を私に向ける。目が合っているのに、視線は此処にいる私ではない何かを見つめている。先ほどとは違って肌が粟立つような感覚はなかったけれど妙な不気味さに背筋が震え、私は慌てて目を閉じた。

 

「……」

 

 一分ほど経っただろうか、トーマさんの手からじわりと不思議な感触を感じるようになったときトーマさんが口を開いた。

 

「……見えてきた。これからゆっくりとデュランちゃんに眠った力を引き出していくよ」

「はい」

 

 小さく頷いて肯定を示した後、ほとんど間を置かずに何かが込み上げてくる感覚が私を襲った。

 鳩尾から上へ上へと昇ってくるそれは、例えるならまるで心臓の鼓動に火が着いたような……ドクン、ドクンと脈打つ度に新たな熱が生まれ、熱はゆっくりと、しかし確実に胸から首へ、首から喉へ押し上げられていく。どうにか押しとどめてみようと、試しに胸に力を込めてみたがまるで効果がない。

 

「トーマさん」

「どうだい、何か感じるものはあるかな? 俺が予想した以上の力を感じるから変化は感じやすいと思うんだけど」

「何か熱いものが胸からゆっくり上がってきているんですけど、これがそうなんでしょうか?」

「熱い───パイロキネシス(発火能力)か!? デュランちゃん、どうにかその熱さを抑え込めるかい!?」

「ちょっと難しいですかね……というか、そろそろ咽元に差し掛かってま───う゛っ……!? は、吐きそう……!」

「ッ! 二人とも!」

 

 唐突に襲い来る吐き気に口元を抑えて(うずくま)ると、私から距離を取るトーマさんの足先が見えた。いや離れないで助けて……!

 

「大丈夫! 能力者が自分の力で傷を負うことは無いから! “サイコキネシス”で封じ込めの準備だ!」

 

 即座に「はいっ!」と応えるナツメちゃんとケイさんの声。同時に、私を中心に三方向から囲むような形で“何か”が形成されていく。念動力の壁とでも言えばいいだろうか。未だ収まらない強烈な嘔吐感に立ち上がれずにいるのに、何故かそれが見て取るように分かった。

 目を閉じていてもトーマさん等やポケモンたちの動き、三人から放たれる力とポケモンたちが放つそれ以上の力、そして観客席から身を乗り出して冷や汗をかいているお父さんとお母さんの存在を知覚できている。経験したことの無い未知の感覚。けれど、正直、今は気にする余裕がない。

 

 必死に口元で押しとどめていた“熱”が胸の奥からの突き上げで加速度的に熱量を増しているのだ。当初はぬるま湯程度だった熱がいつの間にか熱湯程になり、その勢いは止まる所を知らない。強まり続けた灼熱は既に私の胸から口までの気道を焦がすように焼いていた。

 

「もう無理っ‥…」

「いいぞデュランちゃん! 吐き出せ!」

 

 許しの声に僅かな逡巡もなく私は熱さを開放した。がはっ、げほっ、と咳き込む度に体から熱が抜けていく。

 まるでファンタジーの竜の息吹(ブレス)の如く、次から次へと胸から溢れ出る灼熱の吐息。手に触れるだけで火傷するんじゃないかと思うほどのそれは、しかしトーマさんの言った通り一切私の体を害することは無かった。

 念動力の壁にシャットアウトされた私の周囲は空気が歪むほどの熱気で満たされていく。吹き出る汗が染み出た端から蒸発して靄と消え、床に零れた涙は沸騰して蒸気へ姿を変える。それ程の灼熱の空間にあっても、不思議と私にはちょっとした暖房程度にしか感じられなかった。

 

 いつまでも続くかと思った咳もいつの間にか大きく深い呼吸となり、数分も経たない間にただの荒い呼吸へ変わっていった。完全に息が整うまでには更に数分の時間を要したものの、まさに「喉元過ぎれば熱さ忘れる」で、呼吸を取り戻した私はすっかり落ち着きを取り戻していた。

 一気に大量の水を消費したことで()()()()に喉が渇いていたけど、それ以外は始まる前と何ら変わったものは感じない。永遠に止まらないような気がした熱さもすっかり鳴りを潜め、一時は汗でびしょびしょに濡れていた服も既に乾ききっていた。

 

「大丈夫かデュランちゃん!」

「あ、はい。さっきまで凄い苦しかったけど今は何ともないです」

 

 念動力の壁を解いてトーマさんが駆け寄ってくる。私は体にのしかかる疲労感を押しやって笑顔を浮かべると、観客席のお母さん達にむかって大きく手を振った。二人とも安堵した様子で体から力を抜いていた。ははは……かなり心配させちゃったみたい。

 近くまで来たトーマさんは未だ散っていない熱気に一瞬足を止めたが、彼が片手を大きく回転させるとそれだけで残っていた空気は何処かへ吹き飛ばされてしまった。風は感じなかったのだが、一体何やったんだろう……。

 

「本当に? あれ程の力があの程度の影響だけで終わるとは考え難いんだけど……体におかしな所や痛みや違和感はない? もしあれば、それがどんなに小さなことでも教えてほしい」

「いえ痛みとかは何も……あっ、そういえば」

「何だい?」

 

 試しに目を瞑ってみる。胸に手を当てて、熱の発生源だった鳩尾に意識を集中させる───見える。さっきと同じように周りの人やポケモン、椅子や柵などの物がどこにあるか、何をしているかが鮮明に……それこそ目を使って視界に収まる範囲しか見えないとき以上に周囲の状況が知覚できる。背後にいるナツメちゃんはホッと一息ついていて、ケイさんはライチュウの頭を撫でている。お母さん達は観客席からこちらに向かって移動を始めていた。

 

「目を閉じていても周りのことが良く分かるんです」

「あー……それは超能力に目覚めた人に共通する感覚だね」

「そうなんですか?」

「透視や千里眼なんかを使う人はその感覚が切っ掛けで自分の力に気が付くことが多いって聞くよ」

「はぇ~」

「他には何かあるかな」

「いえ、他はほんとに何にも───うぷっ!?」

「どうした!?」

 

 急に何かが喉に込み上げてきた。これは、さっきの熱さとは違って物理的なアレだ。ヤバい。詳細不明の超能力的なサムシングとは比較にならない吐き気が……! やばいやばいやばい、このままじゃ衆目の前で甘酸っぱいアレ*3を晒す羽目になる!!

 

「……!!」

 

 両手で口を押えて必死にアイコンタクトでどっか行って! と訴える。トーマさんは即座に首肯すると、懐から紙を取り出して折り始め、あっという間に箱型にすると私の前に差し出した。違う、そうじゃない!!

 

「超能力で強化してしっかりバケツとして機能するから安心してくれ!」

 

 グッ、と笑顔でサムズアップを見せるトーマさんの顔には一切悪気はない。これは善意、善意なんだ……! それに私ももう限界だし、腹を括るしかない……!

 

「おヴぇ■■■■■■■■■~~!」

 

 解き放たれた《表現規制》は予想に反してザラザラザラ、という音を立てて紙バケツに注がれていく。私が吐き出したのは《表現規制》ではなく、それとは似ても似つかない赤色の小石だった。バケツの底がギリギリ見えなくなる程度まで吐き出された多量の小石は私の体液に濡れ、艶めかしく光を反射していた。

 

 ……うん、石を吐き出すとか自分のことながら体が心配になるけど、今はとりあえず恥を晒さなかったことを喜ぼう。

 ふう、と一息ついてハンカチで口元を拭っていると、トーマさんがおもむろに手を伸ばして石を手に取った。しかも一つつまむとかじゃなくて、両手のひらでわしっとつかみ取るやり方で。

 

 ───ぬっちゃあ……。

 

 生々しい粘着音も気にせず石を観察するトーマさん。そして、呆然とそれを見ている私の目の前で彼は石に顔を近づけ、すんすん、と臭いを嗅いだ。

 

「嫌あああああァァァァァァァ!!??」

「ふげハァ!?」

 

 思わずぶん殴ってしまった私を誰も……誰も責められまい。

*1
結婚したのか、俺以外のヤツと…

*2
誤字にあらず

*3
オブラートな表現




・お母さん:本名はアニエス・ウォーターホール。
・ケイ(荊):好物はパンケーキ。料理はめっちゃ苦手だが家でも頻繁にパンケーキを焼いている。
・ライチュウ:カントー生まれのカントー育ち。ピチューの頃からパンケーキが大好物。焦げてる色違い。
・大きい紙:便利なので常備されている。

ナツメちゃんは主人公の一学年上なのです。

地の文の改行は多い方と少ない方、どちらが読みやすいですか?

  • 多い方(一段落が短い)が良い
  • どちらかと言うと多い方が良い
  • 少ない方(一段落が長い)が良い
  • どちらかと言うと少ない方が良い
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